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風葬のシルヴァ  作者: 桜
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30/78

第30話 侵入者

 聖都アルセリア。


 東南区。


 十数体の魔物が。


 一斉に。


 ティナへ殺到する。


「――来る!」


 ティナ。


 右足。


 一歩下げる。


 《構装》。


 白い光。


 盾。


 ――ガァン!!


「くっ……!」


 一体。


 二体。


 三体。


 盾へ。


 爪。


 牙。


 巨体。


 連続。


 腕が。


 軋む。


「ティナ!」


「平気!」


 クジャ。


 カード。


 ♠7。


 投擲。


 魔物の横腹。


 斬撃。


「まだ右」


「分かってる!」


 ティナ。


 盾。


 解除。


 瞬時に。


 剣へ再構築。


「はぁっ!」


 横薙ぎ。


 白い刃。


 魔物の前脚を切る。


 だが。


 倒れない。


「……やっぱり硬い!」


 身体。


 黒い脈。


 《獣刻》。


 痛みさえ。


 押し潰している。


 遠く。


 メルザが。


 鉤槍を肩へ乗せたまま。


 見ている。


「悪くない」


「……何がよ」


 ティナが睨む。


「指揮」


「判断」


「自分が標的になった瞬間」


「市民から離れた」


 メルザの目が。


 僅かに細くなる。


「戦場慣れしている」


「褒められても嬉しくない」


「褒めてないわ」


「じゃあ何なのよ!」


「確認」


 メルザが。


 指を動かす。


 ティナの肩。


 《血標》。


 赤い印が。


 強く光る。


「――!」


 魔物たちの動きが。


 さらに速くなる。


「ちょっと!」


「今」


 クジャが言う。


「濃くなった」


「印!?」


「うん」


「消せそう?」


「…………」


 右眼。


 開いている。


 赤い線。


 ティナ。


 メルザ。


 魔物。


 繋がっている。


「多分」


「多分!?」


「元」


 クジャの右眼が。


 メルザの鉤槍へ向く。


「槍?」


「違う」


「手」


「……手?」


「能力」


 クジャが。


 右眼を細める。


「メルザからティナに付けた力」


「なら」


 ティナが剣を構える。


「本人倒せば?」


「多分消える」


「また多分!」


「見えるけど説明書は出ない」


「それはそうだけど!」


 クジャが。


 少しだけ笑う。


「行く?」


「行く!」


 二人。


 同時。


 前へ。


     ◇


 別の大通り。


 ――ドォォン!!


 石畳。


 砕ける。


「ハハハッ!」


 ドレグ。


 巨大な鉄棍。


 振り上げる。


「避けてばっかじゃねえか!」


「避けなきゃ街ごと潰れるだろうが!」


 ディーン。


 《迅雷》。


 青白い雷。


 右へ。


 鉄棍。


 落下。


 直前。


 《加重》。


 ――ズン!!


 衝撃。


 周囲の窓。


 一斉に割れる。


「おい!」


「何だ!」


「壊すな!」


「戦ってんだぞ!」


「場所選べ!」


「お前が逃げるからだろ!」


「お前が追ってくんだろうが!」


 ドレグ。


 笑う。


「気に入った!」


「俺は嫌いだ!」


 ディーン。


 剣。


 雷。


 《雷閃》。


 一直線。


 青白い斬撃。


 ドレグの胸。


「――おっ!」


 鉄棍。


 横に構える。


 バヂィィッ!!


