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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
52/75

球技大会 前篇

最新話投稿しました!

お気づきの通りこの話は前々回登校した話の大型編集版です。

かなりの変更をいれましたので前々回の話が頭に残っている方には申し訳ございませんがリセットして読んでいただければ幸いです。

では今回は反省の意を込めて長めにしましたのでお楽しみください

                                      朱雀蓮

 これは、今週の水曜日に迫った火曜日の放課後の話である。

 とある教室、カーテンで光を遮り、室内は真っ暗。

 そしてその教室の真ん中にろうそくの灯りがひとつ。

 そこには富士宮学園高等部の男子の大半が集い募っていた。

 全員黒いフードを被り胸にナンバープレートが付けられていた。

 そして男たちの手には紙が一枚、その紙にはこの場に居ない男子生徒の名前、10人位の名前がズラッとクラス番号まで詳しく書かれていた。

 「え~諸君、集まって頂いたのは他でもない・・・これより毎年恒例第13回美男子撲滅作戦会議を始める、各員資料を」

 「はっ!」

 黒服番号0番が支持すると1、2、3番が大きめの茶封筒から写真を取り出しホワイトボードに貼った

 「まずは、1年から該当者は4名、その中で注意人物はコイツです。」

 と1番が赤色のマーカーでグルグルと写真を囲んだ。

 「この男はサッカー部所属の1年エース、大多。こいつは現在1年生の可愛い度ランキング (非公式)第4位の生徒と付き合っています。」

 「なるほど、で?そいつの出る競技は?」

 「バレーボールです。」

 「よし、サーブ&スパイク地獄の刑だ。味方的問わずそいつにボールを全力のサーブとスパイクで狙い撃ちにしろ。次。」

 「他の者は?」

 「出ている競技にて1回か2回嫌がらせでもしておけ、次・・・だ」

 「はっ!2年生の該当生徒は2人、そのうち1人は超危険生徒なので最後に報告させていただきます。」

 「よかろう、では3年だ」

 「はっ!3年の該当者は3人、3人とも注意人物です、1人目は野球部キャプテン、2人目はカルタ部主将、3人目は科学部部長です」

 「3人の出る競技は?」

 「揃ってソフトボールです」

 「よし、1塁と2塁と3塁に設置しエラーギリギリのボールを全力で投げミスを誘え、この役は野球部員に任せる」

 「「御意!!」」

 そして、その場の全員が静まり返り、最後に残った2年生の超危険人物の写真を出した。

 0番は席を立ち、ホワイトボードに写真を大きく出した。

 「皆も知っているとは思うが、2年生靫空奏多・・・こいつは年に2回開催されるこの会議、要するに第9回目から毎回対象となっている生徒だ。」

 奏多の写真が出た瞬間、皆がブーイングをする。

 「静粛に!では2番よ報告を」

 「はっ!では、今年に入ってからのこの男の情報を纏めてみました。現在恋人無し、部活も無所属ここまでは一般生徒と何ら変わりません・・・が、現在進行形で告白、またはラブレターを受け取った回数&枚数を合わせて122、そして全てを振り全てに返事を返しています。」

