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私のお兄ちゃんは完璧すぎる  作者: 朱雀 蓮
第1章 日常編
21/75

テスト!テスト!テスト!②

 店に入ると店長がコーヒー豆を轢き、奏、蛍、澪、加奈、月夜、恵里佳がこちらを心配そうに待っていた。

 「お兄ちゃん!大丈夫だった!?」

 「別に、大したことなかったよ。何にもされなかったし。」

 そう言うと皆ホッとしていたが、奏は不安がっていた。

 「じゃあ、今からランチメニュー作るから待ってて。」

 と奏多はラビタンク制服に着替え厨房に向かって行った。

 「・・・お兄ちゃん、ホントに大丈夫だったのかな?」

 と水を一杯

 「奏多がああ言ってんだから大丈夫でしょ。」

 とカルピスをグビリ

 「盟友に危険て文字が一番ないな。」

 とコーラをガブリ

 「・・・言えてる。」

 メロンソーダをストローで飲みながらコクコク頷く

 「でも、靫空君不良に呼び出しされるって何やったんだろ?」

 同じくストローでアイスティーを1口

 「あ、あの人たち・・・わ、私に絡んできた人で、偶々居合わせたお兄さんが追い払ってくれたんです。」

 だが、その発言は逆に皆を不安にさせた。

 「前にも・・・中学の時に1度だけ、そんなことありました。」

 ・・・皆無言になった。

 「・・・怖いもの知らず。」

 「逆に怖い物なんてあるのか?」

 「奏ちゃんじゃない?昨日説教してたでしょ?」

 「靫空君が説教って何やったの?」

 「え、えと・・・バイクの件で」

 「ああ、奏多の奴説明してなかったんだ、気になってたんだけどあれ幾ら位するの?」

 すると、奏の手が震え始めた。

 「・・・聞いたら後悔しますよ。」

 顔が青ざめはじめ奏は頭を抱え始めた。

 「・・・いや、聞かないでおこう。」

 すると料理を持ってきた話の中心人物がやってきた。

 「お待たせいたしました。レディ―スセットです。」

 綺麗に盛り付けられたサラダ、コーンスープ、ライス、サイコロステーキ・大根おろしポン酢ソース、エビフライ、マフィンとかなり豪華なセットだ。

 「良いのか!?こんなセット奢らせてしまって、盟友よ!!」

 「別に構わないよ、ささ召し上がれ!」

 するとOLの客層が増え始めいつしか満席になっていた為、奏多は注文を取り厨房へ戻っていった。

 皆縁了なくパクッとランチをつつく。

 『う、美味い・・・』

 先日、勉強会で体重がスパーキングしてしまい何とかセーブしようとしていたメンバーも平らげてしまった。

 「美味しかった!噂には聞いてたけど、靫空君ホントに料理上手いんだね。ってあれ?皆どうしたの?」

 「いえ、お構いなく・・・」

 そのまま、皆店を出ると解散という形になった。

 明日は保健体育の実践テスト、音楽の楽器の演奏テスト。家庭科の調理テスト

 どれも勉強必要なく皆気を抜いていた・・・が、勉強合宿メンバーはダッシュしながら帰るのだった。

 奏多は特に何も考えず、バイト先では女性たちの前で一番輝いているのだった。

 

