塗り替えて勝て⑥
「おーい、落ちないようにくくり付けたかー?」
「あいさ、問題ねぇ」
二人の北人がドラゴン形態のフィスに樽とこまごまとした器具を結び付けている。
「フィスは痛いとか苦しいとかないかい?」
「マスターよ、ドラゴンだから何とも無いわい、しかしチヌに樽を乗せると定員も重量もオーバーとは・・・まぁ今までもギリギリと言う感じだったからの」
フィスはウロコを動かして可動域を確認している。
「王よ、行ってしまわれるのですか・・・」
「む、大臣よ、そう言うでない、まつりごとはお前が十分にこなして居るではないか、プルツのことは王都ソヴィルバーレにも届いておるぞ、良くやってくれている」
「これは・・・過分なお褒めにあずかり」
「ではゆく」
リャヒがフィスの背に乗り周囲を見渡すと国民が多く集まりリャヒを見つめている。
「出してくれ」
「おいよ、フィス、方角はバッチリかい?」
「大丈夫だマスター」
リャヒとヤヒスの会話を聞きフィスは翼をはばたかせ宙に舞い上がった。
「イエールから聞いたダンジョンの場所はここから南西、フィスなら一日の距離、たのんだわよ」
ヴィーシャの言葉を聞いてフィスは飛行する速度を速めた。
飛び立ってから日が傾き始めた頃各人がダンジョンのありそうな場所を目視で探している
「ふんむ、上空からだと逆に探しにくい、森林が広がるばかりだ」
「そうですね、地上でしたら踏み跡や何がしかのマーキングがあるはずなのですが、ちょっと広大過ぎますね」
マサカツの辟易した声にミードリが賛同する。
「我が主、旗のようなものが見えます」
「旗?うーんわからないな・・・」
「私の目では・・・岩棚の上にソヴィルバーレの国旗が見えます」
「誰かが目印として掲げた、ありがたいこと」
チヌックとヤヒスの会話を聞いてパムが安堵の息をついた。
「よーしよし・・・フィスが乗っても有り余るくらいには広い岩棚だ」
ヤヒスがそう言っている中で、フィスが着地して、マサカツとリャヒで樽とその諸々をゆっくりと地面に降ろした。
しばらくして「ぽん」と言う音と共にフィスは小さな女の子の姿になった。
「んーーー久しぶりに羽を伸ばせたぞ、文字通りな、たまにゃ飛ばんとニブるでな」
フィスはそう言って背伸びをする。
「・・・あれがダンジョンの入り口ね、良く見つけたわねこんなところ」
「何でも魔法材料に使うイワガサタケの収集クエストに来ていたらしいですよ、希少種ですから良いお金になるんです」
ヴィーシャはミードリの答えになるほどと言った後で作業をしている男子連中を見た。
「ヴィーシャ、作業は明日の朝で良いかな、ちと微妙な塩梅が必要なんでね」
「いいわよ、で、この岩棚で野宿をすることになるのね、ダンジョンから例の見えない魔物が出てこないかしら」
「聞き込みをしたけれど全員がダンジョンを出たら攻撃が止んだと証言している」
パムがダンジョンの入り口を見つめながら答える。
「うーん、じゃあ鳴子の出番だな」
「何だいそれ」
「俺のいた国に昔から伝わる防衛装置さ」
そう言ったマサカツはリュックから細い紐と木の板を取りだし、そのまま低木に木の板をいくつか紐で取り付け、反対側の低木に紐をぴんと張り、その作業を何カ所かやり終えた。
「あっ、なるほど、その紐に引っかかると木の板が鳴るんですね」
「そうさ」
マサカツがそう言って紐を指で引っ掛けるとカラカラと乾いた音が響いた。