 「ほう、1・・・22か。ほ、ほう・・・続けろ」

 「はっ!それではこちらを・・・」

 と数枚の写真を出す

 そこには奏多と女子とのツーショット写真が映されていた。

 「では写真Aを見て下さい、こちらは同じく2年の陸上部エース、別名、関東の疾風こと、轟加奈とのツーショットです。」

 「何だ、何でこいつらは腕を組んでいるんだ?」

 それは腕を組みながら一緒に登校している写真だった。

 「幼馴染のスキンシップで日常茶飯事だそうです。」

 「そうか幼馴染か・・・で、これは?」

 「え~こちらも同じく2年生、生徒会副会長の十六夜月夜との写真ですね」

 「何故、手をつないで歩いている?」

 「え~こちらはとある放課後に暗がりを怖がる彼女の手を握る対象との写真です」

 「そ、そうか暗かったらいいのか・・・で、これは?」

 「これは、同じく転校生にして自称対象の妹、乙刹那、永遠の2人との写真です」

 その写真は奏多に正面から抱き着く永遠と背後から抱き着く刹那の写真だった

 「こいつらは血縁なのか?」

 「いえ、妹分らしいです。」

 「ほ、ほう・・・義理でも妹だったらいいのか?い、いや!次だ・・・次へ行ってくれ」

 そして、次々と、淡々と、延々と写真は出てくる

 もう見るのも嫌になり、逆に俺たちがモテないのっておかしくねって疑問を持つものまで現れた。

 「もう・・・いい、見てるこっちが悲しくなる。」

 写真を封筒に突っ込み机をガンガン殴る者や、叫びを挙げるものもいた

 「会長・・・俺たち、同じ人間なのに・・・なんでこんなに違うんですかね?」

 涙を流す、血の涙を流す者もいる。

 だが、0番は立ち上がり零れる涙を拭う。

 「泣くんじゃない、諸君、良いか!これは革命だ!!これは主人公系イケメンに対しての革命だ!反逆だ!反撃だ!反乱だ!」

 「「「「「そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!そうだ!」」」」」

 歓声と共に同士たちの右こぶしが天を貫く

 「明日、地獄を見るのはぁぁぁぁぁぁぁぁ????」

 「「「「「イケメンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」

 そうこれはモブ共の果てない叛逆の物語。

 そして、ただの球技大会だ。

 そして、事の結末は悲劇になる。

                         ◇

 そして、水曜日、何時もの朝・・・という事はなく、靫空家の朝は何時もより1倍否2,3倍は盛り上がっていた。

 「♪~ふんふ~ん、ふんふふふ~ん♪」

 この家主の少年は鼻息を漏らしながら楽しそうに料理を作る。

 卵焼きはもちろん、普通の家庭の朝から作るには時間も苦労も多いローストビーフや、鯛の塩釜焼きなど弁当のおかずとなる大量の料理をこしらえていた。

 時刻は5時、3時から料理を続けており眠気はない、寧ろ元気溌剌にフライパンを操り料理が空を舞う

 その様子をリビングから一匹の獣がじーっと見ていた。

 座っていたソファからピョンと飛び降りた四つん這いの猫は次第に2足歩行へと変わり次第にその姿も仮面ライダーアギト初登場を思わせる光と共に、見た目7,8歳の少女、否、幼女へと姿を変えた。

 「主、今日は何時にもなくやる気が凄いのぉ、クンクン・・・どれも芳しい匂いじゃ」

 この古風な喋り方をする猫耳幼女こと、拾われた猫神兼靫空家の愛猫ソナタは出来立ての料理の匂いに耳がピコピコしていた。

 「うん、今日は球技大会だからね、皆と一緒にご飯を食べるからそのおかず作りをね。」

 「ほぅ、それなら儂が味見してやろうかのう」

 と厨房に入り料理を一品ずつ吟味してゆく

 「うん、うん!うん!!どれもこれも絶品じゃのう。流石は主じゃ。」

 「ふと思ったんだけど、君は猫なのに玉ねぎとか食べても何ともないんだね」

 「ふん!儂は神じゃぞ!そこら辺の猫と一緒にするでないわい!」

 とオニオンフライをバクリと食べる

 「もう何でもありだな、この猫・・・」

 笑いながら調理を進め30分後全ての調理が終了した。

 「よし、じゃあ朝食の準備に入るか。」

 と白米を水で研ぎまずはご飯を炊いた。

 次は鯖を2匹取り出し、綺麗に2枚に下ろす。

 水気を取り、生姜は薄切り、葱は5,6㎝位にきる。

 その後は大きめの鍋に酒とみりんをアルコールが飛ぶまで熱し、水、醤油、砂糖をいれる。

 この煮汁が煮立ったら魚を重ねないように丁寧にいれ、その上に生姜を散らす。

 そして煮汁をスプーンですくい魚に掛け、落し蓋をする。

 その間に味噌をボウルにいれ煮汁で溶き伸ばし、煮詰まった鍋に淹れる

 とりあえずはこれで完成。

 そして次は味噌汁だが、今回は簡単にアオサを使った味噌汁にした。

 時計をみるとまだ5時半、全然疲れはないが既にやること成すことは全てやっているのでソファにドサッと座るとその上にソナタがドサッと乗ってきた。

 「主、儂を撫でろ。」

 「いきなりだね」

 「主として当然の義務じゃ、ほれ疾く撫でろ」

 「はいはい、仰せの通りに」

 とソッと優しく頭から撫でる、人型の状態を撫でるのはこれで2回目だが、もう何が起きようと動じないぞ!

