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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
51/75

『俺』の自由時間

更新しました。

 とある町の、とある公園のベンチで、少年は一人ポツンと座っていた。

 普段なら家で本を読んだり、テレビを見たりしたりして暇をつぶし、家にいる妹と居候に食事を提供し、満足する、そういう休みの時間を過ごしていた。

 だが、今日は妹が学校の友達と遊びに行き、居候も修行と行って朝一で山へと向かった。祐逸の暇つぶし相手である化け猫であり、飼い猫であるソナタが初めての外出をしに朝早くから出て行ってしまったので暇なのだ。

 そして、この少年の肉体は、いや精神は別の人格が支配していた。

 「はぁ~何もねぇな・・・公園に一人・・・ベンチ選挙・・・ツマンねぇな、外の世界も」

 ついさっき自販機で買ったコーラのプルタブを開けグビグビと飲んでいた。

 「ふぅーーーー・・・・ツマンなくてもコーラは美味い。」

 ものの数秒で飲み干したコーラ缶を片手で4センチ四方のブロック状に握りつぶしゴミ箱に投げた。

 投擲されたブロック状の缶は綺麗に空き缶のゴミ箱の穴に入った。

 「街中には出るなって言われてるし・・・あー!!暇だ暇だ!!!」

 どうしてこんな状況になっているのか・・・時間は数時間前に遡る。

                    ◇

 「いってきま~す!」

 妹の奏が午前10時前に家を出ていくのを見送り、兄である奏多は家で一人となってしまった。

 昨日食中毒まがいの事件が発生したが皆無事で済み、楽しく奏多を労う会と球技大会頑張りましょう会は無事行われた。

 まさか、一般人の料理の調合如きでやられるとは思いもよらず、乙姉妹も飛鳥を警戒するまではいかなかったが一目を置くようになった。

 「・・・はぁ」

 小さいため息が出る、本当に何もすることがないからだ。

 『なら、俺と変われ。』

 その声が聞こえたのはため息をついてほんの数分後だった、突拍子もなく、自分にしか聞こえない声が聞こえた。

 「・・・理由を聞こう。」

 誰もいない家で呟く

 『外に出て遊びたい』

 子供の様な理由だった

 『この前の戦闘の時どっかの誰かが怪しげな薬を飲んで狂いかけてたのを助けたのは誰だったかな~』

 白々しい、要は恩を返せといっているらしい。

 だが、奏多は・・・『僕』はこの事に対して反論できなかった、実際そうであったからだ

 「・・・許可する・・・が!約束してもらう事が幾つかある。」

 1つ、街には出ない事

 2つ、3時までには家に変える事

 3つ、怪我をするようなことをしない事

 4つ、無駄な買い物をしない事

 これらが守れなければ今後一切『俺』を出さないという条件を出した

 『・・・ちっ!めんどくせぇ・・・分かった!分かりましたよ』

 「よし、じゃあ変わるぞ」

 目を閉じた。

 変わるぞ。簡単にいったモノの精神の変化というのは何だか気持ち悪い感覚だ、睡眠や気絶とは違う感覚で精神が肉体から剥がされる感覚・・・こうして、入れ替わりは完了した