 雷。


 鉄棍。


 弾ける。


「ぐっ……!」


 巨体。


 一歩。


 後退。


「…………」


 ドレグが。


 胸元を見る。


 焦げ。


 浅い斬傷。


 そして。


 にやり。


「やっぱ強え」


「面倒なのに当たったな……」


 ディーンが。


 心底嫌そうに呟いた。


「もう一発!」


「来んな!」


     ◇


 南居住区。


「こっちです!」


 シルヴァが。


 逃げ遅れた老人の手を引く。


「西へ!」


「大通りじゃなくて裏道!」


「は、はい!」


 兵士が。


 避難民を受け取る。


「助かった!」


「まだ中にいる?」


「この通りは確認した!」


「次は北側だ!」


「分かった!」


 シルヴァが。


 走り出そうとして。


「…………」


 止まる。


 地面。


 見る。


「また」


 足元。


 嫌な感覚。


 黒い。


 何か。


 風を流す。


 普通なら。


 路地。


 建物。


 空。


 自由に抜ける。


 だが。


 一部だけ。


 下へ。


 引かれる。


「…………」


 シルヴァが。


 しゃがむ。


 石畳。


 指を触れる。


 違う。


 ガルドではない。


 昔。


 自分を封じた大地の力は。


 風そのものを。


 地面へ縫い止めた。


 これは。


 もっと。


 気持ち悪い。


 入り込む。


 広がる。


 中から。


 壊す。


「シルヴァ!」


 兵士の声。


「何してる!」


「……大聖堂」


「え?」


 顔を上げる。


 遠く。


 巨大な白い尖塔。


「敵」


「あそこ行ってる」


「何で分かる!?」


「分かんないけど」


「分かる」


「どっちだ!?」


 シルヴァは。


 すでに走り出していた。


     ◇


 大聖堂。


 正門。


「ぐっ……!」


「立て!」


「まだ通すな!」


 聖職兵。


 十数名。


 前。


 一人。


 ヴァイラ。


 黒い長槍。


 その足元。


 石床に。


 黒い脈。


「もう一度言う!」


 聖職兵の男が。


 剣を構える。


「ここより先へは通さん!」


「そうか」


 ヴァイラ。


 一歩。


「なら」


 長槍。


 石突き。


 床。


「止めてみろ」


 コン。


 《侵脈》。


 黒い線。


 石床。


 一瞬。


「――散れ!」


 兵長が叫ぶ。


 直後。


 バギィン!!