 相変わらず毛並みは良い、吸い込まれるように撫でてしまう。

 「にゃん♪、にゃ~ん、にゃんにゃん♪」

 耳をピコピコさせ上機嫌そうにする。

 今度は喉元を撫でる、正直、絵的には幼女の喉元をこちょこちょしているだけだがこれはただ猫を撫でているのだ。

 「んにゃ~ゴロゴロ」

 人型なのに猫の様に喉を鳴らす、いやホントに上手い。本物みたい。

 すると突如尻尾が生えてきた。

 ピロピロと尻尾をたなびかせ、喜びを表す

 だがその表情は蕩けるように、甘えるように、とろ~んとなりこちらをずっと見つめている

 「主ぃ~もっと~もっとして欲しいのじゃ~」

 だが、この天然野郎はそのまま鵜呑みにした。

 頭を、喉を、背中を、腹を、撫でまくった。

 優しく、丁寧に、その場に居る猫を完全に虜にした、籠絡させた

 そして・・・

 「え?な、何をしてるんですか、ソナタさん!?」

 幼女の小さな体は主の少年を馬乗りし、そのまま抱き着いた。

 そして、少年の顔をぺろりと舐める

 「ちょ、ちょっと・・・駄目だって、ソナタ!」

 そして、その唇が少年の唇を捉えようとしたとき

 「何奴!」

 奏多はハッと起き上がり咄嗟に上に乗っていたソナタをブン投げた

 「に゛ゃ!?」

 鈍い音とともに奏多は後ろを振り向くと其処には居候である佐々木紅葉がリビングのドアの前に立っていた。

 「ち、違うんだ!、紅葉さん!これは!その・・・」

 必死に弁解しようと紅葉に近寄ると紅葉の違和感に気がついた

 「・・・寝てる。」

 「zzz・・・いざ~真剣に~zzzz」

 立ちながら寝ていることにも驚きだが、明らかに何かと戦っている夢を見ていることにも驚いた。

 奏多は迅速かつ丁寧に紅葉を貸している和室の布団に戻すと直ぐリビングに戻った。

 そして、先程ブン投げたソナタの安否を確認しようとソファのある方向を向いた瞬間

 「この、大ばか者ぉぉぉぉぉ!!!」

 ソファのばねを利用し、天井高く舞い上がると鋭い爪をたてて、身体を回転させ、一筋の矢の如くこちらに襲い掛かる。

 「こ、これは!ま、まさか!規制的に・・・」

 「スクリュー・ド〇イバーァァァァ!!!」

 どこかの残虐超人かその師匠の息子ぐらいしか使わない技を平日の朝一番でその頬に受ける青年がそこにはいた。

 頭でなくて本当に良かった。

 そして、現在、ソナタは素足で奏多の頭を踏んでいた。

 「いきなり、こんな可愛らしい女子の身体を投げ飛ばすとは・・・あ~痛たたた・・・ほれ、儂の真っ白な柔肌に打ち身で紫になっておるだろう、ほれ、ほれ。」

 打った箇所を見せびらかしてくると益々罪悪感が沸くが、元はと言えば暴走しかけたこの猫のせいなのだが、結果的に怪我をさせてしまったのは自分だ。

 そういう奏多の性格を理解したうえで益々調子に乗るのがソナタの悪い所だ。

 「すいませんでした・・・」

 それを聞くとニヤリと微笑み頭を抑える足を強くする。

 ぐりぐりから音がゴリゴリに変わってきた、このままでは頭蓋骨が・・・

 「ほれほれ、もっと許しを乞え、そうすれば許してやるぞ~」

 調子に乗って行くのが解るが、真剣に謝罪するのは癪だ。此処は適当に謝罪するしかない・・・

 「すいませんでした、どうかこの愚かなる主をお許しくださいませ」

 言い過ぎてしまった感はあるが、これで許してくれるだろうと思った瞬間、その考えは180度裏目に出た。

 「ほう、ならば、反省の印として儂の足を舐めろ。」

 「・・・は?」

 思わず驚嘆の声を出してしまった

 「ん?どうした?ほれ、反省しとるなら疾く足を舐めろ、もしや・・・先程の言葉は虚言であったというつもりではないだろうな?」

 これは、マズイ・・・この後の行動とセリフによって生か死だ・・・

 奏多は脳細胞をフルスロットルさせ、現在考えうる選択肢を3つにまで絞った

 ①足を舐める

 ②嘘だったと正直に謝る

 ③逃走

 だが冷静に考えたらどれを選んでも不味い事に気がついた

 ①を選択→男として人間としての何かを失う 

 ②を選択→もっとひどい目に遭う

 ③を選択→背中に今度はマッハ・パル〇ライザーが炸裂する

 ・・・どれもバットエンドだ

 クソッ!一体・・・どうすれば!?

