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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
62/75

LOST2ー涙

最新話投稿です。

 記憶喪失、いうなれば健忘症(けんぼう)(Amnesia)の1つである。

 原因は多々あり、精神的なモノや、奏多の様な外傷から起こるモノ、はたまた薬物性、老後からの認知症もある。

 症状は大きく分ければ全健忘、部分健忘があり、奏多は前者であり、細かく言えば全生活史健忘(Generalized Amnesia)、生後からの記憶をすべて失っている状態である。

 健忘は近代の作品にも多々題材、ネタにされており、例を上げると『大恋愛〜僕を忘れる君と』『とある魔術の禁書目録』『仮面ライダーアギト』『忘却探偵シリーズ』『Ever17 -the out of infinity-』などがある。

 現在、奏多が陥っているのは『仮面ライダーアギト』の津上翔一と酷似しており、自分が何者かが分かっていないのだ。

 ただし、彼は別に腰にオルタリングがついていたり、フライパンでテニスはしない。

 しかし、彼は忘れてしまっている、守る力を、戦い方を、己の存在意義を、約束を、決意を記憶と共に・・・

                    ◇

 少年は目を覚ます、それは無意識に起きたわけでも、目覚ましで起きたわけでもなく、()()()目が覚めたのだった。

 「ん・・・ふぁぁぁぁぁ・・・」

 気怠い身体を起こし、その悲鳴の声のする場所・・・即ち1階に降りると、何故か廊下には泡がついた液体が流れ出ていた。

 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!洗濯機から泡が!!!ど、どうしよう?止まらないよう・・・」

 洗濯機前で、必死に中から流れて溢れ出ている、液体を塞き止めようとしているが良く見ると床に大量にこぼれている粉洗剤があった、恐らく普通の使用料を軽く超えて泡が膨らんでしまったのだろう・・・

 すると、その声に駆け付けた紅葉が雑巾を持って素早く泡を拭いた。

 「ふぅ、奏殿、洗剤の淹れ過ぎでござる、ちゃんと説明書を読んで・・・」

 と言っている内に今度はキッチンから煙が上がっていた。

 「し、しまった!!魚が!!」

 と急いでキッチンに戻ると、フライパンの上には真っ黒に焦げた魚らしい物体がプスプスと焦げていた。

 そして、ようやくこちらに気がついたのか、

 「おはようございます!奏多殿、朝食は机に置いてあります。」

 と煙の元の魚を処理していた。

 今日の朝食というと・・・

 コーンフレーク バナナ 以上!!

 壮絶な手抜き、恐らく妹が作った?のだろう

 時間がかなり経過していたのだろうか、サクサクのフレークはビチャビチャヒタヒタになっていた。

 口に入れて噛むというよりは歯で磨り潰す感じだ、牛乳も温くなっていた。

 唯一食べごたえのあるのがバナナだった。

 ものの3分足らずで朝食が終わると、制服に着替え、鞄を持つ、机に置いてあった前期の予定表とカレンダーを見る限り、あと3日で夏休み、今日から3日間は午前中授業、しかも胸ポケットに入っている手帳にはバイトの時間まで書いており、どうしようかと考えた。

 だが、考えている時間はない、風紀委員だから遅刻なんて許されない。

 鞄を持ち、2人の様子を見る間もなく家を出る。ガレージのバイクを横目でちらりと見る。

 「・・・スピード緩めなら・・・・・。」

 とバイクにまたがり、キーをさす。

 『ハロー(^O^)/おはようございます、マスター!!今日の天気は晴れのち曇り!!現在の気温は18度、初夏の朝です!!日中は24度まで上昇しますので、しっかり水分補給を忘れずに!!』