 そして翌日、今日の実技テストは学校の施設をフルに使うので4時間目までかかるのだった。

 奏多はスタミナのつく弁当を作り、朝は少なめに作った。

 「・・・主よ。何故儂のも少ないのか訳を教えてもらおう。」

 「ソナタもいい機会だから少し減量だ、猫の姿じゃあちょっと太って見えるよ」

 「失礼な!」

 といいつつも朝飯にガっついていた。

 「お兄ちゃん、おはよ~」

 奏は朝食をとりながらこっくりこっくりと寝かけていた。

 「おーい、奏、ちゃんと起きないと・・・って、ああ、もう!食パンをくわえたまま寝ちゃってるし・・・」

 奏は何とか起き制服に着替えバイクに乗って学校に向かって行った。

 奏多は学校につくとテストに備え色々と用意をし始めた。

 「1時間目は・・・家庭科か。」

 高等部のテストは1年から3年で各試験会場をローテーションで使って行くのだ。

 奏多たちの1時間目で家庭科、2時間目音楽、3,4時間目で体育を行うのだ。

 奏多達は家庭科室に向かうと先生がお題の料理を黒板に書きだしていた。

 家庭科のテストは5人組の班で各班1人ずつそれぞれ料理を持っていき指定時間内に合格できれば早く次のテストに行っても良いというテストだ。

 今回の指定料理は【カルボナーラ】

 審査員には家庭科の先生と京子が座っていた。

 「何で先生審査してるんですか?」

 「ただ飯が食えると聞いて!さぁ!皆の衆!!食べ歩きの嬢王と呼ばれた私の舌を唸らせてみよ!」

 皆復帰した京子を見るのは嬉しかったが相変わらずがめつい

 調理材料は各班人数分置かれておりそれぞれの班で1品を完成させていく、そして、時間、見た目、最後には自分の皿にアレンジをし独創性の3つの点で決まる

 奏多の班は奏多を除いて加奈、月夜、恵里佳、大前の5人だった。

 月夜を除き料理を作れるかが心配なメンバーだったが

 チャイムが鳴ると同時に2年生総数55名11班による家庭科の試験が始まった。

 奏多は手際よくベーコン、アスパラガス、1口サイズに切る。そして月夜が卵、生クリーム、チーズを勢いよく混ぜソースを作る、そして大前が鍋を出しパスタを茹で始めた。

 その間、恵里佳は先程切ったモノをオリーブオイル、刻みニンニクで軽くいため、ソースを淹れる、ぐつぐつと煮立ったら火を止めパスタが出来るのを待つ、奏多はタイマーが鳴ると鍋を見てパスタの茹で具合を確認し麺を一本ちゅるんと食べ確認する。

