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07 剣の技を高めよ

 元々は王都からほど遠い小さな山間の老人ばかりが住む村の少年だった。両親は幼い頃に亡くし、祖母に育てられていたが捻くれることも、卑屈になることもなく、優しく勇敢で正義感に溢れる子だった。数少ない若者であった彼はその余りある体力で村を支えていた。そしてその隣にはいつも幼馴染の女の子がいた。彼らの生活に転機が訪れたのはこれまたなんてことの無い良く晴れた日の出来事だ。山の奥深くにある薬草をその日も二人で取りに行くその道中だった。普段なら見ることもない大きな空を飛ぶ魔物に襲われたのだ。鳥なのか蝙蝠なのか。ただひとつわかることは明らかな敵意を持ちその鋭い爪を突き立てようとしてくるという事だけ。二人は命からがら洞窟へと逃げ込んだ。幸いな事にその入り口は魔物が入ってくるには狭く、彼らは一息つくことができた。しかしそれは逆にその入り口からはもう外には出られないという事も意味していた。仕方なく洞窟の奥へと進む二人はそこである奇妙な物を見つける。光の届かない真っ暗な洞窟の中で自らが発行するように輝く地底湖。そしてその水面になぜか浮かぶ半径一mほどの岩の塊だった。岩の材質に特段変わった所は無く、周りの洞窟を形成している地質と同じように見える。なぜプカプカと浮かんでいられるのか、見当もつかなかった。少女があることに気が付く。岩に一本酷く錆びた剣が突き刺さっていた。少女がその剣に手を伸ばし掴むと引っ張ってみる。しかし剣は岩と一体化してるのかと思うほどピクリとも動かなかった。まぁ仮に抜けた所でとても使える代物ではないだろう。少女は出口を探そうと歩き出す。だがしっかりと手を握ったままの少年の体は動かなかった。少年の目はまるで魅入られたかのようにその剣に釘付けだった。少女はその異様な光景に恐怖すら覚え、少年の体を強引に剣から遠ざけようとする。だが逆に少年の方が少女を引きずるようにして剣へと近寄った。そして手を伸ばし柄を掴む。不思議なことに少年は一切力を加えていない。しかし剣はさっき少女が抜こうとした時の事が嘘だったかのようにスルリとなんの抵抗もなく抜けた。その瞬間だった。剣から眩いばかりの閃光が辺りを照らす。剣から凄まじい力が空っぽの壺に水を灌ぐかのように流れ込んだ。そしてその力は繋がれた手を通じて少女の方にも流れていく。

バリバリバリ!!

ここまでの出来事に対して休む間もなく轟音が鳴った。どうやら外からの音らしい。とっさに目を瞑ってしまった少女が次に見た物は、少年の手に馴染む先ほどまで錆びていたはずの立派な剣であった。

 二人が洞窟の外へと這い出た時、あの空を飛ぶ魔物が黒焦げになって地面に倒れているのを見た。もう息は無いそれはさながら落雷に打たれたかのような様相であった。二人が急いで村へと戻った時、出迎えた村人は口を揃えてこう言った。

「急に空が黒い雲に覆われたかと思うと、一本の雷が落ち、嘘みたいにまた晴れたと。」

なにはともあれ二人が無事で良かったと村人は迎え入れた。この時、少年が持ち帰ってきた剣の正体を知る物はおらず正体不明のままであった。

 次の日、事態は急転する。昨日少年たちが行った山の方から大量の魔物の群れが村を目掛けやってきていたのだ。急いで王都に救援要請をするものの、到着するのは遅すぎる。いったいどこから湧いて出てきたのか…。そんな事を気にする余裕などなく、村人は村を捨て逃げ出す準備を始めていた。しかし少年だけは違った。剣を持ち向かってくる魔物の群れを見つめる。剣を持つと少年には魔物どもを打倒せる自信と立ち向かえる勇気が湧いてきたのだ。その隣には少女もいた。彼女は元々、家の事情で簡単な攻撃魔法を扱えたが、それでも少年とは違い、膝や肩はガクガク震え、今にも恐怖に押しつぶされてしまいそうだった。できる事なら少年の腕を引っ張り共に逃げ出したかった。しかし一人勇敢に立ち向かう少年の背を見て、彼を守れるなら恐れは無かった。それは勇気という一言で片づけるにはあまりにも高尚過ぎる恋心から成る覚悟であった。

