兄弟げんか
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2人は首を絞められ意識がブラックアウトしてきた。
だが、奏多の異変に気がついたのはそのすぐ直後だった。
首を絞める指が若干だが震えていた。
次第に、徐々に、時間が経つに連れて、奏多の握力が弱まってきたのである。
先程、奏多は降参を命じてきた時点でおかしいと気がつくべきだった。
溢れんばかりの殺気を出すものが降伏しろなんて言うこと自体がおかしかったのだ。
一方、奏多の心の中ではどす黒いナニカかが自らの心を支配していた。
―コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ コロセ
殺意が語り掛けてくる、殺せ・・・と。
こんな心地のいい声を聞き入れれば、どんなに楽になるだろうか・・・どれほど心が解放されるだろうか。
だけど・・・この殺意は一瞬だけでいい。殺す手前まででいい・・・だから・・・・引っ込んでろ!!!
心の中でどす黒いナニカにそう叫ぶと再び心に、身体にどっしりと何かが入ってくるのが分かった。
無理やり抑え込むことしかできない・・・これをコントロールすることは再び笑いながら人を殺すくらいの残虐性を取り戻すしかないが、今の奏多にそのサガを取り戻すことは絶対に無理だった。
首を絞めた手を放し、自分の手を見る。
自分の手に着いた血が乾きべっとりと血が付いていた。
拳を握り目をつぶる。
戻ってきてしまった・・・この世界に。
だがそんな事を気にしている時間はなく、奏多は防御に入っていた。
かなり痛めつけたとはいえ、肉体と体力は超人、制限時間付きの殺意と残虐性で決着を付けれると思ってはいたが、元の肉体は十数年訛りに訛った肉体では限界はあったし、途中のアレがかなりの体力を使ってしまった。
「さっきの・・・【地獄の操り人形】どうやって抜け出したの?」
「・・・解答求む・・・・」
「ん?ああ、さっき、のは・・・身体を糸の刃物の繊維を体に食い込ませて身体の切断と再生を同時にした。流石に・・・体力を使った。」
自己再生・・・組織でもⅡのみに備え付けられた能力、自分の細胞を操作し無理やり傷を再生させる。だが、リスクは大きく傷がでかければでかいほど、寿命がする減ってゆく。
先程の種も仕掛けも無い切断ショーみたいなダメージはかなり大きいダメージだった。
「そっか・・・ようやくわかった。」
「お互い体力ない・・・次でおしまい。」
先程の闇の中で受けたダメージは思ったより深く、特に首の頸動脈からの出血量は既に常人ならば危いレベルである、しかも傷の再生は全く働いておらず、現在も少しづつ少しづつと出血が進んでいた。
「そうだな・・・。」
首の傷を抑え、よろよろとナイフを構えた。
2人も体に受けた蹴りや投げ飛ばされた際の打ち身などを抑えながら共にナイフを構えた。
「うおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「「てりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
共に叫びながら交差する、身体に鋭い痛みが走る。
「ぐっ!かはっ!」
だが、それは相手も同じ、否、それ以上だろう。
「なっ・・・」
「うっ・・・」
奏多はよろよろと辛うじて立ち上がり、刹那と永遠は膝を付き倒れた。
「これは・・・教えてないからな。」
奏多のナイフは宙を舞い地面にカランカランと落下し、奏多はナイフを囮に注意を引き出来るだけ回避をし二人の鳩尾あたりに鋭い拳を一撃ずつ与えたのだ。
だが、ダメージはあり、斬られた個所から体内にわずかに残っているであろう血液が出血し意識が途切れるのだった。
結果:奏多VS刹那 永遠 (引き分け)
奏多が目を覚ますと首の高さが少し高くなっていた。
「あっ、起きた!!」
「でも、顔真っ青。」
二人の膝の上に頭が乗っかっていることに気がつき、退けようとしたがどうにも体が動かず、仕方がなく身を委ねるのだった。
「・・・引き分けたか。」
「うん。」
「うん。」
静寂・・・まさかこうなるとは思ってもおらずどうしようか互いに困っていた。
だが、少し奏多は考え結論を出した。
「僕は・・・何時かはお前らの元に戻るよ。でも、奏がちゃんと僕が居なくても大丈夫になってきてから、数年後、約束する。それから・・・僕はお前らを放って消えた責任がある。すまない・・・」
「謝んないでよ・・・Ⅱらしくない。」
「ホント・・・変だよ。」
二人の涙がボロボロと奏多の顔に落ちてくる。
「泣くなよ・・・それと、お前らこのままこの町に居ろ。組織の追撃が来るとめんどくさい。」
「・・・ああ、それなんだけど・・・・、私達も追跡対象になってね・・・・」
「お兄ちゃん探してる間の連絡とか応答とか全無視してた」
それを聞いた瞬間、奏多は唖然としてしまった。
「じゃ、じゃあ・・・お前たちは私情で動いてたって事か・・・?」
「「うん!!」」
奏多の頭の中で考えていた考えとだいぶんずれていたので、恥ずかしくもあり、ただ単に今回の戦いはほぼ無意味だという事が解ってしまった。
「・・・あ、あはははは・・・・・・・・・・。」
もう、笑うしかなかった。
