Dating story 零編
連続3話で投稿します!!
私、幸村零は、所謂天才である。
自分でこういうのは普通に嫌だが、自分の説明をしろと言われたらこれ位しかない・・・IQは450、同学年で受ける全国考査では毎年1位、ただそれだけ、頭がいいことしか取り柄のない・・・女の子。
これはそんなつまらない私が出会った、私と同じくらいのつまらなくない天才と出会った物語である。
◇
そいつと出会ったのは今から1年と半年くらい前、地元である富士宮学園中等部に入って間もない頃、私は入学2ヶ月目にして学校に飽きてしまった。
別に友達がイジメてくる、等と言った下らないモノではなく普通に暇になった、義務教育上教育を受けないといけないのは分かっているが、中学、高校の内容では今の自分には物足りなく感じていた。
周りの生徒も小学生上がりなので真面目に授業を受けるものは少なく殆どが真面目に授業を聞いている気配はなかった。
と言って学校をさぼるわけにはいけなかったので形だけでも出るようにと事情を知った教師に言われた。
だから私は授業中は何時も別の事をしていた、難しい計算式を解いたり英語の本を読んだり、最近お世話になっている研究所のレポートを纏めたりしていた。
だが、そんな様子を良いとは思っていないクラスメイトの女子グループからある日絡まれた。
「ねぇ、幸村さんてさ、何でいっつも授業真面目に受けてないの?」
「・・・・。」
「あれれれ~無視なんてひっど~い!何か言ってよ~」
「・・・・。」
このまま絡まれると面倒くさいので立ち去ろうとすると、肩をガっと掴まれた。
「あんまり調子に乗らないでね。ちょっと頭が良いってだけで自分は上みたいな顔してんじゃないわよ、おちびちゃん。」
身長の事を言われたのは癪だったので言い返した。
「少なくとも貴方よりは頭は良い・・・。」
そう言い残し、そそくさと教室を出ていった。
と、言ってもまだ授業は残っており、あんな状況で出て行ってしまった為教室には戻りづらいので今日はサボろうと音楽室へ向かった。
音楽室は良い、比較的授業が少ない音楽の授業でしか使わない一室、確か高等部の生徒が先程使ってたからもう授業はないと記憶していたので何も警戒せず音楽室に入ろうとすると、音楽室内からピアノの音が聞こえた。
聞いたあることのある曲、ショパンの曲だったかな?と思いながら体は勝手に音楽室に入った。
そこには男子生徒が一人いた、ネクタイの色が違うから高等部の先輩だった。
演奏に集中しながら汗を垂らし、自分が入った事にすら気がつかない位集中していた。
思わず見惚れてしまった。
ここまで何かに熱中して物事を行う人間を暫く見ていなかったせいか、何故か感動を受けた。
零が音楽室に入って数分後、漸く演奏が終わり、男子生徒は汗を拭き立ち上がった。
そして、後ろにいた零を見た瞬間驚き、ビクッとなっていた。
「うわっ!ビックリした・・・って中等部の生徒か?授業はどうしたんだい?もうチャイムなってるよ」
それはこちらのセリフだった。
「僕は次の授業の英語の先生が放任チックでね、問題集を指定された範囲解き終わったら自習して良いって言われたんだけど、僕は問題集は貰った日に終わったし、今日はあいにく本の持ち合わせがなかったから保健室に行くと嘘ついてこうして勝手に無断で音楽室を貸し切って日ごろから溜まってるモノをこうやって発散してるのさ。ああ、良い子の皆は真似したり参考にしてはいけないよ」
最後の一文は誰に言っているのか解らなかったが、決して参考にしていけない先輩だと思った。
「僕は高等部1年の靫空奏多、君は?」
「中等部1年幸村零。」
名乗られたので名乗り返した。なんだろう、この人は不思議な感じがする
その後は所謂談笑に入った。
決して言葉数の多くはない零だったが珍しく多く言葉を多く語った、語りつくした
そしてあっという間に時間が経過し、奏多はスッと立ち上がった。
だが、零は体から力が抜けた、いつもの眠気が襲ってきた。
体が地面にぶつかろうとした瞬間、奏多はバッと零を受け止めた。
「っと、危ない危ない。ほらちゃんと立って。って、眠いのかい?」
軽々と自分を持ちあげ立たせた
「ありがと・・・」
「どういたしまして。」
そう言ってニコッと微笑む。