 そして加奈が鍋からパスタをそのままフライパンに移し絡めていく。

 奏多が最後に塩、胡椒で味を付けペロッとソースを舐める

 「よし、完成だ・・・」

 皆の分をそれぞれ皿に分け各々アレンジを開始した。

 奏多は簡単に黒コショウ、パルメザンチーズ、軽く茹でた黄卵を掛け完成、完成に至るまで約7分だった。

 「出来ました、どうぞ。」

 と皆が調理している間を通り抜け1人皿を先生に出した。

 「いつも通り早いわね~靫空君~!さぁ、神野先生!食べましょう。」

 2人はフォークでそれぞれ1口食べる

 「うん!美味しい!手際も良く味付けもいいわ」

 家庭科の先生は絶賛しているが、京子はうーんと唸っていた。

 「でも、普通ね、合格だけど、靫空君の事だからもっとアレンジ効かせるって期待してたのに~」

 奏多はニヤリと笑い先生の手を止めた。

 「そういうと思ってさっきの間に用意はしてます。すいませんが1分30秒お待ちを・・・」

 と急ぎ自分の調理場に戻りボウルに入れていたモノを小麦粉で眩しオリーブオイルで揚げた。

 そして本当に1分半で先生の前に戻り2人のパスタの上に大きな塊を乗せた。

 「さぁ、割ってみてください。」

 フォークで割るとトロッとしたものが出てきたその瞬間、強烈な香ばしい匂いが2人の鼻を通り抜けた。

 そしてそれをパスタと和え1口、先程とは比べ物にならない味の深みが舌先を伝った。

 「靫空君・・・これは?」

 「これは、割った卵黄、刻み焦がしニンニクと調味料をスライスチーズで丸く巻いて小麦粉をまぶして揚げたものです。」

 「香ばしさの正体は分かったけど・・・この深みは何?」

 「調味料に少量の醤油を淹れました。」

 まずチーズで卵を包む工程ですら難易度が高いのにそこに液体の醤油を淹れるとは・・・

 「文句なし!合格よ!」

 「どうも・・・」

 奏多は洗い物を済ませ皆の調理工程を見て回り始めた。

 とはいっても皆大体完成しているので完成品を見るだけだった。

 加奈は色んなチーズを溶かし乗せていた。

 月夜は何処からか持ってきたバーナーでチーズを炙っていた。

 大前は何故か色々なスパイスを振っていた。

 だが、そのなかで異色なモノを見た。

 「・・・高ノ宮さん。それカルボナーラ・・・だよね?」

 「ええ、知ってるわよ。どう?美味しそうでしょ?」

 だが、彼女がカルボナーラという物は真っ黒だった。匂いと調理場の様子で分かったが異常なまでの黒胡椒の投入。

 そして、彼女をパスタを食べた2人の教師は顔を真っ赤にさせ彼女の料理に不合格の3文字を渡すのだった。

 「・・・うーん。何が悪かったのかしら・・・」

 「黒胡椒の掛け過ぎだよ・・・」

 奏多は肩をポンと叩き皆と共に家庭科室から出ていくのだった。

 結果的に恵里佳は頑張って味を薄め合格にまで至ったが、大前のスパイスカルボナーラは虚しく散っていった。

 奏多達は一番乗りで音楽室に向かうと1年生が音楽テストを行っていた。

 「あっ!お兄ちゃん達、もう終わったの?」

 「うん、奏は?」

 「私達も終わったよ!今日は学年共通でピアノよ!」

 話を聞く限り3曲の中から1曲選び楽譜どおり演奏できればいいという物だ。

 このテストに班は関係なく個人的な試験だ。

 1年生が終わり、奏多は先にピアノの席に座った。

 選んだ曲は【エリーゼのために】だった。

 1年生の、主に女子は教室に残り奏多が弾く姿を見ていた。

 楽譜を一見して深呼吸すると、滑らかな手つきで素早く鍵盤をたたく。

 エリーゼのために・・・それはかの有名な大作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの曲の1つである。

 かつて彼が愛した貴族の女性エリーゼ、だが身分の低い彼はその愛が結ばれないという悲しく辛い気持ちを体現した曲だ。

 奏多は目を閉じながら演奏していた。

 この今日は彼の十八番という物もあったが、この曲は色々と思い出させるのだ。楽しい事も、辛い事も、悲しい事も。

 演奏が終わり、奏多は目を開けるといつしか他の2年生も来ており演奏会状態だった。

 「ご、合格よ!文句なしのパーフェクトよ!!!」

 と奏多は席を立ちペコリトお辞儀をすると1人教室に帰っていった。

 教室の自分の席に座り、一息ついた。

 『なーに感傷に浸っちゃってんだか…』

 突然の声に驚いたが、その声の正体は直ぐに分かった。

 そう、自分だった。

 (うるさい・・・話かけるなって言ったろ。)

 (そう言うなって、次は体育のテストなんだろ!なんだか楽しそうじゃん!俺にやらせろよ)

 (無理だろ、お前は出てこれない。)

 (ひゃひゃひゃ!何だまだ()()()()()()()()・・・。)

 (何の事だ?)

