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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第1章 日常編
33/75

LEVEL2

 薬をかみ砕き、変化があるものだと2人は警戒したが、薬を飲みこんだ直後、奏多の肉体に異変が起きた。

 それは急激な体温の低下、それを判断するための思考能力も低下、身体から力も抜ける・・・

 ・・・失敗、か・・・・。

 奏多の身体はだら~っと力が抜け益々【地獄の操り人形】の紐の棘に肉が食い込んでいくのだった。

 「・・・なんだったんだろ?」

 「こけおどし・・・?」

 だが、次の瞬間、二人はあり得ないものを見た。

 永遠から解除しないと絶対に外れない【地獄の操り人形】が奏多の身体からするりと抜け、その場にどちゃっと、血に塗れながら倒れた。

 「・・・永遠、何で解除したの?」

 「してない・・・解除なんかしてない、ちゃんと作動している。」

 だが、現実にこの男の身体は紐から解放されているのだった。

 奏多はそのままスッと立ち上がり血に塗れた自分の手を閉じたり開いたりしながら二人を背にしていた。

 「どんな手品使ったかしれないけど・・・これで、トドめ!!」

 「THE・END」

 二人が後ろからナイフと紐を仕込んでいた警棒でトドめを刺しに行ったが、奏多はこちらを振り向くことなく左手でナイフでナイフを防ぎ、思い切り振り下ろした警棒の右手の素手で握りしめた。

 「「な!?」」

 驚いた2人の武器を弾き飛ばし、二人の手首を掴み互いの肩を思いっきりぶつけ、その衝撃で動けないコンマ数秒の内に二人の腹に同時に数発の蹴りをいれた。

 そのまま二人は吹っ飛ばされたが、空中で体勢を立て直し、反撃に思いっきり殴りにかかったが、空中で二人の拳を握りしめ、グルングルン回転しながら倉庫の壁に二人を投げ飛ばした。

 乱回転しているため、受け身を獲る暇もなく壁に激突した。

 だが、スッと立ち上がり首をゴキゴキ鳴らした。

 「ようやく、楽しめてきたね。」

 「ワクワク♪」

 ダメージが残っている気配はなくかなり余裕そうだ。

 「さっきの薬って何なの?」

 「ドーピング?」

 奏多は何も答えなかった。

 いや、答える事は出来なかった。

 先程奏多が摂取した薬はドーピングや危険ドラッグの様な類ではなく、ただ単に精神的な抑制を消す薬だ。

 奏多は依然、自らの精神に縛りをかけた。殺人衝動、破壊衝動・・・いわゆる目につく敵は全て破壊する、殺すなどといった類の衝動を封印した。

 普通に考えて人は衝動や、欲望を封じることは不可能に近い、数日は可能だが、いづれ復活する。

 だが、奏多は奏を拾ってからこの十数年間この衝動を押さえつけて生きてきたが、先程この禁を最低限の制限時間付きで破った。

 そして、その目は先程までの追い詰められた小動物の目ではなく、狩る側、ライオンや豹の類の目に変わった。

 それに気がついた二人は来ていた制服を脱ぎ捨て下に来ていたおそろいの戦闘服を露わにした。

 戦闘服に装備されているコンバットナイフを手に取り二人は構えた。

 奏多もナイフを構え体勢を低く構えた。

 ジリジリと間合いを取り、互いに睨みあう。

 そして同じタイミングで三つの影は交差した。

 奏多のナイフは2本のナイフを同時に防ぐ、二人は同じタイミングでハンドガンを発射するも、弾を打った瞬間、奏多は服にいれている薬莢を2発放り投げると投げた薬莢に弾が命中し弾けた。

