双剣のユミル
マサリらがラングルを抜けた一日後。
ユミルは双剣を両腰に捧げカインが待っている軍議室に向かっている。
今日はやけに行き交う政官達が慌ただしい。
何かあったのか。
ただならぬ空気を感じる。
慌ただしく回廊を走る政官達を尻目にユミルは落ち着いた物腰で軍議室の戸を恐る恐る叩いた。
「入れ」
扉の向こう側で低く威圧的な声がした。
「失礼致します」
扉をゆっくりと開くと一礼し中に入った。
四獣の総大将達が軍議を行うこのだだっ広い軍議室の中央にカインは足を組み座している。
その傍らには蒼い髪をした仮面の女。
ユミルはこの不気味な女がカインとどういう関係なのかよく分からない。
妻のようそうでない。
噂によればジンであるとか。
カインの従者となって一年であるがその真意は分からない。
「そう固くなるな」
「は、はい」
カインを前にするとどうしても緊張し固くなってしまう。
「何故呼ばれたか分からぬそういう顔をしているな」
見抜かれている。
カインと今思えば二人きりで面と向かって話した事はなかった。
彼は寡黙であるし多くを語らない。
戦の場合でもカインの横に馬を並べているだけで特に対した指示も飛んでこない。
戦は見て覚えろそう伝えようとしているのかと思ったりもしたが何だか違うような気もする。
従者と言っても彼の身の回りの世話をしているだけのような気がする。
自分以外でも務まりそうなものである。
なのに、どうして自分なのか。
「まずお前に伝えとかなければならない事がある」
「はい」
「昨晩。黎王様が崩御された」
電撃が走る。
「れ、黎王様がですか」
容態は良くはないと聞いてはいたが…
それでか。
政官達が慌ただしかったのは。
「うむ。正式な発表は今日行われる予定だ」
黎王が崩御したとなると
次の王がすでに内々には決まっているはずだ。
順当行けば第二皇子のウラオス殿下であるが。
その心中をユミルの心中を察しするようにカインが話す。
「シャオラン殿下が次の黎王として即位される」
「シャオラン殿下がですか?」
軍議室にユミルの甲高い声が反響する。
予想外の事に声がうわずり大きな声を発してしまった事を一礼し謝罪する。
「申し訳有りません」
シャオラン殿下が…王に。
優先度の低いシャオラン殿下が王に即位するとは。
宮殿内の有力者の予想では、ウラオス皇子が次期黎王と予想されていた。
頭も切れ武人としての心得もあり軍の有力の後押しもある。
だが、その予想は覆された。
「ウラオス皇子はどうなされたのですか?」
いらぬ質問かと思ったが聞かずにはいられない。
「昨晩から姿が見当たらない」
カインは無表情で言い放つ。
ユミルは理解した。
ウラオス殿下は暗殺された。
証拠を残す事なく。
彼に消えて欲しいと望む者。
それは言わなくとも分かる。
カインはそれ以上その事には触れなかった。
目で察しろと問いかけているようでもある。
王族同士の骨肉の争いは、かの昔からよくある事だが。
「明日、シャオラン王の即位式が民衆の前で行われる予定だ」
「はい」
「と共に私は朱雀隊総大将の任を解かれた」
「え?」
カインの口から思わぬ爆弾発言が飛び出した。
「ど、どういう事ですか?将軍が総大将の任を解かれたとは」
カインは顔色一つ変える事なくユミルを蒼色の瞳で捉えて離さない。
「焦るな。私はシャオラン王のラタトスクとなる」
「ラ、ラタトスク!?」
再びユミルの甲高い声が辺りに響き渡り、ユミルは慌てて謝罪の言葉を述べた。
「失礼しました!あ、あの…将軍この度はおめでとうございます」
何と言えばいいか分からなかった。
ラタトスクと言えば王に認められし最強の武人という事だ。
武人にとって至高の称号である。
はずなのに、カインの表情からは少しも喜びという感情が伺えない。
「朱雀隊総大将には副官のサイフォンについてもらう。奴にはそれなりの器量がある」
「サイフォン殿ですか。それはいい。サイフォン殿なら朱雀隊総大将という地位にふさわしいお方だと思います」
カインの副官であるサイフォンには、何度か剣の稽古をつけてもらった事がある。
100対100の騎馬による模擬戦においても一対一の立ち合いにおいても一度たりとも勝つ事が出来なかった。
兵の動かし方も巧みである。騎馬戦においてはまるで幻影を相手にしているかの如く速く駆け変幻の戦をし、一対一の立ち合いにおいては剣を交える前に気の押し合いで負ける。
剣においてこれほどまでに圧倒的に敗北したのは2歳上の兄と対峙して以来である。
サイフォンは、「俺はいずれお前に負けるよ」
と冗談まじりにいつも言う。
ユミルの腕をかってくれてはいるようだが今の所、天と地ほどの差があるのは歴然としている。
「そしてユミル。お前には朱雀隊を離れてもらう」
「え?」
世界が暗転する。
朱雀隊を離れる?
