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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
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LOST3 -笑顔

最新話投稿です。


 その後、外で軽い食事を済ませ夕方前に奏多は家へと帰り、2人がいないことを確認し、まず最初にしたことは・・・家事だった。

 

 「少しでも役に立たなきゃ・・・」


 行ったのは掃除を中心に今朝の惨劇を思い出しながら、ああはならないようにしようと慎重に行った。

 

 「よし、ちょっと怖いけど、料理してみよう・・・」

 

 とキッチンに行き、冷蔵庫の中の具材を見るも、中身はあまりなく作れる料理も限られてくるが、奏多は生姜焼き用の豚肉を取り出した。

 包丁を握り生唾を飲み込む。

 

 「うぅ、刃物なんか持ったことないから上手く切れるか不安だなぁ・・・」


 そう言いながらも取り出した豚肉は出来るだけ脂身を落とし、ボウルに摩り下ろした生姜とニンニク、醤油、酒、みりん、蜂蜜をいれ、よく混ぜる、その後玉ねぎをカットし肉と一緒にタレにつける。

 ラップをして生姜焼きは下準備終了、続いて汁物。


 「確かボウルに綺麗な豆腐があったから豆腐とワカメの味噌汁にしよう。」


 豆腐を切ろうと手に乗せるが上手く斬れず、形が雑になってしまった。

 その後乾燥ワカメを水で戻し、味噌を溶いた鍋にそれぞれをいれる。

 汁物もこれでよし、次は・・・と冷蔵庫を漁っていると、玄関が開く音が聞こえた。

 

 「ただいま~って、お兄ちゃん・・・何やってるの?」

 

 驚愕の顔をこちらに向け、思わず鞄を地面に落とす妹


 「あ、お帰りなさい、今は夕飯の準備を・・・あ、あと掃除をしました、洗濯も始めますので洗濯物は入れておいてください。」

 

 帰ってきた2人は顔を合わせて驚いていた。

 

 「か、奏多殿・・・何故いきなりその様な事を・・・」

 

 すると奏多は照れくさそうに頬を掻き、にっこりと笑った。


 「記憶がなくなったとはいえ、2人に全てを任せきりだというのは悪いと思いまして・・・だ、だからボクでも出来そうなことを始めようかと・・・」

 

 と照れ笑いを見て、2人はツゥーと涙を流した。

 

 「ええ子だ、もんの凄いええ子がいる・・・」

 「拙者、ここまで純粋な子供の笑顔を久々に見ました。」

 

 2人の目には初めてのお使いを完遂させた子供が映っているようにしか見えなかった。

 

 「だ、大丈夫ですか?す、すいません・・・いらないお世話だったでしょうか」

 

 不安になったのか、奏多の方も涙目になり無意識に無垢な子犬の様な目で見てくるので、次第に見ている側の顔の筋肉がほどける。

 

 「だ、大丈夫!!大丈夫!!寧ろありがたいよ!!」

 「そうです、嬉しいですよ!!」

 

 そう聞くと笑顔になり、いつの間にか取り出していたキャベツを千切りしていた。

 

 その後は、夕飯を3人で一緒にとり、テレビを点けて談笑しながら食事をした。

 記憶を無くしたボクにとって初めて満足する食事に感じた。

 

 食事と洗い物を終え、奏多はシャワーを先に浴びる・・・

 自分の抱えていた下らない不安を洗い流される感覚に陥る。

 そして、鏡で顔を覗くと、不思議に笑えていた。

 

 そして、風呂から上がり、自室に戻ると机に座った。

 

 「ふぅ・・・」

 

 色々なことがあったせいか、一気に気が緩んだのか、とてつもなく眠気と倦怠感が襲ってきた。

 自室の床でゴロゴロしている猫をみると、無性に甘えたくなってきた。

 

 「おいで~猫ちゃん~」

 

 と奏多が頭を撫でようと、すっと手を出した瞬間、凄まじいスピードでその手を肉球パンチで止められ、そっぽを向き、部屋を出ていった。

 

 「・・・・え?」

 

 手に着いた肉球後を眺めながら、悲しい気分ですぐさま布団に入り寝てしまった。

 

                   ◇

 

 目を覚ますと、ボクは見覚えのない原っぱにいた。

 時間帯は夜、風は冷たく、周りには何もない、ただ広いだけの平原。

 周りを見渡すと、其処には2人の男女が寝そべっていた。

 年は・・・7,8歳くらいだろうか、明るく元気に話している女の子とは対象に男の子は暗く、迷惑そうに聞いている感じだった。

 

