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15. 騙されていたのも恋のうち

十五話目です。

よろしくお願いします。

あれから三日経って、もう体調は万全だ。体調不良なんていう失態を挽回するために仕事を頑張ろうと思った矢先。


「今日は第一騎士団内でトーナメント戦を行う。優勝者には賞金と団長と戦う権利を与える。更に、団長に勝利した者には常識の範囲内なら、願いを一つ叶えて下さるそうだ。皆の健闘を祈る!」


副団長が声高らかに宣言した。


「優勝したらラインハルト殿下と戦えて願いを一つか…やってやろうじゃない!」


殿下を打ちのめすチャンスがやって来た。殿下に勝ったら願いも叶えてもらえるし、これは頑張るしかないよね。


常識の範囲って、何処ら辺りまで大丈夫なんだろうか?殿下に勝ってルイスに爵位を与えて貰うとか出来るのかな?


父様もルイスに爵位があれば結婚を許してくれるはずよね。


トーナメントを難なく勝ち上がり、決勝戦ではレッセン分団長が相手だった。


「ガルディオン相手じゃ分が悪いなあ。お手柔らかに頼むよ」

「分団長が相手でも手加減しませんからね」

「ははは、分かったよ。存分にやろう」


分団長は確かに強かった。でも辺境で鍛えられた私が負ける筈がない。


「優勝はコレット・ガルディオン!」


「やった〜!」


無事優勝し、ラインハルト殿下との対戦チケットを手に入れた。


「ガルディオン、団長との対戦はいつにする?今日は疲れているだろう?後日にするか?」


「副団長、今日でも全然大丈夫です。まだまだ戦えます、絶好調です」

「そうか?なら団長を呼んで来るとしよう」


副団長は団長の執務室に向かった。


ラインハルト殿下の到着を待つ間に、他の団員から優勝を祝われる。団員の間で団長と私のどちらが勝つか賭けているらしい。けしからん。私は自分に賭けておいた。


そうこうしている内にラインハルト殿下が闘技場までやって来た。


「やはり優勝はガルディオンか」

「団長、負けませんよ。全力で行きます」


「何本勝負にする?他の団員なら一度で十分だが、お前は一度では納得しないだろう?」

「では、三本勝負で」

「分かった」


「これより団長とガルディオンの対戦を行う。勝負は三本勝負、二本先取した方が勝者だ。では…始め!」


副団長の号令で対戦を始める。


一本目は殿下が余裕を見せていたから、遠慮なく斬り込んで私が勝った。


二本目は殿下も本気を出して接戦の末、私の負けだった。


三本目は負ける訳に行かない。私も本気で行かせてもらおう。三本目の前に近くにいた団員に模造刀を借りる。本来の私は二刀流だ。


「ガルディオンお前、二刀流なのか?」

「ええ、そうです。三本目は負ける訳に行かないので本気でやらせて貰います」

「そうか、ならば私も全力で迎え撃とう」


三本目はお互い本気だ。殿下は本当に強い。でも私だって負けない。


「行きます!」


殿下に斬りかかるが流されて、振り向きざまに二本目の剣で斬りつける。流石に二刀流の人間とは戦った事が無いのか殿下は防戦一方だ。だからと言って攻撃の手を緩めるつもりはない。


そんな攻防が十分程続いた頃に決着がついた。勿論、私の勝ちだ。


最後に殿下の剣を跳ね飛ばしてやった。私と対等に戦える人なんて辺境以外で出会った事が無かったから、久しぶりに全力で戦えて楽しかった。


「私の勝ちですね」


剣を飛ばされた時に呆気に取られていた殿下が突然笑い出した。


「ふっ、は、はははははは。やっぱりココは強いな、完敗だ」


…ココ?


私をそう呼ぶのは…。


「どうして殿下が私を『ココ』って呼ぶの?」


殿下はしまった、と言う顔をして口を押さえる。


私は咄嗟に殿下の目を手で覆ってみた。殿下はされるがままに、私の手を払い除けたりはしなかった。


「…ルイス…なの?」

「コレット…」


力無く手を下ろす。殿下の顔を見られない。俯いていると涙が溢れそうになるのを堪えた。


「…殿下がルイスだったんですね。楽しかったですか?ルイスの一言に一喜一憂する私を見て」

「コレット、違う!」


一つ大きく深呼吸をする。


「殿下に勝てば何でも一つ願いを叶えて下さるんですよね?」

「…ああ」

「では、私の退団を許可して下さい」

「辞める必要は無いだろう…」


私の目には涙が滲んでいただろうが、構わず顔を上げて殿下を睨みつける。


「貴方の言う通り、赤髪の山猿は辺境に帰ります」

「本気でそんな事は思っていない!」

「もう、良いんです。私には王都は合わなかった、それだけです。…さようならルイス」


これ以上、殿下の顔を見ていたくなくて訓練場から飛び出した。殿下が追いかけて来る訳もなく、所詮は私の存在なんてそんなものだ。



ルイスはラインハルト殿下だったんだ。私は殿下に嫌われていたから、ルイスが出会った当初、態度が冷たかったのも当然か。


「あは、は、は、王都に来て立て続けに二人に失恋なんて、馬鹿みたいだ私」



屋敷に戻ったら、私の顔を見たセシルが何かを察したらしく直ぐに荷物を纏めてくれた。


「コレット様、荷物は纏め終わりました。直ぐにでも発てます」

「ありがとうセシル。何も聞かないの?」

「コレット様の事は言わなくても分かりますから」

「ありがとう。セシルが居てくれて良かった。さあ、セバスとニーナに挨拶をして屋敷を出よう」


「はい。荷物は先に馬車に積み込んでおきますね」

「うん、お願い」


私はセバスとニーナに急に屋敷を出る事になったのを詫びて別れを告げる。ニーナからはとても残念がられた。


「コレット様出発します。よろしいですか?」 

「うん。帰ろう辺境へ」


貴族令嬢として価値が無くなってしまった私。このまま、一人で冒険者として生きていくのも良いかも知れない。でも今はただ眠りたい…。


セシルが馭者を務めてくれる。カラカラと音を立てて馬車は辺境に向けて走り出した。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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