 目を開けると、奏多は自分の手や体を観察するように眺め、肩や首を回したりストレッチするような感じで身体をほぐした。

 全身からバキボキと骨の音が鳴る。

 そして大きく深呼吸・・・

 「はぁ~~・・・シャバの空気は美味いぜ。」

 まるで出所後の犯罪者の様なセリフを吐いた男の精神は間違いなく『俺』になっていた。

 そしてそのまま財布と携帯を鞄に入れ白っぽい私服から黒一色のコーディネートに替え少年はバイクにまたがった。

 そうして、冒頭の様な状況になっている。

 家を出てまだ1時間くらいしか経過していないがもう帰ろうかなと思っていた時だった。

 小学生くらいの子供が5,6人やってきてサッカーをし始めた。

 やはり小学生なのでボール捌きがぎこちなかった。

 「ああ!ボールが!!」

 5,6人でシュート練習をしている時にボールが大空を舞い公園の高い木に引っかかってしまった。

 木はつるつるで登りにくそうで普通に上りにくそうなうえに身長が低い小学生だと最早ボールを取ることは不可能だった。

 それでも懸命にボールを取ろうとしてボールや石を投げて落とそうとしているが逆に枝と枝の間に食い込みがっしりと固定されてしまった。

 そんな状況を心の奥でほくそ笑む青年の前に小学生たちが来た。

 「すいません!あの、ボールを取って下さいませんか?」

 丁寧口調で来なければ無視する予定だったが丁寧だったので仕方がなく手伝ってやることにした。

 高さは約7メートルといったところ、掴まれそうな枝は5メートル先。

 だから飛んだ。

 跳躍した。 

 5メートル飛んだ。

 そしてそのまま太めの枝を掴み、片手でサーカスの芸の様にくるりと回転し挟まったボールを難なく獲った。

 「ほらよ、獲れたぞ。」

 ボールを渡すと小学生たちは唖然としていた。

 そのままベンチに戻る前に今度はファンタグレープの750ml缶を3本買った。

 ゴキュゴキュゴキュと勢いよく素早く1本飲み終えまた缶を4センチ四方に握りつぶし、今度はリフティングするように缶を器用に蹴り、大きく空中に浮かせるとボレーシュートの体勢で勢いよく蹴った、缶はまたしても穴を通りゴミ箱にゴールインした。

 2本目を開けようとしようとする前に再び小学生が奏多に近寄ってきた。

 「あ、あの!サッカー教えてもらえませんか?」

 まぁ、暇だったし断る理由も無いし適当に暇もつぶせそうだったから奏多は了承した。

 と、サッカーを教えるといっても教え方が解らない・・・

 だからとりあえず全6人の動きを見た。

 結果は・・・下手だった。

 どこぞのサッカーアニメでも見てそれを真似しようとしているらしい行動ばかりだった。

 「おい、とりあえずその変なジャンプやら回転やら、気をためたりするの止めろ。アニメや漫画じゃねぇんだ。」

 ボールを貰いとりあえず基礎的なパスとシュートとドリブル、ディフェンスを教えた。

 「ちげぇよ!爪先だけで蹴んな!足の甲を使え!!あと、蹴らない方の軸足もずれてる!それじゃボールが変な方へ曲がる!おいそこのメガネ!ボール取られたら奪ってでも取り返す勢いで行け!キーパー!!ボールをしっかり見ろ!!目を閉じんな!そして弾くんじゃなくて抑え込め!!」

