15 遠く昔に滅んだ街
「みんなぁ~どこ~?」
突如現れた古びた城下町。時が止まったかのようにモノクロで静か。そんな死んでしまった街に抵抗する間もなく放り込まれたハーピィのナギは、空と呼んでいいのか曖昧な暗闇の中を自慢の羽を羽ばたかせ飛んでいた。最後の記憶はあの忌々しい笑い声だ。あれが聞こえた瞬間、耳を両手で覆い、瞼を強く閉じたナギの体は急に自信を支えていた地面からの反発力を失う。怪我の功名と言うべきか洞窟の中とは違い、自由に羽が伸ばせる余裕のあるこの空間では、ナギが抱えていた恐怖心も幾分か和らぐ。しかし心細いのには変わりなく、ナギは見知った頼れる仲間の顔を求め、メソメソと半べそをかきながら、空中を放浪していた。
時を同じくして街の西側。過去には人で賑わい、ちょっとした休憩スポットか、恋人の待ち合わせ場所か、はたまた願いを込めてコインを投げ込むパワースポットだったのだろう、と思わせる見事な彫刻の掘られた噴水の縁にアズはポツンと座り込んでいた。状況整理の為か、枯れた噴水の底をボォーっと眺めている。その背中に近づく二人の足音。
「近くに他の人の気配はありませんでした。」
そう言いながらアズに近寄ってくるのはリゲルとスピカ。
「そうか…偵察感謝するぞ。」
アズは簡単なお礼を二人にする。六人がこの街へと落ちる時、スピカはリゲルの腕をとっさに取った。それ故にこの二人が一緒の場所にいることは理解できる。問題はアズだ。彼女はどちらかと言えばアンタレスやナギの方が距離は近かった。しかし街に落ちてきて目を覚まし、少し歩いたところで遭遇したのはこの二人だったのである。アズはすぐさまこの噴水を拠点とし、近くに他のメンバーがいないかどうかをリゲルに探させた。結果は否。この周辺に三人以外の人影はなくただ声のみが空虚に響くのみであった。
これだけの街を瞬時に表させるにはアズでも気が付くほどの膨大な魔力を要する。しかし地面が消えるその瞬間までアズにはそういった怪しい動きを感じ取ることはできなかった。
「スピカとか言ったか?」
アズがリゲルの後ろに隠れるスピカに声を掛ける。彼女は警戒するような目線をアズに向けた。聞けば彼女のジョブは魔法使いらしい。自分よりずっと正確に魔力の流れを探知できるであろう。
「スピカ…アズさんが話しかけているのだからちゃんと返事をしないと失礼だろ。」
リゲルが呆れた目でスピカを見る。彼女はそんな説教に鬱陶しそうにそっぽを向いた。
「あー別にそのままで構わん。その魔法に長けた知見を借りたいだけじゃ。」
努めて穏やかにアズはそう声を掛ける。スピカはその声色に少しだけ警戒を解いたようで顔だけをリゲルの肩から出した。
「すみません。普段はもっと元気な娘なんですけど…いかんせん人見知りが激しくて。」
「うっさい!」
スピカがすかさずリゲルの頬をつねる。なるほど、慣れ親しんだ相手には距離感が近くなるタイプ…特にリゲルとは幼馴染と聞いているから、キツく当たってしまうのも信頼からなのだろう。アズは千年生きてきて尚も身に覚えのない老婆心をこの状況で僅かに理解した。
「それでスピカよ。この現象、お主はどう見る?」
「…この街自体に魔力は感じない。実際に存在している物ね。落ちてくる時に微かな魔力を感じたけれどこの街を隠せるものではない。瞬間的に落とされたから幻覚という線も薄い。なによりアンタレスがそう言うのに耐性があるはずよ。ここまでの情報から導き出されるのは転送魔法。」
「元の位置関係を無視しておるから集団転送魔法ではなく、個人を同時に一か所に転送したという事。前もって魔方陣を準備しておればそっちの方が魔力を節約できるからのう。つまり我々は何者かに上手い具合に誘導され、このダンジョンに攫われた…。そういう結論で一致していると見て間違いないよの?」
年端も行かぬ見た目の幼女の完璧なまでの推理にスピカは圧倒されながらも頷くしかなかった。