 結果から言おう。この二人の子供によって村は守られた。それは古い伝承、あるいはおとぎ話に近い光景。にわかには信じられない凄まじい力を二人は発揮した。後日、その事を聞いた国王に城へと呼び出された二人は抜いた剣が選ばれし者のみが扱える剣であることを教えられ。急な話に呆気に取られる二人をよそに王はあれよあれよと勇者の称号と責務を与えた。まだ歳場もゆかぬ子供に課すにはいささか重すぎる称号。そうして二人の子供、もといリゲルとスピカは魔王討伐の旅をすることとなった。二人の心内を知る者はもう一人の勇者パーティであるアンタレスを除くと一人もいなかった。


 ある夜の事だ。ガラハッドは街をでて街道から外れしばらく歩くと見えてくる小さな泉の畔へと訪れていた。人の気配など微塵も感じないここになぜ来たのか。それはシャノンを撫でる彼の背に近づく者が呼び出したからだった。

「待たせてしまいましたか?」

「いんや。俺も今来たばかりだ。勇者さんは外に出てくるのもファンに囲まれて大変だろ?」

鍵の解呪が終わりすぐにでも街を発つかと思われた勇者パーティはその予想に反して街に長期滞在するらしい。街はすこしでも長く勇者に滞在してもらおうとお祭りムードになった。勇者の冒険には国王からの補助が出る。彼が街でお金を使えば使うほど、街の経済は潤うのだ。また単純な宣伝効果もあった。基本的にある一定の場所に留まらない勇者がずっといるという事自体が珍しいのだ。浮足立つ街。そのお祭りムードにも我関せずで取り残されたかのような静かさを見せる教会。そこを訪れるものがあった。

「僕に剣を教えてください!」

変装なのかフードを深く被り、似合わない付け髭を付けたリゲルがガラハッドに頭を下げる。

「…いまいち状況が飲み込めないんだが。とりあえずそのふざけた物外したら?」

「あ!すいません、慌ててたもので。では改めまして、僕に剣を教えていただきたいんです。」

世界を救う勇者がただの冒険者にあろうことか基本の剣術を習おうとしている。しかも相手は魔族だ。その状況全てを理解しているモニカは気が気でなかった。

「俺が剣なんて教えなくても君強いじゃん。」

「いえ、僕の強さは全てこの剣に付いた加護のおかげです。それがあの鍵の呪いとの闘いで分かりました。ぜひガラハッドさんに教えていただきたいのです。」

「うーん…俺人に教える自信とかないよ。それに仕事もしないといけないし。」

「幸いな事に鍵の解呪が速く済んだことで僕たちには余裕ができました。他の誰でもなくガラハッドさんに教えていただきたいんです。勿論お礼も致します。具体的にはこれぐらい…」

リゲルの提示した額にガラハッドの目が変わる。これだけもらえればデカい牛に追われる必要も粘々の粘液にまみれることもない。

「…そこまで言われちゃ仕方がないなぁ。」

「本当ですか?!ありがとうございます。早速ですが昼間は僕たちもやらねばならぬことがありますので夜のこの場所に…」

「…金に目が眩みおったな。」

「剣技なら僕の方が対人は得意なのに…」

「お主の得物は刀じゃろ。種類が違うんじゃ今回は自重せぇ。」

傍から見ていたアズとナギが呟く。

「よりにもよって魔族のガラハッドさんに…大丈夫でしょうか?」

モニカは心配そうにアズたちに言った。

「まぁ大丈夫じゃろ。あやつは上手くやる。それに勇者のあの感じならいっその事バレてしまってもどうってことはなさそうだがの。」

「そうでしょうか…」

どこか能天気なアズと違い、モニカの表情には不安が残った。


 カツンっ!カツンっ!と響く木刀のぶつかる音。まさか勇者が夜な夜なこんな場所で特訓しているとは誰も思わないだろう。両手で木刀を操るリゲルは体が振り回されているように見える。体勢から生じる力を全く剣に乗せられていない。片手で剣を操るガラハッドが打ち負けないのもそれが理由だった。またリゲルの視線や呼吸に余裕が感じられない。相手の剣ばかり見ているから、ガラハッドの空いている手や足を使った不意の攻撃に対応できていなかった。