 ニュースキャスターかこのナビは・・・

 「えっと、今日も自動運転で学校まで頼むよ、スピードは昨日より抑えてね。」

 『合点承知!!では、掴まっていてください!!交通ルールギリギリで発進!!』

 とバイクは疾走し、夏の朝を駆ける、昨日とは違い、気持ちのいい風が体を突き抜け、たまらずフルフェイスのヘルメットのカバーを上げる。

 そして、あっという間に学校に到着し、奏多はバイクを降りて、校舎に入り、教室に入る。

 「あ、奏多君おはよー!!」

 「お、おはようございます・・・」

 入った途端女子に挨拶されたのでちょっと驚いた。

 席に座り、一息つく。

 「お茶忘れた・・・」

 朝から生ぬるい牛乳しか飲んでないので喉が渇いたが水筒がない・・・

 「買いに行くか・・・」

 昨日の学校周りで学校の施設は覚えたので、ココから一番近い自動販売機は中庭だ。

 急ぎ足で中庭の自動販売機に行き、何を買おうか迷い始めた。

 「う~ん・・・お茶にするか、水にするか、ジュースにするか・・・・」

 「あ、奏多・・・」

 と後ろから声を掛けられたので振り返ると、昨日保健室に居た、確か・・・・そうだ轟加奈さんだ。

 「おはようございます、轟さん。轟さんも何か買いに?」

 「うん、朝練が終わったからスポドリ買いに、全国大会も近いし、結構追い上げ次期。」

 とアクエリアスを買い、ゴキュゴキュと一本をがぶ飲みした。

 奏多も続いてコーラを買い、一口飲んだ。

 「なんか、奏多がコーラって珍しい。」

 「え?コーラ位誰でも飲むんじゃないんですか?」

 「奏多日ごろから気を遣ってるから『あんな化学製品と砂糖の塊の飲み物は5年に1本で十分だ。』って言って全然飲まなかったんだよ、変わってるよね。」

 「結構な変わり者だったんですね、『僕』は。」

 と笑う。思わず笑うしかない、だって、聞けば聞くほど『僕』は変人だ

 それを見た加奈は思わずドキッとしてしまった。

 何時もはクールな顔で笑いをするのに、こんな無邪気で笑う奏多は見たことがない。

 「じゃあ、僕はこれで、授業に遅れないようにしてくださいね。って一応風紀委員だからそれらしいことを言ってみました。では。」

 相変わらずの半天然ボケみたいなセリフにキョトンとしたが、加奈は時計を見て急ぎ陸上部の部室へと着替えをしに戻っていった。

 奏多も教室に入ろうとするとチャイムが鳴り響く。

 そして、先生が教室に入ると、HRそっちのけで先生は奏多を呼び出した。

 「靫空、お前が記憶喪失っていうのは昨日保険医に聞いた、で?どうなんだ?病院とか行ったのか?」

 なるほど、この人が僕の担任か・・・

 「い、いえ・・・まだ・・・・。」 

 すると京子はため息を1つ

 「はぁ、じゃあ、今すぐ病院行くぞ、私の車で送るから、幸い今日は私の受持ちも授業らしい授業じゃないし、お前の成績なら別に1日休んでも全然響かないしな。」

 「じゃ、じゃあ、荷物持ってきます。」

 こういう時に『僕』の勤勉さに救われる

 「ああ、私も職員室行って鞄持ってくるから駐車場で会おう、お前保険証あるか?」

 「あ、はい、財布の中にあるはずです。」

 「よし、じゃあ鞄取って来い、クラスの連中に絡まれる前に急げよ。」

 と言われるがまま教室に戻り、荷物をまとめる。

 「どうしたの靫空君?帰るの?」

 やはりクラスの皆は反応する

 「え、いや・・・ちょっと病院に。」

 「どうしたの?気分でも悪いの?」

 「はい、そんな感じ・・・です。」

 とあいまいな返しで教室を出ると先程遭った加奈と鉢合わせになった。

 「あれ?奏多帰るの?」

 「・・・ちょっと病院で検査」

 「あー検査か、うん、分かった行ってらっしゃい。」

 行ってきます・・・とは言えなかった。

                      ◇

 その後、先生に連れられ市内の大きな病院の診察を受けた。

 大げさな機械の検査も受け、何だか重病患者気分だ。

 「ふーむ、じゃあ、君は昨日、階段から落ちて、保健室で目が覚めると以前の記憶が丸ごと無くなっていたと・・・」

 カルテを持って頷く先生をドキドキしながら眺める

 「はい・・・」

 「これは、全健忘症ですな」

 「全・・健忘。」

 「ええ、要するに君は生後からの記憶が吹っ飛んで、昨日からの記憶が一番古い記憶になってるって事、完璧な治療法もあるわけじゃないからある意味、癌よりめんどくさい。」

 半笑いで言うが、笑い事じゃぁない

 「じゃあ、どうすれば?」

 「とりあえず、君が行きそうなところを手あたり次第行くとか、家にある者をしっかりと見て、聞いて、読む、それか、記憶を失ったと同等レベルの外的ショック・・・か精神的な過去のトラウマを引き起こす出来事に出会うか・・・・位だよ。」

