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16. 逃げる恋と追いかける恋

十六話目です。

途中で視点が変わります。


よろしくお願いします。

コレットに別れを告げられてから、機械の様に書類を捌き続けている俺の元にカインから報告が届く。


「コレット様は王都を出られたようですよ。城壁の門番に確認しました」

「そうか…」


カインが俺の机に手を叩きつける。


「どうして、すぐ追いかけなかったんですか?馬鹿ですか?」


相変わらずカインの言葉は容赦が無い。


「今更、何を言い訳しろと?コレットに正体を隠してルイスとして会っていたのは事実だ」

「なら謝って許してもらえば良いじゃないですか」


「コレットに『さようならルイス』って言われたんだぞ。許してくれるものか」

「謝る前から決めつけて。この根性無し!」

「自分が一番分かってるよ…」


「では、コレット様の退団手続きをしても宜しいのですね?」

「ああ、俺のいる騎士団にいるのは嫌だろう」

「あああもう…ヘタレですね。拗らせまくっている男は面倒くさい」 


「うるさい」

「このまま、諦めていいんですか?折角、ルイスの姿とは言え好意を持って貰えたんでしょう?」


「ルイスだからだ。俺じゃ駄目なんだ…」


呆れたようなカインの視線が突き刺さる。


「では、私がコレット様に婚約を申し込んでも構わないですね?」


「コレットは俺の妻だ」


「そんなもの離縁すれば良いだけです。私は公爵家の次男、家を出て辺境伯家に婿入しても問題無いですしね。剣の腕も殿下に引けを取りませんから」


「離縁はしない!」


「殿下は諦めるんでしょう?要らないんでしょう?なら私が貰っても構わないですよね。私なら殿下と違って、素直にコレット様に愛を伝えますよ」


カインは本気なんだろうか?コレットを好きな気持ちに嘘はない。だけどまた拒絶されたら…怖いんだ。カインの言う通り意気地なしだな俺は。


カインの大きな溜息が聞こえる。


「…一時間、猶予を差し上げます。その間に殿下が何も行動を起こされないのでしたら、本当にコレット様に婚約を申し込みます。良いですね?」


「…短すぎないか?」

「ヘタレな殿下には一分でも長いですよ!私はコレット様の退団手続きをして来ますから、一人でよ〜く考えて下さい」


カインは部屋を出て行ってしまった。


拒絶されるのが怖いからって、このまま諦めるのか?一度は手に入れたんだ。逃がしてなどやらない。逃げるなら捕まえるだけだ。


部屋を飛び出した俺は馬を駆って辺境伯領に向かう。先回りして絶対に捕まえてやる。


ーーー ◇ ー ◇ ー ◇ ーーー


「コレット様、次の街で宿を取りますね」

「うん、お願い」


王都を出て三日、後二日ほどで辺境伯領に入る。


感情のままに飛び出しちゃったけど、殿下とちゃんと話せば良かったんだろうか。


ルイスと出会ったのは偶然。あれが最初から騙すつもりだったとは思えない。


今思えば私が鈍かっただけで、分かる人には二人が同一人物だと分かっただろう。戦う時の癖とか声とか身体つきとか。



街の宿屋に着いて馬車から降りる。


「コレット様、お食事はどうされますか?」

「あまり食べたくは無いんだけど」

「コレット様がお食事を断るなんて…」

「セシル、人の事を何だと…」


不意に後から抱きしめられた。いつもの柑橘系の香りと少し汗の匂いと共に。


「やっと捕まえたコレット」

「殿下?離して下さい!」


殿下の腕から逃れようと暴れてみるが、腕にしっかり抱き込まれて抜けられない。


「お願いだ。話を聞いてくれ」 

「先に離して」

「嫌だ、離したら逃げるだろう?」

「それは…」


「殿下、コレット様。宿の部屋でお話し下さい。ここでは目立ち過ぎます」


セシルに促され宿屋の部屋に入る。


「二人でちゃんと話し合って下さいね」


セシルは扉を閉めて出て行ってしまった。


「何故、追いかけて来たんですか?まだ私を嬲り足りないんですか?」

「違う!謝りたくて」


殿下は私の手を取って口付ける。


「ごめん、もっと早くにルイスが俺だと話すつもりだった。でも君は俺には見せてくれない表情をルイスには見せてくれていたから、それを失いたくなくて言い出せなかった…」


「…それを言いに来たんですか?」

「ちゃんと謝って、それから伝えたかった。君を愛していると」


「私、殿下に嫌われていると思っていました。だからルイスって言う別の人間になって私に近づいて、私が好意を持ったら冷たく突き放して傷付けたかったのかなって」


「そんな訳ない!ずっと好きだったんだ」

「その割に王宮で会った時、辺境へ帰れとか言ってましたよね」


「あれは、俺が手紙で好意を伝えているのに余りにも君が冷たいから…」

「それはごめんなさい。私、貴方の気持ちに気付いてなかった…」


「あの頃は君はヘンリーに夢中だったしな」

「だ、だって、あの時はヘンリー殿下が好きだったんだもの」


「今は?」

「…ルイスが好き…」

「俺の事は?」


ルイスは好き。殿下は?


「分からない。だって別人だと思ってたんだもの」

「じゃあ、これから好きになって」


「そんな無茶な!」

「むしろ、好きになってくれない方がおかしいよ。ルイスは俺なんだから」


そうなんだけど…。分かっているけど何か悔しい。


「…善処します」

「じゃあ、これからよろしく。俺の妃」

「妃!?」


「だって、ルイスでもある俺とあんな事しちゃったんだからね」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「ははっははははは!」


殿下が大笑いしている。私が王都に来てから初めて見た。そうだ、彼はこんな風に笑う人だったんだ。


「ちなみに婚姻届は神殿に届け済みだから」


「こっの!策士〜ぃ!」



もう、ルイスでも殿下でも名前なんてどうでもいいや。


貴方が好きなんだから。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

次話で完結になります。

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