2.アリューマモテモテを目指す
『おおきくなって、おたがい、こんやくしゃができなかったら、こんやくしよう』と言われた後から、アリューマはモテモテを目指し始めた。
ある日
「おかあさま、わたし、モテモテになりたいわ」
「そうなの、それじゃあ、絵本をよんであげるから、もってきなさい」
「?えほん?」
「いろんな事を知っていると、相手のいいところをたくさん見つけられるのよ。
お父様がお仕事している姿がわたしは格好良いと思うのだけれど、それは領民を幸せにしたいっていう目標があって、難しい事を真剣に考えて、そのためにどれだけ努力しているか知っているからこそ、すごいな、尊敬するな、って思えるの。
でも、領地の経営がどれぐらい大変かわからなかったら、ずっと椅子に座ってなにか書いているな、ぐらいしか解らないのよ。
相手のいいところをたくさん見つけられて、たくさん褒めることができる子はモテモテになるわ」
「そっか!」
「それに、いろんな事を知っていたら、きっと楽しいもの。さ、絵本を持ってきて」
「はい、おかあさま」
アリューマが持ってきた本は、『英雄ネーゼのぼうけんたん』。これ、小さい男の子向けの戦術入門書なんだけど。
「これがいいの?」
「はい、おにいさまがよんでくれて、たのしかったの。でも、せんじゅつ?ぼうりゃく?のぶぶんがよくわからなかったの。おかあさま、よんで」
うーん、まあいいでしょ。この国では女性も女官や女騎士になったりするし、何があるかわからないもの。
「ええ」
そっと絵本を開いた。
またある日
「おかあさま、わたし、モテモテになりたいわ」
「それじゃ、お名前を覚える練習をしましょうか」
「おなまえ」
「ええ、貴族って、名前をとても大事にしているの。それに、名前を覚えることは、あなたに興味がありますっていう意味もあるわ。
自分のことを思ってくれる相手って大切にしたくなるのよ。思いやりのある人はモテモテでしょ」
「うん、わかった」
「お母様と、ちょっとずつ覚えていきましょうね」
またまたある日
「おかあさま、わたし、モテモテになりたいわ」
「それじゃ、ポニーに乗る練習をしましょうか」
「ポニー?」
「小さいおうまさんよ」
「のれるの、おうまさんに?やったー!でもなんでモテモテになるのにポニーなの?」
「いざというとき、婚約者の元に駆けつけるためよ」
本当はうちの領地が湖畔と森が多くて、移動が馬に乗れたほうが楽だからだけど、やる気が出るならいいわよね。
モテモテになるためって言うと、勉強や礼儀作法を進んでやってくれる。長男はやんちゃで勉強させるのが大変だったけど、アリューマはすっごく楽だわ。
「おかあさま、わたし、モテモテになるために、おとこのこと、はなしてみたいわ」
「あら。それなら、ちょっとアリューマも行ける集まりがないか探してみるわね」
さて、アリューマにはああ言ったけど、どうしましょう?
うちは跡取りがいるから、アリューマは嫁に出ていくでしょうけど。正直、あんまり遠くに嫁いでほしくないわ。
それなら、うちの領地をまかせている代官は子爵家だから、そこの子とお茶会すればいいかしら。
気が合う子が出るといいんだけど。
今娘は5才。⋯いや、10才以下の子供って、うちの長男みたいな子が来るのよね?
どう考えても、アリューマと一緒に遊ばせるには不安だわ。長男も本能で生きている感じで、夫人同士で集まっても男の子はよほどおとなしい子じゃない限りだいたいみんな同じみたいだし。
うーん
夫に相談しましょう。
「アリューマに婚約者は早すぎる、10才、いや、16・・・18、25才ぐらいまで⋯」
「なにアホなこと言っているんですか。仕事がある人だって、25で結婚したら遅いっていわれますのよ?」
「あぁ⋯お嫁に行かせたくない⋯!」
まったく。子煩悩なのはいいですけど、お嫁に行くのは大変そうね。
「そもそも、アリューマは男の子と話してみたい、って言っただけで婚約者が欲しいといったわけじゃありませんわ。まあ、候補になるでしょうけど」
「そもそも、それが気が早すぎると思うなぁ。
そうだな⋯男の子に会わせるんじゃなくて、カップルに会わせればいいんじゃないか?
恋ってどんなものなのか、婚約のきっかけとか、どこが好きとか聞けばアリューマの好奇心も落ち着くんじゃないか?」
「そうね、女の子の意見と男の子の意見、両方きけるし、いいかも知れないわ。その方向でセットしてみるわね。ありがとう」
夫人同士の集まりで、子供とその婚約者の話をしていた夫人が何人かいたはずだわ。
早速、お茶会の準備をしましょう。




