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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
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LOST

最新話更新です、時間が掛かってしまってすいません。


 夏前、1年の内の最初の期末考査・・・高校に入って初めての期末考査。

 私は、中学時代は現在いる富士宮学園の中等部に居たわけではなく、地元の市立中学から頑張って受験し名門と呼ばれるこの学校へと入った。

 中学時代は勉強では常に1位、運動が苦手な分、勉強だけひたすら頑張った。

 高校でも順調に1位を取り、勉学でトップを取る・・・と野心と野望を胸に秘め、高校に入ると現実は甘くなかった。

 同年代には飛び級で高校1年生に上がってきた幸村零がいた、彼女がいるせいで1位は取れない・・・だが、彼女は試験は受けない事が多い、だから彼女さえいなければ私は1番になれる!!ていうわけでもなく、もう1人怪物が居た。

 それが靫空奏だった。1年上の学年に学校一の秀才と呼ばれる兄を持ち、兄に劣らずの成績で、常に度の教科でも成績上位にいたが幸村雫に比べると私の敵ではなかった。

 そして、今回の期末考査は頑張った、前期までの内容を一日6時間は見返し、職員室にはテスト期間前は入れなくなる帰還までずっと通い続け、塾にも通い、私に死角はなかった。私には絶対的な自信を持って試験に挑んだ・・・・が結果は3位だった。

 1位は予想を覆して靫空奏で全教科満点、2位は惜しくも眠気に勝てず一問残して寝てしまい本当だったら同列1位だった幸村雫、私の心は折れてしまった。

 医者である両親からの期待を胸に、今回の期末の結果に挑み終わった、きっと夏も勉強漬けでテストに挑んでもきっと1位にはなれないだろう・・・・才能がある者には決して勝てないのだから。

 そして期末考査を発表している廊下で喜ぶものや悲しむものもいる中、虚無感に陥っていた私はふと今回のテスト1位と6位の会話を耳にした


 「凄いね、奏ちゃん・・・全教科満点の1位なんて。」

 「ありがと蛍。これもうちの優秀な兄という名の家庭教師が居るおかげだよ~」

 「でも、今回は自分だけで勉強したんでしょう?」

 「う~ん、でも根本的なところはお兄ちゃんが全部教えてくれているから出来るんだけどね、それよりも!今日の晩御飯はハンバーグだぁ!!チーズイン&オンハンバーグにしてもらうんだ!!」

 「ホントに奏ちゃんハンバーグ好きだね・・・」


 それは何気ない会話だった・・・が私にとっては全く違う、普通ならこんな事を考えるのはおかしい・・・だけど、私が1回でも1位になる可能性があるのかこれしかない・・・・

 現在、彼女の脳裏に浮かんでいる計画というか衝動的な行動の想像はもはや誰にも止められないほど、彼女の精神は追い詰められていた。

 そして、その日の昼休み、私の足元の階段の下に一人の生徒が倒れていた。

 頭から血を流し、グッタリとしている。

 私の手はぶるぶると震え、息が荒れる。

 そして、下の階の廊下の先から叫び声が聞えると共にハッと我に返った私は階段を駆けあがり、近くの女子トイレに駆け込みブルブルと震えながら喉の奥から出てくる吐き気を必死に押さえこみトイレの中で蹲った。

                       ◇

 ―遡ること45分前—

 靫空奏多は上機嫌で生徒会室を後にし、教室に帰ろうとするとレイラと楓にあった。


 「あら、ダーリン。どうしたんですの?凄く顔が緩くなってますが・・・」

 「え?あ、そう?そっかな~?あはははは」

 「何だ気持ち悪い・・・お嬢様の前で気持ち悪い顔を向けるな」


 そう言われると何だか傷つくがそんな顔なら治さないといけないと思い、一瞬で何時ものキリットした顔に戻る


 「そう言えば、2人ともテスト上位に入ってましたね。」

 

