第五十二話 父からの二度目の手紙
ベルネット伯爵、私の父から手紙が届いたのは、追悼式の翌日だった。
父は現在、王都南の監督施設で正式審理を待っている。爵位停止中で、領地管理権もない。手紙は検閲済みだった。
封を開ける前、私は少し時間を置いた。
父の文字を見るだけで、体が固くなる。
それは半年では消えない。
ノア殿下はその日、王宮にいる。私は法衣院の自室で、一人で手紙を読んだ。
『ルシアへ。
この手紙を書くのに、何度も失敗した。
最初は、家の状況を説明しようとした。次に、私がどれほど追い詰められていたかを書こうとした。だが、そのたびに、言い訳だと分かった。
私はエレナ王妃の杯を運んだ。毒だと知らなかったとしても、その後に疑い、黙った。お前の母が残したものを恐れ、隠そうとした。お前に、家の罪や不和を背負わせた。
これは、私の罪だ。
お前に許してほしいと書きかけたが、やめる。許しは、お前が決めることだ。
私が今できることは、審理で知っていることを話すこと、領地の不正記録を出すこと、アイリスが領地で行っている調査を妨げないことだ。
お前の母のことを、私は長く憎んだ。家より真実を選ぶ女だと思った。今は、私が家を守るという言葉で、自分を守っていただけだと分かる。
遅すぎるが、書く。
ルシア。お前に押しつけたものは、お前の罪ではなかった。
ベルネット』
最後に父の署名があった。
私は手紙を読み終え、しばらく動けなかった。
謝罪の言葉は少ない。
許しを求める言葉もない。
でも、父は初めて、自分の罪と私の罪を分けた。
お前に押しつけたものは、お前の罪ではなかった。
その一文を見て、涙が出た。
父を許した涙ではない。
幼い頃の私が、ようやく誰かに言ってほしかった言葉を受け取った涙だった。
私は返事を書いた。
『ベルネット伯爵へ。
手紙を受け取りました。
私に押しつけられたものが私の罪ではなかったと、あなたが認めたことを記録します。
私はまだ、あなたを父として近くに置くことはできません。許すとも言えません。
審理で知っていることを話してください。領地の不正記録を提出してください。アイリスの調査を妨げないでください。
それが、今の距離です。
ルシア・ベルネット』
書き終えると、胸が疲れていた。
でも、重さの種類が変わっていた。
父の手紙は、私を過去へ引き戻すものではなく、距離を確認するためのものになった。
その夜、ノア殿下と庭でお茶を飲んだ。
私は父の手紙のことを話した。
彼は静かに聞いた。
「返事は書けましたか」
「はい」
「それは、あなたのための返事でしたか」
私は少し考えた。
「はい。父を安心させるためではなく、私の距離を伝えるためでした」
「なら、よい返事です」
彼はそう言った。
庭には秋の虫の声がする。
私はお茶を飲み、空を見上げた。
「ノア殿下」
「はい」
「私は、少しずつ自由になっている気がします。でも、自由は思っていたより怖いです」
「選べることは、責任も伴いますから」
「はい。でも、選べないよりいい」
「はい」
その静かな同意が、私には何より心強かった。
父との距離。
妹との距離。
王太子だった人との距離。
ノア殿下との距離。
私は一つずつ、自分で縫っている。




