12 指名手配犯
ある日、クエストボードに一枚の馴染みのない紙が貼られた。
「王室直属依頼:一級賞金首?」
ガラハッドが何の気なしにクエストボードを眺め見つけたその紙には、王室を表す印と悪そうな人称をした男の似顔絵、小さく書かれた『生死を問わず』の文字、そして莫大な報酬金の額だった。
「今、巷を賑わせている魔族らしいよ。」
横からナギが補足をいれてくる。
「なにやらかしたのかは知らないけど、王様怒らせちゃったみたいで。王室直属の騎士団からも追われてるらしいんだけど中々捕まらないんだってさ。」
「やり手だな。」
「そうみたい。だから賞金首にして冒険者にも捕まえてもらおうって魂胆なんだって。ほら最近ここらじゃ見ない顔の冒険者も増えたでしょ。」
ナギが酒場の一角を指さす。そこには多くの死線を潜り抜けたといった渋い顔した冒険者たちが一切の笑みも浮かべずジョッキを傾けている。その姿には自分達のような冒険者とはどこか違うシリアスな雰囲気が漂っていた。
「彼らは賞金稼ぎ。最近ここらでこの賞金首の目撃情報があったから追っかけて来たらしいよ。」
「賞金稼ぎ…。魔物じゃなく人を狩る冒険者か…。怖ぇな。…でもこいつは魔族なんだろ?」
「そう書いてあるね。」
「じゃあ、賞金首じゃなくて普通に魔族討伐依頼を出せば済む話なんじゃないのか?」
「そこが不思議なんだよね。僕も魔族が王室から指名手配されてる例は初めて見た。」
ガラハッドは改めて賞金首ポスターを見る。不思議な輪っかの首飾りをしており、備考欄に黒魔術を使うと記載されている。しかしこの似顔絵…どこか違和感が…。
「なんでこの顔は真っ黒に塗りつぶされてるんだ?」
「…さぁ?似顔絵書いた人がインク溢しちゃったんじゃない?」
ガラハッドはそのポスターから不思議と目が離せないでいた。
「偶にはのどかに過ごすのもいいもんだな。」
「薬物採取にガラハッドさんのような甲冑は似合いませんけどね。」
街から少し外れた小さな林の入り口にガラハッドとモニカ、ナギの三人は訪れていた。今日のクエストは一般的に使われる薬草の採取。クエストと言えば討伐だの撃退だのと血生臭く生傷の絶えない物ばかりをこなしてきたガラハッド達には程よい休息だ。アズは気分が乗らないという事で教会で留守番。一番の最年長の割にこういう時に子供顔負けのワガママな一面が見える。その代わり…という訳でもないのだがモニカが本クエストには同行していた。教会に常備している薬草の補充兼食事に仕える野草や香草を採る為についていきたいと本人は言った。いつもは魔物等の脅威を避ける為、自家栽培か街に近い所に群生している物しか採れないのだが、ガラハッドというボディガードがいる機会を逃したくないのだと。色々な種類のキノコや果物を両手いっぱいに抱える姿はどこかはしゃいでいるようにも思える。結局の所、冒険者ではないモニカはいつも三人が仲良くクエストに行くことに少しばかりの疎外感を覚えていたのだ。近くでは彼らを乗せてきたシャノンが生草を食んでいる。ガラハッド達には似合わない平穏な時間が流れていた。
「結構集まったろ。これだけありゃ目標量は優に超してるんじゃないか?」
採取用バッグパンパンに詰められた薬草を見ながらガラハッドは言う。報酬はいくらか下がるがなんとも楽な仕事だ。モニカも心なしか楽しそうだったし偶にはこういうのもいいのかもしれないと思いながら、バッグをシャノンに乗せようとした時だった。
「おーい!ガラハッドにシスター。ちょっと来てくれ。」
上空で文字通り羽を広げていたナギがガラハッドを呼んだ。
「どうした!面白い物でも見つけたか?」
ナギに呼ばれ林を出る。
「面白いかって聞かれたらあれなんだけど、あれ。」
ナギが遠く広がる草原を指さす。その方向には何か大きな動く影があった。
「なんだありゃ?」
ガラハッドが良く目を凝らす。土煙を上げ体をくねらせながら凄い勢いで進む黒光りした体。トサカのように広がる首元の皮膚と鋭く伸びる牙。そして日光を乱反射させる特徴的なダイヤモンドの瞳。
「グローツラング!珍しいな…。」