 奏多から話を切り出すとレイラは笑顔になった。


 「ええ、ダーリンと2トップです。」

 「私ももう少しでお嬢様と並べてたのに・・・」


 と本気で悔しがり、肩をすぼめる楓の肩をレイラがポンポンと叩く。


 「まぁまぁ、発表を見てからもう何度目かしら、そろそろ立ち直りなさい。」

 「はい・・すいません。あ・・・お嬢様先生に呼ばれてるんでした・・・急ぎましょう。」

 「では、ダーリン御機嫌よう。」


 と、どんよりしている楓と共に職員室にいくレイラを見送りながら奏多も教室に戻ろうとする。

 すると、強烈に欠伸がしたいという感覚が襲ってきた。

 欠伸とは、覚醒と睡眠の境界から覚醒に向かうときに頻繁に起きやすい、反射的な呼吸動作である。

 欠伸は、寝起き、暇なとき、極度に緊張している時にも起きやすいが、奏多の場合は稀にあるケースで偏頭痛の様な頭痛期に発生するものであり、最近頻度に起きている頭痛が奏多の欠伸を誘うのだった。

 階段を下りながら欠伸をする・・・欠伸・・・それは、人間が油断とも云える無防備時間を発生させる僅かな時間。


 「ふぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 大あくびを溢す・・・と同時に階段を下る。

 教室は3階、今は4階、テスト返しだけの時間割なのでほとんどの生徒は帰り、周りにはほとんど人がおらず、もちろん階段には誰もいない・・・と思っていた。

 欠伸が始まって終わるまでの時間、およそ3秒弱・・・そのうちの2.24秒の時点で後ろから衝撃が走った。

 か弱い力を思い切り振るわせたような感触、後ろをバッと振り向くも、手すりも掴む暇も無く、非常にも奏多の身体と景色は180度回転した。

 そして、頭と背中に凄まじい衝撃と痛みが走り、目の前に星がキラキラ、妖精さんのカーニヴァル。

 ああ、目の前がくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐるくるぐる

 ああ、何がどうなったのか、もう何も考えられない・・・・・・思い出せない・・・。

                      ◇

 「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」


 1人の生徒が廊下を走り、保健室へ向かう。


 「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」


 昼食の途中で走り出したため脇腹が痛むがそんな事は気にならない位、今、頭の中はぐっちゃぐちゃだった


 「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、失礼します!!!」


 勢いよく保健室にはいると、そこには頭に包帯を巻いた靫空奏多がベッドの上で眠っていた。

 先生曰く、見つかった時には既に意識はなく、頭部からの出血していたが大した量ではなかったので血止めをして現在ベッドの上で安静にしているとのことだ。

 その後、何時もの面々がやってきて、中には涙を流し始めるものもいた。

 そんな中、乙姉妹と渚と楓はベッド付近に掛けられた奏多のブレザーを手に色々と見ていた


 「な、何してるの?」

 「指紋探し、お兄ちゃんは多分誰かから突き落とされたから。」


 その言葉に皆が驚いた。


 「な、何でそんな事が言えるの!?」

 

 奏の質問に珍しく永遠が口を開く。


 「・・・人間は階段で滑っても怪我しないように受け身くらいはする、だけど、後ろから押されたりなどの他者からの攻撃や妨害に先駆けては思考が遅れたり、機能しなくなる。兄ぃに関しては特に・・・だから高確率で兄ぃは誰かから突き落とされた・・・・。」