専門家の意見と自身の予想が一致したアズは益々この状況の緊急性を理解する。規模感も分からぬこのダンジョンで味方とはぐれたというのはマズい。勇者パーティはともかく簡単な洞窟探索と高を括ってそんなに準備をしていなかったアズ達はとっとと合流し、脱出方法を見つけなければあっという間に干からびてしまう事だろう。特にアズはその体質上急激に腹が減る。空腹が彼女が最も恐れる事象であった。動けるうちに行動しなければ。
「よし、それじゃあ早急にガラハッド達と合流するぞ。」
そう意気揚々と歩き始めたアズを
「ちょっと待って!!」
スピカが呼び止めた。その声色には疑念が色濃く混じっている。
「貴女、何者なの?見た目こそ幼いようだけれど、その洞察力や思考力。明らかにいくつも修羅場を超えてきてるって感じよね。それに私たちがこの街に落とされたのも貴女達と出会ってすぐ。思えば、あの呪いを解呪してもらった時もそう。勇者であるリゲルやアンタレスでさえ敵わない敵に対して、あの黒騎士は息を荒げる事もなかったし、貴女も冷静そのものだった。それほどの実力を持った冒険者パーティが全く話題にならないこともおかしい。ただの冒険者じゃないわよね?」
ふむ、この少女。人見知りというには随分と胆力がある。それに優れた知性だ。彼女の言う通り、勇者パーティがアズ達の事を疑うのも無理はない。しかしここで自分達は魔族で構成されたパーティなどと告白するのはメリットがないし、時間の無駄だ。アズは一刻も早くガラハッド達を探しに行きたかった。そこで彼女は
「流石は勇者パーティの一員というだけはある。お主こそまだ幼き身でありながら並外れた知性を持っておるようじゃな。それともそこの幼馴染の為に寝る間も惜しんで努力したか?」
予想外のアズからの誉め言葉にスピカは呆気に取られる。予想通りだ、このまま整理する暇も与えぬ。
「やはり見立て通り、相当な努力を重ねたか。勇者ともども立派なよの。やはり神に選ばれるもの十いうのはそれなりの素質があるというのは本当のようじゃの。それにその努力を他人に見せぬようひたむきに隠す謙虚さ。それにあまり人と仲を深める事を苦手としたうえで、されど仲間の為に勇気を振り絞ることもできる。仲間想いよの。」
アズの怒涛の褒めにスピカの顔はどんどん真っ赤になっていった。このぐらいの若者なぞちょろいものよ。さらに駄目押しじゃ。
「のう、お主もそう思うじゃろ?」
「へっ?!」
アズに急に話を振られたリゲルが気の抜けた声を出した。アズの見立てならばリゲルのような純粋な性格ならこういった場面に照れ隠しなどしないはず。
「…そうですね。スピカにはいつもお世話になっています。」
ほら予想通り。リゲルはアズの誘導にまんまと乗せられ、本人の気づかぬうちにスピカ褒め殺し作戦に加担させられた。そして彼の言葉はアズのそれの軽く十倍の威力。正しくスピカ特攻と言えるだろう。
「スピカはいつも慎重で賢くて、口はちょっと悪いけど根は本当に優しくて世話焼きで。それでいて努力家で。旅に出る直前には僕の地元の好物のレシピをわざわざ練習したらしく…ぐふっ!!」
とうとう顔を真っ赤にしたスピカの照れ隠しから放たれた渾身のボディブローがリゲルの横っ腹にめり込む。
「おうっ…」
その威力に思わずアズは顔をしかめリゲルに同情した。しかしお陰で彼女の感情も警戒から変わった。今ならば幾分か説得がしやすい。
「…まぁ、とにかく我はお主の事を高く評価しておる。それはもはや尊敬といっても過言ではない。勿論お主の言い分も最もであるし、間違っていない。無事に帰れた暁には飯でも囲んでゆっくりと全て話すと誓おう。まずはこのダンジョン。そうさな…洞窟の下にあったように見えたから地下街とでも呼ぼうか。この地下街から抜け出すことに全力を注ぐべきじゃと思う。余計なノイズにならないためにも、今の段階で詳しい事を話すのは生産的ではない。どうじゃろうか?」
真摯なアズの真っ直ぐな瞳に射抜かれたスピカはただ静かにこくんと頷いた。