 『・・・・・でさ!・・・・・は・・・・・・だよ!!』

 『・・・・・・・・。』

 

 言葉は風で掻き消されているのか、聞きにくい、だが何故か懐かしい気分になる。

 ボクは2人に話しかけようと歩を進めた瞬間、地面が、世界が、空間がガラスが割れるように崩れ、すぐさま再構築される、だが、次奏多が見た光景は・・・

 

 「な、なんだよ・・・これ?」

 

 周りは一面火の海、タタタタタという音が聞こえ、同時に悲鳴も響く。

 後ずさろうとすると、何かに引っかかり、ビクッと後ろを振り向く。

 

 「・・・・ボク?」

 

 其処には自分がいた。

 血に濡れ、蹲り、何かをジッと見ていた

 見た感じでは何かに巻き込まれたかわいそうな子だと思った・・・が、火が後ろの建物に移り目の前が明るくなったとき、それは見えた。

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 叫び声と同時に、目が覚めた・・・

 

 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・今の、ボクの過去?いや・・・そんな筈はない!だって、あんなことをやったのがボクだとしたら・・・『僕』だとしたら、記憶を亡くす前の『僕』は・・・』

 

 と嫌な考えが脳裏を巡った瞬間、部屋のドアがバンっと開いた

 

 「奏多殿!!どうしたでござるか!?泥棒でござるか?火事でござるか!?」

 

 とギラリと光る刀をこちらに向け、紅葉が目を血走らせながら息を荒くしていた。

 

 「な、何でもないです!!すいません・・・変な夢を見ちゃったんです。」

 「夢?良かった~夢でござったか・・・警戒をして少し損でござった。」

 

 と大あくびをして、部屋を去ると、奏多はドッと掻いた汗を拭い、同時に身体が自然に震え始めた。

 

 「『僕』は・・・人殺しだ。」


                      ◇

 『人間を殺した人間は人間じゃなくなる』

 

 そんな言葉を聞いたことがある、そしてその通りだと思った。

 

 朝ご飯のトーストを齧りながら、昨日の夢を思い出す。

 

 あの夢が本当なら『僕』は一体どんな心境でこの場に座っていたのだろう。

 平和な場所で、美味しい朝ご飯、暖かな家庭の中で、幸せに過ごす。

 きっと、平然と過ごしていたのだろう。

 否、平然を装っていたのだろう、演じていたのだろう、騙していたのだろう。

 ・・・・昨日一昨日で優してくれた皆を騙していたのだろう。

 

 そんな自分だった『者』に吐き気がする・・・

 

 「大丈夫?顔色悪いよ」

 「え?」

 

 ふと我に返り前を向くと心配そうな目でボクの顔を覗く2人の目があった。

 

 「昨夜、夢を見たと言っておられましたが、もしや悪夢でござったか?」

 「・・・悪夢」

 

 そうだ、あれは悪夢だ。

 人を殺すのを何とも思わない殺人者の見る悪魔の夢だ。

 

 「・・・かもしれません、もう忘れちゃいました。すいません、ちょっと考え事してただけです」

 「それなら良いでござるが・・・何かあったら拙者たちに言ってください。」

 

 優しさが痛い・・・嘘をついただけに、その痛みは加速する・・・。

 

 「ご馳走様でした。すいません、ボク先に行きます。」

 

 この空間に居るのすら嫌になってきたのか、衝動的に奏多は家を飛び出した。

 

                       ◇

 

 バイクで真っすぐ道を走っていると、朝一番にもかかわらずヤンキーや暴走族が乗っていそうな変わった形のバイクが3台後ろ、右、左を囲むようにしてきた。

 おなじみと言ってもいいトランペット風のクラクション音を鳴らしながらこちらを煽ってくる。

 頭の中がぐちゃぐちゃの状態でさらにイライラが積もる。

 

 グリップを回しスピードを上げ、朝一番のバイクチェイスが始まった。

 この車体の性能はそこら辺のバイクとはケタが違うので負けるわけが無いのだが、現在のドライバーの麺たる上チキンレースの様なスピードは出せないのでギリギリ無茶な位のスピードだった。

 すると、前方から待ってましたと言わんばかりに前方に一台のバイクが現れ、全方位を囲まれた。

 そして、4台のバイクに誘導されるがままに走らされ学校とは全く違う、見覚えのない海辺近くに連れてこられると、其処には柄の悪い学生たち・・・見た数50人がその場で待ってましたと言わんばかりに盛り上がっていた。

 無理やりバイクから降ろされ、集団の前に立たされると一番奥から声が聞こえた。

 

