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9. 団服が苦しいのも恋のうち

九話目になります。

途中で視点が変わります。


よろしくお願いします。

今日は騎士団の入団式の日だ。事前に配布されていた団服に身を包む。


酒場でルイスに誘いを断られた一件が、自分の中で思ったより尾を引いていて、いまいち気分が上がらない。


今は現実を知っているから幼い時の様に、誰しもが私を好きになるなんて思っていない。


私が押し掛けた分を合わせても二度しか会った事のない人。もしかして危険な時に助けてもらったから、吊り橋効果で好意を持ったと勘違いしているのかもしれない。


「コレット様、よくお似合いですよ。早く第二王子殿下をぶっ飛ばして辺境に帰りましょう!」


「…そうだね」


セシルに見送られ、馬車で王城に向かう。セシルの言う通りラインハルト殿下を叩きのめして辺境へ帰ろう。そうすれば、この胸のモヤモヤも無くなるはずだ。


ーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーー


「殿下、間もなく入団式のお時間ですよ。早く準備なさって下さい」


「…分かっているよ」


酒場の一件以来、ルイスことラインハルトは落ち込んでいた。


「そんなに落ち込まれるなら、コレット様に冷たい態度を取らなければ宜しかったのでは?」

「カインうるさい…お前に何が分かる」


「分かりませんよ。拗ねてイジケて拗らせまくっている人の気持ちなんて。コレット様はヘンリー殿下の事は完全に諦められた様に見受けられますがね。今なら殿下が婚約を申し込めば受けて頂けるのでは?」


「そんな訳無い。王城で再会した時も嫌味を言ってしまったし」


「そうですね。あれは酷かったですね」


カインにトドメを刺された気分だ。


「入団式、行きたくない…」


「はいはい、子供みたいなこと言わないで下さい。殿下、私は入団式の準備の確認がありますので先に行きますから、ちゃんと着替えて入団式に来て下さいね」


「分かった…」


カイルが部屋を出て行く。


「…着替えるか」


仕方無く、団服の袖に手を通す。


ーーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーーー


入団式が始まる。壇上にいるのは確かラインハルト殿下の侍従のカイン様だ。


「これより入団式を執り行います。先ずは第一騎士団団長のラインハルト殿下から、ご挨拶頂きます。ではどうぞ殿下、壇上に」


ラインハルト殿下が壇上に上がる。


「今回の入団試験でニ十五名の優秀な君達を迎えられる事を光栄に思う。騎士団の仕事は華やかな事だけでなく辛い事もあると思う。だが、それに負けず立派な騎士になってくれる事を望む。以上だ」


こうして団服を着てピシッとしているのを見ると、やっぱり王子様なんだと思う。この前の嫌味を言っていた姿とは大違いだ。


続いて第二騎士団のオスカー団長が壇上に上がった。


「私は第二騎士団のオスカー・ナパードだ。この後の予定だが、君達の配属先を発表する。配属先が分かった者から、それぞれの分隊長の指示に従って行動して欲しい。では発表する」


どこでもいいや。長くても騎士団には一年しか居られないんだから。


「第一騎士団、コレット・ガルディオン」

「は、はい!」


「君は第一騎士団に配属される。あそこにレッセン分隊長がいるから彼の指示に従うように」

「はい、分かりました」


「では、同じく第一騎士団…」



配属先が発表されて行く中、早々に配属先が言い渡された私はレッセン分隊長の元に行く。


「コレット・ガルディオンです。よろしくお願いしますレッセン分隊長」 

「ああ、君が入団試験の首席合格者のガルディオンか。私はニール・レッセン、分隊長をやっている。こちらこそ、よろしく頼む」



ふと視線を感じて辺りを見回すと、ラインハルト殿下と目が合う。何となく気まずくて、つい目を逸らしてしまった。 


(ラインハルト殿下が私を見てた?そんな訳無いわ。私は彼に嫌われているもの…)


入団式の日は騎士団施設の案内と、新入団の団員の顔合わせと翌日からの予定を聞いて、今日の所は解散となった。


第一騎士団は特に前線に立つことが多いらしい。大型の魔獣討伐が主な仕事で、後は他の団の補佐をする。国の端まで魔獣討伐に行く事もあるから、王都を長く離れる事も多いのだとか。


魔獣討伐なら十八番だ。


因みに、小型や中型の魔獣は冒険者の為に討伐しないそうだ。




夜『ココ』になって、こっそり屋敷を抜け出した。多分セシルには気付かれてるだろうけど。


下町の『月夜のカラス亭』に行く。


ルイスに会いたい訳では無い。カラス亭のパンケーキが美味しいから食べに行きたいだけだ、ホントよ?


それに、ルイスに会ったらどんな顔したら良いのか分からないし。



カラス亭の扉を開けるとカランとドアベルが鳴る。中を見渡してもルイスの姿は無く、ほっとする気持ちとガッカリした気持ち半分半分。


「おやココちゃん、いらっしゃい。ルイスと待ち合わせかい?」

「こんばんは、女将さん。ううん、一人だけよ」 


「おや、そうかい。今日は何にするね?」

「パンケーキのラズベリーソースとエールを」

「了解、ちょっと待っておくれ」


カウンターのルイスが座っていた席の反対の隅の席に座る。先にエールが届いたのでコップに口を付ける。


苦い…私はルイスに会いたいのかな。どうして、こんなに気になるんだろう。


パンケーキが届き食べる。今日は苦くはない。黙々と食べているとドアベルが鳴り店に人が入ってきた。


気にせず黙々と食べ続けていると後から声を掛けられる。声で誰なのか分かってしまったから振り向きたく無かった。



最後まで読んで頂きありがとうございます。

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