「今日はここまでにしよう。」

尻もちをついた回数は十回から先は数えていない。リゲルの体にははっきりと青あざが浮かんでいた。

「はぁ…はぁ…。ありがとうございます。」

木刀を杖のようにしてやっとの思いで立つリゲルに肩を貸す。

「シャロンに乗っていくと良い。人通りの少ない道を知っている。…なんで魔法を使わなかったんだ?」

ガラハッドはリゲルをシャノンの背に乗せながら聞いた。

「僕の使える魔法は威力は高いが範囲も広い粗削りな物ばかりです。今まではアンタレスさんの知恵や技術でのだまし討ちか力押しでやってこれましたが、この前の鍵の呪いを踏まえて限界を感じています。剣の加護に頼らず、僕はもっと強くならないといけない。」

「気負い過ぎなんじゃねぇの?」

「そんなことはありません。勇者にふさわしい努力をするのみです。」

ガラハッドはリゲルの思いの丈をただ黙って聞いていた。

 次の日も同じ時間、同じ場所で落ち合った二人は何度も木刀で打ち合った。その帰り道ガラハッドはリゲルにある疑問を投げかける。

「ところでくどいようなんだが、なんで俺なんだ?騎士学校の先生とか剣術の師範代とか、あの街にもいるしそれこそ王都なんかにもたくさんいるんじゃないか?」

「そういう方たちは僕の実力を買い被っているので教えてはくれません。その点、ガラハッドさんは僕が勇者だと知った後も態度を変えませんでしたし、なにより貴方は強いですから。」

「そうか~?そうなのか~?なんか照れるな~」

「いや本当に。状況もありましたがあの呪いの力は魔王軍の幹部クラスと大差なかったです。ガラハッドさん…貴方一体何者なんですか。」

 次の日も、次の日も、次の日も、次の日も。

連日の特訓を通してガラハッドは一つ気が付いたことがある。リゲルの呑み込みが異様に早いことだ。初日に何度も打倒されていたというのに、数日経っただけで互角以上に打ち合いが出来ていた。勿論この短期間で身体的に成長したわけではない。彼の技術がずば抜けて上がっているのだ。もう何度も彼の剣先がガラハッドの首元に届きかけて冷や汗をかいた。この段階まで来れば正攻法はお終いだ。ガラハッドの剣技の目的は明確。()()()()だ。

 ガラハッドは押されているように演じゆっくりと泉の中に入っていく。純粋なリゲルはなんの疑いもなく押し切ろうとガラハッドに詰める。それが彼の狙いだった。ガラハッドの鋭い味払いによって二人の間に生じる水のカーテン。一瞬でも躊躇ってしまえばその時点で負けなのだ。水のカーテンの向こう側からガラハッドの鋭い突きがリゲルを襲う。

「防いだか!」

凄まじい反射神経で受け止めたリゲルの体は宙に浮きあがり水飛沫をあげながら着地した。手はビリビリしているが大きなダメージではない。リゲルが反撃の為、間合いを詰めようと右足を一歩踏み込んだ時だった。

ズボッ!!

リゲルの右足が彼の想定以上に深く水中にはまりリゲルは体勢を崩す。その隙をガラハッドが逃すわけでもなくタックルをかまし、地面へと突き飛ばすと、倒れたリゲルの首元に木刀をあてた。リゲルがハマった急な深みは偶然ではなく、ガラハッドが予め調べておいた地形だった。その日もガラハッドの一本勝ちでその日は終わった。

 次の日、早速リゲルは対策してきた。安易に踏み込んでくることは無くなり、間合いも意識するようになっている。呼吸は浅く一定。肩に変な力は入っておらず視線から高まった集中が感じ取れた。

「この短期間でここまでになるとは…」

リゲルは剣に選ばれたから勇者になったと自分では思っている。それも間違いではない。しかしガラハッドから言わせてみればこの成長する力がリゲルを勇者たらしめている要素の一つだろう。今、リゲルの剣の振りに初日の未熟さは無かった。だからこそ彼の持つ幼さにギャップが出る。順当に強いままにしていいのだろうか…。

