第29話 第二軍団
聖都アルセリア。
東南門。
――ドォォォォン!!
轟音。
巨大な門が。
大きく内側へ歪んだ。
「くっ……!」
「支柱を追加しろ!」
「急げ!」
聖都兵たちが。
門の内側へ木材を運ぶ。
「次が来るぞ!」
城壁の上。
兵士が叫んだ。
門の外。
巨大な鉄棍を肩に担ぎ。
一人の魔族が立っている。
ドレグ。
「一発じゃ無理か」
口元が。
楽しそうに歪む。
「じゃあ」
両手で。
鉄棍を握る。
「二発目だ」
オーラ。
鉄棍へ。
集まる。
見た目は。
変わらない。
だが。
地面へ触れた鉄棍の先が。
ズン――。
沈んだ。
《加重》。
「止めろ!!」
城壁から。
無数の矢。
放たれる。
ドレグは。
鉄棍から片手を離す。
足。
地面。
「軽いな」
自分自身へ。
《加重》。
身体が。
大地へ沈み込む。
矢。
肩。
腕。
数本が刺さる。
それでも。
微動だにしない。
「効かねえよ」
振りかぶる。
「――開け」
鉄棍。
落下。
直前。
重量。
増大。
――ドォォォォン!!!
「うわああああっ!!」
門。
支柱。
石壁。
一斉に。
内側へ弾けた。
土煙。
悲鳴。
「東南門、突破されました!!」
◇
「魔獣隊」
メルザが。
鉤槍を掲げる。
「第一群」
「前へ」
鎖。
外される。
何十体もの魔物。
その身体。
黒い脈が。
皮膚の下で蠢いている。
《獣刻》。
「放て」
魔物たちが。
一斉に。
壊れた門へ駆け出した。
「来るぞ!」
「槍隊!」
「構えろ!」
聖都兵。
前列。
長槍。
防壁。
魔物。
激突。
ガァン!!
「ぐっ!」
「押されるな!」
一体。
槍が腹へ刺さる。
それでも。
止まらない。
「何だこいつ……!」
「傷が――!」
魔物が。
槍ごと兵士へ突っ込む。
「うわっ!」
その時。
「下がれ!」
聖都兵の隊長らしき男が。
剣を振る。
「第二列!」
「前へ!」
兵たちが入れ替わる。
魔物を押し返す。
メルザは。
少し離れた場所から。
その男だけを見た。
「……あれね」
鉤槍。
先端。
指でなぞる。
赤黒いオーラ。
「《血標》」
小さな光。
飛ぶ。
「――?」
隊長の肩。
赤い印。
付着。
直後。
前方の魔物たちが。
一斉に。
動きを止めた。
「……?」
兵士が。
訝しむ。
そして。
全ての魔物が。
同時に。
隊長を見た。
「え」
「隊長!!」
一斉に。
殺到。
「な――!」
右。
左。
正面。
何体もの魔物。
「隊長を守れ!!」
陣形が崩れる。
兵たちが。
一人を守るために集中する。
その瞬間。
別方向から。
第二群が。
門を抜けた。
メルザが呟く。
「単純」
隣の魔族兵が聞く。
「追撃しますか」
「不要」
「人間どもが逃げています」
市民。
子供。
老人。
東南区から。
必死に逃げている。
「放っておきなさい」
「しかし」
「命令を忘れた?」
メルザの目が。
冷たくなる。
「私たちは」
「住民を殺しに来たんじゃない」
「はっ」
「防衛兵だけ崩す」
視線。
大聖堂。
「それで十分」
◇
少し離れた高台。
ヴァイラは。
聖都を見ていた。
東南門。
突破。
兵の移動。
鐘。
市街地。
「門突破まで」
傍らの兵が答える。
「想定より僅かに早く」
「聖都守備兵の初動は」
「悪くない」
ヴァイラが言う。
「ですが」
「?」
「隊長格一名へ戦力が集中しました」
「メルザだろう」
「はい」
「なら評価には入れるな」
「……は?」
ヴァイラが。
聖都の地図を見る。
「本来の防衛能力を測る」
「こちらの能力で意図的に崩した部分を」
「相手の失策として数えるな」
「はっ」
「次」
「中央区から増援」
「どの程度だ」
「確認中です」
「急げ」
「は!」
兵が離れる。
ドレグが。
遠くで。
鉄棍を振り回している。
「…………」
ヴァイラの目が。
僅かに細くなる。
「あれは」
「壊しすぎるなと言ったはずだが」
◇
「おらぁ!!」
ドォン!!
