新年度番外編 サクラとセイシュとタウエ①
「そろそろかな..日本ではテレビで情報が流れるけれど、ここでは気温で判断するしかないな」
マサカツは温度計を見ながら何やらつぶやいている。
「だいぶ暖かくなったけど、何か気になることでもあるのかい?」
ヤヒスがマサカツの隣に来て話しかけた。
「なにね、そろそろジャパンに行く頃合いかなと思って」
マサカツの言葉にヴィーシャが言葉を投げかける。
「あなた本当にジャパンが好きね、生まれ故郷に似ているって言っていたけど望郷って感覚なの?」
「まぁそれもあるけれども、この時期は普段と違った景色が見られるんだ」
マサカツは背を伸ばし爽やかな笑顔で答えた。
「ふむ、ならば行けば良かろう、クエストも来ておらぬしのう」
フィスはソファーに寝転がりながら指先をくるくると回した。
こうしてジャパンに行く事が決定した。
いつものごとくチヌックで大空を飛んでいると、ミードリが何かに気が付いたと言うような表情で声を出す。
「枯れ野のはずなのに薄ぼんやりとした色がぽつぽつ散らばっていますね」
「ん、我も妙だと思っておった、何か樹木の様に見えるが・・・」
リャヒも地上を見下ろしながら不思議そうな表情をしている。
「・・・あ、これはもしかしてサクラ、珍しい植物だよ」
パムが声を出すとマサカツがそれに食いついた。
「さっすが、植物学をおさめているだけのことはあるね、あれはサクラと言う植物なのさ、そろそろ降りてみようか、ヤヒスたのんだよ」
「うん、チヌック降りてくれ」
「は、我が主」
一行はチヌックから降りて山野を歩いて行く。
「サクラ・・・きれいですね薄ピンク色のと白っぽいのもありますね」
「ああ、品種が違うんだ、統一されて植えられても美しいが品種を混ぜて植えるとグラデーションが映えてそれもまたいいね」
ミードリの言葉にマサカツが補足をしていく。
「うわうわ・・・うわぁ・・・すごい」
「これはすごい、図鑑に記されていた通りの美しさ」
掘り割り沿いに続く桜並木を見てヴィーシャとパムは感嘆の声をあげる。
「おぉ・・・雅だな、我が国にはあまり花が咲かぬので関心は薄かったが、これほどの物とは・・・」
「うわ!薄いピンクのシャワーだ!!」
リャヒとヤヒスはあっけにとられたような表情だ。
「うんうん、タイミングがドンピシャだな、ちょうど満開とうすく散りだしている個体が混じっているな、いや見事なサクラだ」
「なんぞそこらで飯をくうたり酒のようなものを飲んでおるが、祭でもあるのかの?」
「ああ、これは花見だよ、花を見て食べ物や酒を楽しむんだ、これがしたくてジャパンに来たんだよ」
マサカツとフィスの会話から、マサカツの目的はどうやら花見であることが分かった。
「善は急げだ食料と酒を調達するぞ!!」
マサカツは小走りで土手の上を走って行く。
「ああーもう、ジャパンのことになるとこれだから」
「良くわからないけど何か楽しいことなんだろうよ、俺たちも行こう」
ヴィーシャとヤヒスを先頭に全員がマサカツを追いかけ始めた。
「おっちゃん、何か花見専用の寿司折りみたいなのあるかい?」
マサカツは寿司屋の屋台で食い気味に話をすすめている。
「おっ、あるぜぇ、年に数日の稼ぎ時でぇ、作らないわけがねぇわ」
「じゃあそれ七人分!!」
「おっ、一家で花見とはいいこったねぇ」
「ははっまぁね」
マサカツは一行の所に戻ってくると満面の笑みで言った。
「んふふふ、花見弁当だよ、皆で食べよう」
「花を見て食べるのも良いけど何か特別なの?」
ヴィーシャがマサカツに問いかける。
「まぁやってみればわかるよ」
その後はマサカツに任せるままにして酒屋によってトックリを1本買い求め、町はずれに歩いて行った。
「マサカツよ、どこまで行くのだ、サクラはそこらにでも生えているではないか」
「なぁに、名所ってのがあるんだよ、酒屋で聞いてきたんだ」
「ふーむ、ワシは早く弁当を食いたいのう」
マサカツはリャヒとフィスの言葉に返事を返して進み、丘に登って行った。
「これこれ、ここがサクラの名所だよ、いやすごいなぁー・・・現代日本でも大量に植樹しているけどそれにも負けないぞ」
「す・・・すごい・・・」
「・・・」
ヴィーシャとミードリが見とれる先には萌ゆるように広がるサクラの大小とそれが風に舞う桜吹雪があった。
「いや、きれいだな・・・それに花見をしている人たちも和やかで楽しそうだ」
「そう、これが花見さ、さぁさ早く場所を確保して我らも花見と参ろうぞ」
「弁当じゃ弁当じゃ!!」
ヤヒスの声にマサカツが答え、フィスはそれを耳にして両手をじたばたと動かした。




