表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第2章 転校生編
40/75

梅雨と剣

最新話更新です。

新展開突入です。

 乙姉妹との死闘から1週間が明けた。

 その後、乙姉妹とは何事も無く、普通に過ごすことでクラスでも目立つことが無くなりとりあえずほとぼりが冷める・・・というわけにはいかず、乙姉妹は前よりも積極的に接してくるため、正直疲れる。

 肉体的にも、精神的にも、疲労していた。

 そして、奏は喫茶店での出来事から何故か目を合わせると顔を赤らめ視線を外してくる・・・何故だ?

 靫空家の愛猫、ソナタは未だに元の大きさに戻ることはなく、奏には極力姿を見せることなく何とかやり過ごしている。

 そして、季節は梅雨のシーズンに入り、梅雨入り初日、バイクが故障し1週間メンテナンス征きとなり、なんとも不幸な目に遭っているところだった。

 梅雨の時期、誰もがイラつくであろう湿気・・・それは洗濯物を乾きにくくし、買っておいたせんべいなどのお菓子が下手すると数日で湿気てしまうという最悪な存在だ。

 なお、自転車通学や徒歩は濡れながら行かなければならないのでなお最悪だった。

 現在、奏多と奏はじめじめと全くさわやかではない朝を迎え朝食にあり付きながら、ニュースを見ていた。

 「お兄ちゃん、何で梅雨ってあるのかな?」

 ふと奏が聞いてきた。

 「地球上にオホーツク海気団と小笠原気団いうものが存在する限り梅雨前線が生まれるんだ。」

 味噌汁を啜りながら言った答えに奏はハァーとため息をついた。

 「梅雨って滅ばないかな・・・」

 「消えないだろうね。ない年はあるって聞いたことあるけど、今年はハズレだね」

 今度は半熟の目玉焼きを丁寧に箸で割りながら答える。

 「ああ~!!もう!!憂鬱すぎる~!!学校行きたくない!!」

 「行きなさい。サボったら夕飯抜くぞ」

 渋々白米を掻きこみ味噌汁を飲み干すと鞄を持った。

 「今日・・・当番だから先行くね・・・行きたくないけど。」

 なるほど、朝からの不機嫌はここからか。

 「いってらっしゃい。気をつけてな。」

 手を振り、奏はどよーんとしながら家を後にした。

 「さてと・・・」

 食器を洗い、家の戸締りをすると奏多も家を出る準備をした。

 ソナタはあれから寝ることが多くなり今日も朝は起きず、ずーっと眠りっぱなしである。

 ソナタの食事(人間体)用の鮭の塩焼き、白飯、おからをテーブルに置きラップをかけ家を出た。

 外はザーザーと雨が降り、傘を差しても若干濡れる始末だ。

 「ホントに酷いな今年の梅雨は・・・」

 水たまりを避けながら道を進む。

 だが、水の音は良い。

 心を和ませてくれる。

 あれから精神的に異常な変化は見られないから、要は心の持ちようが大切なんだという事にした。

 ゲコゲコと雨が降っていながらも雨乞いの声を上げる蛙の声がまたいい。

 奏多はそういった自然の音を楽しみながら通学路を進んでいく。

 だが、そんな奏多の目の前に見慣れないものが現れた。

 雨の中、赤色の和傘をさしながら、地図を見てちょっと困ってそうなそぶりを見せる女の子。

 髪は長くポニーテールで纏め、服はこの時代の現代の道路でみることがないと思われる桃色の和服、そしてその腰には長い棒状のものが入っていると思われる布袋。

 奏多は物珍しそうに見ながら歩いていると、声を掛けられた。

 「もし、そこの人、すまぬが、この富士宮学院という学び舎は何処か教えては下さぬか?」

 真正面で見ると綺麗な人だった。

 「僕はそこの生徒ですから、良いですよ一緒に行きましょう。」

 奏多の答えにホッとしたのか微笑んでいた。

 学校までの道のり、二人は初対面ながらも話しながら歩いた。

 「学校にはどういったご用件で?」

 「こんな時期に急でですが、京都より転校でござる。」

 ござる・・・というより、さっきの話し方からすると口調と見た目から頬に十字傷でもあれば完全にどこかの明治剣客浪漫譚にでてきそうな人にか思えない。

 「そうなんですか・・・学校に馴染めればいいですね。」

 「ええ、もし同級生になることがあればよろしくお願いするでござる。」

  頭をお互いにさげ、それを見合った二人は笑った。

 としている間にあっという間に学校に着いた。

 「ここでござるか・・・町もビックリしましたが、都会の学び舎はここまで大きいとは・・・拙者、夢を見ている気分でござる。」

 「まぁ、うちの学校は中学とくっ付いてるから大きく感じるよ」

 その後、教員室に案内すると女の子は深々と頭を下げ、教員室に入っていった。

 教室に向かおうと後ろを振り向いた瞬間

 「あの人だ~れ~?」

 「新しい・・・女?」

 言い方ってものがあるだろう・・・

 「ただの転校生だ!人聞きの悪い事を言うもんじゃない、それと・・・」

 二人の頭に軽く拳をコツンとする

 「朝っぱらから気配を殺して後ろからストーキングするんじゃない・・・ばれてないと思ったか?」

 二人ともテヘッと舌を出した

 「ねぇねぇ!何点だった私たちの尾行!!」

 「でれれれれれれ・・・でんっ!」

 演出音が地味に美味い永遠に感心しながら答えた。

 「50点。良くもなく悪くもあるって感じだ。背後からの尾行は音を立てるなっていうのがセオリーだ。特に雨の日はやりやすいと思われがちだが、一流の人間には呼吸音、水の弾ける音の違いで認識される。この点を注意しろ。」

