名探偵マサカツ⑤
ヤヒスがエッフェゴールの屋敷をノックすると、すぐに執事が現れて四人はその後に続いて歩き、応接室らしき部屋に案内された。
そこにはサイラスが腰かけており、チェフィーがエルフの織布を床に落とすと、サイラスは立ち上がりチェフィーに駆け寄ろうとしたが、娘が身体をこわばらせているのを目にして、歩みを止めた。
「さて、娘さんをお連れしました、彼女と行動を共にしていたのは彼、御者のバンスです」
「お嬢さんを連れまわしたご無礼、お許しください」
「御者?バンス・・・?お許しくださいと来たか、私がどれだけ娘の心配をしたか・・・」
「お父様は御者だからバンスを受け入れないのでしょう!?」
「う・・・そうだ・・・世間体がある」
「やっぱりそう・・・こんな誠実な人はいないのに・・・」
バンスはマサカツの方をチラリと見ると、彼はあごに手をやって成り行きを見守っていたが口を開いてエッフェゴールの方に声をかけた。
「こんな状況で何ですが、エッフェゴールさんは息子さんがおられないのでは?」
「え?あ、ああ、そうですが」
「後継ぎがいない?」
「うっ・・・それとこの件とは・・・いったい」
「バンス、君のフルネームと以前の職業を」
「ハンス・ベルメール、ベルメール商会の副頭取をしていました」
ハンスの目はキリと見開かれている。
「な!?ベルメール商会!?」
「副頭取・・・」
「はい」
サイラスとエッフェゴールは仰天している。
「・・・とは言っても父と折り合いが悪く絶縁状にサインした身ですが」
「それにしても大店の御子息であられる」
エッフェゴールは鋭い目でバンスを見つめている。
「エッフェゴールさん、跡継ぎの件ですが」
「フー・・・君が私のプライベートに踏み込むのは妙だと思ったが、ふっふっ・・・ハンス君、キミにはぜひ家の養子になっていただきたい」
エッフェゴールの言葉にその場はシンとなった。
「え・・・養子・・・ですか?」
「そうです、必要だった世間体が付いてきますよ」
エッフェゴールはにこりとほほ笑む。
「フゥー・・・エッフェゴールよ、お前ってやつはまったく、」
サイラスは膝に手を付いている。
「大店の副頭取の才能・・・これ以上望んでも望めんと言うわけか」
「つまりどういうことです?」
マサカツは後ろに手を回してサイラスの方を見つめた。
「結婚を許す!!そこのイエーガーにうまくやられたわ!!はっは!!失踪事件からこの段に結び付けるとは大した男だ、君、名は何と言う!?」
「マサカツです」
マサカツはうやうやしくお辞儀をしている。
(うわ~~~俺の出番が全くなかったよ・・・誰も俺のこと見てないもんね、あっ悲しくなってきた)
ヤヒスは小首をかしげて窓の外に目をやった。