 そのうちのもう2個はやっているが、危険そうな残りの2個も望み薄だ。

 「・・・・ずっと戻らないかもしれないんですか?」

 「うん、ずっと記憶が無くなったままかもしれないし、とあるきっかけで不意に戻るかもしれないし、まぁ解らない。」

 「・・・ありがとうございました」

 診察が終わり病室を出ると、先生が待っていた。

 「どうだった?」

 とそのままを京子に伝えると京子は肩をポンと叩いた。

 「気を落とすな、もしかしたらって病院の先生も言ったんだろ?元気だせって!!」

 気を遣ってくれているが、今はそれすらも聞こえない位、奏多は追い詰められていった。

 『ボク』は『僕』じゃない・・・皆は『僕』が戻ることを望んでいる・・・・だけど、それは『ボク』という意識、存在の消滅を意味する・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・・・・・・・・・・・

                    ◇

 気がつくと、ボクは学校に居た。正しくは教室へと向かう階段、上っている途中、無意識に上っていた。

 「おい、大丈夫か?さっきから上の空だが」

 「え、ああ、はい・・・大丈夫です。」

 ふと腕時計を見ると時刻は11時33分、もう3時間目も終わり学校も終わる前だった。

 「確か、3限目は私の授業だが自習になってるから気にせずに入れ。」

 と言われ教室に入ると、ザワッとなった。

 「奏多、大丈夫か?どうも無かったか?」

 と一人の男子生徒が話しかけてきた・・・・

 「う、うん。大丈夫・・・です。」

 「なんで、お前敬語口調なんだ?初対面じゃあるまいし。」

 しまった・・・彼とは長い仲なのか・・・・

 「お、大前!!奏多疲れてるんだからあんまり質問攻めしちゃいけないよ!!」

 加奈が止めて入ったお蔭で助かったが、ボクの表情を見た事情を知る全員が不安そうな顔でこちらを見ている。

 止めろ、そんな顔するな。憐れむな、悲しむな、それは『僕』に対してのものだろう・・・何も知らない『ボク』にそんな顔を、感情をぶつけるな、イライラする。

 「・・・・・・。」

 ボクは無言で椅子に座り、チャイムが鳴る残り数分を悲しみと、怒りと、不安がぐちゃぐちゃにミックスされた心境でボーっと下を俯いていた。

 そして、チャイムが鳴り、その数分後に京子が入ってきた。

 「うーし、夏休みまであと数日、明後日に夏課題を配布するから教材代を持ってくるように、以上!解散!!」

 その掛け声と同時に生徒は帰り始め、奏多は1人トボトボと教室を出ようとしていた。

 「あ、奏多!今日皆で昼ご飯食べようって・・・」

 「すいません・・・食欲ないので、失礼します」

 と視線も合わせずに奏多は階段を降りた

 バイクにまたがり、エンジンを掛けると元気なナビが話しかけてくる

 『どうも~マスター!!今日はどうします?寄り道しますか?』

 ・・・気分晴らしにどこかに行こうかな。 「適当に良い場所に頼む。」

 とバイクは自動的に動き出し俯いたまま前も見ずにバイクに身を委ねた。

 朝とは違い気温の上がった熱風は身体を包み、じんわりと汗ばむ。

 そして気がつけば、奏多は街の高台に居た。

 桜の葉は緑となり、太陽がその隙間を輝かせ、蝉が鳴く、そして、周りにはいかにも不良と見えるTHE・不良たちに囲まれていた。

 少しその高台にあるベンチでボーっとしていただけだが、何でこんな事になっているんだろう。

 「・・・・・・・・。」

 無言の圧が凄い。

 もう泣きたい、逃げ出したい・・・・と思っていると、その中から声が上がった。

 「奏多さ~ん!!」

 あまりに可愛い声だったので、ビックリしたが見た目も普通で全然不良ぽく無い寧ろ幼い位のTHE・健全少年だった。

 「すいません・・・先輩たち奏多さんをお見かけしたのは良いんですが、どうやって話しかけたらいいか分からないそうで、だから必死に何か言葉を出そうと悩んでるんですよ。」

