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第三十三話 よく話しかけられる

 気候が穏やかになり、観光客の姿を見ることが多くなった。


 自然豊かな我が町は観光業や農業林業に依存しており、私の通勤路にも観光スポットがあるのだ。


 町の名産品であるじゃがいもを模したゆるキャラ「じゃがピッピ」の像である。


 じゃがピッピは全日本ゆるキャラグランプリで最下位を争うほど町民に不評だったが、「とにかく目がヤバい」という理由で全国的に話題となり、瞬く間にマスメディアに引っ張りだことなった。


 そのおかげで観光客がわんさと押し寄せてくるようになったのである。


 じゃがピッピ像は通勤途中にある小さな公園の入り口に立っており、そこを通らないと職場にたどり着くことはできない。


 ここで一つ問題が生じる。私が非常に「話しかけやすい」ルックスであるということだ。


 日常でも旅行先でも地元民でないのに道を尋ねられるのなんてしょっちゅうだし、ベンチに座れば高確率で高齢の方に話しかけられ、小学生には「何してんの」と絡まれ、店では店員でないにも関わらず商品の場所や使用法、使い心地から廃棄の仕方までをも聞かれたりする。


 それどころかボーッと歩いていても初対面の人に「今日の献立どうしましょう」「実は転職を迷ってて……」などの相談、「夢って、ある?」「今しあわせ?」など何らかの勧誘まで受けまくる始末。


 良く言えば親しみやすいのだろうが、まあ下に見られているのであろう。


 だからじゃがピッピ像に群がる観光客の前を通ると、99.9パーセントの確率で「写真お願いします」と頼まれるのだ。


 一組が頼むと我も我もと列をなし、先日など続けて五十組の写真を撮るハメとなった。


 暇な休日なら良いのだが、通勤途中なので仕事に遅れてしまうのが問題なのである。


 何度も遅刻するとクビになる恐れがあり、もはや死活問題なのである。


 断れば解決する問題かもしれない。しかし私は断ることが大の苦手なのである。


 私は必死に解決策を練り、ある結論に行き着いた。絶対に話しかけられない格好で通勤すればよいのだ。


 そこで、私だったら100パーセント声をかけないだろう格好を考えることにした。


 まず視線をわからなくするのが重要だろう。視線を隠すにはサングラス……いや、それじゃあまだ弱い。レンズの片方が赤、もう片方が青色をした3D眼鏡を着用しよう。


 髪型も趣向を凝らさねばなるまい。いろいろと考えた結果、ツタンカーメン王のマスクそっくりの金と青の縞々模様のかつらを自作した。


 服はどうするか。これは昆虫を参考にした。よく青虫やチョウに付いている目玉模様、あれは天敵に捕食されないための役割を持つと聞いたことがある。私は安い上下セットのジャージを買ってきて、大中小さまざまな色の目玉模様をフェルトで作って縫い付けた。


 保険として、もしも話しかけられたなら「そんなことより今は何時代の何月何日なんですか⁈」と答え煙に巻く作戦まで立て、通勤を開始した。


 効果はてきめんであった。観光客に声をかけられる確率は0まで下がったのだ。


 代わりに警察には100パーセント声をかけられるようになったが、今のところ職場に遅れたことはないし、顔見知りとなった警察官に「今日もキマってるね⭐︎」と言われるくらい信頼関係を構築できたのだから、同じ悩みを持つ方は是非試してくださいね。




ありがとうございました。

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