「はははははは・・・・そうだ、刹那、永遠。君らの事なんだけど・・・。」
その一言に2人は驚いた。
「え、名前、呼んでくれた?」
「うん、今・・・呼んだ・・・」
それは認めた証、この二人を自分の形だけでも兄弟であると。
「ん?ああ、良い名前だな。自分たちで付けたのか?」
「うん!うん!そう・・・自分たちで・・・・考えたの!!」
「褒めてもらえた・・・褒めてくれた!!!名前、頑張って考えた・・・」
泣いているところを見るとよほど嬉しいのだろう。
「泣くな!で、話を戻すが、お前たちは明日からも学校には来い。で、組織の追手が来れば協力して撃退する。3人でだ、2人だけでは決して挑むな。」
そういうと、奏多はよろよろと立ち上がり倉庫を出る。
「また、数時間後な。」
時刻は深夜2時、霞んでいる目でバイクを走行するのは危険だが、バイクに搭載されている自動運転モードに切り替え、バイクは深夜の道路を走って行くのだった。
家に着くと、玄関の取っ手に手を掛け、ガチャリと戸を開けると、見覚えのある小さな体が奏多に抱き着いてきた。
「主様!良かった、良かった・・・」
「ただいま・・・ソナタ、ちょっと傷口が開きそうだから、ちょっと離れてくれないか?」
抱き着かれた個所からじんわりと血が出ていく感覚が解り、感覚がマヒしてきた。
「す、すまん!って、酷い傷じゃ!今すぐ手当を!!」
と肩を貸されながらリビングに行くとソファにドサッと倒れた。
奏多は戦闘服を脱がされると、上半身は血の海だった。
胸には大きな十字傷、腕、脇腹、肩、首、背中、には様々な深さの傷が入っており、出血多量による体の色は死人に近く、現在の体温は22度近くまで低下していた。
「とりあえずは・・・こんなもんじゃ、って言ってものぉ・・・こんなもの気休めじゃ。」
「そう・・・か。でも、ありが・・・とう。」
喋るのも苦になってきた。
「主様!?仕方がない・・・やるか」
と、薄れゆく意識の中、奏多は見た。
目の前にいる幼児に変身した猫は急に大人びた女性に早変わりした。
もう突っ込む元気もなく、とりあえず身を委ねる。
不思議に体がポカポカと温まってきた。心なしか痛みも引いてきた。
そのまま、奏多の意識は途切れ、すやすやと寝入ってしまった。
そして、すぐさま目を覚ます、いや・・・夢に近い世界で意識を取り戻した。
「ここは・・・・」
真っ黒な世界、何時もの真っ白な世界ではなく、どす黒く、立っているだけで気分が悪くなりそうだ。
『・・・よ、よう。何とか生き残ったな。』
いつものへらへらした態度ではなくどこか疲れてそうで元気がなかった。
「どうした?なんだか様子が変だぞ。」
と聞いた途端、あれだあれと言わんばかりに指を指した地点に視線を移すと、その先にはどす黒いナニカがいた。
「・・・あ、あれは・・・何だ?」
『わからん。だが、攻撃的だ、ちょっと止めようとしただけでこのざまだ。』
止めようとしたことにも驚いたが、いつの間にかこんなものが自分の中にいたとは驚きだった。
『ほら、早く帰れ帰れ。俺は疲れてるんだ。』
「ああ、ありがと」
ふんと鼻息を鳴らし、そっぽを向くそぶりを見せた。
「ああ、またな」
と、現実でちゃんと目を覚ますと、目の前には見覚えのない女の子が居た。
「・・・・ん?にゃあああああ・・・・良く寝たにゃ。」
奏多は女の子と目が合い、どうしようかと戸惑っていると
「おお、主様!すっかり元気そうじゃないかにゃ!」
「え?ソナタ・・・?」
そう、何時もは小学生くらいの小ささのソナタが幼稚園児サイズ位の小ささに変わっていたのである。語尾も【じゃ】から【にゃ】にかわっている。
「ああ、これは、主様の傷の修復に儂のため込んでいた妖力をフルで使ったからのう・・・ちいと身体が縮んでしまってのう・・・」
と身体を起こし見てみると体の傷は胸の十字傷跡がうっすら残っているくらいで全快していた。
「ありがとう・・・本当に。君は最高のペットだ。」
と頭を撫でる。
「ふふふ♪もっと褒めても良いのにゃぞ?」
奏多はニコッと笑い、頭をもっと撫でると顔を赤らめながら、顔をスリスリとしてきた。
「今何時?」
「ん、ああ、5時前にゃ。妹君を起こす時間にゃ。」
とソファからぴょんと飛ぶと同時に何時もとは少し小さい子猫サイズに縮んでいた。
「ご飯はどうする?」
「今日は煮干しの気分にゃ。」
と煮干し新品の袋から小皿にカラカラと出し、ミルクを注ぎ、ソナタに出すと、小さい口でペロペロむしゃむしゃと食べ始めた。
「奏起こさなきゃ・・・」
と二階に上がり奏を起こしに行く、昨日睡眠薬で無理やり寝させてしまった為、風呂に入れてやらないといけないので早めに起こそうとした。
部屋に入ると、奏多はすぅすぅと寝ていた。
よだれを垂らし、幸せそうに寝ていた。
この顔を見ると日常に帰れた気がする。
「ただいま。」
とおでこにチュッとキスをし、無慈悲にも部屋の電気を最大点灯で付けた。
「ん~?むあああああああああああ!?」
寝ぼけながら身体を起こすと、目を細め、奏多の顔を見るや否や意識が覚醒した。
「おはよう。ほら、昨日すぐ寝ちゃったから風呂入ってないだろ?ざぱーんと入ってきなよ。」
よだれをゴシゴシ拭きバタバタと風呂場へ行く奏を奏多は微笑みながら見るのだった。
今から新連載「Dな妹とKな兄」を書いていきます!どうぞお楽しみに!!!