 「ん?どうした?主、何か言ったらどうじゃ?」

 「す・・・・た。」

 「ん?何といった?良く聞こえんかったのぉ。」

 「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!」

 人生初土下座を超えた土下寝を披露したが、ソナタの顔色を窺った瞬間・・・

 顔中に痛みが走った。

 そして時は過ぎ、時刻は6時半、奏と紅葉が起床しリビングに入ると、キッチンに居た奏多の姿を見て二人は驚愕した。

 「お、お兄ちゃん!?」

 「その姿は・・・一体・・!?」

 そう、奏多の顔は包帯に巻かれていたのだった。

 そして、ソナタは自分の爪についた赤い何かをぺろりと舐め満足そうな表情でソファに丸まっていた。

 奏多は包帯をつけたまま朝食を用意し、席に着いた。

 二人は不思議そうに席に座りそのまま朝食の席に着く

 「「「いただきま~す」」」

 そして2人は真っ先に鯖味噌にあり付いた。

 箸で1口台にきりわけ、ご飯に乗せ一口

 「はぁ~美味しいぃぃぃ」

 「絶品でござる~」

 アオサの味噌汁も啜りつつ鯖味噌と白米にありつく。

 そしてあっという間に平らげると、お皿を台所へ運びソファへ座った。

 「ん~っはぁ・・・あ~今日は球技大会か・・・」

 「ん?何か不安があるでござるか?」

 「はい・・・私運動がそこまで得意じゃないから・・・ちょっと不安で」

 すると、紅葉が奏の肩をガっと掴んだ

 「そんなに心配することではないでござる、落ち着いて自分の全力を尽くすでござる。」

 「ん~出来るかなぁ・・・」

 「出来るでござる!自信を持ってやるでござる!」

 熱血論を語る様に奏を励まし徐々に奏もやる気を出してきた

 「はい!頑張ってみます!って、お兄ちゃんもう出るの?」

 と奏多の方を見ると奏多は既に制服に着替え鞄を持ちソナタに餌をやっていた

 「うん、今日は球技大会前に風紀委員の仕事があるからすまないが先に行く、2人とも忘れ物しないように。」

 「は~い」

 「御意」

 そして、かがんでソナタに餌をやると、ソナタは奏多のほっぺに肉球をポムっと押してきた。

 これが許しのサインだと思った奏多はソナタをよしよしと撫で家を出ていった。

 おかずの入った重箱をバイクのトランクに丁寧に入れバイクにまたがると、エンジンをかけヘルメットを被る、すると・・・

 『どうも~マスター!本日は晴天!絶好の運動日和です!!そして今日は球技大会という事もあって不肖、私マスターたちの応援をさせていただきます!』

 と何時ものコスチュームから富士宮学園の高等部女子の体操着にコスチュームチェンジする姿は昔流行ったオシャレ魔女を彷彿させた。

 『・・・って、マスター、どうしたんですその顔、るろ剣の志々雄真実のコスプレですか?』

 これを見て怪我ではなくコスプレと判断するこのAI実は馬鹿なんじゃないか?