すると、音楽室の外から声が聞こえた
「誰かいるの?居るのなら出てきなさい!」
これはマズイ・・・無断で使った挙句、授業をサボっているのだ、面倒くさいことになる
「こっち!早く!」
と腕を引っ張られると目の前が真っ暗になった。
そう、現在私と先輩男子は音楽室の掃除道具入れに居るのだ。
音楽室の掃除道具入れは普通のロッカー形式ではなく、小さな物置の様な作りだった。
だが、道具は入っているので体を密着して入らないといけない、そう、今私はたった数十分前に出会った男と0㎝の距離にいた。
先ほどまで汗をかいていたのにフローラルないいにおいがする・・・
それと同時に音楽室の扉が開く音が聞こえた
「おっかしいわね、確かに声が聞こえたんだけど・・・」
きょろきょろと教師が音楽室を見渡し、誰かいないかを確認しに教室を大きくぐるっと回って自分たちのいる掃除道具いれの前に立った
そして、ガチャッと掃除道具入れが開かれ万事休す・・・かと思われたが。
奏多は零を抱きかかえ最小限に身体を縮ませながら、箒の束の中に身を懸命に潜めた。
奏多の胸に顔をくっつけているのでダイレクトに心音が伝わってくる。あと、制服が若干湿っていた
とくんとくん・・・と心音が高鳴るのが聞こえた。
「・・・誰もいない、気のせいか」
と音楽室を立ち去ったのを確認し、二人は掃除道具入れからでた。
「ふぅ・・・あ~ドキドキした!」
「助かった・・・」
もし見つかっていれば反省文逝きになっていただろう。
そして二人は顔を合わせるとたまらず笑いがこみ上げてきた
普段全く笑わないが、なんだろうすっごく楽しい。
そう、楽しかった、ドキドキした。
そんな満喫感を得て、零は音楽室を後にし教室に戻ると、教室は静まり返っていた
「あら~幸村さん、おさぼり?感心しないね~ってゆうか、サイテーよね」
楽しかったワクワクが一変、急にワクワクが消えていった。
なぜなら自分の机には今まさにカッターナイフで『死ね』『ちび』『クズ』などと私を傷つける言葉ばかり書かれていた。
「普通授業サボらないでしょ、いくら頭が良くても普通サボらないよね~もしかして、私授業何て受けなくてもテスト満点獲れるから受ける意味なんてない。みたいな~そんな事考えてるんでしょ、あ~あ~嫌々、天才様はお偉いですね~」
煽る様に言ってくる、だが反論できない、サボってしまったのは事実だ。だが、それがなんだ・・・私がお前に何をした・・・
「そんな事思ってない、それは貴方の勝手な想像」
これでもかなり怒りを抑えた・・・が、それを言った瞬間相手の表情は一変し怒鳴ってきた
「そういう、人様を見下すような態度が気に食わないって言ってるの!ねぇ、分かってる?皆あなたの事が嫌いなの!とっとと学校止めるか、来ないでくれるかな!」
何故ここまで言われなきゃいけないか分からないが、クラスの一同はその言葉に乗せられて急に帰れコールが起きた
「帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ 帰れ ・・・・・」
呪いの様に復唱され続け次第に気分も悪くなってきた
自然に涙が目にたまり、それを女子生徒は見逃さなかった
「あ!泣いてる!泣いてるよ~ダッさ~ハハハハハ」
だが、その笑いは一瞬にして消え去った
「あの~コールの最中すいません、あっ!幸村、お前ケータイ落としてたぞ、ほら」
先程の男が教室に入り幸村にケータイを渡した
皆きょとんとしていた
「嘘!?あれってあの靫空先輩?」
「高等部の!ほら入学式に案内してくれたカッコイイ先輩!」
「てか、何で幸村さんの事知ってるの?知り合い?」
と周りがざわつき始めた。
「んじゃ、またね・・・とは言えないよなぁこの状況・・・自分一応風紀委員だからさ、で?原因は何?授業サボったから?」
一同は頷く
「そっか・・・まぁサボるのはいけないことだ。」
そうだそうだと乗っかる一同
そして奏多はため息をつくと顔つきを変え教壇に立った
「馬っ鹿じゃねーの?」
再び教室はフリーズ、さっきまでの優しい朗らかな笑顔は消え、その顔には怒りが見えた。
「たかだか、一回サボっただけで学校止めろって・・・じゃあ僕は何回止めればいいんだか。言わせてもらうが幸村が一回サボった位でお前らに何の迷惑が掛かる?なぁ、誰か教えてくれ」