「理解してもらえて何よりじゃ。では一つ念頭に入れておいてくれ。これはただの口約束に過ぎぬが、声に出すことで自覚も芽生えるというもの。我らパーティはどんな状況であっても、お主たちの味方であると。」
「…失礼なことをいって悪かったわ。」
自身に非があると分かれば素直になれる。なかなかに愛い少女じゃないか。一切の犠牲なく第一のしこりは取り除けた。(腹を押さえ悶絶するリゲルを見て見ぬふりをしながら)気を取り直してガラハッド達との合流を急ぐとしよう。とその前に、可愛い子を見るとつい意地悪いたくなるのはどうにも抗えない本能であると思う。
「ちなみに、一つ情報を解禁するとしたら、我はお主らやアンタレス。はてはガラハッドよりずっと年上であるぞ。」
いきなりぶち込まれた情報に、スピカは目を丸くし、アズの体を上から下までなんども視線が往復する。そして心底気まずそうな顔をして口を開いた。
「…年長者に無礼な物言いをしてすみませんでした。これからは敬語を使います。」
アズはその言葉に満足そうに頷いた。
さて、そんなこんなで一先ず仲違いの危機を乗り越えた組を他所に、こちらもこちらで中々にややこしい状況に陥っている二人の姿があった。
「頭だけで喋るその姿…私にはとても人間には思えないなぁ。」
冷たい視線と共に並々ならぬ敵意を振りまいてくるアンタレスに対し、両手でがっしりと掴まれ逃げる事の出来ないガラハッドはただひたすらに冷や汗をかきながら、狼狽するしかなかった。せめて見つけてくれたのがリゲルならもっと話は簡単に進みそうなものだったのに…。
「えっっっと…。なんと申したらよいものか…。」
「とりあえず、魔族だと判明したアナタをここで始末して、それでこの状況が解決するか試してみるのもありじゃない?」
「ちょっ!!たんまたんま!!待ってくれって!」
小刀を振り上げるアンタレスにガラハッドは死に物狂いで抵抗する。とは言っても頭のみのこの状況で使える武器は言葉による説得だけなのだが。
「俺は魔族だが人間に害そうだなんてこれっぽっちも思っていない。ただ冒険者という自由気ままな生活に憧れてただけなんだ。」
「魔族に生きてるだけで人間の害だ。魔族に悪じゃない奴なんて存在しない。」
「呪いの解呪を手伝ったろう?お宅の勇者君に剣術も教えた。」
「私たちを騙そうと入念に準備した芝居の可能性もある。」
「ここで君一人になるのは危険じゃないか?俺が体を取り戻したら必ず君の役に立つよ。」
「そもそもあんた等がここに誘い込んだ説が残っているだろう?」
「俺を殺したらリゲル君がかなしむんじゃないかなぁぁああっ!」
「真実を話せば納得するよ。勇者って言うのはそういうもんさ。」
「うわぁ!!後生だから助けてくれぇ!!」
「もう命乞いはお終い?じゃあ苦しませずに終わらせてあげる。」
もはやここまで。ガラハッドの説得はその全てが一切アンタレスに響くことはなく振り下ろされた短剣によって脳天を貫かれ、あえなくゲームオーバー。道半ばではあるが彼らの冒険もここで終わり。後は勇者が魔王を始めとした魔族を一人残らず殲滅して人間の勝利でハッピーエンド。しかしその結末まで到達する目撃者もいないからこの話は惜しくもここでお終い。あとは全て後書きにナレーションで事の顛末を書きます。少ない話数、超特急展開ですがお疲れさまでした。次回からは主人公を交代しまして『アズリエル・単独の美食』をお送りします…
とはならなかった。アンタレスの振り下ろした彼女の短剣はガラハッドの頬を掠める形で地面に突き刺さる。極限の緊張状態を乗り越えたガラハッドは感覚こそ感じない物の、どこかで自分の体の肺と心臓が猛烈な勢いで動いているのを実感した。
「冗談だよ。」
「じょ、冗談?…随分とたちの悪い冗談な事で。」
「こんな抵抗のしようがない状態の魔族なんて珍しいからね。しっかり人質として活用しないと。それにアナタをここで始末すると、お仲間のあの二人の対処にまた時間をかけなきゃいけなくなる。小っちゃい方はまだなんとも分からないけれど、あの翼がある方は得物からして大体どういう生態なのか判断つくからね。あの目立つ羽…オシャレにしては大きすぎると思ったんだ。」