 「怪我したんだよ・・・コスプレして学校行かないよ」

 『ほう、マスターが怪我とは・・・相手は相当の手練れですな!』

 うん、ある意味。

 数時間前の事を振り返りながら、まだ足舐めてた方が良かったんじゃないかと思い始めながらバイクを走らせる奏多であった。

          ◇

 学校へ着くと奏多は荷物をもったまま体育館へ向かった。

 体育館へ着くと其処には体育委員と保健委員、そして生徒会と風紀委員のメンツが揃っていた

 「おはようございます」

 「おっす!奏多・・・ってどうしたその包帯?ファッションか?」

 何だろう皆からは僕に包帯ってオシャレなんだろうか・・・

 珍しく朝早く来ていた撫子のボケには突っ込まず、とりあえず荷物を置き体操服に着替えた。

 球技大会で風紀委員会が行う仕事は競技のセッティングやグラウンド整備、要は競技を行う前の準備の手伝いだ。

 生徒会と体育委員がメインで働くため今回は補助に近い

 「じゃあ、風紀委員会は体育館の床の清掃をお願いします。それが終わり次第、一度教室に戻って、クラスと合流して来てください。では、準備開始!」

 先生の号令と共にそれぞれが動いた。

 「靫空君、顔大丈夫?何があったの?怪我?」

 「黒城先輩、は、はい。大丈夫です、ちょっと飼猫に・・・」

 「尻尾でも踏んだの?私も猫飼ってるから尻尾踏んじゃった時は怒るよね、でも、顔は引っ掻かないかな。」

 「ウチのはちょっと荒っぽいですから」

 本当に荒っぽい、いや、荒々しい。

 それよりも、今は渚に起きた変化について語ろう。

 日曜日、渚と出会い、泣かれ、慰め、変わった。

 普通、そんなに人間簡単に変われることはないと思っていたが、渚は変わった、高々数十分の会話で、大変身&レベルアップした。

 月曜日に改めて会うと、腰まであった髪はバッサリと切り、ショートヘアーになっていた。

 雰囲気も変わり、暗い印象から明るい表情が増えた。

 正直、魅力的になった。

 「ん?どうしたのかな〜?お姉さんの顔に何かついてる?」

 「い、いえ!すいません、ちょっとボーッとしちゃって・・・」

 慌てる奏多の様子を見て渚はクスクスと笑っていた。

 すると、床をモップで拭いていた撫子が、奏多の背中を引っ張り腰を低くしながら耳打ちをした。

 「なぁ、あれ本当に黒城か?2日経ってもまだ、信じられねぇよ。」

 「あれは正真正銘の黒城先輩ですよ。」

 「な~に~?二人して内緒話?私も混ぜてよ~」

 すると渚がその後ろから背中に乗る様に凭れてきた。

 奏多の背中に柔らかい2つの物体がのしかかった瞬間、奏多は素早く脱出した。

 「い、いえ!べ、別に下らない世間話ですよ!ねっ!先輩!」

 「え。・・・あ、ああ!そうだぜ!下らない話だぜ!エジプトの経済の話だぜ!」

 何故エジプト?