街道脇の防壁。
半分。
吹き飛んだ。
「ドレグ様!」
「何だ!」
「門だけとの命令では!?」
「兵が隠れてた!」
「壁ごと壊す必要は!?」
「早いだろ!」
「…………」
魔族兵が。
何も言えなくなる。
◇
大聖堂地下。
――ゴン。
ガルドが。
聖杖を地面へ突いた。
茶金色の光。
封印陣へ広がる。
「…………」
地上。
僅かな振動。
東南。
さらに。
大量の足音。
大地を伝ってくる。
「始まったか」
聖職者が駆け込む。
「最高司祭!」
「報告を」
「東南門が突破されました!」
「敵は魔族兵多数!」
「さらに魔物!」
「数は?」
「確認できているだけで五十以上!」
「民間人の避難は」
「開始しております!」
「西側へ誘導しろ」
「大聖堂前へ集めるな」
「はっ!」
「治療所を三ヶ所」
「中央広場」
「西礼拝堂」
「北修道院へ」
「承知しました!」
聖職者が走り去る。
ガルドは。
地下を見た。
「…………」
自分が。
ここから動けば。
封印が弱まる。
だが。
地上では。
戦いが始まっている。
聖杖を握る。
「……狙っているな」
自分を。
ここから。
引きずり出す。
それも。
敵の目的の一つ。
「ならば」
ガルドの眼が。
鋭くなる。
「動かん」
◇
その頃。
山道。
「もっと速く!」
ティナが叫んだ。
「これ以上上げたらティナきつい!」
シルヴァが答える。
「平気!」
「腕も怪我してる!」
「今それ言ってる場合!?」
四人。
全力。
先頭。
シルヴァ。
《風脚》。
ただし。
何度も。
後ろを確認している。
ディーン。
《迅雷》を短く使いながら追う。
クジャ。
走る。
ティナ。
息が。
少し荒い。
「ティナ」
「平気!」
「まだ何も言ってない!」
「言うこと分かる!」
「…………」
ディーンが横へ来る。
「シルヴァ」
「何!」
「こいつ連れて先行け」
「え?」
ティナが振り向く。
「ちょっと!」
「このペースじゃ間に合わねえ」
「でも――」
「ティナ」
シルヴァが。
足を止めた。
「乗って」
「……は?」
背中を向ける。
「何でそうなるの!?」
「急ぐんでしょ?」
「急ぐけど!」
「俺なら風使える」
「でも!」
「早く」
「…………」
ティナの顔が。
赤くなる。
クジャが言う。
「時間ない」
「分かってる!」
「じゃあ乗る」
「クジャが!?」
「私は走れる」
「じゃあ何で言ったの!?」
「ティナ遅いから」
「……っ!」
ディーンが。
頭を押さえる。
「今やってる場合か!」
「そうだった!」
ティナが。
諦めた。
「……落とさないでよ」
「落とさない」
シルヴァの背。
ティナが。
腕を回す。
「…………」
「ティナ」
「何」
「掴むの強い」
「落ちたくないの!」
「首締まる」
「我慢!」
「理不尽」
クジャが言う。
「顔赤い」
「走ってるから!!」
「シルヴァ走ってる」
「私は背負われてるから!」
「もっと変」
「クジャ!!」
「行くぞ!」
ディーンが叫ぶ。
風。
雷。
四人が。
再び加速した。
◇
聖都南側。
山道を抜ける。
「……!」
視界。
開ける。
アルセリア。
黒煙。
東南門。
破壊されている。
「……本当に」
ティナの腕が。
シルヴァの肩を強く掴む。
「攻められてる」
シルヴァが。
歯を食いしばる。
「ガルド……」
「地下にいるはず」
ディーンが答える。
「そう簡単にやられねえ」
「でも」
「まず街だ」
ディーンが。
下を見る。
南側街道。
逃げてくる人々。
その後ろ。
魔物。
「……っ!」
ティナが叫ぶ。
「シルヴァ!」
「分かってる!」
風。
急降下。
◇
「逃げろ!」
「早く!」
「お母さん!」
「離れないで!」
南居住区。
市民が。
路地を走る。
後ろ。
三体の大型魔物。
《獣刻》。
黒い脈。
一体が。
子供へ飛びかかる。
「――っ!」
母親が。
子供を抱く。
その瞬間。
風。
ドン!!
