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12. 育成中の恋も恋のうち

十二話目です。

よろしくお願いします。

入団当初は毎日の様に顔を合わせていたラインハルト殿下に、ここ数日会っていない。会えば嫌味を言われるから、会いたいかと言えば否だ。


でも、最近の殿下は少しおかしかった。


視線を感じて顔を向ければ、切なそうな何か言いたげな殿下がいて、私が視線を合わせると、ふいっと外方を向いて立ち去ってしまう。


そんな事が何度か続いた。



最近、王宮に噂が流れている。ラインハルト殿下の婚約者が決まったと言うものだ。


子供の頃に一緒に遊んだ仲なのだから、婚約が決まったのならお祝いの一つでも言ってやりたいではないか。


あんな嫌味なやつを貰ってくれる希少な女性なんだから、大事にしろよと言ってやりたい。


だけど、会わない。すれ違いさえしない。殿下の婚約の話を聞いてから胸の奥にポツンと小さな染みが出来て取れない…。



今日もカラス亭に寄る。


前回、魔獣討伐に付き合って貰ってから二週間が過ぎた。ルイスからの連絡は無い。


「仕事、忙しいの…かな」  


「ココちゃん、これルイスから預かってるよ」


女将さんから小さなメモを渡される。


『来週木の曜日、ギルドに朝八時に』


ルイスからの連絡だ。


「女将さんありがと」

「さあ、注文を貰おうかね」

「日替わり定食とエールで」

「まいど」


来週の木の曜日にルイスに会える。



こんなに時間が進むのが遅く感じた事は無かった。


木の曜日、何時もより早起きして『ココ』になる。


「コレット様、今朝はお早いですね。また、あの冒険者とお出掛けですか?帰宅時間だけは守って下さいね」

「了解!行ってきます」



ギルドに入り依頼掲示板を見るが魔獣討伐は無さそうだ。


「今日は無いなあ。どうしよう?」


仕方無く、ギルドの中に置いてある椅子に腰掛けてルイスが来るのを待つ。


八時きっかりにルイスがギルドに入って来た。


「おはよ、ルイス」

「ああ、おはよ」

「今日はね、魔獣討伐無いんだ。どうしよう?」

「なら、他に受けられそうな依頼が無いか見てみよう」


ルイスは掲示板を眺めている。そして、一枚の依頼書を剥がした。


「これなんかどうだ?」

「これは気が付かなかったよ。体は動かせそうだね。うん、これにしよう」


受付で依頼受諾しギルドを出る。


「ここなら歩いていけるね」

「そうだな」


依頼は魔術塔の魔術師から結界の強度の試験に協力して欲しいと言うものだ。


魔術塔は王都の外れにある。ギルドから歩いて行ける距離だ。魔術塔に着いて魔術師に依頼を受けた冒険者だとタグを見せれば、依頼を出した魔術師の元に案内された。


魔術師に実験場に案内され、魔術師が作成した魔道具で張った個人用結界に、好きなだけ魔法攻撃と物理攻撃をして欲しいとの事だった。


魔術師が魔道具を着け結界を展開した。私が魔法攻撃、ルイスが物理攻撃を担当する。


「じゃあ、遠慮なく!ファイアーボール!」


一撃では結界はびくともしなかった。となると、どれだけやれば結界が破壊出来るのか試したくなるのが人間だ。


「次、行くよ〜!」


ファイアーボールを連弾すると魔術師が悲鳴を上げた。


「ちょ、ちょっと待って下さい!結界が持たない!止めて〜!!」


「あっ!」


ファイアーボールを止めたが時既に遅し。最後に放ったファイアーボールで結界は粉々に砕け散った。


「…やりすぎだ、ココ」


ルイスが呆れている。


「ごめんなさい…魔術師さん大丈夫ですか?」


「あちちち、大丈夫です。それから依頼は以上で完了です。個人用結界は十分な強度がある事が分かりました。貴女の魔法が規格外でしたので結界は壊れてしまいましたが…」


「はははは…」


「いや〜貴女の魔法は素晴らしい!その魔力量、魔法の精度、魔術塔の魔術師に勝る供劣らない。魔術塔に来ませんか!」

「えっと、それはお断りします」

「そうですか…それは残念です。気が向いたらいつでも来て下さいね。待ってますから!」


また同様の依頼があれば私を指名してくれるそうだ。名残惜しそうな魔術師に見送られ魔術塔を後にした。


依頼を完了したのでギルドに報告すれば終了だ。


いつもの如く、カラス亭に行く。最早、私とルイスの指定席になっているカウンター端の席に座る。


「女将さ〜ん、日替わり定食二つね。エールも」

「あいよ!」


「今日もありがとう。魔獣討伐じゃ無かったけど面白かったわ」

「魔術師は困惑してたけどな。まさかあそこまでやるとは魔術師も思ってなかっただろうけど」


「また、次もこんな依頼を受けるのも良いわね。ん〜また違う依頼受けてみるのも楽しそう。どうしようかな?」

「…そうだな…」

「ルイスはどんな依頼受けたい?」 

「…そうだな…」


ルイスの反応が鈍くて気になった。


「どうしたの?何か考え事?」

「いや、よく喋るなと思ってな」

「え〜食事は楽しくお喋りしたいじゃない」


「…私、煩い?」

「いや」


「じゃあ、いつも通り。喋り倒しちゃうからね」

「好きにしろ」


いつもの如く、私一人一方的に喋って食事は終わった。今日も店の前で別れる。  


「ルイス、また連絡待ってるからね〜お休み〜」

「ああ」


今夜もルイスの背中を見送って私も屋敷に帰った。



「今日は門限までにお帰りでしたね。お疲れでしょう。早くお休みになって下さい」


セシルはお小言が言えなくて残念そうだった。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

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