表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪会場で「ごめんなさい」と謝ったら、王太子の罪状がドレスに刺繍されました ~濡れ衣令嬢の謝罪は、本当の犯人だけを縫い上げる~  作者: 小竹X


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/66

第四十三話 新しい王冠の条件

 次の王を決める会議は、三日続いた。


 貴族院、臨時評議会、王太后、法務院、そして各地の有力領主。


 皆、口では国の安定を言う。


 だが、その安定の意味は人によって違った。


 ある者は、ノア殿下の即位を求めた。


 ある者は、ダミアン殿下の継承権停止を一時的なものにし、摂政を置くべきだと言った。


 ある者は、王太后の遠縁から新王を迎えるべきだと主張した。


 ある者は、この混乱を機に貴族院の権限を拡大しようとした。


 王冠が空くと、人はその下に自分の糸を通そうとする。


 私は証縫官として、会議の証言布を管理した。


 会議中に虚偽が出ると、布が淡く赤く光る。ただし、政治的意見は虚偽とは違う。そこが難しい。


「我が領は王家に忠実です」


 ある領主がそう言い、布が赤く光った。


 実際には、彼の領は王太子派へ資金を流していた。


「私は国の安定のみを望みます」


 別の貴族が言うと、布は半分だけ光った。


 安定も望んでいるが、自家の昇進も望んでいるらしい。


 政治の布は、複雑だ。


 ノア殿下は三日目の夕方、ようやく自分の条件を提示した。


「私が王位を受ける場合、三つの改革を即位条件とします」


 会議室が静まる。


「第一に、白証布および証言布の制度化。王、貴族、神殿を含む公的裁定で、証拠布による記録保全を義務づける」


 貴族たちがざわめく。


「第二に、神殿の赦罪権停止。寄進による罪の軽減を禁止し、過去の赦罪帳簿を全件調査する」


 神殿代表の顔が青くなる。


「第三に、王冠から黙罪布を完全に排除し、王冠そのものに証言布を縫い込む。王が重大な虚偽を述べた場合、王冠が沈黙させるのではなく、記録するように」


 会議室が騒然となった。


 王冠が王の嘘を記録する。


 それは、王権を縛る制度だ。


 貴族院議長が言った。


「それでは王の威厳が損なわれます」


 ノア殿下は答えた。


「嘘を記録されることで損なわれる威厳なら、最初から威厳ではありません」


 痛烈だった。


 私は証言布の前で、少し笑いそうになる。


 議論は激しかった。


 しかし、王妃毒殺と黙罪布の件が明らかになった直後だ。公然と反対すれば、罪を隠したいと見られる。民衆も改革を求めている。


 三つの条件は、修正を経て承認された。


 ただし、ノア殿下は即位ではなく、まず二年間の王国摂政となることを選んだ。


 理由は、王位継承法を整備し、ダミアン殿下を含む王族の処分を確定させるまで、恒久的な即位は避けるべきだから。


 それが表向きの理由。


 本音は、王冠を急いで被りたくないのだろう。


 でも、それは逃げではない。


 王冠を罰として受け取らないための時間だ。


 会議後、ノア殿下は私のところへ来た。


「摂政になることになりました」


「おめでとうございます、でよいのでしょうか」


「私にも分かりません」


 彼は少し疲れていた。


「法衣院長は兼任ですか」


「一時的にバルテル副院長へ実務を移します。ただ、証言布制度の設計には関わります」


「書類が増えますね」


「増えます」


「スープも増やしますか」


 ノア殿下は小さく笑った。


「お願いします」


 その返答が、以前より少し柔らかい。


 王冠の条件が決まり、国は少しずつ新しい形へ動き始めた。


 ただし、新しい王冠には、新しい敵も生まれる。


 その夜、法衣院の門に黒い紙が貼られた。


 白い布の女が王を操る。


 証言布は新たな黙罪布である。


 ルシア・ベルネットを裁け。


 罪を隠す側は、次の攻撃先を私に定めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