 暴言に近い指示のもと素人コーチによる特訓は約2時間続いた。

 「よし、最後だ!ワンツーのパス連携と2人のディフェンスを抜けてからシュート!」

 2時間前とはまるで別人の小学生たちは、見事なパスワークと連携ディフェンス、そして精密かつ威力の高いシュートを身に着けていた。

 「よし!そこまで!とりあえずこんなもんだが、どうだ?」

 すると6人はビシッと気をつけをした。

 「師匠のお蔭でシュートが狙ったところに100発100中になりました!」

 「師匠のお蔭で如何なるシュートをも防げる守備を身に着けれました!」

 「師匠のお蔭で如何なる敵をも潜り抜けるドリブルを会得出来ました!」

 「師匠のお蔭でボールは親友だと理解しました!」

 「師匠のお蔭でサッカーの神髄に触れられました!」

 「師匠のお蔭で現実を知ることが出来ました!」

 奏多からすればかなりオーバーリアクションだったが、苦笑いで良かったなと言った。

 「「「「「「師匠!ありがとうございました!!!!」」」」」」

 そしてそのまま綺麗に一列でボールを蹴りながら帰ってゆく小学生たちは、その後全国1位にまで昇り詰め、その後世界を獲るというのはまた別の話である。

 奏多は時計を見ると時刻は13時過ぎ、腹も減ってきたので近場のレストランか最悪コンビニで済まそうかと考えながらバイクにまたがろうとした瞬間。

 「あれ!?兄貴じゃないっすか!!お久しぶりです!!!ほらてめぇらも挨拶しろ!!」

 その声に振り向くと5,60人はいるであろう不良、ヤンキーの軍団がビッシリと道路を歩いてこちらに頭を下げ揃って挨拶をしてきた、正直煩かった

 「・・・ええと、確か城島だよな?」

 そう、不良グループのリーダー城島、かつて蛇屋誠司の口車にまんまと乗せられた部下を辱めた奏多の妹である奏を誘拐し速攻で倒してしまった為それ以降自分を兄貴と慕ってくるので仕方なく舎弟にし連絡知るとき以外は関わるなと言って早数ヶ月が経った。

 「うっす!覚えていてくれて感激っす!ところで兄貴は何方に?」

 「いや、腹減った所だから何か食おうかと・・・」

 「奇遇っすね!自分たちも今から行きつけの焼肉屋で気合い入れするところっす!」

 「気合い入れ?何かあんのか?」

 「はい!今から2時間後に隣町の大型不良グループと戦争っす!」

 軽い口調でとんでもない事を口走っていた

 「で、よければ兄貴ご飯だけでも一緒にどうっすか?勿論おごりっす!」

 「行く。」

 即答で奏多はバイクにまたがり場所だけ聞き後ろのヤンキーどもに走って追っかけるように命令し無慈悲にもこの後戦争する男たちの足を極限まで浪費させた。

 目的地の焼肉屋は個人経営らしいかなり大きめの店だったが老舗らしい風格を見せていた

 焼肉屋に入ると店主のおじさんが腕を組んで待っていた。

 「うっす!おやじ!56人だ入るぜ!」

 ぞろぞろと店に不良が入り、一気に店は満員となった。

 「おやじ、気合い入れだ!」

 すると店長は店の奥からあらゆる部位の肉と大盛ご飯とタレをを持って机に置いた。

 「野菜はなしだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!野菜が食いたきゃ焼き野菜屋へでも行ってろ!!!じゃあ、いただきまぁぁぁぁぁぁぁす!!!!」

 「「「「「「「「「「いただきまぁぁぁぁぁぁぁす!!!!」」」」」」」」」」

 その掛け声と共に肉が一斉に焼く音が響く、奏多は一人ポツンと店長が目の前にいる焼肉屋としては珍しいカウンター席の網で肉を頼んでいた。

 「塩牛タン2人前、ハラミ、カルビ、ロース、ハツ、ミノ、レバーを1人前、ご飯大盛と烏龍茶」

 店長は無言で店の奥から注文した品を持ってきた。

 そして数分後不良たちは立ち上がり一斉に店を出始めた。

 「おやじ、ごっそさん!代金置いとくぜ!」

 と急ぎ目に店を出ていった。

 金を数えレジに入れると煙草を吸い始めた。

 そして奏多が肉を食い始めて数十分後店長もといおやじの口が開いた

 「なぁ、坊主、お前あの馬鹿どもとはどういう関係だ?」

 「俺が上、あいつ等が下。」

 「そうか、お前があの馬鹿どもが言っていた兄貴って奴か。」

 「ああ、不本意だが。」

 牛タンが無くなりハラミも食い終えて次はロースに手が伸びていた。

 「ハハハ、違いねぇ。だが、あんな馬鹿どももこれから戦争しに行くんだとよ、相手は隣町の最大の不良グループ数はあいつ等の3倍、勝ち目のねぇ勝負に行くんだ、馬鹿だろ。」

 「・・・ああ、馬鹿だな。理由も分からん」

 「プライドさ、男の安っぽい勲章を守りにあいつらは戦うんだ、無謀でもな。」

 「プライドね・・・おっさんもそうだったのか?」

 「・・・ああ、若い頃はな。だが、大人になると無茶が出来ねぇ。いざって時に社会ってもんが絶対足かせになる、だからよ、こんな店で馬鹿語って青春する奴らが俺は大好きなんだ。」