 「よぉ!えっと・・・そうだそうだ!カナタ君だったな!その節はどうも!!」

 

 見覚えのない丸坊主の男に声を掛けられたが何と返そうか迷った挙句、何も返さず無言のままでいると

 

 「総長の挨拶を無視すんなや!!」

 

 先程先導してきた不良そのAに腹を殴られた。

 

 「・・・どうも。」

 

 そっけない挨拶だけ返すも、気に入らないらしく、また殴られた。

 

 「おはよう・・・ございます。」

 

 流石に3発目はご縁了なので、きちんと挨拶をした。

 

 「んで、何でここに連れてこられたか分かる?」

 

 場所は海辺、季節は夏、『みんなで遊ぶんですか?』と言いたくなるが、言えば殴られるし、そんな空気じゃない・・・

 

 「・・・分かりません。」

 

 今度は顔面に一発だった。あぁ、頬が痛い。

 

 「しらばっくれてんじゃねぇぞ・・・こちとらテメェに散々やられた挙句、補導されて、どんな目に遭ったか・・・・」

 「人違いじゃないですか?僕みたいなひ弱そうなやつがあなたたちの様なお強そうな方々を・・・」

 

 今度は全部言う前に腹を殴られ、蹴られた、そろそろ吐きそう。

 

 「調べは付いてんだよ・・・こっちの情報網舐めんな。靫空奏多ぁ」

 

 とヒラヒラと顔つきの個人情報のまとめを見せつけた。

 

 一体どうなってるんだ、プライバシーとやらは・・・

 

 「とりあえずテメェには俺たちが受けた屈辱を痛みで返して、溜まったモンをお前の妹で払わせてもらうぜ。」

 「妹は・・・奏は・・・・関係ないだろ」

 

 また殴られた、何だ?喋れば殴るシステムなのか?

 

 「いいや、俺に立て着いた野郎は皆潰す、妹だろうが、弟だろうがお前に関係してるやつ全員メチャクチャにしてやるよ、ハハハ・・・アッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」

 

 耳障りな声が聞こえると共に、周囲にゾロゾロと不良が集まってきた。

 その手にはバット、木刀、鉄パイプと撲殺天使顔真っ青な殴るための道具が握りしめられていた。

 

 まぁ、結果はズタボロになるに決まっていた。

 抵抗する暇も無く、身体を、腕を、足を、局部を、万遍なく叩かれ、殴られ、打たれ、振られ続けた。

 

 「あ・・・あぁ・・・うぅ」

 

 声を出すのもやっとという状態がまさにこれだ、身体が一歩も動かず、力も入らない。

 

 「あーあー派手にやられちゃって・・・って、おい、おい、おい、おい、おい!!何で誰も頭殴ってねぇーんだ?」

 「総長、流石に頭はマズいっすよ・・・もしこいつが死んだりでもしたら―――――」

 「だからさ・・・こうやって死なない程度に!!」

 

 -ベキャ

 

 何か、折れるというか、砕ける音が聞こえた。

 先程よりも力が抜け、頭から温かいモノが流れるのを感じると共に体が冷えるのを感じる。

 

 「総長・・・こいつ、動かないっすよ、マジで死んだんじゃ・・・」

 「んなわけねーだろ!気ぃ失ってるだけだ、おいお前らそいつ浜辺に捨ててこい、あーそれとそのバイクは俺が貰う。」

 「総長、何処行くんすか?」

 「あー?そいつの妹ちゃんとこだよ、早いとこ捕まえて、明日の朝まで楽しむんだよ。」

 「やりすぎっすよ!サツにバレたら・・・・」

 「何だお前?さっきから・・・文句ばっか言いやがって、おい、バット貸せ。」

 

 とバットを受け取ると否や目の前の仲間を問答無用で殴った。

 ピクピクと蹲ったまま、同じく血を流している

 

 「誰かさ~俺に文句ある奴いる~?」

 

 誰も答えない・・・力と恐怖で押さえつけられ、怯えていた。

 

 「んじゃ、早速行くか・・・って、チッ!キー抜いてやがる・・・めんどいなぁ!!」

 

 と先程浜辺に捨てた男の元に行き、ポケットの中をまさぐり鍵、財布を取り出しその場を去ろうとした瞬間

 

 -ボキン

 

 なにかの音が聞こえた、折れるような、千切れたような音が・・・

 その音は自分の足から聞こえた。

 

 「あ・・・あ、あ、足がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!お、俺の・・・俺の足が・・・足が・・・!!」

 