誰も答えない、下を俯いたまま黙っている。
「所詮、人間社会は結果が全てだ。才能と生きていくやり方が上手い奴が人生上手に生きていけるんだ。幸村はそのパターンの人間だ。生き方が上手いから生き方の下手な奴を下に見てるって思うのも仕方がない、お前らだって周りの奴が出来ないことが出来たら優越感に浸れるだろ、それと一緒だ、誰も幸村の域に行ってないからそう思うんだよ、嫉妬してるんだよ。」
「だ、だれが嫉妬なんて・・・」
と零に絡んだ女子生徒が声を上げた瞬間
「してるんだよ!お前らは!さっきコールしてた人間は!嫉妬して、自分が劣ってると思いたくなくて強がってる、それがお前らだ!」
皆がその言葉にビビる、恐れる、身がすくむ
「それと、人間は言葉という武器には弱い、どんなメンタルを持って立ってあんなに帰れ帰れと言われたりすりゃあ誰でも泣く、拳で殴った後は消えるが言葉で残った傷は残るんだ!絶対に消えない、行った側は忘れ、言われた側は苦しみ続ける、それが言葉の暴力だ!」
皆黙って聞いてるしかなかった、正しいからだ・・・
6限目のチャイムはなっているが先生も教室に入ったまま聞いていた
「しかも、それを全員で・・・今お前らは言葉というナイフでクラスメイトの心を一発づつ刺したんだぞ、それと、それに対して弱音を上げた人間を笑ったな?お前は笑ったな。そう、そこの女子」
すると、その生徒の前に立ちギロリと睨んだ。
「こういう事が原因で自殺を考える人間だって少なからずいるんだ、言葉を発するなら慎重に選べ、後悔しないように、責任を背負う覚悟でいろ。そんな覚悟を持ち合わせないで鳥みたいにピーチクパーチク喚くな、耳障りだ。あと、学校の備品を意味もなく傷つけるな、弁償してもらうぞ。」
そうして、静まり返った教室をその男は先生に頭を下げ出ていった
「・・・・。」
零もただ聞くしかなかった。
生徒たちは震えるものや、反省する顔を見せるものもいた、特に零に絡んできた女子生徒は一番深刻だった
◇
その後、クラスメイトから謝罪が次々と言われ、例の女子生徒は土下座をしてきた
一方、説教をした先輩は音楽室でサボっていたことがばれた挙句、6限目の授業を中等部で説教して遅れたという前代未聞の理由も重なり、結局反省文送りとなった。
零もサボりがバレて奏多までとはいかないが反省文を書くために別室で奏多と反省文を書いていた
「結局ばれた・・・はぁ、めんどくさい」
全部で10枚はあろう反省文をスラスラと書き続けながらため息を吐いていた、だが、一切辛そうではなかった、寧ろ嬉しそうだった。
「・・・その、ありがと」
「ん?ああ、良いよ、あれは個人的に腹が立ったから、小学生の時に妹が似たような事をされたからそれが重なっただけ。」
「・・・そっか」
それでも助けてくれたのは事実だ・・・
反省文は書き終えているが何故かこの部屋から出ていく気になれず、結局奏多が全てを書き終えるまで談笑しながら待つのだった。
結局書き終えたのは7時過ぎとなり、辺りは真っ暗になっていた。
「あちゃ~妹に怒られる・・・」
「・・・私も親が」
と校門前で立っている人影と車を確認し、2人は揃ってはぁ、と溜息を吐き少し早足で校門へ向かった。
「もう!!お兄ちゃんおっそーーーい!!校門5時集合って言ってたのに!!」
「あぁ、ごめんごめん。家帰ったらすぐご飯作るから。っと、じゃあな、幸村!」
「零でいい。」
「ん、じゃあ零!また明日!」
と手を振り妹とダッシュで走り去る奏多の背中に手を振り
「バイバイ、奏多」
と呟き、零も珍しく小走りで車まで向かうのだった
◇
それから数か月後、私は中学1年生から高校1年生にランクアップした
この世には飛び級という物が存在し都合よくこの学校は学力に沿って学年を上げれる特別制度があったため高校1年生になった。
そして、私は生徒会の会計に就任し、改めて、高校2年生のあの先輩にあった。
「・・・お前、思い切りよすぎだろ」
「・・・ありがと」
「褒めたわけではないんだが・・・まぁ、これからもよろしくな零後輩」
「よろしく奏多先輩」
二人は拳を合わせ、零は奏多の膝の上に倒れるように寝るのだった。
これが出会いの物語




