バーサーカーベアー②
「血が足りない!?町まで運んで何とかならないのか!?」
「無理、遠すぎる」
パムはそう言った後に数秒間ピクリと動かなくなったと思うと、自分の上着を勢いよく剥がし、内ポケットから何かを取りだしたが、その勢いでボタンが全てはじけ飛んだ。
「ヤヒス!!この葉をヴィーシャに結合して!!はやく!!!」
パムが似つかわしくない大声を出す。
ヤヒスは手のひら大の葉を三枚ヴィーシャの胸に叩きつけて叫んだ。
「結合!!」
ヴィーシャの身体が輝き葉が吸い込まれて行く。
「・・・パム、今できる最後がこれなんだな?」
「そう、あれはチガエシ草、人間の体液に似た成分を含んでいる、補助師の基礎は植物学、最後の手段として持たされる、だけど成功率は1割以下、でもあなたなら10に出来ると信じている」
そう聞いたヤヒスはゆらりと立ち上がるとバーサーカーベアーと戦っているフィスとリャヒを見て叫んだ。
「二人ともどけぇええええええ!!!!」
フィスとリャヒが飛びすさいだのを目にした後に叫んだ。
「加速装置!!!」
その刹那ヤヒスの身体は矢のような勢いでベアーに向かって射出され、ショートソードがバーサーカーベアーの身体を両断し、ヤヒスはそのまま森の中へと突っ込んでいった。
バーサーカーベアーの身体は塵となり魔石がその場に落ちる。
しばらく静寂がその場を支配したが、森の中からヤヒスが枝を踏む音ともに歩いて出て来た。
彼はその場に座り込みがくりと頭をたれた。
「マスター!!」
「む!どうしたヤヒス!!」
二人の声掛けにヤヒスが答える。
「加速装置は体力を大幅に持っていかれるんだ・・・奥の手みたいなものだね・・・リャヒ、悪いが背負ってくれないか」
三人がヴィーシャ達の元に戻ると、パムはヴィーシャの胸に耳を当てて鼓動を聞いている。
「心臓の音を聞いているの?」
ヤヒスが話しかけるとパムは小刻みに心臓を叩きながら言った。
「心臓の鼓動が弱いと危ない、今は平常値に戻りつつある」
「脈も正常だと思う、あとは意識を取り戻すを待つだけだね」
マサカツはそう言って立ち上がった。
「そうか・・・しかしドワーフの武具とエルフの衣服が無ければどうなっていたか・・・」
ヤヒスは安堵の声をもらす。
「ふむ、これはこの場に安静にさせるのが良いか、背負ってホームまで戻るのが良いかどうなのだ?」
リャヒの質問にマサカツが答えた。
「脈も心音も大丈夫だがここに寝かせておくと身体が冷える、大量出血すると体温が下がる、さっき触った時もまだ冷たいままだった」
「なら、すぐ行こう」
ヤヒスの一声で、ヴィーシャをマサカツが背負ってソヴィルバーレまで走って兵士に城門をあけさせた。
「おぉっどうした!?やられたのか?」
「うん、今急いでるからごめんね」
ヤヒスはリャヒの背中でそう言った。
パーティーホームに駆け込むとミードリが言った。
「暖炉を炊きましょう、その前にマット!毛布もあるだけ!!」
ミードリの指示でそれぞれが作業に入り、十数分もするとヴィーシャは毛布に巻かれ、部屋が暖かくなってきた。
他の者はダイニングで茶を飲んで時折ヴィーシャのことを見ては足を組み替えたりしている。
「うぅっ・・・あ、あ・・・」
しばらくするとヴィーシャが声をもらした。
「ふぅ、寝ているだけで意識はあるみたいだけど、反応があってよかった」
ヤヒスはそうこぼしながらヴィーシャのことを見ている。
「あ、あああ」
しばらくしてヴィーシャが声をあげた。
「やはりつらいのかのう」
「うむ、無理もない」
「見ているしかできないのは歯がゆいなぁ・・・」
フィスの言葉にリャヒが続き、ヤヒスは目を細めながらつぶやいた」
「あっあー・・・あっついのよ!!!もう麦秋過ぎているのになんで暖炉を焚いているのよ!!」
ヴィーシャはがばりと起き上がったかと思うと叫んだ。
「はぁー・・・よかった」
ヤヒスは頬をテーブルに押し当てた。