蛇型の魔物。その協力な神経毒が体内に少しでも入るとあっという間に、全身の麻痺、痙攣、呼吸不全を引き起こし三十分持たず死に至らしめるという。しかしグローツラングの生態は洞窟を住処とし、滅多に外には出てこない。あのいきり立った様子から察するに…
「あちゃー。住処に立ち入っちゃったか?」
ガラハッドが視線をグローツラングの頭部に移すと、やはり予想通り。馬を全速力で飛ばし、グローツラングから命からがら逃げる人影が見えた。
「今日はのんびりやろうって腹積もりだったけどどうするよガラハッド?僕は君についていくけど?」
ナギはそうは言いながらも刀に手を掛け、いつでも抜けるようにしている。ガラハッドは自分の背後の心配そうに自身の顔を見つめてくるモニカをちらりと見た。
「シスターの目の前で見捨てるわけにはいかねぇだろ!」
「そう言うと思っていたよ。」
ナギはすぐさまグローツラング目掛けて飛んでいく。
「シスターは危ないからここに居ろよ。」
「お気をつけて!」
ガラハッドは颯爽とシャノンに飛び折るとナギを追いかけグローツラングの元に急いだ。
「つっても馬鹿正直に正面から戦えばあの毒牙にやられる。アズがいれば気を引くだけで良かったのによ。」
ガラハッドはそう作戦を思案しながらグローツラングに追われている深くフードを被った人物の横までシャノンを寄せた。
「おい!あんた!」
「うわっ!?誰だ?」
男の声だ。逃げることに精一杯だったからかガラハッドが話しかけるまで寄ってきていたことに気づいておらず、馬から転げ落ちる勢いで驚いた。
「生き残りたいなら俺が誰かなんて後だ。合図を出したらあんたは左に曲がってあの小池まで走れ。着いたら馬から降りて水に飛び込むんだ。」
「な、なんだって!?」
「助けてやるって言ってんだよ!いくぞっ!」
ガラハッドは自信の懐から手のひらいっぱいにある草を掴む。そしてそれをおもむろに両手で握りすりつぶすようにして手に擦り付けた。ガラハッドの手のひらから強烈な匂いが漂ってくる。
「今だ!」
ガラハッドの合図に訳も分からぬまま言われた通り、男は曲がる。グローツラングは曲がった男には目もくれずガラハッドを追いかけ続けた。暗い洞窟に住むグローツラングは視力が退化した代わりに嗅覚が発達している。より先ほどすりつぶすことで強力な匂いを発する草を手に纏わせたガラハッドを追いかけるのは自明の理である。問題はこの後だ。上空のナギを見ると、彼女はグローツラングの脳天を狙い刀を突き立てるとハンドジェスチャーで伝えてきた。しかしグローツラングの頭が動くたびに細かく動いて狙いが定まらない。毒牙の間合いに入るのは危険だから確実なタイミングで仕留めたかった。それは、ガラハッドも分かっている。次にすべきはグローツラングの動きを止める事。その為には一定のリスクを背負わなければならない。
ガラハッドはグローツラングの噛みつきを交わすと、そのままグローツラングを中心に大きく時計回りに回り始めた。グローツラングは鎌首を持ち上げると、シュロロ言いながら高速で回るガラハッドに狙いを定める。
「うっぷっ…気持ち悪い。」
猛烈に目が回ってきても止まるわけにはいかない。少しでもスピードを緩めればその瞬間にグローツラングの攻撃が襲うからだ。逆にもっと。グローツラングの動きを止めるにはもっと加速しなければ。残像が出るほど速くなったシャノンの足にようやく火が灯った。地面の草に火が燃え移り炎の足跡を作っていく。ただその火の輪をグローツラングを閉じ込める檻と呼ぶにはあまりにも小さい。
「どうするつもりだ、ガラハッド?」
ナギが上空でその様子を心配そうに見つめる。ガラハッドは燃え移った火に今度は乾燥した草を大量に撒いていく。肺に熱と煙が充満していく。ここで初めてグローツラングが悶えた。焼け焦げた匂いと煙でガラハッドの匂いを見失ったのだ。ガラハッドが起こそうとしていたのは火ではなく煙だったのだ。
「おろろろろろ」
煙に包まれ苦しむグローツラングを他所に一仕事終えたガラハッドはあまりの回転から吐き気を催していた。心配そうにシャノンが寄り添っている。とすれば仕上げは残されたナギの仕事だ。幸い煙のおかげでグローツラングの動きは鈍ってきている。
