4.アリューマ・インタビュー(クレディアとフィリクスの場合)
さて、問題はあの3つのカップルだわ。
あちらはこれまでと違ってちょっと壁があるどころではなく、もはや破局寸前のカップル。
婚約者が浮気していたり、王命で婚約が決まったカップルで取り消せなかったり、少し前までは仲がよかったはずなのに全然出かけなくなり疎遠になってしまったり。
侯爵夫人にとってはこっちが本命でしょうね。
まあ、『婚約者の関係がどのような形になっても、アリューマと伯爵家に責任を問わない。参加者が契約違反をして伯爵家が不利益を被る場合は侯爵家が無条件で間に入り不利益分の補填・改善をする』という契約書まで交わしたから、アリューマの好きにしたらいいと思うわ。
このパーティーに出た人たち全員、『アリューマによる質問で起きた人間関係の変化の責任を伯爵家・侯爵家に求めない』と契約書を交わすほどの念の入れよう。
そもそも、5歳児の質問に腹を立てる方がみっともない。
何が起きても、訴えられたり嫌がらせまで発展しないでしょう。
「ごきげんよう、えっと、フィリクスさま、クレディアさま」
「⋯⋯」
「ごきげんよう、アリューマ」
第4王子のフィリクス様。不愉快そうにアリューマを見ていて、態度が悪いわ。
南の侯爵家のクレディア様。こちらはにこやかに対応しているわね。
この二人は王家からの要請で結ばれた婚約だったはず。確かに不仲そうね。
「フィリクスさま、クレディアさま、おふたりが婚約したきっかけはなんだったのですか?」
「⋯⋯」
フィリクス様は不機嫌そうに眉を 顰めてるわ。
まだ12才とはいえ、お茶会とはいえもう少し取り繕えないのかしら。王族よね?公爵に婿入りするのは不安があるわね。まあ、まだ若いけど。
「わたくしたちは王命によって、⋯国王陛下から、フィリクス様とわたくしが婚姻することによって侯爵家と王家が仲良くなれるように結婚することがきまったのですよ」
「まあ、そうなのですね」
「俺が侯爵家に行く事で、侯爵家から公爵家になる」
遠戚になることで陞爵するのよね。
「まあ、そうなのですね。では、クレディアさまは、じょこうしゃく、になられるのですね」
「なんだと?幼いからと言って、見逃してもらえるのにも限度があるぞ」
フィリクス様が不機嫌そうにしているけど、何を言っているのかしら?
別に間違ったことを言っていないけれど。
「あの、なにか、まちがえましたか?わたくし、よくわからないのです」
「王子であるわたしと結婚するんだ、公爵になるのはわたしで、クレディアは公爵夫人だろ」
「それは、できないですよね?」
えぇ⋯国法で王家から他家に入るときは、実権と爵位はその家の血筋の者が握る事になるのを知らなかったの?
王家によるお家の乗っ取りを防ぐための法律。
5才のアリューマでさえ知っていたのに、王家の12才の王子が知らないって無いわ。
クレディア様も驚いた顔でフィリクス様を見ている。
「フィリクス。あなた、まさかわかっていなかったの?!」
声を挙げたのはフィリクス王子の叔母である王妹のクラリス公爵夫人だった。
「叔母上?」
「勉学から逃げているとは聞いていたけど、これほどまでとは。
フィリクス王子の叔母として謝罪申し上げますわ、クレディア様。追って侯爵家に正式な謝罪と王への奏上を出します」
「⋯わたくしでは謝罪を受け入れることはできません」
「もちろんです」
「国王陛下に個人的なお手紙をお出しするなら、⋯⋯」
「クレディア?!」
フィリクス様がとても驚いた声を出しますが、クレディア様が小声で喋っていたので何と言っていたのか聞こえませんわ。
王妹のクラリス様は、頭が痛いと言いそうな表情をしています。
「陛下へ⋯お伝えいたします。申し訳ないけど、お先に失礼させていただきます」
「はい」
「フィリクス、行きますわよ」
「叔母上?!」
男の子といえど大人の女性にはまだ敵わない体格だったのもあって、強めに引っ張られて主催者であり責任者の侯爵夫人に挨拶し、慌ただしく帰っていった。
まあ、醜聞ですものね⋯
侯爵家に婿入りする王子が、侯爵家の土地を手に入れて公爵として実権を握ると思っていたなら、それは王家が領地の簒奪を予定していたという疑いになるもの。
婿入りするのに、婿入り先でどんな立場になるのか理解していない、なんて王子であるフィリクス様が知らないわけがないもの。
でも知らなかったのでしょうね、あの様子を見ると。
多分クレディア様との婚約は解消になるでしょうね。子どもの失敗といえど、再教育したとしても王族としての信用を再び得るのは難しいでしょうね。
一番穏便な方法で、王領の一部を1代限りの伯爵として任ずるとかになるかしら。
「あの、クレディアさま、わたくし、きいてはだめでしたか?」
「いいえ、当然のことしか言っていませんもの。気にすることはありませんわ」
「そうですか」
アリューマがホッとした顔でクレディア様を見上げた。
「あの、あんまりしつもんできなかったのですが、わたくし、またクレディアさまとおしゃべりしたいです。なかよくしてくれますか⋯?」
「ええ、もちろんよ」
「ありがとうございます」
嬉しそうにニコニコと笑うアリューマ。可愛いわぁ。
「わたくしも、もう行かないといけないの。また、お話しましょう。ごきげんよう」
「ごきげんよう、クレディアさま」
クレディア様も主催者である侯爵夫人に挨拶を済ませ帰っていった。




