1. 勘違いの恋も恋のうち
新連載です。全17話です。
書き上げ済みです。
毎日21時に投稿します。
よろしくお願いします。
私は辺境伯家の五人兄妹で唯一の娘、コレット・ガルディオン。
剣を持たせれば敵無し。戦場の紅の獅子と呼ばれた父様と、辺境の白薔薇と呼ばれた魔術師の母様との間に私は生まれた。
辺境伯領は隣国と接している為、軍を持っことが許されている。軍にいる男達は武勇に優れ大きな身体と鋭い目をした一騎当千の男ばかりだ。
そんな男達から辺境伯家のたった一人の姫である私が可愛がられない筈がなかった。
辺境伯家特有の赤い髪、炎の瞳。母様に似た私は間違いなく美少女だ。
「姫様は国一番の美女じゃな」
「きっと姫様には優しい王子様が迎えに来てくれますよ」
「姫様、可愛いですぞ!」
「嫁に来て下さい。大事にしますから!」
こんな言葉を皆から掛けられ、私は自惚れていたのだ。私を好きにならない男などいないのだと。
私が十ニ歳の時、国王夫妻が辺境伯領に視察に訪れた。今は隣国との関係も良好な為、我が家は国境にある森から発生する魔獣討伐が主な仕事になっていた。
その時、国王夫妻に同行していたのが第二王子と第四王子。私は第四王子のヘンリー殿下に一目惚れをしてしまった。
第二王子のラインハルト殿下は、明るい茶色の髪にヘーゼルの瞳。美形だったが、ありふれた色で興味を惹かれなかった。
第四王子のヘンリー殿下は、プラチナブロンドに青い瞳をしていて、宛ら絵本から抜け出して来たような王子様だった。辺境の男達とは違う優しい微笑みに、すらりとした体つき。
間違っても『ガハハ』とは笑わないし筋肉自慢もしない。
好きにならずにいられる?無理!好きしかない!
ヘンリー殿下は十二歳、私も十ニ歳。年齢的にも丁度良い。
私は彼に好かれるべく、辺境で思いつく自分の楽しいと思う事に誘った。当時の私には、これが最上級のもてなしだったのだ。
私はヘンリー殿下に良い所を見せようと張り切った。それはもう辺境伯領の人間すら引くレベルで。
「ヘンリー殿下、今日は魔獣討伐に行きませんか?」
「…僕はあまり剣術も魔法も得意じゃないんだ。僕はここで待っているよ。だから、兄上と行って来て」
「そうですか?じゃあ、待ってて下さいね。ラインハルト殿下いきましょうか」
「ああ」
ラインハルト殿下と魔獣討伐に行く。ちゃんと安全には配慮しているよ。王子様に怪我させちゃ駄目だからね。
「ヘンリー殿下、今日は剣術の訓練をするんです。一緒にどうですか?」
「…僕は良いよ。兄上くらい強くないと相手にならないよ」
「そんな事ないと思いますけど…。ラインハルト殿下、剣術の稽古行きます?」
「ああ、頼む」
ラインハルト殿下との模擬戦は楽しかった。殿下は王都の騎士団に所属し日々鍛錬に励んでいるそうだ。
殿下は私に何度負けようと立ち向かって来る。最後の最後に一本取られたけど不思議と悔しくは無かった。私から一本取った殿下は、口の端を少し上げて笑っている様に見えた。
ある時は、魔法で盗賊を吹っ飛ばしたり、グリズリーの巣穴を見つけて炎の魔法を撃ち込んで、出てきたグリズリーを捕まえて焼いて食べたり。
ヘンリー殿下は奥ゆかしい方なのだ。グリズリーを捌くのを見た時、気を失われた。うん、私が守ってあげなくちゃね。
ラインハルト殿下はグリズリーを捌く私を見て、教えてくれと言うので教えてあげた。流石に大量の血を見た時は顔が青くなってたけど。
そんな事があっても、ラインハルト殿下は『辺境伯領は楽しい所だな』と言ってくれた。
ラインハルト殿下が、これだけ楽しんでいるのだから、ヘンリー殿下もきっと楽しんでくれている。
私はそう思い込んでいた。
パンツ姿で剣を振り回し魔法を魔獣に撃ち込む女。これが普通ではないと気付いたのはかなり後になってからだ。だから、ヘンリー殿下がどんな顔をしていたか気にもしていなかった。
寧ろ、これだけカッコいい所を見せたのだから、ヘンリー殿下は絶対に私を好きになってくれている筈だ。
だから、国王陛下や殿下達が王都に戻る時に私は、ヘンリー殿下に『大きくなったら私のお婿さんに来て下さい!』と逆プロポーズをしたのだ。
ヘンリー殿下からは『お、大きくなったらね。考えておくよ…』と言われ、それを了承と受け取った私は結婚ができる年まで、より一層剣術を鍛え魔法の技を磨いたのだった。
後から、侍女のセシルに『ヘンリー殿下の顔、引きつっていましたよ』と言われたが、そんな事あるわけ無い。
だって私は可愛いんだもの。私を好きにならない男はいないはずだから。
周りの忠告も聞かず、私はヘンリー殿下の婚約者気分でいた。彼に相応しくある為に勉強も頑張ったし、淑女教育も頑張って。
そんな私を見て両親は呆れ顔をしながらも、何も言わなかった。
離れている間にも思いは募る。今すぐにでも王都に行ってヘンリー殿下の側に居たかったが、それは両親が許してくれない。
ヘンリー殿下に手紙も送っていたが、私が十通送って返事は一通。王子様は忙しいから偶にしか返事書けないんだと自分を納得させていた。
何故か、ラインハルト殿下から度々、手紙が届き文通友達になっている。こちらが贈らずとも誕生日の贈り物が届く。
私はラインハルト殿下をいつか義兄になる人だと思っていたから、恋愛感情は欠片も持っていなかったのだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