「さっきより狙いは、定めやすい!」
ナギは急降下し、頭頂部から脳天を刺し貫くように刀を突き刺した。
「やった!ってうわぁ!」
手ごたえはあった。しかし僅かにズレたかグローツラングが最後の力を振り絞り頭を揺らす。ナギは刀から手が離れグローツラングの目の前に落ちた。空中でグローツラングと目が合う。その鋭い牙がナギに傷をつけようと迫ってくる。ナギは体を翻し、牙を足場にすると、素早くグローツラングの喉元に入り込んで短剣を深く突き刺した。流石のグローツラングも息絶え大きな音と共に地面に倒れる。
「危なかった~。」
ナギはバクバクと脈を打つ心臓を押さえながら刀を回収した。
「気を抜くなよ。」
ある程度吐いて楽になったガラハッドが呆れ交じりにナギにそう言った。
「さて、あいつは無事かな。」
二人が男が逃げていった小池へと向かうと、ガラハッドの指示通り、男は小池につかる様にして身を隠していた。
「おいあんた、あの大蛇は倒してきたからもう大丈夫だぞ。」
「本当か?助かったありがとう。」
「ん?怪我してるのか?」
ガラハッドが男の腹部から血が池に流れ込んでいるのを発見する。
「あぁ…逃げる時にな。大丈夫だどうってことはない。」
男は腹を押さえながら池から出てきたが、その顔色は悪く眉は痛みをこらえるように曲がっていた。
「いやまぁまぁの出血だぞ。立つんじゃない!僕シスターを呼んでくるから!」
無理にでも立ち、馬に乗り込もうとする男を強引に座らせナギは飛び立つ。男は苦しそうな声を出し、息を荒げている。フードの影から汗か水滴かがポタポタと垂れた。
「おい、大丈夫か?傷にその汚れた服が付くとよくない。ちょっと見せてみろ。」
ガラハッドが傷をよく見ようと彼に近寄り、服を捲ろうとする。
「やめてくれ!」
男は怯えるようにガラハッドの手を払いのけた。
「あ…す、すまない。」
そこでガラハッドは気が付いた。男が薄い服を何枚も着ており、肌が一切見えないことに。それに彼の胸元で揺れる特徴的な首飾り。ここらでは拝めないセンスだから間違いない。
「お前…」
ガラハッドは男のフードを掴み、バッと捲った。男は咄嗟に手で顔を隠すがその隙間から覗く肌の黒い顔は疑いようもなく最近見たあの手配書の顔であった。
「…とりあえず消毒と止血は行いました。傷口が完全に塞がるまでは安静にしていてください。」
「あ、ありがとう。」
モニカが男の腹に包帯をぐるぐると巻く。その後ろからガラハッドとナギは持っていた手配書と男の顔を何度も見比べ確信を持とうとしていた。
「偶々助けた奴が賞金首だったなんてな。」
「この顔が黒く塗りつぶされているのはミスじゃなかったんだね。どうするよガラハッド。彼をコンスタブルに引っ張っていけば結構な額の報償金が貰える。」
「…あの見た目、魔族に見えるか?俺もお前も魔力探知はからっきしだから見た目で判断するしかない。」
「どうだろう。顔の構造や体つきはシスターと同じだ。角、翼、尻尾、足が変わってたら確実だけどその様子もない。しいて言うなら肌が黒いことだけだろう。」
ガラハッドはモニカが包帯を巻き終わったと同時に彼女を引き寄せ、自身の背後に隠す。その様子からガラハッド達が自分の事を賞金首であると気づいているのだと男は察した。
「どうしたんですか?」
唯一状況がつかめていないモニカが顔を覗かせる。ナギは彼女の事を羽で包むと手配書を取り出し彼女に見せた。
「賞金首?!」
「随分と諦めがいいじゃないか?」
ガラハッドが深く腰掛ける男にそう言った。
「この傷じゃそう激しくは動けない。そんな状態で貴方たちから逃げるのは無理そうだし、なにより命を救ってくれた恩人に危害を加えるなんてできない。だから頼む。見逃してくれないか?」
「…犯罪者を野放しにはできない。」
「犯罪者だと?俺は何もしてない。」
「なに?」
「信じてくれとは言わない。けれど僕は潔白だ。」
「…一つ聞かせてくれ。あんたは魔族か?」
「魔族なんかじゃない。俺は人間だ!」
「そんなに肌が黒いのに?」
