去る時
いつものテラスでお茶を飲んでいた黄昏パーティー一行だったが、ヴィーシャが突然口を開いた。
「よし!明日にはこの大陸を出るわよ」
「む、まだまだ攻略していないダンジョンなどがあるであろう?」
「そうだよ、来てからだいたい三週間、ようやく馴染んできたところなのに」
リャヒとヤヒスは疑問符を浮かべて言葉を返した。
「あーー・・・勇者クエストがたまっているね・・・そうだろヴィーシャ?」
「そうよ、これだけ長く家を空けると溜まっていると思うわよ、ほら、出島で一か月閉じ込められて何のかんのでようやくホームに帰った時のこと思い出してみなさい」
口をいーと広げながらフィスがいかにも嫌そうだと言う表情を見せた。
「じゃあ挨拶に行かないとだね」
「そうね」
「うむ、エッフェゴール氏には色々楽しませてもらった」
ヤヒスとヴィーシャが言いだしてそれにリャヒが乗ると、全員そのことに賛成した。
街路を歩き上級住宅街を進むとエッフェゴールの屋敷が見えてきた、見慣れた光景だ。
ノッカーでドアをノックすると、執事が現れて表情のない顔で言った。
「ご用件は?」
「この大陸を去るので、色々お世話になったことですし挨拶をと考えまして」
ヴィーシャが軽く頭を下げて用件を伝える。
「旦那様に取り次いできますゆえ」
執事がドアを閉めると、コツコツとした足音が離れて行った。
しばらくするとゆっくりとドアが開き、エッフェゴールと男が一人が室内から出てきた。
「この大陸をお去りになるとか・・・何と言いますかお世話になったのはこちらばかりでして、どうでしょう、お食事でも?」
「いえ、この後すぐにでもこの町を去るつもりです」
「おぉ・・・そうですか、去り際もわきまえてらっしゃる、そうだ、もうご存じと思いますが息子を紹介します、バンスです」
「バンスさん!」
「バンスさん・・・良かったです」
ヤヒスとミードリが感嘆の声をもらす。
「ふむ、手続きが早いですね」
マサカツは小首をかしげている。
「ええ、絶縁状をいつも内ポケットに入れていましたから、絶縁とは言え父がくれた物でしたから・・・ですがもう必要ないと判断しましたので、ねぇ、父さん!!」
「ああ、バンスよ」
「何もかもいい方向へ向かった、ありがとうございました」
エッフェゴールと息子のバンスは深くお辞儀をした。
「ええ、自慢話にさせてもらうわ」
「はは、それは良い」
「ではこれにて」
ヴィーシャはエッフェゴールとの会話を切り上げて、踵を返すと全員それにならった。
「父さん」
「ん?どうした」
「この事を伝え継ごうと思うのですがどうでしょうか?」
「おお、それは良い」
エッフェゴール親子は笑顔で会話しながら黄昏パーティー一行の背を見送った。