 懇切丁寧に状況説明してくれたので分かりやすいが、どうしてボクに挨拶をするのかが分からない

 「この間も先輩たちに助力してくれたそうで・・・本当にありがとうございます。」

 「じょ、助力?ボクが?」

 すると、一番前に居た一番厳つい男が口を開いた

 「そうです!!正に鬼神の如き戦いぶりで200人は居たであろう不良どもをなぎ倒し、我々に勝利を与えて下さった正に・・・正に・・・・ジャンク・ダルヌの様な!!」

 「ジャンヌ・ダルクですよ、先輩。」

 「うるせぇぞ!!リュウ!!!」

 と頭に痛そうなのを一撃お見舞いされた。

 「・・・『僕』って本当に何なんだ」

 「ん?何か言いましたかい、兄貴?」

 「い、いや・・・何でもないです。」

 「それなら構いませんが、それよりどうです?今から俺ら昼飯行くんですけど!!」

 「え・・・いや、今食欲ないんだ。また今度」

 「了解しました!!うっし、じゃあ兄貴にお時間を取らせる訳にゃいかねぇ!!行くぞてめぇら!!!」

 と嵐の様に過ぎ去った後に残ったのは奏多とリュウだった。

 「君はいかないの?」

 「はい、僕もあんまり食欲無くて・・・あ、お隣いいですか?」

 「はい、構いませんよ。」

 すると隣に座ったリュウはこちらの顔を覗き込むように見てきた。

 「な、何です?」

 「え?いや、なんだか今日は様子が変わってる・・・というか、何時ものクールさが無いというか・・・」

 そんなにわかる物なのか、変化とは

 「じ、実は・・・」

 ボクはリュウと呼ばれていた少年に全てを打ち明けた。

 聞き終えたリュウは戸惑った表情でこちらを見た。

 「そうだったんですか・・・・」

 「ボクは・・・『僕』がどんな人間かが全く分からない、人から聞けば聞くほど僕が何者か分からなくなるんです。だから、ボクなんて早く消えて、皆さんが知っている『僕』になった方が皆さんも喜ぶはずです」

 「いいんじゃないですか?別に気にする必要なんて。」

 「え?」

 リュウからの一言で顔がキョトンとなる。

 「記憶を失う前の貴方は確かに普通じゃなかった・・・普通の高校生ではありえないことをしていました・・・だからと言って、アナタがそれをする必要はないんです。僕の知っている『貴方』と今僕が話している『アナタ』と何にも違いはないんです、記憶がなくても、力がなくても、性格が違っていても、人格を除いても貴方という存在は其処にいる、特に妹さんは貴方という【存在】が居なくなったらとっても悲しむと思います・・・だって、『貴方』は妹さんをとても大切にしてましたから。」

 「・・・・・。」

 何だか少しだけモヤモヤガ晴れた気がした、それと同時に頬には涙が流れていた。

 「え、あれ?」

 「あ、あわわわわわわ・・・・す、すいませんすいません!!!!!何か気に障ってしまう事を言ってしまったようで・・・・先輩に知られたら殺される・・・」

 「い、いや・・・大丈夫。寧ろ何かすっきりしました。」

 ベンチから立ち上がり、背筋を伸ばす。

 「あ~何だかお腹減ってきた・・・」

 「それは良かったです、じゃあ、僕もそろそろお暇します」

 とリュウも立ち上がった。

 「相談を聞いてくれてありがとう・・・何だか君とは良い友達になれそうです。」

 「ふふ、実は僕たち既に友達なんですよ、ケータイの番号も交換してますし」

 とケータイを開きアドレス帳を開くと【リュウ君】と登録された番号があった。

 「はは、じゃあ何かあったら連絡するよ。」

 そして二人は互いに背を向け別々の方向に歩いて行くのだった。

                  ◇

 時刻同時刻―高台ベンチ 靫空奏多とリュウが座っていた場所の真後ろの茂み

 「・・・・へぇ、あいつ記憶喪失なのか」

 「あいつのせいで俺らがどんな目に遭ったか・・・」

 「カナタとか呼ばれてたな」

 「あの制服、富士宮学園だから知り合いに聞けばすぐに分かるだろ」

 ・・・・後ろに隠れながら会話を盗み聞きする3つの影、怒りと復讐心に燃えた影が数時間後、少年を不幸へと誘う。

少年の悩みは晴れる、しかしその裏で復讐という雲が少年を取り巻く、果たして少年の決断は

次回【LOST-3 笑顔】

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