 床が。


 内側から隆起。


「うわっ!」


 隊列。


 分断。


 ヴァイラ。


 その間を。


 歩く。


 一人。


 右から。


 槍。


 突き。


 ヴァイラ。


 長槍。


 払う。


 柄。


 腹。


「がっ……!」


 一撃。


 倒れる。


 左。


 二人。


 ヴァイラが。


 地面へ足を置く。


 黒い脈。


 壁へ。


 侵入。


 石壁。


 横から。


 爆ぜる。


「――!」


 二人。


 瓦礫に押され。


 動きを止める。


「殺さない……?」


 兵長が。


 気づく。


 ヴァイラが見る。


「必要がない」


「何だと」


「私は」


 長槍。


 肩へ。


「お前たちを殺しに来たのではない」


「なら何を――」


「測りに来た」


「…………」


「この街を」


「この大陸を」


「攻める価値と」


「攻めるために必要な代価を」


 兵長の顔が。


 強張る。


「貴様……」


「魔王軍」


「第二軍団長」


 一歩。


「ヴァイラ」


 その名を。


 兵長は。


 忘れなかった。


     ◇


 大聖堂地下。


「最高司祭!」


 階段。


 聖職者。


 転げるように降りてくる。


「敵指揮官が大聖堂内部へ!」


 ガルド。


 振り返らない。


 聖杖。


 封印陣。


 茶金色の光。


「名は」


「……!」


「分かったのだろう」


「はい!」


 聖職者が。


 息を整える。


「魔王軍第二軍団長」


「ヴァイラと名乗りました!」


「ヴァイラ」


 ガルドが。


 静かに繰り返す。


「第二軍団長……」


 地下。


 封じた黒い脈。


「こいつの力か」


 その瞬間。


 ――ドクン。


「!」


 黒い脈。


 僅かに。


 震える。


 封印したはずの箇所とは。


 別方向。


「…………」


 ガルドの表情が変わる。


「新しい経路だ」


「え?」


「地上から」


 大聖堂そのものへ。


 侵入している。


「全員」


 ガルドが言う。


「この場を離れろ」


「しかし!」


「邪魔になる」


 即答。


「最深部へ通じる扉を閉じろ」


「最高司祭お一人で!?」


「一人ではない」


 ガルドが。


 聖杖を握る。


「大地がある」


「…………」


「行け」


「……はい!」


     ◇


 大聖堂。


 中央礼拝堂。


 巨大な神像。


 五つの紋章。


 ヴァイラが。


 歩いている。


 足元。


 黒い脈。


 壁。


 柱。


 床。


 四方へ伸びる。


「…………」


 長槍。


 床へ。


 軽く触れる。


 情報。


 返ってくる。


 空洞。


 地下道。


 封印壁。


 術式。


「深い」


 そして。


 異常なほど。


 強い大地の力。


「なるほど」


 目を閉じる。


 一本。


 経路を選ぶ。


 《侵脈》。


 送る。


 瞬間。


 ――バギィッ!!


 黒い脈。


 途中で。


 潰れた。


「…………」


 ヴァイラが。


 薄く目を開く。


「見ているか」


     ◇


「浅い」


 地下。


 ガルドが。


 聖杖を地面へ突いていた。


 茶金色。


 黒い脈を。


 押し潰す。


「試すなら」


「もう少し工夫しろ」


     ◇


 ヴァイラ。


 僅かに。


 口元が上がる。


「聞こえはしないか」


 別経路。


 一本。


 二本。


 五本。


 地中。


 壁。


 柱。


 別々の方向から。


 地下へ。


     ◇


「…………」


 ガルド。


 目を閉じる。


 聖杖。


 中央。


 《鎮環》。


 自分を中心に。


 大地。


 安定。


 五本。


 黒い流れ。


 近づく。


 一つ。


 右。


 封じる。


 二つ。


 左。


 止める。


 三つ。


 正面。


 縫い付ける。


 四つ。


 壁。


 遮断。


 五つ目。


「…………」


 ガルドの眉が。


 僅かに動く。


 来ない。


「囮か」


 その瞬間。


 背後。


 石柱。


 内部。


 ――バギィン!!


「!」


 黒い脈。


 天井側から。


 落ちてくる。


 ガルド。


 聖杖。


 振る。


 茶金色。


 壁。


 衝突。


 ズン!!