「これは生まれつきだ。俺の故郷の特徴なんだ。」
男に嘘をついている様子はない。ガラハッドは後ろのモニカの顔を伺った。モニカがそっと首を横に振るとガラハッドは深くため息を吐いた。
「とりあえず今ここでお前を縛って街まで引きずり回すなんてことはしないから安心しろ。ただ、話は聞かせてもらうぞ。あんたに興味がある。」
「俺の名前はオシャラ。生まれはここよりもっと暑く、日の光が剣みたいに鋭い乾いた土地の名前のない村で、占い師をしていた。」
「オシャラ?変な名前だな。」
「ちょっとガラハッドさん!」
「気にしないさ。文化の違いというものだ。」
オシャラは二人が話の分かる人間だと知ると、「ついてきてくれ」とだけ言って馬を歩かせ始めた。
「ちょっと、その腕触ってみてもいいか?」
「構わないが…」
オシャラが差し出した腕をガラハッドは指でツーと撫でる。その後、擦ってみたり水をかけてみたり、また擦ってみたりしたが、オシャラの肌が白くなることは無かった。
「泥を塗っている訳でもない。不思議だ…」
「俺の故郷ではみんなこの肌の色をしていた。」
「肌の黒い民族なんて、聞いたこともありません。」
「着いた。」
森の奥に馬を進めていたオシャラはそこにポツンと放置されているように置かれる馬車の荷台の傍に降りる。見ると片輪が外れており止めるためのパーツがぽっきりと折れていた。
「戻ったよ!。」
オシャラがそう声を掛けると荷台の幌がごそごそ動き、中から女性が出てきた。金髪おさげでそばかすのあるどこかさえない見た目をした女性だ。彼女はオシャラを見つけると笑顔で抱き着いた。しかしガラハッド達の存在を認識すると怯えるように荷台に隠れようとする。
「あの人たちは大丈夫だ。俺の命の恩人。」
オシャラがそう宥めても、女性はオシャラの背から出てこようとはしなかった。
「彼女は?」
「名はアニー。決して悪気があるわけじゃないんだ。ただ色々あってね。」
オシャラはアニーを愛おしそうに抱えながら火を起こすと、お茶を沸かした。ティーポットから注がれた瞬間、嗅いだことの無い渋い香りが立ち込める。
「故郷のお茶だ。馴染みはないと思うんだけど。」
酸味が強く舌がピリピリするお茶を喉に流しながらガラハッド達は一息ついた。
「…それじゃあ聞いてもいいか。あんたが何をしでかしたのか。俺たちの中ではあんたはまだ指名手配犯のままだ。」
未だ強く残る疑念の元、鋭い視線を向けるガラハッドに怯むことなく、オシャラはポツポツと事のあらましを語り始めた。
「俺はさっきも言ったが元はここからずっと遠くの村で生まれた。そこでの生活はここらみたいに発展している訳じゃないから、自給自足だ。その日も俺は食い物を狩りに一人、村から出た所だった。当然、おかしな服を着た連中に襲われ目隠しをされ連れ去られた。後から知ったのはそれがこの国の王によって編成された遠方調査隊だったということだ。長い拘束の果てに気がつくと俺は王都にいた。国王は俺の体格や黒い肌を面白がり、見世物みたいに扱った。時には簡素な剣だけ持たされて魔物と戦わされたりしたもんだ。まぁ俺にとってはそれが好都合だったのだが。生きるために動物を狩っていた俺にとっちゃ、魔物と裸一貫で戦うなんてへでもない。ただ王都の連中はそうでもないらしい。俺はいつからか剣闘士なんて大層な名前で呼ばれていたよ。とはいっても俺の扱いが変わるわけじゃなかった。昼も夜も吹きさらしの檻の中に入れられ、食べ物の端くれをぐちゃぐちゃにした物を食わされた。檻の外から見てくる視線は珍獣を拝んでいる時のそれだ。…アニー以外はな。アニーは王宮の給仕係だ。彼女が俺に言葉を教えてくれたし、まともな食事と服を与えてくれた。彼女の働きかけで俺はほんの短い時間だが自由に外を出歩けるようになった。彼女の施しが単純な優しさではない事を知ったのはすぐ後だった。俺達は互いに惹かれ合っていたんだ。…だがそれを王は許さなかった。ある日、なんの前触れもなく俺の処刑が決まった。罪状はしらない。いや恐らくそんなものはないのだろう。俺はその処刑を始めは甘んじて受ける腹積もりだった。王の給仕係だったアニーにおこがましくも恋をした俺の落ち度だと、そう自分に言い聞かせた。だが処刑の日の早朝、俺の目の前に見るも無残に痛めつけられたアニーがボロボロになりながらも檻の鍵を持ってきてくれたのを見て、俺は逃げることを決心した。馬を一頭盗んだ。誰にも見つからないようにな。王がそれに気が付いて手配書をバラまいたのはすでに俺達が王都を出た後だった。」
