番外編 マサカツのこと①
田植えを見学した黄昏パーティーの面々は農道を歩きジャパンの港町に向かっていた。
「薄暗くなってきたわね」
「でも日がずいぶん長くなっている、農作業にさける時間も増えて農家にはありがたい時期だよ」
ヴィーシャはまだ明るい海上を見て目を細めた。
ヤヒスはそれを聞いて彼女に農家なりの事情を話して伝えた。
日が完全に落ちた後、定宿にしている宿に入って行った。
夕飯は外で取り、銭湯と呼ばれる公共浴場に出かけて行った。
「いい湯だったのう、しかしこの国の風呂は木で出来ておるんだのう腐らんのかの」
「ああ、腐りにくい丈夫な木を材にしているんだね、それと時期が来たら解体してまた組みなおすんだと思うよ」
フィスの疑問にマサカツが答える。
「マサカツさんは別の世界から来たとおっしゃっていましたが、文明はどの程度の物なのですか?マサカツさんはあまりにも知識が広くて深い、どう言う育ちか私気になります」
「ん、我も思っておった、大概のことにそれなりの答えを持ち合わせている、どう言う育ちなのだ」
「それ、私も気になっていた」
ミードリが話した話題がきっかけにリャヒとパムもマサカツの過去に興味を示した。
「この際だから育ちを話してくれないかしら」
「ん・・・面白いものかはわからないし長くなるよ」
他の面々は構わないと言うようなことを言ったのでマサカツは話し出した。
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マサカツはいつも通り分厚い図鑑のようなものを広げて床に転がっていた。
その図鑑は大人が扱っても重く、厚さもずいぶんとある代物で、オールカラーで地球上のありとあらゆる物事が網羅されているような物だった。
少なくとも4歳のマサカツはこれが世界の全てであると信じ込んでいた。
読めない文字も多く、意味が分からないことも多いが、写真が紙面の多くをしめており、何度見ても飽きないものだった。
彼が一番好んだのはロケットと宇宙のことだった。
ロシアもアメリカも良く知らない子供がそれらの国で作られた巨大なロケットは大冒険の始まりのようでとても心が躍った。
次に好きなもは植物のページである。
普段食べている米がどんな植物でパンはどのような草から出来るのか、食べる物に関してのことなので俄然興味がわいたのだった。
両親は彼に多くの疑問を投げかけられたが、大人でもわからないものが多く、自分たちの息子が知的好奇
心にあふれているのを大いに喜びつつも、自分たちでは相手に出来ないことを歯がゆく感じていた。
マサカツが小学校に入ると、彼は図書室に良く通うようになった、自宅の大きな図鑑よりも幼稚な内容ばかりだったが、知らないことも多く、彼はノートにつたない字と絵で好奇心を書き詰めていった。
小学校に通いだしてずいぶん経ったある日、父親が厚手の漫画本を何冊も買い込んで帰って来た。
父親は「お父さんの友達が技術者をやっていた、お前のことを話したら是非にとこの漫画を薦めてくれたんだ」そう言って何冊も本をマサカツに手渡した。
表紙には「まんがでサイエンス」と大きく書かれていて、男の子と女の子が楽しそうに表紙を跳ねていた。
彼は漫画で得られる知識などたかが知れているとあまり興味をひかれなかった。
漫画本はそのまま一週間ほどマサカツの部屋に積み上げられていたが、彼が本を片付けようとしていた時に漫画のサブタイトルが目に入った。
「ロケットの作り方教えます」
マサカツはロケットなど、頭の良い大人たちが何人も集まってようやく作れるものだと思っていたので、大いに驚き、また強く心を惹かれ、漫画のページをめくっていった。