 「へぇ~草薙さんって意外に新聞やニュース見るんだ、意外」

 「そうだぜ!ワールドワイドニュースと英国新聞を読んでるんだぜ!」

 嘘が酷すぎる・・・だが、渚は感心している、これでは埒が明かない・・・

 「そ、そういえば、今日の球技大会の開会式の時の生徒会と風紀委員、それぞれの委員長からの挨拶ですけどちゃんと考えてきました?まさか、何も考えてないって事は・・・」

 「何も考えてねぇ!!」

 素直でよろしい!と褒めたいが、この話は例の頑張りましょう会の日からずーっと念を押して言ってきたことなのだ、流石にマズイ・・・先生に怒られる

 「いや~だってよ、妹とスマブラやってたらいつの間にか今日になってたんだよ!!スマブラだぞ!仕方がねぇだろ!」

 「何開き直ってるんですか・・・習い事や家庭の事情ならともかくスマブラって・・・」

 「いや~妹がハメ技ばっかりしてくるからよ~いっつも勝てねんだよな~」

 「妹さんとの済まぬら話は聞いてないですよ。もう、どうするんですか?時間無いですよ」

 すると、奏多の肩に手を置き親指をグッと頼んだ

 「代役、頼んだ。」

 奏多ははぁ~とため息をつき、乗せられた手を払いのける

 「1ヶ月、持ち門検査当番と入れ替わりと引き換えです。」

 「なっ!?私を脅す気か!?」

 「普段からしてないことを持ちだすのが何で脅迫なんですか!で?どうします?登壇して赤っ恥掻くのと、当番をこなすのと、さぁ、選んでください」

 「・・・当番。」

 「了解しました。因みに当番サボると昼食時にもう二度とおかずを提供しませんよ」

 「・・・わかった。」

 珍しく子犬の様に従った。

 「じゃあ、さっさと準備終わらせましょう、時間がもったいないです。」

 と、ほんの20分くらいで掃除が終わり、奏多は大急ぎで教室に戻ると原稿を書き始めた。

 「お~っす、奏多!って?何やってんの朝から。」

 「だらしない先輩の肩代わり・・・ってとこかな、おはよう大前。」

 教室にはまだこの2人しか着ていないので大前は奏多の席の前に座った。

 「っつーか、今日めっちゃ熱くね?熱中症にならねぇかなぁ?」

 「水分補給しっかりしてれば大丈夫だよ、まぁ、今回もおんなじ競技だし、頑張ろう」

 「おう、俺とお前が組めば無敵だぜ。」

 そう提言するようにこの、大前実は、運動神経は抜群で、実は後輩から人気がある。

 「中学時代はよく二人組を組んであらゆる体育での競技を制覇していったもんだ、懐かしいぜ・・・」

 「でも、今回うちのチーム女子の方が多いから僕らでしっかりカバーしないとね」

 「ああ、今回こそ、事故に見せかけて女子に触れてみせるぜ!」

 なんて、野望が小さい・・・しかもセコイ・・・

 「声に出てるぞ・・・お前は良いよなぁ~モテるから。」

 「皮肉っぽく言うなよな・・・意外と傷つくんだぞ」

 「ハハハ、お前が傷つくって、ありえねーわ・・・まぁ敢えて突っ込まなかったが、その包帯どうした?遂になんかに目覚めたか?闇か?封印か?」

 「人を中二病患者みたいな扱いをするな、怪我だよ。飼い猫にひっかれたの。」

 正しくは抉られ、彫られたに近い・・・もうほとんど治ってるが、完全に治るまで包帯は外す気はない。

 「ふぅ~ん、それは可愛そうに・・・でも、大丈夫か?運動中とかって邪魔になんねぇの?」

 「なるかもね、まぁ邪魔になったら外すよ。」

 すると、徐々に生徒が増え始め奏多の前の席の生徒が邪魔くさそうに大前を見ているのに気がついた

 「おっと、こいつは失敬・・・じゃあ、また後でな」

 「うん、また後で」

 大前が自分の席に戻り奏多が引き続き原稿を書いていると、やはり包帯のせいか視線が集まる

 そしてやはりあいつは目を輝かせていた

 「め、盟友よ・・・遂に!遂に!次元を超越し我が次元へと到達したか!見事だ、そこで暗黒支配者(ダークマスター)である我より、貴様に称号を与えよう!えっと・・・よし!大いなる邪神の化身(ダークネスアバター)と名付ける!ハハハハハ我らの時代は近いぞぉぉぉぉ!!!」