 珍しく物思いに耽ったからかリゲルの剣がガラハッドの体を捉えた。

「動きが鈍くないですかっ!」

「相手の調子に気付けるっ、余裕が出てきたなぁ!!」

ガラハッドももはや手加減はできない。特訓とはいえ、このような子供に負けるのは悔しいからだ。ガラハッドの肩を目掛けて振り下ろされる木刀。それを彼はがっしりとキャッチするとあろうことか握力だけで粉々に砕いてしまった。

「ふんっ!!」

「なっ!」

驚くリゲルの腹にガラハッドの木刀が迫る。接近していたのが功を奏し、リゲルは咄嗟にガラハッドの手を掴んだ。

「木刀を!掴むのはっ…反則じゃないですか?」

「ぐっ!いいんだよ真剣じゃないんだから…」

「それを言ったら!なんでも…あり、じゃないですか!」

「勝つためなら!なんだってするさ!」

「ぐぅ!それなら!僕も!」

突如ガラハッドの体が目に見えない力で後方に吹っ飛ばされた。

「ふっ…使ったな。魔法を。」

「予備があってよかったです。」

リゲルが予備の木刀を構える。二人が再び向き直した時、辺りには霧が経ちこみ始めていた。どうやら朝が近いらしい。

 外から見ている分に二人の戦いは決して特訓という生易しい物ではなかった。ある種吹っ切れたかのように魔法を操るリゲルと、自身の本来の武器である鞭まで取り出したガラハッドの鍔迫り合いは激しく火花を散らしていた。

「やっぱ強いじゃないかリゲル!」

「魔法を使ってないのに?!僕とここまで…」

視界がどんどんと悪くなる。霧を引き裂きリゲルの魔法が飛ぶ。

「こんなもんじゃないだろ!」

ガラハッドの挑発に乗ったリゲルの魔法をガラハッドはギリギリで交わした。が

「やべッ!調子のったぁぁ!」

着地した所に運悪く石が転がっておりガラハッドは躓くと体勢を崩す。

「ここか!!」

その瞬間を逃すまいとリゲルはガラハッドのシルエットを目掛け木刀を振りぬいた。

「ちっ!緊急脱出!」

「あれ!?」

この視界を塞ぐ霧がガラハッドに味方する。彼はリゲルが見えていないのをいいことに首を持ち上げ剣を交わす。リゲルの困惑は当然だ。確かに頭を目掛け剣を振ったのに何にも引っかからず空を切っただけなのだから。

「ふぅー危なかった。」

「何をしたんですか。」

「ふっふっふっ。内緒だよ!」

体勢を立て直したガラハッド。絶好の機会に仕留めきれなかったリゲルのショックは大きかった。ガラハッドが再び霧に姿を隠す。

「リゲル。一つ良いことを教えてやろう。」

リゲルは腰を深く落とし剣を構えた。どこから急にやってきてもいいようにだ。木刀に黄色いバチバチとしたオーラが走る。カウンターでどでかいのを一発叩きこむ。一撃で仕留めるのが彼の狙いだった。

「お前、さっき俺には反則だって言っていたな。確かにお前の言う通り、正々堂々と戦うなら相手の得物を掴むなんてのは卑怯なのかもしれない。」

ガラハッドは動き続けているらしく声がリゲルを中心にグルグル回っていた。

「ただちっと堅苦しいんじゃないか?。目的は勇者らしくあることじゃなく魔王に勝つことなんだろ?」

ガラハッドの問いかけはリゲルを惑わすためか?彼はガラハッドの声に過敏に反応しないように努めた。

「真面目なのはお前の良い所だ。ただお前はまだ子供だ。もっと楽しくやろう。()()()を出したって誰も文句なんか言わねぇよ。」

「卑怯ではなく遊び心だと?なるほど。では僕からも一つガラハッドさんに教えてあげますよ。」

リゲルはある一点を見つめた。どうやら狙いは定まったらしい。

「せっかく隠れていても…声出し続けてたら位置バレちゃいますよ!」

渾身の一振り。電光が残像となって走る。しかし

「残念!」

カウンターは不発に終わったリゲルの背後から頭のないガラハッドの一振りが頭に入った。仕組みは単純、頭を適当に置いておいて体は対曲線上に移動させるだけ。しかしガラハッドがまさかデュラハンであるなどと露にも知らないガラハッドにこのトリックは理解不能だった。

