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13. 自覚したばかりの恋でも恋のうち

十三話目です。

よろしくお願いします。


最後の方に性行為を匂わす様な表現がありますが直接的な描写はありません。

毎日、夜に抜け出してはカラス亭に来ているが、ルイスに会えるどころか連絡すら入らない。それでも今日もカラス亭の扉を潜る。


「ココちゃん、いらっしゃい。お待ちかねのこれ」


そう言って女将さんは小さなメモを渡してくれた。


『来週の水の曜日、朝八時にギルドで』


良かった…長い間、連絡が無くてもう約束は無いんじゃないかと思ってた。


「で、今日は何にする?」

「今日は日替わり定食とエール…じゃ無くて少し強めの何かある?」

「ああ、洋酒でいいのがあるよ。それにするかい?」

「ええ、お願い」


来週の水の曜日にルイスに会える…でも少し気分は重い。


「ココちゃん、浮かない顔だね。ルイスからの連絡、良くないことだったのかい?」

「そうじゃないんだけど…」

「ルイスが浮気でもしたのかい?」


「女将さん!私とルイスはそんな関係じゃ」

「そうなのかい?でもココちゃん、あんたはルイスの事好きなんじゃないの?」


「…好き?私がルイスを?」

「おや?自覚無しかい」


ルイスに会えるのが嬉しいのも、近くにいるとドキドキが止まらないのも、そういう事だったんだ。…自覚するとなんだか恥ずかしい。


「ルイスもココちゃんの事好きだと思うよ。頑張りな」


そう言うと女将さんは厨房の方に戻って行った。



水の曜日、いつもの様にギルドで待つ。


今日も魔獣討伐の依頼は無くて、他に目ぼしい依頼もない。時間通りにルイスはやって来る。


「おはよ…ルイス」

「ああ、おはよう」


「今日も大した依頼はないよ。この前みたいなのも無さそう」

「そうなのか?」


ルイスは掲示板の依頼を端から見ていく。


「これなんかどうだ?」 


「うん、これならそこそこ体も動かせそうね。報酬は…ちょっと渋いけど」  

「じゃあ、これを受けてくるぞ」  


ルイスが受付に行ってくれる。さっきの依頼は、高山に生える貴重な薬草の採取だ。手間の割に報酬は少ない。でも、ルイスと出掛けられるなら何でもいいや。


「受けて来たぞ。今回も馬で行くからな」

「うん、よろしくお願いします」  


また、ルイスの馬に乗せてもらった。薬草の採れる山は標高が高い。山の中腹辺りから道が険しくなり馬では登れないので徒歩になる。


「少し寒いね。何か上着持ってくれば良かった…」


そう言って手に息を吹き掛けていると肩に温もりを感じた。ルイスの上着だ。


「いいよ、ルイスだって寒いでしょ?」

「いいから着とけ。俺は鍛えてるから大丈夫だ」

「ありがと」


ルイスの温もりが残ってるみたい。優しい柑橘系の香りに包まれて恥ずかしくて顔が赤くなる。


「どうした?顔が赤いぞ。風邪でも引いたか?」

「大丈夫!ルイスの服借りて暖かくなったからだよ。さ、行こう」


恥ずかしさを誤魔化すように早足で登る。そろそろ山頂になる。薬草があるとしたら、この辺だ。


薬草の見本の絵と回りの草を見比べる。


「あっ、これかな?葉っぱの付き方が同じだ」

「どれだ?ああ、これだな。よし、採取しよう。依頼では根ごと欲しいらしいから掘るか」


ルイスが短剣を使って土を掘る。掘り出した薬草を根を傷付けないように気をつけて依頼者から預かった箱に入れる。この箱は魔道具で中に入れた物の状態を維持する機能があるらしい。 


「じゃあ、依頼も完了したし下山するぞ」

「分かった」


山を下りてルイスに上着を返した。自分の上着を着るだけなのに着るのを躊躇うルイスが不思議だった。


ルイスの馬に乗せて貰って王都まで戻り、ギルドに依頼品を渡して依頼完了。報酬は今日の夕食二人分で終わりだ。



今日もカラス亭で食事を取る。


「ルイス、今日もありがと。暫く連絡入らなかったから、もう来ないかと思ってた」

「仕事が立て込んでて、すまん」 


「なら、良いんだけど。また一緒に行ってくれるよね」

「分からない」


「仕事そんなに忙しいの?」

「ああ、少し厄介な案件でな」

「私が手伝える事ない?」

「お前には関係ない」


ルイスの突き放す様な言葉に胸が軋む。


「そうかも知れないけど…でも…」

「本当に一緒に行けるか分からないんだ。今日で最後かもな」

「なんで?その忙しい仕事と関係あるの?」


「だとしても、お前には関係ないだろう。俺の家族でも恋人でも無いんだから」

「…っ」


ルイスに会えなくなる…。好きだと気付いたばかりなのに…。


「関係ないだなんて酷いよ…」

「ちょ、お前、何泣いて…」


泣きたくないけど涙がこぼれてくる。ぎょっとしたルイスの雰囲気が伝わって来た。


回りの人達の視線を感じる。


「ルイス、ほら鍵。二階で話しな」


女将さんがルイスに鍵を放り投げる。


「…ちょっと来い」


ルイスに腕を掴まれてカラス亭の二階の一室に連れて行かれた。


「あんなとこで泣かれると困るんだよ。なんで泣いてんだ?」


「ルイスが好きだからだよ!会えなくなるって言われて悲しくない筈ない!」

「っ!」


「ルイスが好きだもん。会えないなんて言わないで…お願い…」


ルイスの手が頬に添えられる。


「…本当に俺が好きなのか?」

「うん、好き」


頬に添えられたルイスの手に自分の手を重ねる。


「俺も…ココの事、好きだ」


ルイスが私の事、好きって言った?


「ルイスも私の事、好き?」

「ああ」


「ルイス!」


思わずルイスに抱きつく。ルイスに顎を掴まれて上を向かされたと思ったらキスされた。


長い長いキス。


「くそっ、もう止められるか」


そのままベッドに押し倒された。


後の事はよく覚えていない。微かに覚えてるのはルイスの触れる手が優しかったとか、肌が熱かったとか。


ルイスの前髪から僅かに覗く瞳のヘーゼルが綺麗だと思った事だけはよく覚えてる…。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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