 「・・・・。」

 焼きあがったすべての肉を口に運ぶ、ご飯を掻きこみながらお茶をがぶ飲み。

 そしてあっという間に全てを平らげ席を立った。

 「おっさん、美味かったぜ。良い肉だ」

 「そいつはどうも。」

 「でだ、あいつ等何処行ったか知ってるか?」

 「あ?聞いてどうする?」

 「いや、別に聞きたいだけさ。」

 「ふん、そうか・・・いいだろう、確か埠頭の近くの廃倉庫だ、間違いねぇ」

 「そうか、あんがと。」

 店を出ていこうとすると腕をがっしり掴まれた

 「代金は?」

 「あいつらのおごりだ、金置いていっただろう。」

 「いや全然足りん、お会計12万だが、あの馬鹿ども千円札十数枚とと万札数枚置いて行きやがった、普通に足りんからお前払え。」

 と領収書を見せつけられ、奏多は財布から金を出すと店を出た。

 「・・・おい、僕。」

 『何だ、俺?』

 「ちょっと食事の後の運動がてら埠頭の廃倉庫付近まで行くけどいいよな?」

 『・・・・良いよ。今回だけは許可する金を巻き上げてこい。」

 すると奏多は二ィと笑いバイクにまたがりスピードなどお構いなしで埠頭へと向かうのだった。

                      ◇

 埠頭では既に戦争は始まってた。

 城島の軍勢は3分の2まで減り一方向こう側は3分の1しか減ってなかった。

 「ぜぇ、ぜぇ、ちくしょう!ここまでか!」

 「諦めんじゃねぇ!ココで逃げたら男じゃねぇぞ!」

 城島の一声で士気が上がるがそれでも時間と共にやられる一方だった。

 それを向こう側の大将である近藤は笑いながら見ていた。

 「もうあいつらは虫の息だぁ!!殺れぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 と号令を掛けた瞬間、城島を囲む味方が次々と倒され城島はたった1人となっていた。

 「俺一人でも・・・やってやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 その叫びと共にトタンの壁をぶっ壊して一台のバイクが近藤側の不良を数人轢きながら現れた。

 「誰だ貴様?城島の仲間か?」

 近藤が尋ねるも奏多は無視した。

 「あ、兄貴・・・何で?」

 こいつは無視できない。

 既にボロボロだが腹に一発いいのをいれて、膝をついた

 「7万5043円。」

 「うっ・・・・な、何言って・・・」

 「お前がちょろまかした焼肉の代金俺が払ってやったから返せ、今すぐ、それだけだ。」

 すると、周りの不良が奏多の胸ぐらを掴んだ

 「何だてめぇ?パンピーの坊やは早くお家に帰ってママのお膝で寝てろ!」

 と殴りに来たのでこれがトリガーとなった。

 そう、文字通り引き金、暴れ狂う機関砲の如きこの男を喧嘩に駆り立てるきっかけを作る・・・要は自己防衛と銘打って相手をボコボコにできるきっかけを待っていたのだった。

 パンチを簡単に避け、奏多はカウンターで相手の顔面をどこぞのガキ大将が殴るような勢いで、顔面が凹むような勢いで殴り倒し、そのまま躊躇なく、行動をとらせることなく他の不良を一網打尽すること10分後、200人は居たであろう近藤側の不良は全員ズボンを全て脱がされそのズボンから財布が抜き取られ海に捨てられていた。

 「ちっ!湿気てんな!こんだけいてたったの13万かよ・・・最近の不良貧乏すぎんだろ。」

 と近藤を椅子にしながらカツアゲもとい盗んだ金を全て廃倉庫に投げ捨てた。

 「こいつらから奪った金でいいかなと思ったけど、やっぱ駄目だ、おい、城島。金出せ、お前らの部下からも財布を奪え30秒以内だ。」

 と結局、金は徴収し終え、城島を無慈悲にもボコボコにし家に帰った。

 これが、心の内側で見る限り『僕』が解説できる一日だ、そして、もう2度と『俺』を出さないように決意した日でもあった。

 

 

 

 

 

 

 


0キロカロリー生活を始めはや3日目、もう倒れそう・・・でも頑張ります

次回は若干、悲しい物語。

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