「……なるほど」


 ガルドが。


 低く呟く。


「地を通るだけではない」


     ◇


 地上。


 ヴァイラが。


 目を開く。


「反応した」


 大地の恩寵。


 やはり。


 人間が操っている。


 自動術式ではない。


 しかも。


「早い」


 ヴァイラの赤い瞳。


 大聖堂奥。


 地下へ続く回廊。


「最高司祭」


 小さく。


「お前か」


     ◇


 東南区。


「そこ!」


 クジャ。


 ♣8。


 拘束。


 魔物。


 脚。


 止まる。


「ティナ!」


「はい!」


 ティナ。


 《構装》。


 白い剣。


 踏み込む。


 首元。


 一閃。


 黒い流れ。


 断つ。


 魔物。


 崩れる。


「あと七!」


「数えたくない!」


「六」


「今一体倒したから!?」


「うん」


 ティナが。


 息を吐く。


 肩。


 赤い《血標》。


 まだ。


 残っている。


「……っ」


 右腕。


 少し。


 震える。


 クジャが気づく。


「腕」


「平気」


「シルヴァみたい」


「何が?」


「すぐ平気って言う」


「今は平気なの!」


「じゃあ」


 クジャが。


 ティナの横へ並ぶ。


「早く女倒そう」


「女って言い方」


「名前知らない」


「確かに」


 メルザが。


 聞こえていた。


「失礼ね」


「じゃあ名前」


 クジャが言う。


「……」


「教えて」


 メルザが。


 一瞬。


 黙る。


「メルザ」


「教えるんだ」


 ティナが驚く。


「名前くらい隠す必要ないもの」


 鉤槍を構える。


「第二軍団魔獣部隊長」


「メルザ」


 ティナの目が。


 鋭くなる。


「部隊長」


「ええ」


「じゃあ」


 ティナが。


 白い剣を構える。


「あなた倒せば」


「この魔物たちも止まる?」


「さあ?」


 クジャが言う。


「多分」


「クジャ!」


「今度は私の多分」


「余計怖い!」


 メルザが。


 小さく笑った。


「面白いわね」


「何が?」


「あなたたち」


「よく言われる」


 クジャ。


「私は言われない!」


 ティナが突っ込む。


「まとめてだと思う」


「もっと嫌!」


 メルザ。


 鉤槍。


 前へ。


「なら」


 赤黒いオーラ。


 広がる。


「もう少し」


「見せてもらう」


     ◇


 大通り。


 ディーン。


 低く。


 剣を構える。


 ドレグ。


 鉄棍。


「行くぞ雷!」


「その呼び方やめろ!」


「名前知らねえ!」


「聞け!」


「何だ!」


「ディーン!」


「分かった!」


「素直だな!」


「お前が言うな!」


 ドレグ。


 地面。


 蹴る。


 巨体とは思えない。


 速い。


「――!」


 鉄棍。


 横薙ぎ。


 ディーン。


 しゃがむ。


 頭上。


 鉄棍。


 通過。


 直後。


 《加重》。


 空気が。


 押し潰される。


「っ!」


 避けただけなのに。


 衝撃。


 身体。


 横へ飛ぶ。


「ハハッ!」


 ドレグ。


 追う。


「《雷装》!」


 青白い雷。


 ディーンの全身。


 速度。


 一気に上がる。


 ドレグ。


 振り下ろす。


 ディーン。


 横へ。


 雷。


 一閃。


 脇腹。


「――ぐっ!」


 血。


 だが。


 ドレグ。


 鉄棍を捨てない。


「捕まえた!」


「何?」


 左手。


 ディーンの腕。


 掴む。


 瞬間。


 《加重》。


「――っ!?」


 腕。


 急激に。


 重くなる。


「お前……!」


「俺が重くできるのは」


 ドレグが笑う。


「鉄棍だけじゃねえ!」


 ディーンの足元。


 石畳。


 砕ける。


「沈め!」


     ◇


 大聖堂へ続く中央通り。


 シルヴァ。


 走る。


 風。


 《風脚》。


 途中。


 倒れた兵士。


「……!」


 止まる。


「大丈夫!?」


「う……」


 腹。


 強く打たれている。


 血は。


 少ない。


「敵は?」


 兵士が。


 震える指で。


 大聖堂を指す。


「黒い……槍……」


「一人?」


「……ああ」


「名前は?」


「ヴァ……」


 息。


「ヴァイラ……」


「…………」


 シルヴァが。


 その名を。


 初めて聞く。


「ヴァイラ」


「魔王軍……第二軍団長……」


「!」


 セイルの言葉。


『第二軍団は、すでに動いています』


 シルヴァの表情が。


 変わる。


「軍団長」


 兵士が。


 シルヴァの腕を掴む。


「行くな……」


「え?」


「あいつは……」


「一人で……」


「…………」


 シルヴァが。


 大聖堂を見る。


 そして。


 兵士を。


 近くの聖職者へ預ける。


「お願い」


「あなたは!?」


「中に」


「待て!」


 シルヴァ。


 走り出す。


「一人で行くな!」


 声。


 背後。


 だが。


 止まらない。


 風。


「一人じゃない」


 小さく。


「ガルドがいる」


     ◇


 大聖堂。


 地下入口。


 巨大な石扉。


 ヴァイラが。


 その前に立っていた。


 茶金色。


 封印。


「…………」


 触れる。


 長槍。


 黒い脈。


 石扉へ。


 侵入。


 だが。


 入った瞬間。


 大地の力が。


 食い止める。


「強い」


 一点。


 さらに。


 《侵脈》。


 集中。


 黒い線。


 少しずつ。


 茶金色の内側へ。


 入り込む。


 ギギギギ……。


 石扉。


 僅かに。


 亀裂。


「…………」


 ヴァイラの眼。


 静か。


「壊せる」


 その時。


 背後。


 風。


「――!」


 ヴァイラが振り返る。


 剣。


 目の前。


 黒い長槍。


 受ける。


 ――ガァン!!