どうやら事態は全く変わっていないらしい。アンタレスはあくまで魔族であるガラハッド達の事を倒すべき敵であると考えている。魔族と人間の確執。勇者パーティという立場の事を考えればそれもまぁ納得は出来る。なにしろまだ交流が少ないから情に訴えるとかもできない。であればこの状況は限りなく詰みに近い。
「アンタレス。よく聞いてくれ。」
「…何?」
「一先ずこの街から抜け出すまで、共闘しないか?」
「ふーん。あくまでこの街に私たちを迷い込ませたのは自分たちの仕業じゃないって言い張るんだ。」
「俺は見ての通り頭だけじゃ動くこともままならない。もし仮に俺がお前たちを嵌める為にこんなことをしているのだとしたら、こんな醜態をさらすと思うか?」
「…確かに。でも共闘って何考えてるの?言っておくけど体見つけても返したりしないよ?」
「この街から抜け出すまでは両者ともに仲間を含めた誰にも危害を加えないってのでどうだ?」
アンタレスはしばらく考え込むとおもむろにガラハッドの首に紐を巻き付けだすと自身の腰のあたりに括りつけた。
「…物みたいな扱い方…」
「文句は聞かないよ。」
ガラハッドは不満気に息を吐いた。この街を脱出するその前に、なんとしても彼女を説得しなければならない。
「うぇーん…みんなどこ行っちゃったの~」
コツコツと石畳を叩く三人の足音が響く。休みながらも歩き続けてあっという間に半日かそこらが経ったろうか。こう見ていると、やはりこの街は以前は人で賑わっていたのだろうというのが見て取れる。あそこの街角の店では、店頭一面に満開の花が出されていたことだろうし、向かいの喫茶店からは芳醇なお茶の香りが漂っていたことだろう。道には馬車が通れるだけの広さがあるし、子供が遊んでいたであろう小さな空き地もあった。そんな情景を思い浮かばせるこの街も今は空っぽだ。元気な子供も、生活を運ぶ馬車も、良い香りのするお茶も、満開の花も。その全てが跡形もなく消え去っていた。アズの予想では実際にどこかにある街にテレポートしたという事だが、それにしては街の様子がおかしい。滅びた城下町であることには変わりないのだろうが、それにしては綺麗だ。大抵、この規模の街から人が消える時というのは自然災害や戦争による緊急性のある場合が多いのだが、慌てて物を持ち去ったという形跡がない。生活感を感じるものがゴッソリと消えているのだ。例えるなら外見だけを作ったミニチュアと言った所だろう。
「…駄目だ。枯れてます。」
道中に見つけた井戸の底を覗き込みながらリゲルは言った。果たしてその井戸は本当に枯れているだけだろうか。外見だけを作ったのであればわざわざ生活インフラを整える必要はない。この井戸の先は何もないのではないだろうか。もしアズのこの推理が正しいのであれば、食料品を現地で調達するというのが不可能となった。余裕の無くなってきたアズは脳をフル回転させながらしかめっ面で爪を噛んだ。
「あの城…ずっと古くに建てられとるの…。百五十年ぐらい前か?」
街の中心部に立派にそびえたつ城を遠目に見ながらアズが口を開く。
「なんでわかるのですか?」
「窓の形じゃ。お主らも勇者なら今の王の城をみたことがあるじゃろ?あれと比べ窓が円形で数も少ない。それは壁が分厚いからよ。それに縦スリットに入り組んだ道。徹底的な防衛線の為の設備じゃ。今とは違い戦争がもっと身近にあったからこその建築方式と言える。」
アズの解説に二人は舌を巻いた。言われてみれば現代の城よりずっと装飾が少なく、重厚感のある佇まいをしている。三人はそんな城に背中を向け歩みを進めた。三人の目的は一先ず街の外に出ることだ。この街が城の周りに作られているのなら、城を背に進んでいけば方向が分からなくても外に出れるだろうとアズは踏んでいた。とにもかくにも万全の準備を得て、もう一度、このダンジョンに殴り込みに来ればいいとこの時のアズはそう思っていた。だからしばらく歩いた時に街をぐるりと取り囲む巨大な外壁の存在に気が付いても、リゲル達の半分ぐらいの驚愕で済んだ。