魔物の身体が。
横へ吹き飛んだ。
「……え?」
シルヴァ。
着地。
背中。
ティナ。
「降りる!」
「うん」
ティナが飛び降りる。
剣。
《構装》。
「皆さん!」
声が。
一気に変わった。
「西へ!」
「大通りは使わないで!」
「細い路地から中央広場を避けてください!」
市民たちが。
立ち止まる。
「でも――!」
「ここは私たちが止めます!」
迷いのない声。
東方防衛隊長。
その時のティナが。
戻っていた。
「走って!」
「はい!」
人々が。
動く。
シルヴァが。
少しだけティナを見る。
「何?」
「隊長っぽい」
「隊長だったの!」
「知ってる」
「じゃあ言わない!」
魔物。
再び。
襲いかかる。
「シルヴァ!」
「うん!」
風。
剣。
横薙ぎ。
《風刃》。
一体。
首元。
深く切る。
だが。
止まらない。
「やっぱり」
クジャが追いつく。
「エルネアと同じ」
「《獣刻》?」
ティナが聞く。
「名前は知らない」
「そうだった!」
クジャ。
眼帯。
僅かに外す。
「短く!」
シルヴァが言う。
「うん」
右眼。
黒い流れ。
魔物の首。
「首の後ろ」
「三体とも?」
「うん」
ディーン。
剣。
雷。
「なら簡単だ」
《迅雷》。
青白い光。
一体目。
首。
斬撃。
黒い流れ。
切断。
魔物が。
崩れる。
「二匹!」
シルヴァ。
《風脚》。
二体目。
剣。
首筋。
風を一点。
《点穿》。
刻印ごと。
貫く。
ティナ。
三体目。
《構装》。
白い足場。
空中。
一回転。
剣。
首。
「はぁっ!」
切断。
黒い流れ。
消える。
魔物。
倒れた。
「……よし」
ティナが息を吐く。
「腕」
「平気!」
「まだ聞いてない」
「顔で分かる!」
クジャが眼帯を戻す。
「ティナも分かりやすくなった」
「今はそれどころじゃない!」
◇
「そこの四人!」
兵士。
数名。
駆けてくる。
「戦えるのか!?」
「戦えます!」
ティナが答える。
「状況は!」
「東南門が突破された!」
「大型の魔族が一人!」
「魔物を操る女型魔族!」
「他にも兵多数!」
「指揮官は?」
「不明!」
「ただ」
兵士が。
息を整える。
「軍旗を確認した」
ティナの表情が。
変わる。
「軍旗?」
「ああ」
「黒地に二本角の紋章」
「第二軍団のものだ!」
「…………」
シルヴァが見る。
「第二軍団」
セイルの。
最後の言葉。
『第二軍団は、すでに動いています』
ディーンが。
低く呟く。
「軍団丸ごとか」
「そこまでは」
兵士が答える。
「だが」
「部隊長級が複数いる!」
ティナが聞く。
「敵の目的は?」
「分からない!」
「市民を狙ってる?」
「いや」
兵士が。
そこで少し戸惑う。
「それが妙なんだ」
「?」
「逃げる市民を」
「ほとんど追わない」
「…………」
「兵と」
「門と」
「防衛施設ばかり狙ってる」
ディーンの目が。
険しくなる。
「やっぱりか」
「何?」
シルヴァが聞く。
「攻め落とす気じゃねえ」
「じゃあ何?」
「測ってる」
ティナが。
気づく。
「……防衛力」
「ああ」
「どれだけ兵が出るか」
「どこから増援が来るか」
「何分で立て直せるか」
「全部」
クジャが言う。
「見てる」
「…………」
シルヴァの表情が。
険しくなる。
「そんなの」
「戦争する前にすること?」
「そうだ」
ディーンが答える。
「本気で」
「次を考えてる奴ならな」
◇
「お前たち!」
別の兵士が。
大通りの先から叫ぶ。
「下がれ!」
「魔獣群が来る!」
地響き。
十体以上。
強化魔物。
路地の奥から。
一斉に現れる。
その後ろ。
黒赤色の髪。
鉤槍。
メルザ。
「…………」
クジャが見る。
「女」
「部隊長?」
ティナが剣を構える。
メルザは。
こちらを見た。
シルヴァ。
ティナ。
クジャ。
ディーン。
一人ずつ。
「……戻ったのね」
小さく。
呟く。
「思ったより早い」
シルヴァが。
一歩前へ。
「お前」
「第二軍団?」
「そうよ」
メルザが答える。
「じゃあ」
シルヴァの声が。
低くなる。
「誰が指揮してる」
メルザが。
僅かに笑った。
「知りたい?」
「うん」
「なら」
鉤槍。
持ち上げる。
「生きていれば」
「そのうち会える」
「今教えて」
「嫌よ」
「話通じない」
「敵だから当然でしょ」
クジャが言う。
「正論」
「クジャ?」
◇
別方向。
大通り。
「おい」
ディーンが。
突然。
そちらを見る。
巨大な影。
兵士たちを。
吹き飛ばしながら。
歩いてくる。
「おら!」
鉄棍。
地面。
ドォン!