 風。


 礼拝堂。


 爆ぜる。


「…………」


「…………」


 シルヴァ。


 剣。


 ヴァイラ。


 長槍。


 初めて。


 二人が。


 真正面から。


 目を合わせる。


「お前が」


 シルヴァが言う。


「ヴァイラ?」


「そうだ」


「第二軍団長?」


「ああ」


「…………」


 剣を。


 押す。


「セイル」


「死んだよ」


「そうか」


 それだけ。


 シルヴァの目が。


 少し細くなる。


「……それだけ?」


「何を求めている」


「部下でしょ」


「そうだ」


「悲しくないの?」


 ヴァイラは。


 数秒。


 シルヴァを見る。


「悲しめば」


「生き返るのか」


「…………」


「セイルは任務を遂行した」


「私は」


「その結果を無駄にしない」


 シルヴァの剣。


 僅かに。


 震える。


「気に入らない」


「そうか」


 ヴァイラ。


 長槍。


 一気に。


 押し返す。


「――っ!」


 シルヴァ。


 後退。


 着地。


「私も」


 ヴァイラが。


 長槍を構える。


「お前を好く必要はない」


 足元。


 黒い脈。


「知ればいい」


「何を」


「風の恩寵保持者」


 黒。


 床。


 広がる。


「シルヴァ・ライズ」


 シルヴァの目が。


 見開く。


「……俺の名前」


「知っている」


「何で」


「調べたからだ」


 ヴァイラ。


 淡々と。


「この大陸を攻める前に」


「危険なものは」


「全て調べる」


 黒い脈。


 シルヴァの足元へ。


「知らない力ほど」


 石床。


 爆ぜる。


「――戦場では厄介だからな」


「っ!」


 シルヴァ。


 風。


 上空。


 回避。


 ヴァイラ。


 見上げる。


「飛べる」


 小さく。


「確認済みだ」


「……!」


 長槍。


 構える。


 シルヴァが。


 空中で。


 剣を握り直した。


「俺たち」


「ずっと」


「調べられてたの?」


「ああ」


「エルネアも?」


「そうだ」


「魔物も?」


「一部は」


 シルヴァの顔から。


 完全に笑みが消える。


「…………」


「東の砦」


 ヴァイラが続ける。


「?」


「そこで使われた魔獣も」


「同じ系統だ」


「――!」


 ガルゼム。


 あの日。


 異常なまでに。


 止まらなかった魔物たち。


「お前が」


「全てではない」


 ヴァイラが答える。


「だが」


「第二軍団が運用した個体には」


 黒い脈が。


 ヴァイラの腕から。


 長槍へ走る。


「私が手を加えた」


「…………」


 シルヴァが。


 ゆっくり。


 剣を構える。


「じゃあ」


 風。


 足元。


 渦巻く。


「あの砦で」


「死んだ人たちにも」


「お前は関係あるんだ」


「戦争とはそういうものだ」


「まだ戦争始まってない」


「始めるかどうかを」


 ヴァイラの赤い瞳。


 冷たい。


「決めるために来た」


 シルヴァの風が。


 一気に強くなる。


「……やっぱり」


「何だ」


「嫌いだ」


「問題ない」


 ヴァイラ。


 黒い長槍。


 構える。


「私も」


「好かれるために」


「ここへ来たわけではない」


 地上。


 風。


 地中。


 黒い脈。


 二つの力が。


 大聖堂の床を挟み。


 激突する。


 そのさらに下。


 ガルドが。


 顔を上げた。


「…………」


 風。


 シルヴァ。


 そして。


 黒い侵入者。


「来たか」


 聖杖を握る。


 茶金色。


 大地。


 静かに。


 震え始めた。

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