 「盛り上がっているところすまないが・・・ただの怪我だ。次元を超越した覚えもないし、そんな悪い役っぽい称号はお断りだ」

 「なっ!怪我・・・だと!?馬鹿な!盟友は常時半径3メートル範囲でATフィールド貼ってるのに!そこまでの手傷を負わせるなんて・・・一体どんな使徒だ!」

 「僕はエヴァか・・・しかも半径3メートルに常時展開って、どんだけ心の殻厚いんだよ・・・ただの猫だ!飼い猫!」

 「まさか・・・その猫、化け猫で名前の後ろに先生が付いてはいまいな!」

 「ついてないし、化け猫って・・・」

 まぁ正しくは神だが・・・まぁ、大して変わんないか。

 「とにかくだ、これはただの怪我だから大丈夫。」

 「そうか・・・盟友がそう言うなら、すまんな何か作業中だったのだろう?時間を取らせた」

 とふと時計を見ると時間はあと20分まで迫っていた。

 奏多は大急ぎで原稿を仕上げる。

 だが原稿を再び書き始めて数分後、あの姉妹がやってきた

 「おはよーっす!!」

 「おはよ~・・・・」

 対照的な姉妹、元気な刹那と物静かな永遠だ、そして現在一番絡まれたくない二人とも云える

 「おっ!お兄ちゃん、どうしたの~?包帯って。ミイラの真似?」

 「鼻から脳みそずるるっと~」

 それ、処理中の話・・・

 いや!今はそれどころではない、一刻も早くこいつを仕上げねば・・・

 「何コレ~なんか書いてる!」

 「復活の呪文?」

 と書いている原稿を奪い取った

 「おい!返せ!」

 だが、二人は器用に机の上を移動し、紙を見始めた

 「何々?『今日はスポーツ日和の晴天にて球技大会を開催出来たことを、心より嬉しく思います・・・』

何コレ?ツマンない」

 そういうと原稿をビリビリと破り天に放り投げた

 「紙吹雪~」

 と永遠が何処からか出した団扇でこちらへと紙を煽いできた。

 「あぁ~!!原稿が・・・」

 そして、死刑宣告のチャイムがなり、原稿用紙は風と共に窓の外へと出ていくのであった。

 「「ごめんなさい・・・」」

 頭に大きなたんこぶを膨らませ体育館の集合場所にて軽い説教をした

 「ったく・・・くしゃくしゃにするならまだしも破るか?普通」

 「普通じゃないもんで」

 「異常なもんで・・・」

 「開き直んな、はぁ~結局アドリブか・・・」

 「ガンバ!」

 「ファイト~」

 なんだか2人が撫子に見えてきた奏多であった

 そして、遂に開会式は始まった。

 長々と校長や体育教員の注意事項を聞き終わり、体育員の選手宣誓が終わり遂に、生徒会と風紀委員からの挨拶まで回ってきた。

 「それでは、両代表者前へ」

 先程鏡を見たがまだ傷が残っており、少々お見苦しいレベルのものもあったので包帯は付けたまま登壇した。

 「まずは、生徒会会長、高ノ宮飛鳥さんからお願いします」

 体操着すら着こなす我らが生徒会長に皆が注目した。

 その雰囲気、姿勢はやはり、常人とは違う物があった。

 「皆さん。おはようございます、生徒会長の高ノ宮です。本日は絶好の運動日和です、熱中症や特に屋外の人は日射病に気をつけて下さい。以上です」

 「それでは、風紀委員長、草薙撫子さんの代役として、副委員長、靫空奏多君、お願いします」

 「はい。まず、怪我により包帯で顔を晒してないことを謝罪します、では、先程会長の仰られていた通り本日の気温は30度近くまで上がると聞いております、健康管理もしっかり気をつけるのと、競技の際、怪我の無いように頑張っていきましょう。以上です」

 「ありがとうございました、では皆さま拍手をお願いします」

 と拍手が体育館を賑やかせたテンションのまま各自それぞれの競技フィールドへと向かった。

 奏多はドッジボールの為、体育館の中央コートに集合していた。

 試合は2試合、制限時間、1試合30分、ルールはシンプルに顔面セーフの全員当てたら勝ち、時間いっぱいまで長引いたらコート上の生徒の数で勝敗を決めるものだ。

 1チーム18人、奏多のチームは男子6人女子12人と女子が多い編成となっており、逆に相手は女子が1人と完全に勝ちに来ている編成だった。

 奏多のチームの中で良く知っているメンバーは加奈、月夜、恵里佳、刹那、永遠、大前、紅葉、渚の8人だった。

 逆に相手チームの女子1人とは撫子だった

 「うっし!今日は遠慮なく暴れるぜ!お前らぁ!行くぞぉ!!!」

 「「「「おおっす!!!」」」

 男子17人を完全に支配していた。完全掌握していた

 「じゃ、じゃあ。うちらも円陣みたいなことする?」

 「うん!その方が勢いつくし!」

 「じゃあ、皆固まって!」

 こちらは女子が仕切る感じだが別に嫌な気はしない。

 円陣を組み皆下を向く。

 「勝つぞ~!!!」

 「「「「おおっ!!」」」

 そして、奏多と先輩男子とのジャンプボールで試合は始まった。

 ボールは奏多チーム、奏多がボールを拾いそのまま第一投。

 ボールは真っすぐ相手を捉え、体に当たりボールが跳ね返る、だが、他の選手が全力疾走で落ちるボールを辛うじてキャッチしセーフになった。

 「よーしゃ~!!!!」

 そしてそのまま、元々いる3人の外野と連携を取り奏多陣営の先輩女子があっけなく2人やられた。

 だが、彼らの目は全員が奏多をマークし、奏多の動きを一切見逃さない。

 「そこっ!」

 空を飛び交うパスの連鎖を捉え、紅葉がボールをキャッチした。

 「よし!行くでござる!!」

 紅葉の刀を振るまで強化された腕で投げた玉は凄まじいスピードで相手選手を捉えた。

 流石にこれは拾えず、跳ね返った玉は刹那の手に入った。

 「よっしゃ~~~~!!!やっと投げれる~!!行くよ~永遠~」

 「O~K~」

 もともと外野に居た永遠が腰を上げ、刹那と相手のコートを挟む陣形に入った。

 刹那はまるで野球で言うスライダーを投げるフォームの様に投げボールも超低空で相手コートを走る

 皆辛うじてジャンプして避けるが超低空球をものともせず、永遠がキャッチした。

 「モブキャラ君、君に決めた・・・」

 とジャンプしている男子生徒にターゲッティングし、飛んでいる足を目がけてボールを投げる、そして蹴らせるようにボールを当てると跳弾した弾はすっぽりと永遠の元へと帰った。

