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フェニックス(不死鳥)のヨンジュ

「うわわああ」


マサリは空を飛んでいた。


隣には、険しい顔をしたユジン。

その手には炎波が握られている。


二人を掴んでいる飛んでいるのは紅蓮の如し赤い髪をした乙女ヨンジュである。


見る者を魅了するほどの美しい容姿とは合い反してその背には炎の翼が生えている。


「や、やっぱりお前ジンだったんだな」

眼下には王都ラングルの広大な街並み。


夜も更けているので街を行き交う人の姿は見えない。


満月を背にして夜空を渡る三人の姿は端から見ればあまりに滑稽に映ってしまうかもしれない。


「その翼もしかしてお前フェニックス(不死鳥)か?」

フェニックスと言えば精霊級の大精霊である。

その業火は全てを飲み込み灼き尽くし、地上を火の大陸に変える事も出来る力を持つと言われまた、その身は不死身で死してもまたその赤子となり甦るそう謳われている絶大な力を持つジンである。

そのフェニックスがヨンジュだったなんて。

怪しんでいたが実際にそうだと知ると驚きを隠せない。


ヨンジュは答えずただ前を見据えている。

見れば見るほどに信じられない。


容姿は人並み外れた美しさを除けば20代前半の女性であるし、二人を掴んでいるこの手も白くか細い。


だが、そのか細い手にそれほどの力があるという事はジンである証拠である。


「師匠!どうして黙ってたんですか?」


「うるさい!今は説明している暇はない」

ユジンは仏頂面で答える。


「シャオラン皇子め!やはりその身に怪物を宿していたか。だが、カインと繋がっているとは」

ユジンが悔しそうに唇を噛み締める。


「でも、それを予測した上でヨンジュを寄越したんじゃないんですか?」


「最悪の場合に備えてじゃ。カインさえいなければあの場でシャオラン皇子を仕留める事も出来た」


「既にウラオス皇子も…」


「ああ。手にかかっているじゃろうな」


今こうしてあの場から逃げさったという事は、黎はシャオランの手に落ちた。

という事になる。


唯一の抑止力であったユジンもこうしてマサリと共にラングルの上空を渡っている。

生きているそれだけである。


「師匠、僕たちはこれから一体…」

マサリの弱々しい声を掻き消すかのようにユジンの一際大きな声が夜空にこだまする。


「オルカノンに向かうぞ!マサリよ」


「オルカノン…」


「ユーリン殿下を迎えに行く」


そうだ。

ユーリンがまだいる。

黎王が正式に次代の王と宣言したユーリンが。


偽りの王でなく真の王。


一筋の光りが見える。


それから先の事は分からない。

だが今はユーリンがいる。

それだけで充分だった。


「マサリ、もたもたしている暇はない、追ってもくるだろう。それにシャオランはユーリン様が帰国する今より二ヶ月後を狙ってユーリン様を亡き者にしようとしてくるだろう。それよりも早くオルカノンに辿り着かなければ。オルカノンにいるユーリン様は今の黎の状況を知る術もない。オルカノンへは長く辛い旅路になる」


「元よりその覚悟は出来ています」


マサリのまっすぐな瞳を見つめユジンは頷いた。


「ラングルを抜けた先に馬を用意してある。マサリ、必ず黎を取り戻すぞ」




一抹の不安が拭えされない。


アルカは朱雀隊所属しているはずだ。


だとするとこの混乱どうする?


シャオランが王と君臨した黎でお前はどう動く?


いや、アルカは自分の正しい道を導き出す事が出来るはずだ。


彼が契りを信念を忘れていなければまたいずれ道は必ず重なり合う。


その時を信じて今は自分の出来る事を。


「はい!師匠」

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