新年度番外編 サクラとセイシュとタウエ②
ジャパンに花見に来た黄昏パーティー一行は、中ぶりの桜を前に敷布を引いて車座になった。
「さて折り詰めはいきわたったし酒はぐい飲みを浸したね、では乾杯!!」
マサカツの音頭で全員がぐい飲みを掲げた。
「ん・・・水のようだけれど甘くてなにかピシャッとした後口があるわね」
「うん、やはり現代日本と違い薄い清酒だな」
「セイシュ?この酒の名前かい?」
ヴィーシャは酒の飲み口に感想を言い、マサカツも同じように感想を述べると、ヤヒスが疑問符を投げかけた。
「そうさ、僕のいた世界では日本酒と呼ばれていたけれど、ここは日本ではないから正式名称で清酒と呼ぼう」
「折り詰めは見事なものだな、これもこれも花びらの形に丁寧に細工がしてある、食してもほんのりした味でセイシュの味わいとうまく合わさっておる、これは美味い・・・」
「うんうん、この緑色の植物もじんわりと苦みがありセイシュとよく合う、ふむ・・・この小魚の揚げたものは酒にもコメにも合うな」
リャヒとフィスは折り詰めに夢中である
「あっ、サクラの花びらが器に落ちて浮いてます・・・何か感じたことの無い気分です」
「そう言うのは多分、風流と言うんだろうな透き通ったようなえもいわれぬ表せない美しい感情とでも言うのか・・・」
そのような中でヴィーシャは目の前にあるサクラと、それがさやさやと揺れる様子に見入っていた。
「ヴィーシャはどうしたの?」
パムの声掛けにヴィーシャが答える。
「美しい・・・と思っていたのよ、ソヴィルバーレの花も美しいけれどもこのサクラは特別だわ、ねぇマサカツ私気に入ったわ、一度ホームに帰ってまた来るのもいいかしら」
「ん、残念だけどこの景色はあと2-3日で見られなくなってしまうんだ、花が散ってしまうんだね」
「そんなに短いの!?」
「そうさ、そのはかなさがサクラの魅力でもあるんだ、パっと咲いて静かに散る」
ヴィーシャとマサカツの会話を聞いていた全員がサクラの花を見上げた。
食事が終わった後も周囲の人たちも黄昏パーティーも帰らずにそのままいた、夕暮れに染まるサクラと薄明りに花びらを散らすサクラは、昼間とはまた違い幻想的なものであった。
それぞれ口数少なく帰り道につき、そのまま適当な宿に入った。
「それにしても美しかったわ・・・セイシュもそう、ミードやエールではあのサクラの萌ゆる空気を邪魔してしまうわ、セイシュだからあの気分を得られるんだわ」
「ん、僕のいた世界の花見はエールも何もごちゃ混ぜで花見をするけど、これが本来の姿かもしれないね」
ヴィーシャの言葉にマサカツは、はたと気付いたと言うような顔をして答えた。
「セイシュって言うお酒は何から作られるの?エールは麦でミードはハチミツだろう?セイシュの原料はなんだい?」
「ん?ああ、コメだよ」
「コメ!?コメから酒を・・・でもミードもエールも仕組みのことは俺も良く知らないな、しかしそれなら折り詰めのツマミがセイシュに合うのは納得できる」
ヤヒスの言葉にマサカツは説明をしている。
「そうですね・・・書物の中では同じ土地から取れた作物どうしが料理として一番合うのではないかと言う内容を読んだことがあります」
「そう、植物は同じ季節、土地、に生える物が一番相性がいいと教わる」
ミードリとパムはなんだか難しそうな話をしている。
「仲間同士で作業した方が効率がいいみたいなモンかのう」
「ふむ・・・我が国にもそう言った相性のいい作物を取り入れ・・・うむ・・・今まで作付けしていた物も見直すべきなのか」
フィスとリャヒはそれぞれ自分なりに考えに折り合いをつけているようである。
「ふーん・・・早い所ならもう田植えをしている所が見られるかもしれないな・・・見てみたいな」
「タウエ?何だいそりゃ?」
「ああ、麦の種まきみたいなもので、コメの苗を植えることを田植えと言うんだよ」
「コメの苗!!そりゃ俄然興味があるね!!」
マサカツとヤヒスは田植えのことで盛り上がっている。
「また農家の血が騒いでいるわね」
「これは明日はタウエ?を見に行くことになりそうですね」
ミードリが柔和な顔をした。




