293 バーサーカーベアー①
「また勇者パーティークエストがたまっているわね・・・」
ヴィーシャは封筒の束を掴んで肩を落としている。
「とりあえず全て確認していきましょう」
ミードリの提案で全員が内容を確認していく。
クエストで指定された地域の近い順から分けていくと、ソヴィルバーレに続く踏み跡を進んですぐの森に、バーサーカーベアーが出現するのでこれを排除せよとの内容があった。
「バーサーカー・・・えらくおっかない熊ってことかな」
「バーサーカーベアーはその名の通り傷を受けてもひるまず死ぬまで突進してくる特性を持っていますね、あとなにか・・・思い出せないですが何かあったような・・・」
ヤヒスの問いに答えたミードリは記憶を探るように額に手をあてている。
「ふむ、近場であるからすぐ行くことが出来よう、それにソヴィルバーレに近いとあらば困っておる人々もあろう、このベアーの討伐をしてはどうか?」
リャヒはヴィーシャから用紙を受け取りながらそう言った。
すぐさまパーティーホームを出た一行は門の所に来ると、兵士に声をかけられた。
「ここは閉鎖中だよ、えらく凶暴なクマが出るってんで、勇者パーティーの討伐待ちだぜ」
「私たちがその勇者パーティーよ」
ヴィーシャが兵士に言葉を返すと彼はため息をついた。
「やっと来たのか、待ちくたびれたぜ」
「悪かったわ、ちょっとしたトラブルで遠くまで行く羽目になっていたのよ」
ヴィーシャがそう言って手のひらを出して謝罪のポーズをしているうちに、もう一人の兵士が門の横にある鉄の扉を開けた。
街道からそれた山沿いの開けた場所を進んで行くと、大木に何かでえぐられたような跡がいくつか見られた。
「あれ、何だろう?木がめくれてるよ」
「マスターよ、あれは魔物の痕跡じゃ、匂いもプンプンする、これはバーサーカーとか言うクマの仕業だろうよ」
ヤヒスの疑問にフィスが答えたが、彼女の目つきは鋭いそれに変化していた。
「そうだね、クマは自分の縄張りを主張するためにああしてマーキングするのさ」
マサカツがそう言い終わるか終わらないかのうちに、巨大なクマがのそりと現れ、咆哮をあげたかと思うと、パーティー一団に向かって突進していた。
「速攻!」
ヴィーシャはすぐさま反応して大剣を抜き、ベアーに斬りかかり、袈裟懸けに打撃を滑らせ、これで動きを止められると全員が思っていたところに、ヴィーシャの身体が弾かれ、地面を横たわり、一行のそばに転がって来た。
時が止まったかと思われたすぐさま、ミードリが火炎魔法をバーサーカーベアーに放った。
「パム!ヒールを!!あの魔物は物理反射のスキル持ちです!!私としたことが失念を!!」
パムははじかれたようにヴィーシャの身体をひっくり返すと、ドワーフの堅牢なアーマーと強靭なエルフの衣服が大破し、袈裟懸けに傷が走っており、血液がじわじわと流れ出していた。
「ヒール!!」
パムはヒールを幾重にもかけている。
「傷が塞がりにくい・・・血液もほとんど戻らない・・・」
パムは厳しい顔で傷口に手をやっている。
「剥離!!物理反射!!」
ようやくスキルの有効範囲にまで近づいたヤヒスがベアーの爪を寸で避けながら剥離スキルをかけた。
「マサカツーーー!!」
「おう!毒の矢!!」
ヤヒスが身をひるがえして一団に戻ろうとした時に、マサカツの矢がベアーの目と口にめり込んだ。
「ヴィーシャは!!」
滑り込んできたヤヒスが叫ぶとパムが返事をする。
「まずい、維持して数十秒」
「結合!!!」
パムの言葉を待たずしてヤヒスはヴィーシャの身体に結合のスキルを走らせる。
傷口は水面を打つ波のようにしなやかに閉じていった。
「ハッハッ・・・これで良いのか!?」
「だめ、血液が足りない」
「スタンの矢!!そうか!傷が塞がっても!!輸血なんてどうすりゃ良いんだ!!」
マサカツは苦い顔をして叫んだ。




