なにか不穏な空気感
祭りが終わる。終わった後の祭の怖さときたら、それはそれは、恐しい。
みんなまだ燃えている。ガヤガヤとした感じが続く。家庭ではみんなで喜んで。楽しそうじゃないか。
店は繁盛して、働き者も今夜は遊ぶ。男も女もみんな笑って、烙末は、なんだか悲しくなる。
なぜだろうか。烙末は、自分に捕まれる場所がないからだと思った。その思いは、記憶のなさへの憤りと、そして自らを思う憐れさで、
窓の反射が、しとしと歩く、烙末の、惨めな姿を見せてきた。
アンティゴネは疲れたから寝てしまうね。と、そんなふうにして部屋に帰った。烙末もそうしようかと思ったが、一人寂しく部屋にいるのも、
すこし、惨めに思えてしまい、とにかく街を歩き回った。
街は恍惚と輝いて、大通りにはまだまだ人がいっぱいいた。恋をするものもいるし、また恋されるものもいる。
まるでローマにいるみたいじゃないか?
烙末は近くの酒場に行って酒でも喰らう。喰らった酒は不味かったが、酔えるなら別に良かった。
思えば、この世界、つまり、私のいた世界とは違う世界に来て、初めて休めたような気がする。
記憶がないのに、しかしどうしてこの世界は私の世界じゃないと思えるのだろうか。わからない。わからないが、そのことを考えると、誰かの顔が、ぼんやりと思い浮かんでくる。
いったい、誰だ?
思い出していると、話し声が聞こえてきた。さっきの店で話をしていた二人だ。こんどは三人で話していて、何やら神妙そうであった。
烙末はぼやけた顔のことなど忘れて、少しそいつらの話を盗み聞きした。なんとなく、別に理由もなく、好奇心と放埒さで。
「小アジアの方だとどうだ?」
「だめだな。そこは(ピー)の手の中だ。」
「目指すはアテナイ?」
「ただでさえヘレニズムに侵略されてるのにか?」
「いいさ。それでも同志はほしい。」
「それが修正主義者でも?」
「目的は(ピー)だろ?別に構わんさ。」
「向かうべきは闘争か。」
「いや、逃走かもしれんがね。」
「あのジパングの連中はどうだ?」
「さぁね。あそこにや金があるらしいが、金目当てに貿易し出すと近世に逆戻りだな。」
「しかし、とにかくこの国だろ?まずはさ。この国の(ピー)を引き入れて、そこからだ。エジプトの兵器を使うには、連携が直接取れる同志がいる。」
「死者の書?」
「違う。たしか、」
烙末は気分が悪くなってきた。酔いが回るのが早い。安い酒は気分を悪くさせる。そう感じて、
烙末はとにかく、外に出て、風に当たりたくなった。
外に出て、部屋に戻る際、奇妙な光景が後ろで広がっていた。
先ほど飲んでいた酒場に軍隊が入ってゆくではないか。烙末は厄介ごとに巻き込まれるのを避けて、とりあえず急足で宿に向かった。
直後、銃声が街に反響す。鐘が9時をお知らせした。
読んでいただいて本当にありがとうございました。
少しでも「おもしろい」「続きが気になる」とおもってくださったなら↓の☆☆☆☆☆を押して評価をくれたら幸いです。
この本があなたの糧になりますように。