除隊命令という事か。
僕が何をした。
確かにまともな働きなど出来ていないが。
朱雀隊に配属されてした事といえば、カインの馬の世話や彼の横での戦観戦また身の周りの世話などだけである。
除隊されても仕方ないそう思った矢先である。
「お前は朱雀隊を離れ今まで同様、私の従者になってもらう」
「え?」
暗転した世界が再び形を取り戻す。
「お前には朱雀隊としてではなく私の従者として独自に動いてもらいたい」
ラタトスクの従者?
除隊処分どころか大きな飛躍だ。
話しがあまりにも膨らみすぎて心の整理がつかない。
「その方が都合もつくし動きやすい、拒否権はない。まず、お前にやってもらいたい事がある」
「は、はい」
「この国を脱したタルマ・ユジン。キジュ・マサリを追ってもらいたい」
「キジュ・マサリ」
その名を聞いた瞬間、胸にしまい込んでいた憎悪の炎が燃え上がる。
ユミルの穏やかな表情が一変し鬼のような表情になる。
「キジュ・マサリを知っているのか」
「兄の友です」
声が自然と低くなる。
カインはそれを聞くと初めて口元を緩めた。
「ユナ・アルカのか」
名を聞いた途端、ユミルの憎悪の炎が膨れ上がる。
(殺す…殺してやる)
「これはなんという偶然」
カインは無くした左腕を愛おしそうに見つめる。
兄のユナ・アルカはユナ家を壊滅させた張本人である。
★
一年前のある日
カインは訓練学校を視察に来ていた。
何年かに一度、王都ラングルにある訓練学校に顔を出す事がある。
訓練生は言わば、兵士の卵で入学試験はそれなりに厳しく、剣術、槍術、兵法などの試験が設けられており、多くの公募の中から試験を通してふるいにかけられる。
毎年、200人の枠に対して20倍近くの公募がくる。
故に無事、訓練学校の門をくぐる事が出来た生徒は皆、人並み以上の才能を有している。
そんな中でも、何年かに一度、異彩を放つ生徒が現れる事がある。
何年か前に一度、訓練学校に訪れた際に一人凄まじい光りを放つ生徒がいた。
それがサイフォンである。
当時、17歳で訓練学校、卒業間近であったサイフォンをカインはすぐさま引き抜いた。
出逢いとは時の運である。
今、何年かぶりにこうして訓練学校に歩を進めているという事は、時の運が働きかけているかもしれない。
訓練学校の巨大な石造りのアーチ状の門をくぐると木造造りの広大な敷地を持つ訓練学校の本舎が見えた。
門の前で待っていた案内役の教官の後に続き校舎内を回る。
広大な敷地で剣を振るう生徒達。
朱雀隊総大将が視察に来ている事もあり、生徒達にも熱がはいる。
彼らが目指すは四獣の入隊。
四獣のいずれかの隊に入隊する事が出来れば、その給料は黎管轄の軍の兵がもらえる給料より倍以上になる。
故郷の村の人間に大手を振って帰郷する事が出来る。
しかし、その夢を掴む事が出来るのはこの訓練学校の中でもほんの一握り。
だからこそ今この機を逃さまいと生徒達はカインに見せつけるかのように訓練用の剣を振り回す。
生徒達の熱い視線を感じるが、ここには異彩を放っているものはいない。
皆、凡人の持つ気である。
無くした左腕を見る度にナラシンハの地で対峙したユナ・アルカという少年を思い出す。
あの少年の気…
オリジンとしてカインを越える器。
