↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風葬のシルヴァ  作者: 桜
PR
33/79

第33話 軍団長

 聖都アルセリア。


 大通り。


 ――ドォォォン!!


 巨大な鉄棍が。


 石畳を砕いた。


「ハハッ!」


 ドレグが笑う。


「どうした、雷!」


「その呼び方やめろっつってんだろ」


 ディーンは。


 もう付き合わなかった。


 青白い雷。


 全身へ。


「《雷装》」


 バヂッ――。


 姿が消える。


「――!」


 ドレグが鉄棍を振り回す。


 だが。


 当たらない。


 右。


 左。


 背後。


 ディーンは。


 《加重》を使わせる距離へ。


 もう入らない。


「ちょこまかと!」


「お前の能力」


 ザシュッ!


 右腕。


「触れなきゃ」


 ザシュッ!


 左脚。


「怖くねえんだよ」


「――っ!」


 ドレグが振り向く。


 その瞬間。


 ディーンは。


 すでに正面。


「同じところ」


 剣先。


 先ほど斬った。


 胸の傷。


「二回目だ」


 雷。


 集中。


「《雷閃》」


 ――バヂィィィン!!


「ぐ――っ!!」


 斬撃が。


 傷口を貫く。


 雷が。


 肉体の内部へ。


 走った。


 ドレグの巨体が。


 止まる。


「……まだ」


 鉄棍を上げようとする。


 だが。


 右腕が。


 動かない。


「おい」


 ディーンが言う。


「終わりだ」


「…………」


「次に行く」


 ドレグが。


 僅かに笑った。


「……最後まで」


「つれねえな」


「お前が暑苦しいんだよ」


 ディーン。


 一閃。


 雷光。


 ドレグの身体が。


 崩れ落ちた。


     ◇


 東南区。


「クジャ!」


「左」


 ティナが。


 即座に踏み込む。


 《構装》。


 白い足場。


 空中へ。


「またそれ?」


 メルザが鉤槍を振るう。


 だが。


 狙いは。


 ティナではない。


「――!」


 クジャ。


 鉤槍。


 迫る。


 ♦6。


「防御」


 ガァン!


 防壁が。


 一撃で砕ける。


「っ……!」


 クジャが後退する。


「クジャ!」


「平気」


「先に」


 クジャの右眼。


 赤い線を追う。


「もう見えた」


「何が?」


「全部」


 メルザの《血標》。


 魔物へ伸びる力。


 その起点。


 胸。


 左肩。


 腕。


 鉤槍ではない。


 本人のオーラ。


「ティナ」


「うん!」


 返事だけで。


 分かる。


 クジャ。


 ♣8。


 地面。


「拘束」


 オーラの帯。


 メルザの足首。


「こんなもの――」


 メルザが切ろうとする。


 その一瞬。


 ティナ。


 真正面。


「《構装》!」


 剣。


 長く。


 細く。


 一気に伸びる。


「――!」


 メルザが鉤槍で受ける。


 ティナは。


 そこで。


 剣を解除した。


「何――」


 白い光。


 消える。


 鉤槍を。


 すり抜ける。


 そして。


 メルザの懐で。


 再構築。


「これなら!」


 白い刃。


 至近距離。


 胸。


「届く!」


 ――ザシュッ!!