 だが、そのタイミングで月夜たちが帰ってきたので答えを聞くことができなかった。

 「盟友よ、顔色が優れていないがどうかしたか?」

 「い、いいや・・・何でもない。あれ?大前は一緒じゃないのか?」

 「あー、あいつは現在再テスト中だ。1人居残りでな。」

 奏多はやれやれとため息をつき弁当を広げた。

 「昼からは体力使うから腹ごしらえっと。」

 皆一か所に集まり弁当を食べ始めた。

 「体育のテストか・・・我はあまり自信がないぞ・・・」

 「学校をちょくちょく休むからよ、体力ないと色々と困るわよ。」

 月夜はムスーッとしながら弁当を食べる

 「まぁ、人にも得意不得意あるからね。」

 「盟友は無いだろ!いいよな・・・不得意なものがない奴は」

 「いや、流石にあるよ・・・苦手なこと位」

 その言葉に皆が耳を疑った。

 「え?あるの?」

 「うん、服選びだね。奏にもセンスがないって・・・私服は奏の最終チェックを通らないと駄目だし。」

 意外すぎた・・・まさか服選びのセンスがないがゆういつの苦手とは・・・

 「まぁ、人間完全な人間なんていないんだよ。」

 ―君ががいうか・・・・

 皆が心で思った。

 昼休みも終わり、みな体操服に着替えグラウンドに集合していた。

 体育のテストの内容は・・・持久走だった。

 2人1組のペアを組み、1人がとりあえず走り続けもう無理だと思ったら止める。そしてもう一方の相方をカウントするのだ。

 奏多は大前と組み先に奏多が走るのだった。

 隣には月夜、恵里佳がおり月夜に至っては顔が死んでいた。

 「それじゃあ、よーい!スタート!!」

 皆一斉に走り始め陸上部を筆頭にどんどん周回し始める。

 男子は15周、女子は10周すればA評価なので皆早めに終わらせようと努力していた。

 「ぜぇ、ぜぇ、ううぇごほごほっ・・・め、盟友よぉォォォォ、も、もう、ギ、ギブアップ!!!」

 「月夜、まだ3周だよ、ほらあと7周!!」

 3周でもう月夜はへばっていたが、奏多は息を上げることなく余裕で走っていた。

 「ゆっくり自分のペースで走ればいいから頑張んなよ。僕は先に行ってるからね。」

 と月夜に合わせペースを若干落としていた為地面を蹴ってスピードを上げた。

 4、5、6、7、と全く周回ペースを落とさずいつしか陸上部と並んでいた。

 「ぜぇ、ぜぇ・・・あ、あいつ、なんて体力なんだ・・・」

 「陸上部でもないのに・・・すげえ」

 走っている陸上部の事などつゆ知らず、奏多は軽く息を上げ上ハイペースで15周目を終えた。

 「はい、交代、大前。GO!!」

 大前は早いな~と言わんばかりの渋々走り始めた。

 因みに奏多のタイム20分23秒だった

 その数分後恵里佳も帰ってきて水分をとっていた。

 「お疲れ様、あれ?月夜は?」

 と恵里佳が指を指した先にはもう歩いているか走っているか分からない月夜が周回していた。

 そして、大前が4周目に差し掛かったところで月夜が帰ってきた。

 「ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、は、走り終わったぞォォォォォォォォ・・・・」

 走り終わった月夜の顔は真っ白で正に灰と化していた。

 「頑張ったね。ほんとによくやった・・・」

 「よっし、悪いけど奏多、私の分頼むわ。」

 月夜のペアの加奈は奏多にバインダーを渡し走る準備を始めた。

 「確か、20分だったよな?」

 「僕のタイム?うん、そうだよ。」

 それを聞き加奈は凄まじい速さで走り始めたあっという間に大前の周回数を超え、すぐさま15周して帰ってきた。

 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・何分?」

 「15分22秒・・・早いね」

 ガッツポーズをとりその場に倒れた。

 テストはこれにて終了となった。

 教室に戻り、皆ドッと疲れていたが奏多は口笛を吹きながら荷物をまとめていた。

 体育のテストが終わった時点で解散となっていたので奏多はさっさと教室から出て行ったのだった。

 駐車場で少し待っていると、奏が来た。

 「お待たせ!帰ろ!今日は疲れた~」

 「頑張ったな、さ、ヘルメット被りな。」

 とヘルメットをかぶり校門を出て行った。

 家に着くと時刻は3時、奏多は洗濯物を選択し始めた。その間奏はシャワーを浴びて部屋でゆっくりしていた。

 洗濯を終え奏多は晩御飯の下ごしらえをしていると、ソナタが足元にやってきた。

 「主よ、今日の夕餉はなんぞ?」

 「今日はエビフライにカキフライにアジのフライにマカロニサラダ、にコーンスープ」

 「いやいや儂の儂の。」

 「ソナタは・・・鯵と海老の刺身、蒸し牡蠣。」

 「ほう・・・で、お願なんじゃがぁ~」

 おねだりとは・・・珍しい。

 「ちょっと日本酒飲みたいなぁ~」

 「却下!」

 「何故じゃ!?」

 「教育上良くないからだ!しかも、未成年だから買えないよ。」

 (*作者より・・・煙草とお酒は二十歳になってから!)

 ソナタは憂鬱そうにソファに座るのを見て、奏多は代わりにとカルピスウォーター (濃いめ)を出した。

 無言でカルピスをぺろりと舐めると尻尾をピーンと伸ばし、何故か人間体になった。

 「な、なんじゃ!?こ、この濃ゆくて白いモノは」

 何だか危ない云い方だけどそこはスルー・・・

 「カルピスっていうジュースだよ、美味しかった?」

 「うむ!大変美味じゃ!!!」

 ゴクゴクと飲み干し濃ゆい原液がスーッと頬をつたう。

 「満足じゃ!よし夕餉まで待つとするか!!」

 こうして奏多はテストを終え、林間合宿があと五日後に迫っていた。


 

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