 いつの間にか昔の様に教えてしまっていることにハッと我に返り、ため息をつくと二人を連れて教室に向かった。

 教室に入ると、皆今朝の奏の様にどんよりしていた。

 席に座ると隣に座っている月夜の目が死んでいた。

 「どうしたんだ?大丈夫?」

 「ん?ああ、盟友か。聞いてくれ我が閨に眠る極上の供物の一部がこの呪われた雨に含まれた瘴気にあてられ、食うに値しないものへと変貌させられたのだ・・・」

 要約すると・・・部屋にストックしてあるお菓子の一部が湿気により食べられないものになったという。

 「僕の家もお気に入りの煎餅が駄目になってたよ。この季節、乾き物のお菓子には深刻だね。」

 ウンウンと頷き月夜は大きくため息をついた。

 「梅雨なんて滅べばいいのに・・・」

 苦笑いで月夜の傍を離れると同じくどんよりとした空気を発生させる生徒が居た。

 加奈もどんよりしていた。

 机の下で足をバタバタさせながら走る動きだった。

 恐らくグラウンドで運動できないからであろう。

 毎年この季節はこうなるので定番と言えば定番だ。

 「梅雨なんて滅べばいいのに・・・」

 なんだ、流行ってるのかこのセリフ・・・

 と空気を換えようと今朝の事を思い出した。

 「そういえば、今日学校に転校生来てるよ。」

 何気なく放った奏多の言葉に皆驚いた。

 「ついこの間2人来たのにもう!?」

 「男?女どっち?」

 「日本人?それとも外人?」

 様々な質問に奏多もあたふたしていた。

 「ええっと、日本人で女の子、それに学年は聞いてないし・・・それにうちのクラスになるって訳じゃ・・・」

 と答えていた時だった。

 我らが担任、神野京子が 勢いよく入ってきた。

 「ほら!座った座った!!今日は転校生だよ!!」 

 日本語的におかしいがそこはスルー・・・

 そして入ってきたのはやはり先程の・・・

 「ええっと、京都から転校してきた佐々木さんです!自己紹介よろしく!!」

 黒板に名前を綺麗に書くと転校生は口を開いた

 「どうも、紹介に預かった佐々木(ささき)紅葉(もみじ)と申します。どうぞ皆さまよろしくでござる」

 ござるというワードに疑問を持ったのは殆どだったがそれよりも制服でなく和服というのが驚きだった。

 「ああ、制服はまだ届いてなくてね、明日明後日にはくるからそれまでは私服で来てもいいってあったけど・・・これ私服?」

 「左様、実家は剣術道場を営んでおりますので小さき頃からこの格好で過ごすのが慣れてしまってますので。これが拙者の正装でござる!」

 皆がへぇ~という空気になっている時に、紅葉はアッと奏多を指さした。

 「今朝の!良かったでござる!運よく同級生になれましたな!!」

 ニコッと笑い手を振ってこたえた。

 「へぇ~転校生に行っていた親切な方って靫空か。まぁちょうどいいや佐々木さん、靫空の左隣があいてるでしょ、そこ座って。」

 と少し小走りでヒョイヒョイと教壇から席まで移動すると、奏多の隣の席に座った。

 「改めてどうぞよろしくで候!靫空殿!」

 「はい、よろしくお願いします。佐々木さん。」

 その光景を見ていた男子数人は思った。

 ―何であいつばかりいい方向に行くんだよ・・・と。

 授業が始まり、奏多は授業に集中していると隣からシュッシュッと音がするので見てみると、なんと紅葉が墨を摺っているではないか

 「ええと、佐々木さん?まさかとは思いますが・・・鉛筆は?」

 「はい、今日届くはずの荷物に全部入れっぱなしの故、いつも持ち歩いている習字セットを代用にしているでござる!」

 真っすぐな目をして言われても・・・

 奏多はやれやれと筆箱から鉛筆と消しゴムとマルチタイプのボールペンとノート用の紙を出すと紅葉に渡した

 「はい、どうぞ。今日一日貸しとくよ。書類書くときとかこういうのないと困るでしょ。」

 「かたじけない・・・恩に着ます。」

 素直に受け取り習字セットをしまうとすらすらとノートに文字を書いていった。

 チラッとノートを覗くとまさかの達筆で凄まじく輝いて見えた。

 休み時間になると、皆紅葉に寄ってきた。

 「佐々木さんて京都の何処出身?私、実家京都なんだ~」

 「拙者は宇治方面ののどかな田舎でござる。実を言うと今回の引っ越しは私だけで来てるのです。」

 皆が一人暮らしを羨ましそうに言っている中、紅葉はどこか悲しそうだった。

 「あとさ、その持ってるやつって木刀?剣道やってるの?」