 永遠の冷静な考察を聞き皆がごくりと生唾を飲む、そして・・・


 「ビンゴ、レイラお嬢様、指紋及び指圧の跡を発見いたしました。専門機関にDNAの照合をさせます、その間に・・・・」


 とレイラと相談する真剣な顔の楓を見てこの事態がやばい事なのだと察した。


 「・・・ん、んぁぁ。」


 と後ろから発せられた声に皆が振り向く


 「お兄ちゃん!!」


 奏が奏多の手を握り涙をポロポロと流した


 「良かった・・・良かった・・・・」


 涙を流す自分の妹を見て、ベッドで寝ていた兄はキョトンとしていた。


 「あ、あの・・・すいませんが・・・・・」


 奏多はモジモジし始め周りをキョロキョロ見回す


 「ここは何処なんでしょうか?」

 「ここは保健室よ、ていうか奏多君知ってるじゃない!」


 飛鳥のセリフに戸惑いながら、奏多は頬をポリポリ掻き、苦笑いと共に衝撃的なセリフを放った


 「あなたたちは誰なんですか?というか、ボクは誰なんでしょうか・・・・」

 「「「「・・・・・ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」

                     ◇

 「で?お前本当に何も思い出せないわけか?」


 鬼の様な形相で奏多を睨みつけながらほぼ尋問の様な感じで迫る撫子に奏多はビクビクしていた


 「こーら!草薙ちゃん止めなさいって!!奏多君怖がってるじゃない!」

 「だってよ!こいつさっきから泣きそうな面で、まるで危ねぇ奴を見てくるようにこっちを見てくるんだぞ!!」

 「お前がそういう雰囲気を出しているからだ、もう少し自粛しろ。」

 「あ!?何か言ったか曙ぉ!!」

 「別に本当の事を言っただけだ。」

 「こら~!!2人とも喧嘩しない喧嘩しない」

 「うぅ、ここは煉獄(インフェルノ)だ・・・」


 ここは生徒会室、現在奏多は記憶喪失になっているため、どうやって記憶を取り戻すかについての案が早急に決まり、とりあえず奏多が学校で良く行き、良くすることを片っ端からやっていくというモノだった。

 そしてしょっぱなは行き慣れた生徒会室でのひと時・・・なのだが、効果はなさそうで落ち着かない様子を見せていた奏多に撫子が掴みかかったという事だ。


 「・・・奏多」


 と先程から自分の膝の上に乗っかっていた小さな女の子が裾をグイグイ引っ張ってきた


 (見た目からして恐らくこの中の誰かの妹さんかな?)


 「・・・えっと、何?」

 「・・・ついて来て」


 そして生徒会室の面々が口論している最中、奏多は雫に引っ張られる形で連れられて音楽室と書かれた扉の前にやってきた


 「・・・音楽室。ボクって音楽やってたんですか?」

 「知らない。でもピアノが上手だった」


 奏多は音楽室の扉を開けようとすると、立て付けが悪いせいで上手く開かなかった


 「あれ?おかしいな・・・」


 その様子を雫は悲しい目で見ていた

 その後、どうにか音楽室に入ると奏多は椅子に座りピアノの鍵盤にたじろぎながら指を置いた。

 その直後、指が勝手に反応したかの様に軽やかな指捌きでピアノを弾き始めた。

 それは何時も引いている、「月光」や「第九」、何時もと同じメロディー、雫は嬉しそうな目で演奏をする奏多を見ていた

 そして弾き終わり、息を切らしながら腕をダランとさせる奏多に雫は説いた


 「記憶・・・戻った?」

 「・・・いえ、何も、自分でも何でこれが弾けたかなんてわからないですし・・・その、ごめんなさい」


 そこまで聞くと、雫は下を俯いたまま、袖を引っ張り小声でぼそぼそと何か言いながら音楽室を後にした

 その後も、屋上や教室にも行ったが、効果はまるでなく、記憶のない奏多は見せたことの無い弱弱しい表情で学校を後にしようとしていた。


 「じゃあ、1日様子見てみて、明日も学校だけど」

 「はい、もしかしたら家で何か思い出すかもしれませんし、駄目だったら病院に行ってみます」


 と奏は協力してくれた面々に頭を下げ、奏多、紅葉と家へと帰る・・・・前に、奏多は駐車場に置いてある自身の愛車である大型バイクを見て驚いていた


 「ぼ、ボクこんなバイク乗ってたんですか?」


 漆黒のバイクを見て記憶のない少年は驚いていた


 「ボク、どんな趣味してたんだろ・・・」


 と恐る恐るバイクのエンジンを掛けると、バイクのモニターに電波系のVirtualなキャラクターが映し出された。


 『どうも~マスターの忠実なるAIのアイちゃんでーっす!!あれ?どうしました?何時もなら軽くスル―されるのに・・・もしかして、遂に・・・私の必要性を分かって下さったんですか!?アイ感激で今日は交通法違反で100キロオーバーのんすとっぱっぶるでゴーゴーします!!さぁヘルメットを被って、しっかりつかまって下さーい』