 足が・・・正しく言うと弁慶の泣き所当たりの部分が完全にひん曲がっていた。

 

 その場に倒れ、痛む足を押さえながら、ゴロゴロと転がる男を、先程浜辺に捨てられた男が、凶器でボロボロにされ立つことすら出来ない男が立ち上がり、その頭を思い切り踏みつけた。

 

 「・・・・・喚くなよ、煩いなぁ」

 

                       ◇

 

 先程ボロボロにされた男が目を覚ますと、景色は真っ黒だった。

 暗闇よりも黒いのに、不思議と景色は澄んでおり、目の前に居る2人の存在はすぐに分かった。

 

 『やぁ、やっと会えたね。』

 『おせぇんだよ・・・タラタラしやがって。』

 

 目の前にいるのは自分だった。

 爽やかな笑顔で迎えるボクと悪態をつくようにこちらをギロリと睨むボク、何だか変な感じだ。

 

 『別に変じゃぁないよ。だって、これ自体は君の・・・いや、僕たちの脳内で、精神で起こっていることなんだよ、夢じゃない夢、そう言えば分かるかな?』

 『分かるかよ!変な説明すんじゃねぇ!!』

 

 まるで正反対の二人だ・・・これが記憶を失う前のボクなのだろうか・・・

 

 『うん、そうだよ。僕らはキミで君はボクらだ。』

 『簡単に言えばオレらは皆一緒なんだよ、1つの肉体にある多数の人格って奴だ』

 

 なるほど・・・ようやくわかってきた、とすると僕は【靫空 奏多】という人間に生まれた3つ目の人格という事なのだろうか。

 

 『いや、違う』

 『ああ、違ぇな。』

 

 ・・・・は?

 

 「じゃあ・・・ボクは、何なんだ?」

 

 答えは簡単、キミは僕の記憶の無い状態、つまりキミは風邪の病原菌と同じさ、記憶喪失が治れば消える、人格とも言えない、何とも言えない、そんな存在さ。

 

 「・・・・じゃあ、なんで人格にも満たないボクが君達と会話できるのさ!!そんな半端な存在なら君達と遭えることは出来ないだろ!!」

 

 キミが望んだからさ。

 

 「何で・・・ボクが君達みたいな殺人鬼と・・・」


 そこだよ、キミは僕らが人殺しと知って、僕らの本質を知った、そしてさっきみたいな状態になった際、必要なのはボクじゃなくて僕だと、一瞬でも思っただろう?

 

 あと、殺人鬼ってのは気に入らねぇな、オレらは殺人快楽者じゃねぇ、何で知ったかは知らねぇが思い過ごしもあったもんじゃねぇ。

 

 「・・・・。」

 

 そして、最大の要因がキミが消えかけていることさ、さっき頭殴られたショックで戻ってきているんだろう、現にほら・・・

 

 と僕がボクを指さすと、ボクの身体は半分消えていた。

 

 「・・・消える、のか。」

 

 うん、もう止められない。

 

 「・・・最後に1つだけ約束してくれ。」

 

 ?

 

 「君の周りに居る人たちを悲しませないで・・・あの人たちはキミを本当に心配してるし、信頼してる、君がどういうわけでココに居るかは知らないけど、嘘は何時かバレる・・・だから、だから・・・」

 

 分かってる。それはもう決めていることだから・・・僕のケジメは何時か必ず自分でつける。

 

 「・・・そっか、やっぱりボクと違ってしっかりしてるや。」

 

 そう言い残して、ボクは消えた。

 

 「・・・さようなら、『ボク』。君の事、忘れないよ。」

 

 と僕の意識は現実へと戻っていった。


                        ◇

 

 総長と呼ばれる男は自身のひん曲がった足を抑えながら、頭をグリグリと踏まれ、現状自分の身に何が起こったか分かっていなかった。

 

 「痛ぇ・・・痛ぇよ・・・オレの・・・・・足」

 「ねぇ、さっき僕にやったことに比べたら序の口のレベルなんだからさぁ、あんまし痛がらないでくれる?僕が加害者みたいじゃないか。」

 

 無慈悲にも、曲がった足をガシっと掴み、ズルズルと砂の上を引きずる。

 

 「というかさぁ、さっき、何か言ってたよねぇ?『俺に立て着いた野郎は皆潰す、妹だろうが、弟だろうがお前に関係してるやつ全員メチャクチャにしてやるよ』・・・だっけ?」

 

 奏多はしゃがみ込むと総長のポケットをまさぐりバイクの鍵と財布に加え、相手の財布から免許証を取り出した。

 

