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7. その場限りも恋のうち

七話目です。

よろしくお願いします。

途中で視点が変わります。

「何にする?」

「う〜んと、分からないからルイスと同じものでお願いしていい?」


「分かった。ここは日替わり定食が美味いんだ」


ルイスは女将さんに、日替わり定食を二つ、飲み物もエールを二つ注文してくれた。


「ルイス、改めて今日は本当にありがとう」

「いや、大した事じゃない。だが、一人で魔獣討伐なんて無謀すぎる。気を付けろ」


「あは、それは反省してる。依頼者の村長さんに聞いたら、小物の魔獣だって言うから大丈夫かな〜って。ビッグボアが居たのは分かったけど、ちょっとイライラしててね。大物をぶっ飛ばしたかったんだ」

「で、小物の魔獣踏んですっ転んでたら世話ねえわな」


「ははははは、見られちゃってたんだ。あれはマジ私の油断だったわ。気を付けるよ」

「そうしてくれ。で、お前は何でそこまでイライラしてたんだよ?」


私を誂うラインハルト殿下の顔を思い出してイラッとした。エールを一気飲みしてグラスをカウンターに、タンッと置く。


「そう!私さ今日、長年の片思いに終止符を打ったんだよ…」

「振られたのか?」

「傷抉らないで…。泣くよ?」

「ごめん。で、何で失恋でイライラするんだ?」


「そこよ!私が振られて落ち込んでる所にさ!彼のお兄さんが来て私に『弟に振られたんだろ?さっさと故郷に帰れ』って」


「…へー…」

「でね!私の事『山猿』って!確かに私は淑女とは言い難いわよ?でも、子供の頃に一緒に遊んだ事があって友達だと思ってたのに…」


何だか悔しくなって、涙が滲んでくる。


「…おい、お前泣いて…」


溢れかけた涙を袖で拭って。


「泣いてない!」

「泣きたいのを我慢すると、引きずるぞ」 

「いい。屋敷に戻ってから思いっきり泣くから」


「…で、お前は故郷に帰るのか?」


ルイスが悪い訳じゃないんだけど、つい睨んでしまう。


「帰らないわよ!お兄さんを子供の時みたく、もう一度こてんぱんに伸してやるまでは!」

「くくっ……。がんばれよ…」


何故か笑いを堪えているルイスに、頭をぽんぽんされた。つい、マジマジとルイスを見てしまう。前髪で顔はよく分からないけど、少し口の端を上げて笑うのを見たら、何かを思い出しかけた。



「はい!お待たせ!」


女将さんが定食とエールを運んでくれた。


「ゆっくり食べておくれ」

「ありがとう。いただくわ」


湯気の上がった定食は本当に美味しそうだった。


「いっただきま〜す!」


ぱくっと一口。


「う〜ん!美味し〜!」

「…お前、本当に美味そうに食べるな」

「だって、本当に美味しいんだもん。ルイスも早く食べて」

「ああ…」


食事をしながら他愛もない話をしてすごした。食事を終え店を出る。夜風が気持ちいい。


「今日は本当にありがとうね」

「いや」


「また、どこかで会ったら声掛けてよ。暫くは王都にいるからさ」

「そうだな」

「じゃあまたね〜」

「…ああ」



ルイスと別れて帰路に着く。今日は悲しかったり、イライラしたりと気持ちが忙しい日だったけど、ルイスのお陰で屋敷に帰っても大泣きしないで済みそうだ。


まあ、帰りが遅くなった事でセシルからお小言を食らってしまったのは予想の範疇と言う事で。


結局、屋敷に戻ってからヘンリー殿下の事を考える事も無く、泣く事も無く、ぐっすり眠れたのだった。


ーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーー


部屋に戻ると側近のカインが待っていた。


「お帰りなさいませ、殿下。今日はいつもより遅かったのでございますね」

「ああ、少し予定外の事があってな」


剣をカインに渡す。俺は変装の為に被っていたカツラを外し、テーブルの上に置いた。


「何があったのでしょうか?殿下のお顔が楽しそうでいらっしゃる」


「大した事じゃない。魔獣に襲われていた女を助けただけだ。そのお礼にと飯を奢ってもらっただけで何もない」


カインは少し考える振りをして。


「その女と言うのは、もしやコレット様でいらっしゃったとか?」

「!ぐっ」


言葉に詰まる。こいつは変な所で感がいい。


「違う…近くの村娘だと言っていた」

「村娘ですか。ふむふむ」


カインは納得したように首を上下に振りながら、相槌を打っている。絶対にこいつには嘘だとバレているなあ。


そう『ルイス』は変装した俺、ラインハルトだ。時折、変装して冒険者をやっている。これも一応仕事なんだ。


不正を働く貴族がいないかを調べるのに、冒険者と言う立場は丁度いい。今回も自領の税率を勝手に上げ、国からの税率との差を不当に懐に入れていると言う噂のある、とある貴族の元に潜入していた。


調査も終わり王都に戻る途中で、魔獣に襲われている女を見かけたから助けただけだ。


まさか、その女がコレットだったとは思いもしなかったが。髪を染めて名前は『ココ』と名乗ってはいたが、間違いなくコレットだ。


押し込めたはずの気持ちが顔を出す。やはり彼女と居ると楽しいんだ。側にいるだけで胸の奥に仕舞い込んだ恋心が出て来ようともがきだす。


「諦めた…つもりだったんだがな」


「諦める必要は無いのでは?」

「簡単に言ってくれる…」


カインも知っているはずなのに、どれ程の覚悟で俺が彼女を諦めたのかを。



今夜は眠れそうに無い…。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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