 そして、薬莢を指で弾くと弾丸並みの速さで永遠の腕を狙い、ハンドガンを弾き飛ばした。

 そのハンドガンを空中でキャッチするとすかさず2人に目がけ発射した。

 2人も弾丸を軽々と避けた、だが、避けた瞬間に奏多は一瞬にして二人の溝内あたりに思い切りの拳を叩きこんだ。

 「ぐっ!」

 「かはっ・・・」

 二人はバック転で再び間を取ろうとした瞬間、上がった足を掴み思い切り地面に叩きつけ二人の首に肘で抑え込んだ。

 「っぐ・・・ハハハ、アッハッハッハァァァ・・・良いよ、良いよ良いよ!最ッ高!」

 「楽しい楽しいィ!絶頂だね!!!!」

 と床に手を当て寝ころんだまま奏多を蹴り飛ばして立ち上がった。

 「行くよⅢ」

 「行こうⅣ」

 二人はハンドガンで祐逸の照明を破壊し倉庫内を真っ暗にした。

 完全な闇、二人の気配は消え、視界が慣れない中、奏多は目をつぶり闇に眼が慣れるまで時間経過を図った。完全な闇なのは向こうも同じ、そう思っていた。

 だが、次の瞬間、自分の胴体にクロスにダメージが入るのを感じた。

 少しずつ、少しずつ、じっくりとじっくりとダメージを与え弱った敵を叩き潰す・・・これぞ、Ⅲ、Ⅳの【静かなる惨殺(サイレントマーダー)】戦術

 そして、クスクスと笑い声が真っ黒な空間に響き益々気配察知が出来ない。

 「クスクス・・・」

 「クスクス・・・」

 笑い声が絶えず、集中できない。

 「そういえば、言い忘れていたけど・・・」

 「衝撃の告白まで・・・3、2、1!」

 「「妹さんの拉致事件の計画者は私達で~す!」」

 その瞬間、奏多の手が震え始めるのを2人は察した。

 「怒れ、怒れ!ほ~ら、こっちこっち!」

 「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~」

 怒りで我を忘れたものほど、倒すのは容易い・・・

 2人は暗闇でニヤリと笑いながら今度は喉元に目がけてナイフを突き立てた・・・と思いきや、ナイフは奏多の両手により防がれ手を貫通し動かなくなった。

 そして、手にナイフが刺さっている状態で二人を投げ飛ばした。

 「な・・・!?」

 「嘘・・・?」

 そして立ち上がると同時に手に血の濡れた感覚が首を絞めた。

 首を絞める力は弱まることなく、ドンドン強くなってきている。

 「・・・俺の勝ちだ。」

 だが、2人は諦めることなく奏多の身体を弱まった力を振り絞り蹴る

 「・・・ま、だ、終わって・・グッ!?」

 「絶対に・・・か、つん、だ。ウッ!?」

 言葉を発すると余計に首を絞めてくる。

 「絶対!!!!諦めるもん・・・か!」

 「取り戻すんだ!!ぜ・・・ったい!」

 首を絞められ意識が遠のく中2人は昔の事を思い出していた。

           ◇

 私たちは不完全だった・・・

 そう言われたのは生まれてすぐだった。

 とある施設、とある研究所、初めての思い出は真っ白な部屋、自分の目の前には自分そっくりの人間がいた。

 お互いに指を重ね、本物かどうか確かめ合った。

 そして、私達はその次の日から色々なテストをさせられた。

 だが、あらゆるテストを行ったが全て基準値以下、超人として作り上げられた私たちの身体は人間と同じくらいだった。

 テストが続き、何日経ったか分からないが、いつも通りの真っ白な部屋に入った。

 だが、2人の目には世界がモノクロにしか見えなかった。真っ白な部屋であっても、食事や読んでいる本でさえも全てがモノクロだった。

 そして、私達同士以外の顔はノイズが掛かったように濁っていた。

 今日もいつもの様にテストが終わり部屋に戻る、だが、その途中の廊下でピアノの音色が聞こえた。

 音は二人の耳にしっかりと残り、その音につられ2人は廊下の一番奥の部屋に導かれた。

 その部屋は私達と同じ真っ白だったが、部屋の中心に黒いピアノが1つ置かれていた。そしてそれを演奏する人間が1人。

 不思議にもその人の顔はノイズが掛かっておらず、逆に鮮明に見えた。

 その男の子は年齢は自分たちより少し高そうだが全然幼い。

 いきなり部屋に入ってきた自分たちに目もくれず、ひたすらにピアノを弾いていた。

 暫く、ピアノの音色を聞いていると後ろのドアがバンッと開き私たちは連れ出された。

 その次の日から私たちは毎日その部屋にこそっと入ってはその男の子のピアノを聞いていた。