 「ええ、そんな感じです。と、ところで!近場に剣道場のようなところはござらぬか?」

 「え、ああ、学校にあるよ。部員が居なくて閉めちゃってるけど。」

 それを聞いて目を輝かせた紅葉はガッツポーズをした。

 「うほん!左様でござるか・・・ありがとうでござる」

 そして、女子達は本題に入った。

 「あのさ、奏多君とはどんな関係?」

 「?靫空殿のことですか?別に友人でござる。皆も同じであろう?」

 「そうだけど!その、なんというか?恋仲?っていうんじゃなく?」

 それを聞き紅葉はあっはっはと笑い声を上げた。

 「いや、失敬。おぬしらが思ってるような関係はないでござる。知り合ったのも今朝ですし、案ずる事はないでござるよ」

 それを聞き皆ホッとしたところでトイレに行っていた奏多が戻ってきた。

 「あっ!靫空殿、丁度良かった、できればでいいのですが、昼休みおおざっぱでいいので学校案内を頼みたい。」

 「いいですよ、僕で良ければ。」

 とニコッと笑い席に着きチャイムが鳴った。

 女子一同は【この子は安全!!】と思った。

 そして時が過ぎ昼休み

 奏多は紅葉を連れ、食堂、保健室、実験室、音楽室、体育館、屋上と案内した。

 あいにく屋上は雨で入れないので食堂に戻り昼を共にした。

 紅葉は試しにと食堂の食券を買い、ミックスフライ定食・ご飯大盛を頼んだ。

 奏多はいつも通りの華やかなお弁当、それを見た紅葉は目を輝かせた。

 「ほぉ~、彩鮮やかですね!お母さまがお作りに?」

 「いえ、自分で、妹と二人暮らしなんで・・・」

 「何と!それが真なら素晴らしいですな!!」

 「よかったらどうです?感想をいただきたいんで。」

 と肉じゃがを箸でつまみ一口。

 「うんうん、絶妙な濃さ・・・それにこの出汁の染み加減!絶妙でござるな!!」

 ここまで言ってもらえると正直って嬉しい。

 「靫空殿にはお世話になりっぱなしで何だか申し訳ないでござる。」

 「いえいえ、当り前のことをしているだけですよ。」

 茹でたインゲン豆をシャクシャクと口に入れた

 と会話が進まない食事が終わり2人は教室に戻ると、あっという間に放課後になった。

 「靫空殿、すまないが最後に剣道場に案内してもらってもよろしいだろうか?なかなか言い出せずに済まない」

 奏多はもちろん快く承諾し、二人は無人の剣道場に向かった。

 剣道場は意外にも汚れておらず、2人は靴を脱ぎ、入り口の前でお辞儀をして入ると紅葉がスゥーと息を吸った。

 「いい道場でござるな。静で、集中が出来る。」

 壁に掛けられている木刀を二本とり、その一本を奏多に渡した。

 「・・・あの、これは?」

 奏多が困惑している一方で、紅葉は剣を構えた。

 「先程の所作と、今の剣の持ち方でわかる、お主、剣の心得があるのでしょう?」

 正直びっくりした、まさかこんなことでわかるとは・・・

 しかも木刀を握ってからの彼女の雰囲気の変わりようには奏多も真面目な表情になった。

 「靫空殿は何か似たようなものを感じるでござる。」

 そう言うと剣道の型とは大きく離れた正に本当の真剣での打ち合いの様な体勢に奏多が気付いた瞬間—

 一筋の閃光が自らの腹部目がけて飛んでくる。

 木刀ですかさずガード・・・したが、何と木刀を貫通し勢いが止まることなく奏多の腹部にメリメリと音を上げた。

 「・・・グッ!!?」

 鋭い一撃、本物の真剣ならば一撃で腹に穴が開いていただろう。

 そのまま後ろに倒れた。

 「だ、大丈夫でござるか!?す、すまない!靫空殿から感じたものが剣客に近かったもので、つい名のある剣豪なのかと・・・」

 何でもかんでもオーラが強ければ本気でくるもんじゃない!!・・・と言いたかったがその言葉は胸にしまい込んだ。

 「イテテテ・・・ぼ、僕は、そんな達人の様な剣さばきは出来ませんし、剣道は授業でやっただけです。」

 嘘だ、授業で剣道などしたことはない。

 その後頭を深々と謝罪し続ける紅葉に頭を上げるように説得し、揃って剣道場の鍵を返しに行ったその時だった。

 今度は土下座をしこちらに向いた。

 「どうか!居候させてください!!」

 「・・・え?」

 教員室に積み重ねられた引っ越しの段ボールが紅葉目がけて落下していくのだった


 

 

次回投稿は未定です。

次回もお楽しみに!! 

【読者数6000人突破!!】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