「っ……!」


 深い。


 メルザの身体が。


 止まる。


 同時に。


 クジャが。


 ♠10。


 投げる。


「切る」


 赤い線。


 ティナ。


 魔物。


 メルザ。


 繋がっていた。


 その中心。


 斬撃。


 ――パキン。


 《血標》。


 全て。


 途切れた。


「……!」


 周囲の魔物たちが。


 動きを止める。


 黒い《獣刻》だけを残し。


 命令を失う。


 メルザが。


 膝をついた。


「その眼……」


「何?」


「本当に……嫌い」


 クジャが少し考える。


「私も」


「…………」


 ティナが。


 剣を構えたまま言う。


「そこは『ごめん』とかじゃないの?」


「敵だから」


「それはそうだけど」


 メルザが。


 小さく笑う。


 そして。


 倒れた。


「……終わった」


 ティナが。


 大きく息を吐く。


「クジャ、眼!」


「痛い」


「閉じて!」


「うん」


 すぐ。


 眼帯を戻す。


「ティナ」


「何?」


「シルヴァは?」


「……!」


 二人。


 同時に。


 大聖堂を見る。


     ◇


「ティナ!」


 声。


 ディーン。


 走ってくる。


「ディーンさん!」


「そっち終わったか!」


「はい!」


「こっちもだ!」


 クジャが聞く。


「シルヴァは?」


「見てねえ!」


「大聖堂へ行った!」


 ティナの表情が変わる。


「一人で!?」


「多分な」


「もう!」


 走る。


「何であいつは!」


 ディーンも。


 続く。


「そういう奴だ!」


「知ってます!」


「だったら急げ!」


「言われなくても!」


     ◇


 大聖堂。


 内部。


「…………」


 三人が。


 足を止めた。


 床。


 割れている。


 柱。


 砕けている。


 壁。


 深い斬撃。


 そして。


 黒い脈。


 あちこちに。


 残っている。


「ここで戦った」


 クジャが言う。


「ああ」


 ディーン。


 しゃがむ。


 床。


 触れる。


「シルヴァの風もある」


 ティナが。


 地下へ続く。


 開かれた石扉を見る。


「下」


「行くぞ」


     ◇


 階段。


 降りる。


 一段。


 二段。


 下へ行くほど。


 壊れ方が。


 ひどくなる。


「…………」


 ティナが。


 走る速度を上げた。


 壁。


 血。


 少し。


 ついている。


「これ……」


「シルヴァの?」


 クジャが聞く。


「分からない」


 ティナ。


 答えながら。


 もう。


 分かっている。


 嫌な予感。


     ◇


 封印区。


 さらに奥。


 ――ガァァン!!