 「近藤悠馬、っと住所は・・・あちゃー隣町か、めんどいなぁ」

 「な゛、何してんだ・・・ゴラァ!!」


 それを聞き不思議そうな顔で奏多は近藤の顔を覗いた。

 

 「何って・・・君の家に行って、君の家族に君と同じ目に遭わせるんだよ?」

 

 目の前の男が何を言っているか理解できない・・・とそんな顔になり、奏多は、ハァとため息をついた。

 

 「あのさぁ、小学校の道徳の時間でやらなかった?『人にされたら嫌な事をしちゃいけません』って、だから君がさっき僕をリンチしてくれたから、今から僕は君をリンチ・・・いや、半殺しにする・・・いや、死なない程度に殴り続ける・・・が正しいか。で、その後、君の家に行って、君のこの写真に写っている家族かな?恋人かな?まぁ、全員やるから関係ないんだけど、酷い目に合わせるから。」

 

 と財布に入ってあった写真をヒラヒラと目の前で揺らす


 「ふ、ふざけんなぁ!!てめぇ!!調子に乗りやがって!!!!おい!!てめぇら、何をボサッと突っ立てる!!早くこいつを殺れぇぇぇぇ!!!!」

 

 と怒号を飛ばすも、誰もその場から動こうとしなかった。

 

 「いいよ?全員掛かってきても・・・でも来たら僕は全身全霊を持って反撃するから。」

 

 と彼らに向けられた笑顔はとても晴れやかで、爽やかだった。

 

 「あーあ、誰も来ませんね・・・残念、じゃあ・・・こちらはこちらで始めましょうか。」

 

 と拳の形をグーに替えまずはお腹に一発お見舞いした。

 

 「ぐばぁ!!」

 

 変な奇声と共にその口から吐瀉物があふれ出した

 

 「うわ、汚いなぁ・・・僕は吐かなかったんだからもう少し頑張って下さいよぉ。」

 「・・・・ゆるじで、ぐだざい・・・・。」

 

 奏多はその言葉を聞き手をピクリと止めた。

 

 「ずいばぜんでじだ・・・もう、ぢがづぎまぜんがら・・・・だがら・・・・・」

 「許さないよ。」

 

 普通なら許す場面だと思うが、奏多は許さない、その理由は決まっていた

 

 「お前が奏の名前を出した時点で、お前はもう許されないんだ、危害を加えようとした時点で終わってるのさ。」

 

 絶対的な恐怖がその言葉一言一言から漏れ出していた

 自分は今日死ぬかもしれないと悟った近藤は、もう、考えるのを止めた

 

 「でも、もういいや。」

 

 拳を引っ込め、財布から札を丁寧に数枚置くと、ザッザッとその場から立ち去ろうとした。

 

 「ど・・・どうして?」

 「いや、君にも家族が居るって思ったら、君を殺せばその写真の人は悲しむ・・・連鎖なんだよ、暴力と戦争の後に残るのは何時だって。あと、それ治療費、足はバイクで事故った事にして、でないと面倒くさいから」

 

 そして、先程自分が殴られていた場所に行き、地面に落ちていた自分のプロフィールを拾うとビリビリに破き吹いている風と共に捨てた。

 

 「これ、コピー取ってる?」

 「い、いえ!!こ、これだけっす!!」

 

 それだけ聞くと、ホッとしたようにため息をつき、バイクに跨った。

 

 「さて、登校の途中だから早く行かなきゃ。」

 

 とエンジンを掛け、180度回転すると、風の様に去っていった。

 

 

                       ◇

 

 その後、奏多は制服がボロボロのまま大遅刻で登校し、大問題となった。

 

 「バイクを走らせていたら目の前に兎が飛び出してきたため、避けようとしたらバイクから転倒しました。」

 

 と嘘100%の嘘をかまし、日ごろの行いがいいのかあっさり信じてもらえた。

 

 その後、記憶喪失の件をしる者たちが、集まった。

 皆心配そうな目をこちらに向けているが記憶が戻ったことを伝えると皆、安堵していた。

 

 「・・・『ボク』の言う通りだ、皆優しいよ。」

 

 と空を見上げると、その空は雲一つない青空だった。

 

 

どうも、朱雀蓮です。皆様お久しぶりです。

とりあえず、LOSTはこれで完結です、これからは夏休み編に入っていく予定です。


夏がやってくる、太陽が照りつけ、蝉が鳴く夏。これは、そんな夏に起きた出来事の1つ目。

次回【ときめき奏多メモリアル】お楽しみに・

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