 唖然とする奏多は云われるがままにヘルメットを被りハンドルをしっかりにぎると、バイクのタイヤが超回転!!


 「あぁぁぁっぁぁぁぁぁあっぁあっぁぁあぁぁぁぁぁぁl!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 悲鳴を上げながら奏多は風と共に去った。

 そしてその場に残された奏と紅葉はポカーンとしながら家へと帰っていくのだった

 そして、20分後家に帰った2人はバイクのシートの上で気絶している兄をソッと家へと運ぶのだった。

 奏多は目を覚ますと、白い天井が広がり、体を起こし周りを見回すとどうやら部屋らしい、恐らくは自分の・・・・

 布団から出て、机に脚を運ぶ、引き出しを開けたり、机の上を漁り、何か自分の事が分かることを探すが、特にめぼしいモノはなく、見つかったのは預金通帳、手帳、読みかけの本、それくらいしかめぼしいモノはなく、今度は本棚を見るとアルバムがあった。

 アルバムを広げると、色んな自分が映っており、やはり自分の事だとは思えない位写真に写っているこの自分は冷静そうだ・・・


 「そういえば、僕が風紀委員だってあの厳つい女の人が言ってたな」


 お先は真っ暗に近いグレー・・・何だってボクがこんな目に・・・・。


 「・・・ボクとは何なんだ」


 ボクという人格は今日生まれた、ただの偶然、何時かは消えてしまうモノ 

 ~ぐーーーー~

 黄昏ても腹は減る。

 何かないかとキッチンに向かうと、キッチンからは既にいい匂いが漂っており、食欲をそそられる。


 「あ、奏多殿、丁度良かった、夕食の時間でござる。ささ、お座りください。」


 と佐々木紅葉と呼ばれていた時代風景のちがう居候の接待を受け、席に座るとテーブルにはハンバーグとスープ、サラダが配膳されていた。


 「遠慮なさらず食べてください、何時もの奏多殿のお食事に比べれば天と地の差でござるが、味は大丈夫のはずでござる。」


 隣には既に奏が座っており、ハンバーグにパクついていた。


 「うん、美味しい。」


 といいながらハンバーグにパクつく。


 「い、いただきます・・・」


 ハンバーグを1口食べる。

 これは所謂、和風ハンバーグだ・・・肉のしつこさがないという事はおからをベースにしたおからバーグでソースはゆずポン酢、胃に優しいハンバーグだ。


 「とても美味しいです。佐々木さん」

 「・・・そうでござるか、良かったでござる」


 やっぱりだ、やっぱり、皆どこか悲しい表情を見せている。

 それほど、ボクは・・・いや前の『僕』は大切な人だったんだろう・・・

 チャチャっと夕飯を食べ終わり、身体には悪いがシャワーだけを直ぐに浴び、部屋に入った。

 ベッドに横になると、猫がお腹の上に乗ってきた。


 「ニャー」

 「・・・ごめんよ、ボクは君のご主人じゃないんだ・・・」


 猫の頭を撫で、ベッドから降ろす、猫はニャーとひと鳴きし、部屋のカーペットに寝そべる。


 「もう、何もかも嫌になるよ。」


 と目をつぶり、何も考えないようにしながらゆっくりと意識を暗い暗い夢へと運んでいった。

人は失う事は簡単だが、失ったモノを取り戻すことは難かしいことである、だが少年は必死に掴む、握る、記憶という手綱を握るために己を消してでもあがき続ける。

次回【LOST-2 涙】          

                                          お楽しみに

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