 轟音。


「!」


 三人。


 顔を上げる。


「いた!」


 走る。


 曲がる。


 その先。


「――っ!」


 ティナの足が。


 止まった。


     ◇


 シルヴァが。


 床を転がっていた。


 剣。


 手放さない。


 だが。


 黒い上衣は裂れ。


 肩。


 脇腹。


 頬。


 額。


 血。


「ぐっ……!」


 片膝。


 つく。


「シルヴァ!!」


 ティナの声。


「……?」


 シルヴァが。


 振り返る。


「ティナ」


「何その怪我!」


「……ちょっと」


 息を吐く。


「強かった」


「ちょっとじゃない!」


 クジャが。


 シルヴァを見る。


「ぼろぼろ」


「そこまで?」


「うん」


 ディーンは。


 シルヴァではなく。


 その正面を見ていた。


「…………」


 黒い軍装。


 長槍。


 ヴァイラ。


 肩。


 脇腹。


 多少の傷。


 だが。


 呼吸。


 乱れていない。


 姿。


 変わっていない。


 角もない。


 異形化もない。


 ただの。


 通常状態。


「お前が」


 ディーンが言う。


「第二軍団長か」


「そうだ」


「ヴァイラ」


「ああ」


「…………」


 ディーンが。


 シルヴァを見る。


「一人でやってたのか」


「うん」


「馬鹿」


「ガルドいた」


「どこだ」


「奥」


 ティナが見る。


 最深部。


 茶金色の光。


 その中心。


 ガルド。


 聖杖を。


 地面へ突き。


 赤黒い瘴気を。


 必死に封じている。


「私は動けん!」


 ガルドが叫ぶ。


「亀裂を押さえている!」


「分かった!」


 ティナ。


 すぐに。


 シルヴァへ。


「立てる?」


「立ってる」


「膝ついてる!」


「今立つ」


 ティナが。


 腕を出す。


 シルヴァが。


 掴む。


「……ありがと」


「馬鹿」


「ディーンにも言われた」


「私からも!」


「人気」


 クジャが言う。


「嬉しくない」


     ◇


 ヴァイラは。


 四人を見る。


「戻ったか」


「部下」


 ディーンが答える。


「二人とも倒した」


「そうか」


 ヴァイラの顔。


 変わらない。


「……反応薄いな」


「結果は結果だ」


 ティナの目が。


 鋭くなる。


「セイルも」


「ドレグも」


「メルザも」


「あなたの命令で戦ったんでしょ」


「そうだ」


「なのに」


「悲しむべきか?」


「…………」


「彼らは」


 ヴァイラが言う。


「各自の役目を果たした」


「それを」


「私が感情で無駄にする方が」


「彼らへの侮辱だ」


 ディーンが。


 剣を抜く。


「考え方合わねえな」


「合わせる必要はない」


「だな」


 雷。


 剣へ。


「じゃあ」


「ぶん殴って終わりだ」


「剣じゃん」


 シルヴァが言う。


「うるせえ」


     ◇


 クジャが。


 ヴァイラを見る。


 眼帯へ。


 指。


「開ける?」


 シルヴァが聞く。


「少しだけ」


「さっき使ったでしょ」


「必要」


「でも」


「シルヴァ」


 クジャが。


 ぼろぼろの彼を見る。


「今は」


「私の心配してる場合じゃない」


「…………」


 ティナが言う。


「今回はクジャに賛成」


「珍しい」


「必要な時だけよ!」


 クジャ。


 眼帯。


 外す。


 右眼。


 開く。


「…………!」


 黒い。


 ヴァイラ。


 身体。


 長槍。


 床。


 壁。


 地下。


 無数の経路。


「多い」


「何が?」


「黒いの」


「どこ?」


「全部」


「分かりやすく言え!」


「ディーンうるさい」


「お前な!」


 クジャが。


 指差す。


「地面だけじゃない」


「壁」


「柱」


「槍」


「ヴァイラから全部繋がってる」


 ディーンが。


 すぐ理解する。


「なら」


「俺が切る」


「私が道作る」


 ティナ。


 《構装》。


「クジャが場所を見る」


 そして。


 三人。


 シルヴァを見る。


「…………」


「何?」


 ティナが言う。


「あなたが」


「本人を斬る」


 シルヴァ。


 少し。


 止まる。


「いいの?」


「何が」


「俺ぼろぼろ」


「知ってる!」


「じゃあ」


「一人で勝てないんでしょ」


「…………」


「なら」


 ティナ。


 隣へ。


「四人でやる」


 クジャも。


「うん」


 ディーン。


 反対側。


「二年前」


「何回教えたと思ってんだ」


「何を?」


「一人で全部やろうとすんなってことだよ」


「…………」


 シルヴァが。


 少し。


 笑った。


「忘れてた」


「殴るぞ」


「もう痛いからやめて」


     ◇


 ヴァイラが。


 四人を見る。


「相談は終わったか」


「待ってくれたの?」


 シルヴァが聞く。


「敵の戦力構成を見るのも目的だ」


「やっぱり」


「気持ち悪いくらい真面目」


「褒め言葉として受け取ろう」


「褒めてない」


 ディーン。


「行くぞ」


「うん」


「はい!」


「分かった」


     ◇


 最初。


 クジャ。


「右!」


 ヴァイラの《侵脈》。


 床。


 伸びる。


 ディーン。


 雷。


「《雷閃》!」


 バヂィン!!


 黒い経路。


 切断。


 ヴァイラの目が。


 僅かに動く。


「次、左壁!」


 ティナ。


 《構装》。


 巨大な白い板。


 シルヴァの足元。


「乗って!」


「うん!」


 シルヴァ。


 踏む。


 ティナ。


 構装。


 角度。


 変える。


 射出。


「行け!」


 風。


 重なる。


 シルヴァ。


 一気に。


 ヴァイラへ。


「――!」


 ヴァイラ。


 長槍。


 突く。


「下!」


 クジャ。


 シルヴァ。


 身体。


 落とす。


 槍。


 頭上。


 通過。


「ディーン!」


「分かってる!」


 雷。


 横から。


 ヴァイラの槍。


 弾く。


 ガキィン!!


「……!」


 初めて。


 槍。


 大きく。


 外へ。


 シルヴァ。


 懐。


「今度こそ」


 剣。


 風。


 一点。


「《点穿》!」


 ヴァイラの胸。


「――っ!」


 突き。


 入る。


 浅くない。


 血。


 ヴァイラ。


 三歩。


 後退。


「…………」


 四人。


 止まらない。


 ティナ。


 次の足場。


 クジャ。


 経路。


 ディーン。


 雷。


 シルヴァ。


 風。


 ヴァイラの《侵脈》が。


 一本。


 二本。


 三本。


 切られる。


「……なるほど」


 ヴァイラが呟く。


 シルヴァが。


 息を荒くしながら笑う。


「何?」


「単体では」


 ヴァイラ。


 四人を見る。


「不足」


「…………」


「だが」


 胸の傷。


 血。


 指で。


 触れる。


「集まれば」


 赤い瞳が。


 少し。


 鋭くなる。


「想定を上回る」


 ディーンが。


 剣を構える。


「だったらどうする」


「決まっている」


 ヴァイラ。


 長槍。


 地面へ。


 突き立てた。


 ――ドン。


「…………?」


 シルヴァが。


 眉を寄せる。


 何か。


 違う。


 《侵脈》ではない。


 もっと。


 深い。


 もっと。


 濃い。


 力。


 ヴァイラの胸。


 ドクン――。


 黒い脈が。


 一筋。


 首へ。


「……何」


 クジャの右眼が。


 大きく開く。


「待って」


「どうした?」


「違う」


「何が」


「今までと」


 ヴァイラの身体。


 黒赤い脈。


 一本。


 二本。


 全身へ。


 広がっていく。


「これ」


 クジャが。


 初めて。


 一歩。


 後ろへ下がった。


「ヴァイラの力じゃない」


「…………?」


 ヴァイラが。


 顔を上げる。


「良い眼だ」


 声。


 少し。


 低くなる。


「軍団長には」


 黒い脈。


 頬。


 首。


 右腕。


「軍団長にのみ許された」


 額。


 皮膚。


 押し上げる。


 二本。


 黒い角。


「力がある」


 赤い瞳。


 さらに。


 暗く。


 深く。


 染まる。


 長槍。


 黒い脈が。


 生き物のように。


 絡みつく。


「シルヴァ」


 ティナが。


 剣を握り直す。


「これ」


「うん」


 シルヴァも。


 分かる。


 通常のヴァイラだけで。


 自分一人では。


 届かなかった。


 なのに。


 さらに。


 上がある。


 ヴァイラが。


 静かに告げる。


「軍団長奥義」


 黒赤い力。


 地下を。


 震わせる。


「――《魔装》」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。