 「いっくよ~」

 今度は永遠は超低空球を投げた。

 「同じ二の舞は喰らわん!!」

 女番長草薙撫子が超低空球に合わせるようにスライディングしながらキャッチした。

 「あんびりーばぼー」

 呆気になっている永遠をよそにボールを待ち構えていた刹那の目の前には撫子が立ち尽くしていた。

 「最後に、何か言い残すことはあるか?」

 「・・・ボールが3つある」

 と胸を指さした瞬間、その指は鈍い音を立て曲がった。

 「あの馬鹿・・・」

 保健室へ歩いてゆく馬鹿一名を見送り試合は続行、遂に撫子がボールを持ち投げる時が来た。

 味方が全員警戒する中、約一名が余裕で立ち尽くしていた。

 「月夜!なんでそんなど真ん中いるんだ?狙われるよ!」

 「ふふん、盟友よ。分かっておらんな、この位置にいること・・・即ち!オー・・・グファッ!?」

 何かを語ろうとした瞬間、その小さい胴体に見事にボールがヒットした。

 「め、盟友・・・よ。」

 「だ、大丈夫?体変な方向に曲がってるけど・・・」

 クの字に折れていた、痛々しく曲がっていた。

 「た、頼む・・・我の肉体を・・・保健室(ヴァルハラ)へ・・・」

 そして、奏多は月夜を抱きかかえ、コートを出ると、保健委員へ彼女を渡した

 「よろしくお願いします・・・」

 そして試合は再開、ボールは奏多チーム、ボール所持は加奈。

 「よ~し!いっくぞ~!!」

 勢いのある球を投げる、だが、辛うじて男子生徒にとられ再びボールは撫子へと向かった。

 「おい!奏多!一騎打ちだ!決着(ケリ)つけようぜ。」

 「良いでしょう。受けて立ちます。」

 包帯を獲る、傷はまだ癒えていないがこんなものをつけた状態だとまともに受けきれない。

 そうして、二人の戦士は対峙する。

 撫子は全力でボールを放つ、ゴウンと凄まじい音を立て砲丸の如き1球が奏多へと襲い掛かる。

 迎え撃つは奏多、腰を低めに構える。

 そして、放たれた弾は約0.5秒で奏多の腹へと突き刺さった。

 そして奏多もボールを離さぬよう懸命に腕を、足を踏ん張り後ろに少しのけぞりながらもキャッチした。

 その様子を味方は安堵しながら、敵は悔しがりながら見ているのだった。

 「では、今度はこちらから・・・」

 と大きく振りかぶり奏多のボールは放たれた。

 だがその速度は部類で言えば遅いレベルの投だった。

 だが、逆にこういう球は獲りにくい、例えると、空中に弾けて飛んだボールを取ろうとしたときに上手くキャッチできず落としてしまう、そんな感じだ、早いモノに慣れた者であるほどその効果は大きい、だが・・・

 撫子は走る、ボールの元へと走る。

 そしてボールを掻っ攫うように奪うようにボールを獲る。

 「小細工は抜きにしろ、本気で来い。」

 とボールを転がし奏多へと渡す。

 奏多はボールを拾い指でボール回しをする。

 「分かりました、僕の全力で行かせていただきます。」

 指をベキベキと鳴らしボールを掴む。

 そして、見事なシュートモーションからその1球は投げられた。

 ジャイロ回転且つ超剛速球、ギュルルルと音を立てながら放たれた弾丸の如き1投を撫子はガっちりと獲った。

 「ふぅ・・・いいねぇ!なぁ奏多!」

 「はい!」

 本当に楽しい、本気で競技で競える相手はそうは居ないから本当に楽しかった。

 そして、再び撫子の1球、今度も獲ってみせると半歩後ろに下がった瞬間だった。

 滑った、いや厳密には滑りかけた。

 後ろを振り向くと、相手の外野選手が何処からかモップを持ってきて奏多の立っている後ろ一帯をワックスで拭いていたのだ。

 体勢を立て直そうにも時すでに遅し。

 砲丸の様な一撃は奏多の下あごから首に掛けての部分を無抵抗に確実に貫いたのだった。

                                          後篇に続く

 

 

いかがだったでしょうか・・・

仕事やゲームイベ、プライベートの暇を見つけては執筆している感じなので誤字脱字等がございましたら逐一ご報告ください、迅速かつ完璧に修正します。(過去の話に置いてもありましたらご報告していただけると幸いです)

余談になりますが、最近気温が一気に上がって尚且つ湿気も激しいので自室に早めのエアコンを起動させました。

部屋から出たくなくなりますねwwwまだエアコンを点けていない我慢強い方やそうでない方もお体には気をつけてください!

最後にもし良ければ感想やレビュー等を受け付けております。Twitterもありますので検索で朱雀蓮と打って頂ければすぐ出るので、お気軽にDMでもリプでも送ってください、出来るだけ全てにお答えしていく所存です。

次回投稿日は1週間後を予定しております。(多少の誤差あり)  

ではまた次回の物語で・・・

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