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後日談三本立て

〈優等生のケンカ上達法〉


「ねえ、気になってたんだけど」

「んー?」

 図書室の窓から空を見ていた私と、読書中のシュウ君。あれから何度か会っていて、私はその度にケンカをする姿とこの本を読む姿が結びつかずに首をかしげている。

「どうやってケンカできるようになったの?」

 上の空だったくせに、その質問に彼は眉をしかめた。

「あー……聞きたいか?」

「質問したんだからそりゃあね」

「なんとなく、だ」

 本から目を上げたシュウ君は、やたらハッキリキッパリと曖昧なことを言った。

「金髪にしたら喧嘩吹っ掛けられるようになって、それからなんとなく強くなってたんだよ」

「なるほど」

 才能があったってことなのかな。殴るという行為をためらわない才能。

「じゃああのよく来る他校の男の子たちは?」

「それも同じ答えで、なんとなく。喧嘩しているうちに馴染みの奴が出来た。あいつらはその一例」

 ふーん、とわたしは笑った。ちょっと羨ましかったから。流れで友達が出来るなんていいなあ。

「仲良いよね」

「時々飯おごったりおごられたりするくらいには、な」

 そんなに仲良いくせに友達とは思ってないんだ、とは言わなかった。代わりに

「鈍感不器用だね」

 と小さく呟いた。


***


〈テスト終わりは拗ねタイム〉


「ねえ、テストやっと終わったね」

「お疲れー」

「どうだったー……って、頭いいんだったね」

「ああ、さして問題はないな。そっちはどうだったんだ? というか成績はいいのか?」

 あんまりされたくない質問。自分より成績のいいひとからは特に。

「真ん中より、ちょっと上くらいだよ」

 じろりと睨みつつ告白すると、驚いたように目を見開かれる。

「意外だ」

「なんで?」

「頭の回転が早いから、もっと上かと思った」

 う。買い被られている。恥ずかしいなぁもう。

「……ケアレスミスが多いんだよ。だから小テストとかは良い点なんだけどねー」

「ああ、納得した。それっぽい」

 それっぽいってなんだ。ツメが甘いとでも言いたいのか?

 拗ねてるわたしの耳に、ちいさい笑い声。

「悪い。別に馬鹿にしてる訳じゃないんだ。ただ順位が上なんじゃないのがすごくそれっぽくて、面白い」

 ……なんだか釈然としないけど、楽しそうだからいいか。


***


〈甘党二人のハッピーバレンタイン〉


「ねえ、そろそろバレンタインだね」

 屋上で二人。わたしは空を見て、シュウ君は本を読む。いつもの状態。

「シュウ君ってやっぱりたくさん貰うの?」

 わたしの疑問に彼は本から目を上げちょっと首を傾げた。

「いや、貰ったことないな」

「そうなの?」

「中学の時はいじめられたし今は不良やってるしなぁ……貰える要素がないというか」

 ああそっか。確かに近付きがたいか。モテても渡す隙がないもんね。

「……甘いもの、好き?」

「かなり」

 予想外に即答された。真顔で。思わず笑いながらも計画を伝える。

「実はわたしも好きなの。だからさ、バレンタイン終わったあとの売れ残ったチョコレート巡り、付き合ってよ」

「ああ、なるほど。安くなってるのか」

「そう。狙い目だけどやっぱり同じこと考えてる人もいてね、去年は欲しかったやつ買いそびれたの。だから今年はお互い半分づつお金を出すっていうふうにして、誰かと分担しようと思って」

「……アリだな。乗った」

 シュウ君がニヤリと笑う。わたしも唇を吊り上げて返す。悪い笑み。

「じゃあ十五日の放課後、図書室で」

 バレンタインの次の日に、王子様を独り占めする悪い女子高生はそう言って、秘密の契約を交わしたのだった。

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