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2. 不安な恋も恋のうち

ニ話目です。

よろしくお願いします。

ヘンリー殿下に手紙や誕生日の贈り物を送っても、返って来るのは侍従が代筆したであろう簡素な手紙や礼状だけ。


そんな状態が三年以上続き、私の誕生日にはカード一枚さえ届く事は無かった。流石の私も不安になって、父様に王都に行く事を強請った。


「父様、私は王都に行って騎士団に入りたいです。ヘンリー殿下の近くにいて守って差し上げたいの」

「駄目だ!お前はまだ十五歳なんだぞ」

「でも、もう四年近く殿下に会ってないのよ。私不安なんだもの」


「だがな、ヘンリー殿下から婚約の打診すら来ていないんだぞ。お前が婚約者だと思い込んでいるだけだ」

「父様の意地悪!嫌いになりますよ?」

「…コレット、それはあんまりじゃないか?」

「だって、ヘンリー殿下は私のお婿に来るのを考えておくって…言ったもん」


父様は息を大きくついた。


「考えると言っただけで了承してくれた訳じゃない。諦めろ。お前の婿なら俺がいい男を見繕ってやる」

「嫌です!ヘンリー殿下以外の人と結婚する位なら家出します!」


「…それだけは止めてくれ。お前の信望者に殺される…」

「じゃあ王都に行ってもいい?」


父様は渋々了承してくれた。


「…王都に行く事は許す。但し、三ヶ月後の誕生日が来て、成人となる十六歳になってからだ。丁度、騎士団の入団試験もある頃だからな」

「うん、分かった!」


これで、ヘンリー殿下に会いに行ける。


「喜ぶのはまだ早いぞ。王都にいるのは、きっかり一年。その間にヘンリー殿下から婚約の了承を貰い、陛下から正式に認められる事。出来るか?」

「勿論。頑張るわ」


父様は喜ぶ私を横目に、ため息を一つ落とす。(本当はラインハルト殿下の為に王都に行かせるんだがな…)


「お前がヘンリー殿下と婚約する事は身分的には問題は無いと、陛下から了承は得ている。後はヘンリー殿下のお気持ちだけだ」

「分かってる。絶対にヘンリー殿下に婚約者になって貰うわ!」


私は嬉しくて父様に抱きついた。


「ありがとう父様!大好き!」


父様は抱きついている私をベリッと剥がし、王都行きに条件を付けてきた。


「王都では我が家のタウンハウスを使う事。それから護衛としてセシルを連れて行く事。分かったか?」


「うん。セシルと一緒なら嬉しいわ」


セシルは私の侍女であるが、戦闘力では私と同等、頼りになる侍女で護衛なのだ。


三ヶ月後、誕生日を迎えた私は十六歳になった。誕生日の翌日には王都に向けて出立する事にした。


出立の日の朝、城門の前には家族や辺境伯軍の皆が見送りに来てくれた。


「父様、私十六歳になりました。お約束通りに王都に行きます」

「分かった。王都の屋敷の執事には部屋を用意する様に言い付けてある」


「ありがとうございます。父様」

「もし、ヘンリー殿下の気持ちが得られない時はすぐ帰って来ても良いんだぞ?」


「父様、不吉な事は言わないで下さいな。絶対にヘンリー殿下の心を掴んでみせるんだから」


「コレット、気を付けて行きなさいね。貴女なら王都でも大丈夫だとは思うけれど、辛かったら帰っておいでなさいね」

「大丈夫だよ、母様。私、絶対にヘンリー殿下をお婿さんとして連れてくるからね」


私は胸をドンと叩いて母様に言う。


「母様は心配性なんだから。辺境の白薔薇と呼ばれ、敵軍から恐れられた母様の娘なんだよ。負ける筈がないよ」


「そう言う事では無いのですけれどね…」


母様は残念な物を見るように私を見て、側に控えていたセシルに声を掛ける。


「セシル、コレットの事頼みましたよ」  

「はい、奥様。お任せ下さい」

 

一番上のアルス兄様が話に割り込んで来る。


「コレット、王都の男は皆、狼だと思え。簡単に気を許すんじゃないぞ」

「狼?なら私の魔法で一撃だよ」

「そうじゃなくて…」


「兄さん、コレットは鈍いんだからちゃんと言わなきゃ」

「リオン兄様、鈍いって何?」

「あのねコレット。狼って言うのは王都の男の人は可愛い女の子を見ると、すぐ襲ってくるって意味だよ」

「襲ってくるのなら魔法一発だよ」


後ろから笑い声が聞こえる。私の答えに大笑いしているのは、三番目と四番目の兄様達だ。


「何なの?ザッシュ兄様、ダグ兄様?」

「あ〜おかしい。コレット、襲ってくるって言うのは貞操の危機って意味だよ」

「…ザッシュ兄様、貞操の危機って…?」


「こんな初心なコレットを王都に行かせて大丈夫なの?僕は反対したんだよ」

「ダグ兄様、反対なの?」

「あ〜〜、泣くなよコレット。後で僕が皆から八つ裂きにされる」


ダグ兄様が焦る姿が面白い。


「ダグ兄様に反対されても私、王都に絶対行くもん」 



辺境伯軍の皆からも声が掛かる。いつも一緒に訓練したり魔獣討伐に行った仲間達だ。


「そうだぜ!姫様。頑張るんだぜ」

「絶対に王子様を捕まえて来るんだぞ!」

「我らが姫様のご武運を!」


「ありがとう皆!私頑張ってくるよ!」


「もし駄目だったら俺んとこへ嫁に来て下さ〜い!」


今、嫁来て宣言した人がアルス兄様に締められてる。


「皆、父様と母様、兄様達!元気でね。行ってきます!」


皆、口々に別れの言葉や励ましの言葉をくれる。別れ難かったけど、皆に別れを告げて旅立った。セシルが馭者を務めてくれる。王都まで馬車で五日の旅だ。 




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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