「やば…勢いつけ過ぎた。」

頭を拾い上げながら気絶したリゲルを見下ろす。地平線上に太陽が赤く昇り始めていた。


「あ!いた!」

街の方からモニカが駆け寄ってくる。

「いつもより遅いから心配しまし…た、よ…?はっぁ…!」

モニカがシャノンの上でぐったりしているリゲルを見て息を飲んだ。

「こっ、殺した?!」

「気絶してるだけだよ。物騒だな。」

「なんだ気絶してるだけ…。まぁそれも問題ではありますけど。」

といいタイミングでリゲルが目を覚ました。

「…ここは?貴女はシスター?」

「あぁ、無理しないで。ちょっとガラハッドさん!いくら特訓とはいえ子供にここまで!」

「俺もやり過ぎたと思ってるよ。悪かったって。」

歩いているモニカにシャノンの背を譲ろうとするリゲルを彼女は慌てて抑えた。

「やっぱり強かったですね…ガラハッドさんは。」

「うん?いんやリゲルも大したものだよ。多分魔王も余裕じゃないかな?」

「本当ですか?嬉しいな。」

「そうだ、これ食べなよ。ほらシスターも。アズには内緒な。」

そう言ってガラハッドは街で有名な菓子を取り出した。

「旅ばっかり続けてると甘い物食べる機会ないでしょ?。さっきも言ったけどあんまり気負い過ぎるのも良くないぜ?」

リゲルはそう手渡された菓子を口に運ぶ。口の中に広がる香ばしいシナモンの香りと甘い味。ガラハッドの言う通り久々の優しい甘味だ。思わず顔を腕に埋めた。理由は分からぬが零れた涙を隠すために。

「沢山あるから遠慮すんなよ。」

「…ありがとうございます。パーティの仲間の分にも貰っていいでしょうか?」

リゲルの見せた子供故の弱さにモニカだけが気づいていた。


「ところで勇者様はなぜこの街に寄ったのですか?」

おもむろにモニカが口を開く。実を言うとずっと彼女は疑問に思っていた。なぜなら大陸正教会の総本山がある聖都へ向かうにはこの街は明らかな寄り道だからだ。それに目的を果たしたのに長期に渡って滞在しているのも不思議だった。

「…実は僕たちは昼間にある調査をしているのです。」

「調査?」

「えぇ、ここら辺に強い魔素の乱れを感じています。最近異様に魔物が多くなったり、強くなったりしていませんか?」

ガラハッドには心当たりがあった。あの巨大なグガランナとその群れだ。森の奥深くが生息域の彼らもなぜかこの平原へと姿を見せていた。魔素の乱れ…魔法を使えないからだろうかガラハッドには全く感じ取れなかった異変。しかしリゲルがここまで言うからには一大事なのだろう。

「我々は聖都へ向かう最中に見つけた魔素の乱れを辿りこの街に付きました。この異変を放っておくわけにはいかない。我らは調査の末、その根源を見つけだしました。」

「すごいじゃないか。でその根源って?」

「この周辺に通常の魔族では考えられない魔力を持った存在。魔王軍の幹部が住み着いています。」

「ん?…何が住み着いていると?」

「魔王軍の幹部です。魔王直々に魔力と力を与えられた存在。」

モニカの顔が青ざめる。ガラハッドの頭を強引に引き寄せ耳打ちした。

「聞きましたか?今、魔王軍の幹部と。」

「あ、あぁ。でも大丈夫じゃないか。どうせ大したことないって。」

「違いますよ。忘れちゃったんですか?貴方の前職。言ってみてくださいよ。」

「え?魔王軍の幹部…」

ここでガラハッドも気が付く。勇者達は魔王軍の幹部の持つ魔力に引き寄せられやってきた。目的は魔王を倒すことだから当然幹部も討伐対象だろう。対してガラハッドは辞めたというものの元魔王軍幹部だ。彼は魔法を扱えないからその身から出る魔力に気が付いていないのかもしれない。仮にリゲル達が辿ってきた魔力がガラハッドの物だとしたら…討伐対象はすなわち

「ヤバい状況か…これ?」

モニカがこくんと頷く。今の話を聞くに勇者達の討伐目標はガラハッドの線が濃厚となった。

修行パートってやつです。

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