オシャラの話をガラハッド達は息を飲んで聞いていた。オシャラはアニーのお腹を撫でる。
「彼女のお腹には今、俺達の子供がいる。彼女は俺を逃がしてくれたあの日、言葉が利けなくなるほどの拷問を受けながらもこの子を守ってくれたんだ。」
モニカは絶句していた。オシャラの王都での立場を一言で表すならば奴隷だ。彼の話だけを鑑みれば彼は犯罪者でもなんでもない。もっと言えば理不尽な被害を被った神に守られなければならない存在だ。人の善を信じている聖職者であるモニカにとって、王の行いは想像すらできないものだった。
「マジかよ…人間の王様ってのはサイテーだな。」
ガラハッドが言った。ナギもそれに同意するように頷く。
「手配書にオシャラの事を魔族って記載したのも、要は黒い肌を利用して多くの人間がお前に同情しないようにってことだろう。人間と魔族ってのは基本的には敵対関係だからな。」
「そういえば、君たちは魔族なのか?普通の人には翼は生えないものな。」
「あぁ、そうだ。」
そう言ってガラハッドは首を取って見せる。オシャラは目を剥き、アニーは悲鳴を上げブランケットを頭から被ってしまった。
「あ、生首ってショッキングすぎたかな。怖がらせちゃったかな。」
「あ、あぁ。多少驚くが…。しかし人間より魔族の方が話が通じそうだな。」
「おい、そんな王様といっしょにしないでくれよ。それより、あんたらは今後どうするんだ?」
「…俺の故郷に帰れればいいんだが、彼女の様子じゃ長旅には耐えられないだろう。どこか人の目に付かない所に潜伏できればいいんだが。…こんなことを会ったばかりの君たちに頼むのは厚かましいのは分かっている。だが俺達の逃亡劇に協力してくれないか?」
オシャラは縋るような声でそう頼んできた。オシャラの様子を見ると、確実に疲労が溜まり精神的にもいっぱいいっぱいなのが見て取れる。
「私がなんとかします!」
ガラハッドが言うより早くモニカがそう言った。
「何とかするったって…。何かアテでもあるの?もしかして教会に匿うつもり?街には彼らの事を探し回っているコンスタブルに賞金稼ぎもいる。とても無茶だ。」
「でも、このまま見捨てることはできません。」
「いいかいシスター。彼らを助けるってことは王に歯向かうって事。それはつまり人間社会と敵対するという事だ。僕やガラハッドは魔族だからまだいい。でも君はこれからも人間社会で生きていかなければならないだろう?酷い言い方になってしまうがここで首を突っ込むのはリスキーじゃないかな。」
「オシャラさんはどうなるのですか。彼もまた人間だというのに。」
やや感情的になっているモニカをナギが必死になだめる。その二人を傍目にオシャラの事を見ていたガラハッドはおもむろに口を開いた。
「…俺にいい考えがある。きっとオシャラ達を匿ってくれるだろう。ただその前にオシャラに確認しなきゃいけないことがある。」
「なんだ?」
「あんたは魔族と一緒に生活を共にできるか?なんの参考にもならないかもだが俺達はシスターと案外上手くやれてるぜ。」
「今更、人間だろうが魔族だろうが選んでる余裕ないさ。」
「よし!当たり前だが人間社会で指名手配犯のあんた等は人間より魔族に匿ってもらった方が安全だ。話はこちらでつけておく。その荷台を修理して動けるようになったらそいつの元に向かおう。ここにいても見つかる可能性は高い。なるべく急いでくれよ。」
「ちょっと待ってよ!」
やけにスムーズに事を運ぶガラハッドに流石にナギが突っ込む。
「そのアテって誰さ?人間匿ってくれる魔族なんて数は知れてる。期待していいのかい?」
「お前も知っている奴だよ。」
ガラハッドはにっこり笑った。
マジかよ王様サイテーだな




