13 規格外の魔物
いきなり襲わず声をかけてくれた。紳士的対応と言えよう。それに対しべーっとダナが挑発。短気な冒険者がダナに斬りかかった。ダナは短剣で難なくいなし、腹に蹴りを。攻撃を食らった冒険者は地面を転がりながら吹っ飛んでいき、他の冒険者にぶつかり動かなくなる。失神KOだ。
「やっちまえぁー!」
全員が一斉に襲いかかってきた。クリスがローブを脱ぎ戦闘態勢に。手を広げ冒険者に突っ込んでいく。
「死ぬ気か!?」
刃引きの武器と言っても金属でできているから斬ることも可能。鈍器系ならほぼ刃引きの意味はない。彼女は布の服を着ているだけ。防御力があるかは疑わしい。
剣、槌、斧、槍、それら武器の攻撃を一身に受けるクリス。彼女がダメージを受けた様子はない。彼女は力だけでなく、防御力もかなりのもの。皮膚が特別製と彼女が言っていた。フォースドラゴンの力の一つだろうな。流石にファティマクラスの攻撃は受けきれないとも。
「ま、待ってぐぶぶ」
「ひえっ」
すべての攻撃を受けきり、そのまま力で冒険者達を押し込んでいくクリス。押しつぶされ気絶する冒険者、敵わないと見て武器を捨て逃げ出す冒険者。
一方、ファティマは遠距離攻撃の魔法剣で冒険者達を近づけさせてすらいない。わざわざ当たらないように攻撃を放っているな。流れ弾に当たった巨大ワームが一瞬で真っ二つに。あれは当たったら死ぬわ。それを見て戦意喪失者が続出した。冒険者の数が減っていく。俺はハードシェルを召喚、守りに徹した。
「野良のくせに結構強いぞ! つーかこのカニ邪魔だしかてぇー!」
左右に、身軽に動くハードシェル。程なくして3人が俺の応援に。これを軽く片付ける。俺たちを襲ってきた冒険者達は全滅した。
「ははは、まさかあんたらが勝つとはな。賭けをしなくてよかったよ。ではあんたらに護衛を頼むとしよう。明日の朝は早めに来てくれ」
翌日、日が出ないうちに起きて食事をとり帆船へ。俺たちの他にも冒険者達が居た。我々は補充人員だったとのこと。ここでも野良召喚術士呼ばわりされる。まあ仕方がないけど。
クリスが、こういう奴らは早いうちに躾けたほうがいいと、指の骨を鳴らしながら前に出る。鉄鉱石を取り出し、冒険者たちに見せる。「くれんの?」と笑いながら言う冒険者の前で石に噛み付く。石は勢いよく爆ぜた。
「我々が気に入らないと感じた者はこうなるからな?」
「そ、そう……」
彼女から目を背け返事をする冒険者たち。挑発に対してこちらに向かってくる様子はない。今ので完全に格付けが済んでしまった。少し残念そうにしているクリス。魔王の巣の住人達は血気盛んで、隙きあらば喧嘩を売ってくるようなやつが多かったと語る。
「砂船護衛の方、こちらへ」
船員さんが俺たちを呼んだ。船の中へ入ると、船長さんが中で待っていた。
「よう、っておまえら、元気ないな。ん、ああそういう」
察した船長さんは大笑い。落ち着き咳払いをすると地図の前に立ち、こちらへと皆を誘導した。
これからの航路と我々の仕事についての話を。冒険者は合計13人、3部隊に分かれて3交代で任につく。仕事の時間、自由時間、就寝時間の3つで順番はそのまま。俺たちはBチーム、自由時間からだ。早速船旅を楽しめそうだな。
戦闘は基本船を止めおこなう。飛ぶタイプの魔物は逃げる場合やそのまま戦う場合も。そのため航海日数はずれることもしばしば。最悪冒険者チームが全滅しても船員だけで片付けることは出来ると船長。近くに居た船員さん達が鍛え抜かれた筋肉を見せつけてくる。正直冒険者チームより強そうだ。
仕事の話が終わり、船員さんが船内を案内。食堂、お酒を飲むところ、プレイルームと充実している。ショーまであるとか。その後割り当てられた船室へ。
しばらくすると船が発進。甲板に上がり、邪魔にならないところで見学する。帆が青白く光っている。どういう原理かわからないけどアレで風の力を増幅しているのか。忙しそうに動き回る船員さんたち。
落ち着いたところで砂海を眺める。思ったよりも生物、魔物が生息している。小さい魔物は轢き殺して進んでいるわけか。船内に戻り、お酒を飲むことに。飲んだあとは寝て、仕事に。
船と同じくらいの大きさの巨大な魔物が現れた。見た目はウミウシのような魔物。これを見た乗客たちから悲鳴が。船を止め戦闘態勢を。
「こいつはやばいかもな。危険を感じたら船に戻れ! 野郎ども、逃げる準備をしろ」
船長が俺たちと船員に声をかける。ファティマが一気に間合いを詰め、魔物の胴体を一刀両断。唖然とする船員、船長。俺たちが船に戻ると、船長は思い出したかのように船の出発を命じた。
「お前らそこまで強かったのか。その強さならオアシスでも余裕で戦える」
オアシス付近の魔物はかなり強いとのこと。船長のお墨付きをもらった。だが。
「それでも砂竜には敵わないだろうな。見かけても絶対に戦うんじゃねえぞ。逃げるんだ。ありゃあ人間には無理だ」




