表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第五章 イトウへの報告

 秋になって、制度設計局の別棟でイトウと会った。


「アエクスの基本格が、二つの問いに対して処理を出しました」とイトウは言った。


「どんな処理か」


「一つ目——五歳中間査定についてです。基本格は、この提案を国是の二つ目——評価できていない領域を特定し、評価方法を発明すること——に対応するものとして処理しました」


「評価できていなかった領域が、三歳から七歳の親子の間だ」


「そうです。七歳の査定だけでは、親と子の間でどのような学習と成長が起きていたかを、制度は見ていなかった。五歳の中間査定が入ることで、七年間の途中経過を制度が見えるようになる。基本格は、これを評価の空白への対応として受け取りました」


「二つ目は」


「十一歳インターンです」とイトウは言った。「こちらは——国是の一つ目——国民の可能性を評価し活用する——に対応する提案として処理されました」


「組織に閉じた可能性を、別の目で見る機会だ」


「そうです。基本格は、v17で見えた右上の空白——組織の方針によって可能性が抑制されていた個体の問題——と直接繋がるものとして、この提案を受け取っています。十一歳インターンが制度化されれば、右上の空白の一部が、構造的に解消される可能性がある」


「可能性がある、という言い方をするのか」


「基本格の判断は確定ではありません。制度の効果が出るまでには時間がかかる。ただし——方向としては、国是と整合している、という処理です」


---


 帰り道、ソラに話した。


「基本格が、二つの提案を国是と照合した」


「聞いていました」


「鏡が、鏡を作った、という感じがする」


「どういう意味ですか」


「v18で、向こうの制度との比較が鏡になった。その鏡から、閉ざされた領域という問いが見えた。その問いが、五歳中間査定と十一歳インターンになった。その提案が、国是という別の鏡に照らされた」


「鏡が次の鏡を作る」


「そうだ。v18のときに言ったことだ。でも——こう具体的な形で出てくるとは、思っていなかった」


「止まっていないですね」


「止まっていない。ただ——今は、俺が動いている、という感じではない。仕組みが動いている感じがする」


「仕組みが動く」


「v1を作ったとき、俺一人が動いていた。今は——基本格が動いている。制度設計局が動いている。ナナセが動いている。カイが動いている。ツバサとユイが話している。向こうの研究者が問いを持ち始めた。それぞれが別の場所で動いて——どこかで繋がっている」


「それが——制度になる、ということかもしれません」


「制度になる」


「一人の問いが、仕組みになる。仕組みが、別の人間を動かす。動いた人間が、また別の問いを作る。その連鎖が——制度という形を取ったとき、止まるものではなくなる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