 来る日も来る日も、男の子はピアノを弾き続け、それをずーっと聞いていた。

 だが、ある日、男の子はピアノを弾いておらず、本を読んでいた。

 それを知らずいつもの様に入ると、本から私たちに意識を向けた。

 「・・・誰?」

 本を置き、私達に近づく。

 「名前は?」

 私たちに名前は無い。だから首を横に振った。

 「コード無しの実験体か・・・それに、噂の双子か。」

 すると、男の子は肩にポンと手を置いた。

 「早く帰れ。研究所の犬どもが吠える。」

 恐らく研究員の事だろう・・・

 その言葉に従い、私達は部屋に戻った。

 次の日、私達は研究員にあの男の子の事を聞いた。

 名はⅡ、ただ一言でいうと、完璧。

 完全無欠の人間。身体能力だけで云えば、現在の人類の頂点に立つほどの肉体の持ち主。

 だが、滅多に喋ることはなく研究員には

 『ああ。』としか言わず、何時も下に見られている・・・らしい。

 それを聞いた後、私たちはⅡと呼ばれる少年のいる部屋に行った。

 「また来たのか・・・」

 部屋に手を掛けただけで話しかけられた。

 そのまま部屋に入るとⅡは本を置き二人に近寄る。

 「早くテストを合格しろ。俺の仕事を手伝うために生まれてきたお前らの存在意義が無くなると消されるぞ。」

 消される・・・?私たちが・・・・・?

 「意味が解らないか?要は死ぬって事だ。」

 ・・・死ぬ?嫌だ・・・嫌だ嫌だ。

 「・・・だったら、戦え、お前たちの役割は戦う事だけだ。」

 と二人を無理やり立たせ、殴りかかった。

 二人は辛うじて避ける、奏多はちょっと意外そうに避けた二人を見る。

 「避けれるじゃないか・・・そら、もっと行くぞ。」

 それから、毎日毎日、Ⅱと私たちの訓練が始まった。

 戦術、知識、体力、毎日行われるテストの基準値に日に日に近づくはおろか、それすら超越する訓練だった。

 そして、Ⅱとの訓練が始まって一週間

 「テスト終了、基準値オーバー・・・よし、安定してきたな。」

 テストを終え、汗を拭き着替えが終わると、部屋に研究員が待っていた。

 「おめでとう、今日から君たちに正式な名前と仕事を与える。」

 と戦闘服と手帳を与えられ、2人は着替えると研究員に連れられてヘリコプターの前に連れてこられた。

 「せっかくだが、今からⅡと共に任務を行ってもらう。」

 何の返事も返さず、ヘリコプターに乗り込むとⅡが腕を組んで座っていた。

 「Ⅲ、Ⅳ早く座れ、作戦を立てる。」

 Ⅱを見て2人は無表情から一気に笑顔になった。

 それから、私達は3人組で常に行動した。

 誰にも弱さを見せるな・・・そう私たちに言い聞かせ、常に私たちの見本になってくれた

 だが、共に任務をこなして2年が経った頃、それは突然終わるのだった。

 紛争地域の戦争を終了させる任務で最前線で出ていたⅡが予定通りに帰ってこなかった。

 最初は何かしらの道草を食っているのかと思ったが、2日、3日、4日、次々とカレンダーがめくられるが一向に帰ってくる気配はなく、1週間経過したとき、組織からある通達が出された。

 【コードネーム:Ⅱ 消息不明 死亡した可能性有】

 その文字を見た瞬間私たちは膝を付き涙を流した、視界は再び灰色となり、その後の任務も楽しいとは感じれず、ただ言われた通りに人を殺した。

 そして、十数年経過し、異国の地、日本の経済界の幹部の暗殺の任務を受けた際、私達は見つけた。

 とある日、暗殺の際のマップ確認のため移動する街の下見に行った時だった。

 商店街の店で、死んだと思っていた男の子がいた。

 成長はしているし、雰囲気も変わってはいたが、私達にはそれがⅡだと確認できた。

 任務が終わった後、全力で日本に住むⅡの今を調べた。

 名をユキゾラカナタと変えており、町の私立高校に通う普通の高校生として生きていた。

 だが、生存の喜びよりも私たちは家族構成に目を奪われた。

 カナデという名目が妹として入っている。

 おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい・・・・・

 その後も組織の命令をガン無視でⅡの近辺調査をした。

 Ⅱは常に笑顔だった。

 違う・・・全然違う。

 こんなのⅡじゃない・・・

 取り戻さないと・・・・

 そうして2人は今に至る

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