「弱えなあ!」
ドレグ。
肩。
矢が何本か刺さったまま。
気にもしていない。
そして。
ディーンを見る。
「…………」
「…………」
二人。
目が合った。
ドレグの口元が。
大きく上がる。
「雷」
ディーンが。
嫌そうな顔をする。
「何だ」
「お前」
ドレグが。
鉄棍を肩へ担ぐ。
「山にいた剣士だろ」
「知らねえ」
「嘘つけ」
「顔知らねえだろ」
「雷で分かる!」
「じゃあ聞くな」
ドレグが。
豪快に笑う。
「いいな!」
「お前」
「何がだ」
「強そうだ!」
「最悪だ」
シルヴァが横から言う。
「ディーンと似てるね」
「どこがだ!」
「強い奴見ると嬉しそう」
「俺はこんな顔しねえ!」
クジャ。
「する」
「お前まで!?」
ティナが。
ため息をつく。
「師弟ね」
「違う!」
「師弟だよ」
「お前は認めんな!」
◇
メルザが。
四人を見る。
そして。
ティナ。
その動き。
周囲の兵へ指示を出している。
「……あなた」
「?」
「邪魔ね」
鉤槍。
指。
赤黒いオーラ。
クジャの右眼。
眼帯の奥が。
僅かに疼く。
「ティナ!」
「え?」
遅い。
赤い光。
ティナの左肩へ。
触れた。
「――っ!」
痛みはない。
ただ。
小さな。
赤い印。
「何これ」
クジャが。
眼帯を外す。
「待って」
右眼。
見る。
メルザ。
ティナ。
そして。
魔物たち。
「……!」
繋がっている。
赤い線。
ティナから。
十数体の魔物へ。
「ティナ」
「何!?」
「狙われる」
「え?」
直後。
全ての魔物が。
一斉に。
ティナを見た。
「…………」
ティナの顔が引きつる。
「私?」
クジャが頷く。
「人気者」
「嬉しくない!!」
魔物。
一斉。
突進。
「ティナ!」
シルヴァ。
前へ。
「来ないで!」
「え?」
「市民!」
ティナが叫ぶ。
「シルヴァは逃げ遅れた人を!」
「でも!」
「私は一人じゃない!」
クジャを見る。
「クジャ!」
「うん」
「この印」
「見える?」
「見える」
「消せそう?」
「分からない」
「じゃあ調べながら戦う!」
ティナが。
剣を構える。
シルヴァが。
一瞬。
止まる。
そして。
「……分かった」
「うん」
「無理しないで」
「そっちも!」
シルヴァが。
走る。
市民。
兵士。
崩れた建物。
風。
◇
ディーン。
前。
ドレグ。
「俺は?」
ドレグが聞く。
「何が」
「相手してくれんだろ?」
「嫌だ」
「何で!」
「面倒くせえ」
「いいじゃねえか!」
巨大な鉄棍。
振り下ろす。
「――っ」
ディーン。
横へ。
鉄棍。
地面。
直前。
《加重》。
――ドォォォン!!