本人はオリジンの力に気づいていなかったようだが。
剣術、体術においても神に与えられし才覚を感じた。
対峙した時のあの肌が粟立つ感覚。
そう感じられるものじゃない。
間違いなくあの時、彼との死合いにおいて死を背後に感じていた。
恨みはない。
ただもう一度あの少年と殺し合いたい。
彼との戦いを心の底から渇望しているのだ。
彼は生きている。
何処かで。
必ずまた剣を交える事になる。
オリジンとして
武人として
やはり、彼のような才覚を有する若者はいないか。
おおよその視察がすみ、今回は時の運は働かなかったと思ったその時である。
最後の視察場所である野外で生徒達が模擬戦を行っている少し開けた敷地に辿りついた時である。
何十人かが訓練用の木製の剣を手に一人の少年を囲んでいる。
「裏切り者の弟め!ここからささっと失せろ」
「そうだ!売国者の弟め。消えてなくなれ」
罵る声が取り囲まれている少年に降り注ぐ。
「僕は兄さんとは違う」
少年は叫ぶように言った。
「嘘つくな。お前の父親も売国者だ」
「聞いたぞ。お前の父親は黎軍の剣術師範から解雇され自殺したんだってな」
「兄の事は愚弄して構わない!僕だって憎くて憎くて仕方ない。あいつのせいで父さんと母さんは…父さんは売国者なんかじゃない!父さんを愚弄するな」
「偉そうに何言ってんだ裏切り者が!こいつ殺っちまおうぜ。稽古中の事故って事にすればいい。教官だって売国者の弟となれば何も言わないよ」
「あいつら」
遠くでカインとその様子を見ている教官が止めに入ろうとするのをカインが手で制した。
何故、そうしたかは分からない。
ただ、様子を見ようと思っただけだ。
「あの者は」
カインは取り囲まれている少年を指した。
「お見苦しいものを…あの者には問題がありまして」
「問題?」
「はい。彼というより彼の兄なのですが」
教官が言ってもいいものかと口をもごつかせる。
「申せ」
カインが斬るように言い放つ。
「は、はい!その一年前のナラシンハ侵攻の際の戦に謀叛を起こしたものがいまして…それがあの者の兄にあたるのですが更に申し上げにくい事にその者は朱雀隊所属でして」
「あ、あの将軍?」
教官が怯える子供のように返事のないカインの顔色を伺う。
カインの背筋に電撃が走る。
鼓動が高鳴り、口元が緩む。
「あの者名は?」
カインは急かすように言い放つ。
「あの者の名ですか…」
「早く申せ!」
「は、はい。彼の名は」
鼓動が更に高鳴り、心臓が口から飛び出してしまいそうである。
笑みを抑えきれない自分がいる。
「ユナ・ユミルです」
ユミルは木製の剣を二つ手にすると構えた。
その瞳は怒りに燃えている。
(見せてもらおう)
風が吹く。
風が止んだと同時に3人の生徒が一斉に剣を振り上げユミルに襲いかかる。
しかし、ユミルは3人から振り下ろされる連撃を縫うように躱し、一人に顔面に舞うよな回転蹴りをお見舞いするとその反動で目に止まらぬ連続蹴りで新たに打ち据え飛び上がり残る生徒の顔を膝ではさみこみそのまま生徒もろごと後転し地面に生徒の顔を叩きつける。
泡を吹き白目を剝き天を仰ぐ生徒を意に返さずユミルは剣を構えた。
「たいした体術だ」
ユミルの身のこなしを見て思わず声が洩れた。
残るは7人。
さあ、どうする?