「さっきまで見えなかったのに…」
膝を着くリゲルの言う通りである。馬鹿な話だとは思うがこの10mそこらの外壁が目の前に迫るまで一切気が付くことができなかった。目の錯覚どうこうで済ませられるものではない。
「…微量な魔力の幕を感じます。」
外壁に触れたスピカからの報告にアズは頷く。恐らくは外に出ようとする人間の体力を奪うために外壁の存在を隠しているのだろう。だがまだ心配はいらない。外側から壁を登るなら大変だが内側から登るのは楽だ。壁のメンテナンスやそれこそ外側の敵を外壁の上から迎撃する必要があるからだ。アズは視線の先にある壁の上へと続くらせん階段を見ながら思った。問題はこの壁から飛び降りる時だ。いくら何でも10m上からダイブというのは危険すぎる。リゲルも勇者といえど生身の子供だし、スピカはそう言った類の魔法を持っていないと聞いた。どこかに長く頑丈な紐でもあれば良いのだが…。そんな心配はしかし階段を上り切った先に見た景色に比べて酷く些末なことであったとアズは理解し、思わずがっくりと項垂れた。
「!?…これは。」
リゲルやスピカも思わず言葉を失う。壁を乗り越えた三人の眼前に広がったのは凄まじい轟音と共に水飛沫を上げる黒い川だった。幅が広く上から覗き込むだけで足がすくむその激流に三人は改めて理解した。自分達をここに引きずり込んだ奴はどうしてもここから逃がしたくないらしいと。
帰ったら有り金全部使ってたらふく飯を食べよう。
これから予想される長い空腹との闘いにアズは心の中でそう宣言し、静かに一滴の涙を流した。
さて逃げ出すことができないと分かった以上、次に目指すべきなのはあのおあつらえ向きにボスのいそうなあの城だろう。しかしこれだけの労力をかける奴だ。城に何らかの罠が仕掛けられていると考える方が妥当である。となればやはりガラハッド達と合流するのが先決か?しかし大体の広さも分からぬこの街で今三人が揃えていることがまず奇跡である。ここからガラハッドに出会うなんてそれこそ天文学的な…
「きゃぁ!!」
「なんだこいつっ!」
先に降りていたリゲルとスピカの悲鳴が聞こえ、アズは急いでその場に駆け付ける。
「何があった!?」
「魔族です!魔族が出ました!」
見るとリゲルが剣を抜き臨戦態勢になっている。彼ら二人の視界の先には魔族がいるらしいのだが、建物が邪魔でアズからは見えない。ただリゲルが即刻剣を抜くという事は相当な見た目をしているのだろう。
アズが彼らの傍に駆け寄り、二人の視線の先を見る。そこには首のない騎士が剣を片手にゴツンゴツンと壁にぶつかりながら千鳥足で歩いていた。…ってかあれガラハッドの胴体じゃね?
「あっ!あれは…」
「中級爆発魔法!!」
アズが口を挟むよりずっと早く、スピカの杖の先端から赤い閃光が走ったかと思うと、凄まじい熱と衝撃がガラハッドの胴体を襲い、はるか遠くへと吹っ飛ばしてしまった。
「あーーーーーー…」
爆風に髪をなびかせながらアズはその光景をただ見ているしかなかった。
「何か言いかけましたか?」
リゲルが聞く。スピカの方を見るとしてやったりとどこか自慢げだ。
まぁ、首なかったし。剣持って彷徨い歩いてる姿はアンデットそのもの。鎧を着ているからあの魔法も大したダメージにはなっていないだろう滅茶苦茶痛いだけで。ガラハッドの胴体だけ回収してもお荷物になるだけだし…。
「…よくやったぞ。」
色々考えた結果、すべての責任は見えていないのに体を動かしてたガラハッドの自業自得であると結論ずけ、アズは何も言わないことに決めた。
一方そのころ。仲間を求めて空を飛ぶ翼を持った少女がここに一人。
「今の爆発なんだろう…?」
僅かな手がかり向けて航路変更、なおも飛行中。
ナギ可哀想。