街道。
陥没。
衝撃。
「……!」
ディーンが。
雷を纏う。
「街壊すな」
「敵に言うことか?」
「俺もそう思う」
剣。
抜く。
「だから」
青白い雷が。
身体へ。
《雷纏》。
「さっさと倒す」
ドレグが。
笑った。
「いいねえ!」
◇
その頃。
ヴァイラは。
一人。
聖都の中央へ向かっていた。
周囲。
戦闘。
悲鳴。
警鐘。
しかし。
歩みは。
急がない。
視線。
建物。
兵。
避難経路。
大聖堂。
「…………」
地面。
黒い長槍。
軽く。
突く。
コン。
《侵脈》。
聖都の地下。
広がる。
だが。
以前とは違う。
大聖堂地下。
茶金色。
強固な壁。
「……やはり」
大地の恩寵。
そこにいる。
「軍団長!」
部下が。
駆け寄る。
「報告!」
「四名が帰還!」
ヴァイラの足が。
止まる。
「四名?」
「風の少年!」
「雷の剣士!」
「《構装》の女!」
「眼帯の娘!」
「…………」
数秒。
「セイルは」
「確認できておりません!」
ヴァイラが。
静かに。
目を閉じる。
「そうか」
それだけ。
再び。
歩き出す。
「軍団長?」
「予定を早める」
「は」
「ドレグとメルザには」
「帰還した四名を足止めさせろ」
「では軍団長は?」
ヴァイラの視線。
巨大な大聖堂。
「私は」
黒い長槍を握る。
「大地を見に行く」
◇
東南区。
魔物が。
ティナへ殺到する。
「来る!」
ティナ。
《構装》。
盾。
ガァン!
「重っ……!」
一体。
右。
「♠7!」
クジャ。
先ほど戦闘の後に補充した手札から。
カード。
斬撃。
魔物の顔面。
「助かった!」
「まだ」
二体。
三体。
「多い!」
「人気者だから」
「それ今言う!?」
メルザが。
遠くから。
鉤槍を構える。
「さあ」
赤い印。
淡く輝く。
「どこまで守れる?」
その時。
ティナの後ろ。
子供の泣き声。
「……!」
振り返る。
逃げ遅れた。
小さな兄妹。
「クジャ!」
「分かった」
クジャが。
子供たちの前へ。
♦6。
防壁。
「ティナ」
「何?」
「前」
「――!」
魔物。
爪。
ティナ。
剣。
受ける。
押される。
「くっ……!」
傷。
右腕。
まだ。
完全ではない。
それでも。
足を退かさない。
「私を狙うなら」
ティナが。
息を吐く。
「ちょうどいい」
《構装》。
剣。
伸びる。
「全員」
目。
鋭くなる。
「こっち来なさい!」
◇
その頃。
シルヴァは。
風で。
崩れかけた家屋を支えていた。
「早く!」
「出て!」
中から。
老夫婦。
兵士が。
肩を貸す。
「もう大丈夫!」
シルヴァが。
家屋から離れる。
直後。
建物。
崩れる。
ドォン。
「……」
煙。
その向こう。
大聖堂。
シルヴァが。
目を細める。
風。
何か。
変だ。
街の地下。
どこかから。
嫌な感覚。
風が。
地面へ吸われる。
だが。
ガルドのものではない。
黒い。
異物。
「…………」
シルヴァが。
大聖堂を見る。
「ガルド」
◇
大聖堂正門。
聖職兵。
何十人。
槍。
剣。
「止まれ!」
白い階段。
その下。
一人の男。
黒い軍装。
黒い長槍。
赤い瞳。
「ここより先は聖域だ!」
「名を名乗れ!」
男は。
立ち止まった。
「名前か」
「答えろ!」
「……そうだな」
長槍の石突き。
地面へ。
コン。
黒い脈が。
石段の内部へ。
広がる。
「――!」
階段。
亀裂。
兵士たちの足元。
内側から。
弾ける。
「うわああっ!」
陣形が崩れる。
男は。
その中央を。
静かに歩く。
「伝える必要はある」
倒れた兵士が。
顔を上げる。
「何を……」
赤い瞳。
「誰に敗れたのか」
男が。
大聖堂を見上げる。
「最高司祭にも」
「知ってもらわねばならない」
一歩。
「魔王軍」
もう一歩。
「第二軍団長」
黒い脈が。
大聖堂の石床へ。
侵入する。
「――ヴァイラ」
地の底。
ガルドが。
目を開いた。