ユミルと対峙する生徒達は彼の体術を目の当たりにして尻込みしている。
「こいつ…」
ユミルは、双剣を巧みに手で合わしてみせ挑発するように足は軽やかなステップを踏んでいる。
「来い」
ユミルがそう言い放つと生徒達は怒声を上げ、ユミルに一斉に斬り掛かる。
ユミルは高く兎のように跳ねるように跳躍すると、身体をひと捻りさせ空を見上げる生徒達の背後に降り立つと生徒達の円の中に飛びこんだ。
乱舞である。
二振りの剣を凄まじい速さで回しながら生徒達が剣を振り下ろすよりも早く舞うように1人、2人、3人と打ち据える。
足技と剣術を巧み織り交ぜている。
珍しい型である。
残りの生徒達も華麗な足技と舞うような剣捌きで打ち据えた。
天稟を有している事は間違いなかった。
そして、時の運が動いた。
カインは拍手を送りながら彼の元へと歩み寄った。
眼下には、痙攣を起こし倒れている者、呻き声をあげる者、なかには口から泡を吹いている者が見える。
「貴方は誰ですか?」
疑いの眼差しをカインにユミルは向ける。
呼吸一つ乱れていない。
「こら!ユナその態度は何だ。この方を誰と心得る」
教官がユミルの物言いに割って入る。
「誰であろうと僕には関係ありませんよ。貴方も僕を罵りたいんでしょ」
ユミルの漆黒の瞳の奥に憎しみの炎が宿っている。
この世の全てを憎んでいる。
そう言いたげな眼差しである。
「この方は朱雀隊総大将カイン・ジュリス殿であるぞ」
「総大将殿…」
カインの名を聞き一瞬たじろいたように見えたが、すぐに平静を装った。
「お偉いさんがこんな所に何の用で?」
「お前!」
ユミルの生意気な言葉遣いに叱りつけようとした教官を手で制する。
「よい」
「ジュリス将軍は視察でこられた」
「視察って…こんな所に視察に来た所で何もないですよ。僕にはあまり関係のない話なので僕はこれで」
ユミルは訓練用の剣を地に捨て一礼するとその場から歩み去ろうと踵を返した。
「兄が憎いか」
カインの言葉に目を丸くしユミルが振り向く。
「兄の事を知っているんですか?」
カインは静かに頷いた。
「どうしてジュリス将軍が兄いや、アルカの事を」
「ナラシンハ侵攻の際、軍を指揮していたのはこの私だ」
「そうか…分かりました。将軍は私を処罰しにこられたのですね。いいですよ。
もう裏切り者と罵られるのも疲れた」
ユミルはまだ年端もいかない少年であるがその瞳は世界の有り様に絶望している。
「この左腕を見ろ」
カインは肘から先がない左腕を身長の低いユミルに合わせるように屈んで見せた。
ユミルは無くした腕を戸惑うように見つめている。
「私の腕を斬り落としたのは貴様の兄だ」
「えっ!」
驚愕するユミルを尻目にカインは話を続けた。
「恨んではいない。むしろ感謝している。あれほど血の滾る死合いしたのは初めてだった。今でも思い出すと血がざわつく。あれほどの死合いが出来たのだ…腕の一本ぐらいその代償としては安いぐらいだ」
「ジュリス将軍の腕を兄が?」
「お前の兄は死んでいないぞ。お前の兄は今も何処かで生きている。感じるのだ…この無くした左腕が奴の息吹を感じている。お前は兄が憎いか?」
その質問にユミルの瞳の奥に潜む憎しみの炎が一気に燃え上がる。
「兄のせいで父は軍の剣術師範の任を解かれ、裏切り者の父親という汚名を着せられたあげくその命を自ら絶ちました。母は、父の死がきっかけで心を病み床に伏せる毎日を送っています。僕は仲のよかった友達から裏切り者の弟と煙たがれるようになりました。兄は僕の全てをぶち壊した。父も母も友も僕の手から奪い去った。兄がどうして離叛者となったか知らない。どんな理由があっても兄が僕の大事なものを奪い去ったのは事実。絶対に許しやしない」
ユミルの小さな身体が小刻みに震え、握りしめる手からは血が滴り落ちている。
「殺したい程に憎いか?」
「この手で奴の息の根を止めてやりたい」
「実の兄だぞ」
「関係ない」
「なら私の元に来い」
「え?」
「今のお前では兄にはどう足掻いても勝てん。兄を殺したいほど憎いのならその術を学べ。私の元ならその術が学べる」
カインは右手をさっと差し出した。
ユミルはあまりの急な展開に戸惑っている。
「来い。力を望むならな」
「貴方の元へ行けば兄を越える事が出来るんですか?」
まっすぐな瞳がカインを捉える。
「ああ。約束しよう」
カインが優しい笑みを浮かべる。
彼の手にユミルの血に染まった手が重ねられた。
★
ユミルは、カインには感謝していた。
彼を引き取った後、床に伏せるユミルの母に援助金を工面してくれさらには、黎で一番設備の整った病院で治療を受けさてくれている。
この恩義忘れる事はない。
「ユミル、二人を追え。奴等の行動はおおよそ推測出来ている」
「はい」
「殺してもかまわん」
キジュ・マサリ。
兄から名は聞いた事はあったが実際に対面した事はない。
史上最年少で星官になったとか。
優秀なのであろう。
しかし、所詮あの馬鹿な兄の友である。
その中身は、兄同様欠落しているに違いない。
だが、不安要素はある。
タルマ・ユジンの事である。
前黎王のラタトスクだ。
老いても黎の伝説的な英雄である。
未だ17歳であるユミルにもその神格化した武勇伝は祖父からそして父から幾度も聞かされている。
その英雄がどうして追われる身となったのか?
ユミルの疑問を察知したのかカインが言う。
「奴はシャオラン王が即位した際に、弟子のキジュ・マサリと共にシャオラン王に刃を向けた。王にふさわしいのはユーリン殿下とほざいてな。同時にウラオス殿下の行方が昨晩から分からない」
カインは、考え込むように髭の生えていない顎先を撫でる。
「まさかタルマ殿がウラオス殿下を…」
「うむ。推測であるがユーリン殿下もこの件に関わっていると見える。
そうなればシャオラン殿下が王となった今、これは立派な国家反逆罪になる」
確かに話の筋は通っている。
王の座を欲しユーリン殿下が、タルマにウラオス殿下を消すように促した。
「反逆者…」
「老いぼれが…ユーリン殿下を手を組み、この黎を手に入れようとした。強欲な爺だ。最早、生かせてはおけぬ」
「それなりの兵は与える。追ってくれるか?」
「はい」
ユミルの返事に満足げにカインが僅かに口元を緩める。
「今日の明晩発て。長い旅路になる準備は怠るな」
ユミルは静かに頷く。
キジュ・マサリ。
兄の友…
これで兄の友を始末できる大義名分が出来た。
今何処で何をしているか知る由もないが兄よ。
大事なものを奪われる苦しみを貴様も味わえ。
★
ユミルが部屋を後にした軍議室でカインは深く息を吐いた。
ロキがカインの疲れを癒すかのように彼の背を優しく撫ぜる。
「どうしてあの者に追わせるのですか?確かにあの少年は強い。ですが、あのタルマとまともにやり合えるとは到底思えません」
ロキの撫でるような優しい声色が耳に優しくすっと入ってくる。
「私とてタルマと対等にやり合えるとは思っていない」
「なら、どうして?」
「奴が私とユナ・アルカを再び巡り会わせてくれるそのような気がする。勘でしかないがな。それに奴を早い段階で強者とぶつける必要がある」
「それは彼が実験体だからですか?」
「そうだ。それ以上でもそれ以下ででもない」
「オリジンの兄を持つ彼ならば可能性があるとお考えなのですね」
「ああ。だからこそ奴には一刻も早く力をつけてもらわなければならん。器の力に
耐えうる為にもな」




