12 砂海
「見えてきた」
小高くなっている丘から街が見えた。大きな街で港まである。そしてその港が珍しい、海ではなく砂の海の港だ。街の向こう側は一面砂の地。砂の上を走っている船を多数見かける。街に到着、衛兵さんに声をかけられた。
「見ない顔だな、ここは初めてか? なら砂海観光協会にいくといい」
皆砂海は初めてということで、協会の建物を教えてもらいそちらへ向かう。無料の観光案内を昼後からやっているということで、一旦出て、宿をとってゆっくり食事をし再度協会へ。受付を済ませ、外の集合場所へ。
冒険者から一般人、多数の人が外で待っていた。少しして協会の人がお立ち台に上がり、参加者に向かって話を。
「えー、おまたせしました。初めて砂海へ来た皆さんは砂が滑るから困ったことでしょう」
街の中には砂海の砂が入り込んできている。この砂は通常の砂とは違い、粒子が大きく滑ると説明する協会の人。地面の砂を適当に手にとってこぼす。粒の大きさはわからないが滑る感触はする。続けてこちらの滑り止め靴が今ならお安くなってますよと靴を売り出した。なかなかに商売上手のようだ。靴の下部はゴムのような樹脂でできている。とても歩きづらかったから4人分買うことにした。
船着き場へ移動。ここで船に乗って他の港や王都、オアシスの街へ行ける。砂漠と違い生命にあふれていて、たくさんの生物、魔物が生息している。一見死の大地だが、砂に似た藻が生息しており、それを食べる生物、またそれを食べる生物、魔物と循環がおこなわれている。
停泊中の船へ。見た目は帆船だが帆は風の力を増幅する魔法の帆、船底も魔法の力により特殊な作りになっている。少しの風でも通常の帆船より動く。魔力回復薬が燃料として使われている。魔物がそこそこ出現するため、金で雇った冒険者を乗せ戦わせている。砂の上で戦うため特殊な靴が必要なようだ。
「はい、以上で無料観光案内を終わります。もっと詳しく知りたいという方、安全な旅をご所望な方はもう一度協会の方へ」
案内が終わり、俺たちはギルドへ。砂取り、砂船の護衛等、この街ならではの依頼が数多くある。特に船の護衛が多いな。砂の上で戦える特殊訓練所まであるようだ。今のうちに慣れておこうと訓練所へ。
戦闘用の靴を購入。底面が凸凹になっている。これで砂を噛むわけか。履いて立ってみる。独特の感触がする。その日は砂上で遊びながら動きの特訓。夕方くらいにはだいぶ慣れてきた。
依頼をこなしながら15日滞在し、そろそろ移動しようかと相談。
「今度王都で新王が生まれるみたい。にぎやかなお祭りになりそうだよ、行ってもいいかもね」
「へぇー」
ダナが情報を仕入れてきた。砂海から離れ他の場所へ行こうと思っていたけれど、それなら行ってみたいね。一応他の場所へ行くのは理由があった。船代が高いからだ。元々王都へ観光も考えていたけれど、お金が足りないことがわかり断念した。
他の方法はある。王都へ向かう船の護衛をすること。ただ王都に行く道中の敵はそこそこ強い。できるだけ力を隠しながら旅をしたかったから今回はやめておこうという話になった。
「なかなかない機会だ。王都へいこうか」
3人共うなずく。ギルドの依頼板の前で依頼を探す。「護衛、往復」、これが多い。そうだよな、ここを拠点としてやっているならそうなるか。
なかなか見つからない。今日は諦めようと声をかけようとしたとき、ダナがあった! と声を上げる。「王都まで護衛、片道」、これだ! 依頼票を剥がし受付へ。
「審査ありですが大丈夫ですか?」
相談し問題ないと判断、はいと返事をし依頼を受ける。記された集合場所へ。街から少し出た砂海。予想通りといえばそうなのだが、かなりの人数が待ち合わせ場所に。皆考えることは同じか。そうだよな、本来なら高い船代がかかるところが無料どころかお金までもらえるわけだからな。
「お待たせした。私がこの船の船長、今回の依頼を出した者だ。審査法は簡単、生き残ったやつだ。流石に殺し合いをさせるわけではないがな」
船員らしき人たちが多数の武器を持ってきて、地面に置く。刃引きの武器か。怪我をする可能性が高いからやめておくのをお勧めする、と船長。
各自武器を持ち、分散して待機。船長がお酒を飲み始めた。戦いを酒のつまみにするつもりか。それぞれ戦闘準備が整ったところで船長が戦闘開始の合図を。
「はじめ!」
バトルロイヤルが始まる。そう考えていたが少し違うな。冒険者達が少しづつ移動、俺たちを取り囲む形に。1、2……俺たち以外は約50人ほどいるがその全てが敵のようだ。まあわかる。弱そうなところから狙っていくのは定石だよね。
「おう、お嬢ちゃんたち。痛い目に遭わねえうちに降参しちまいな」
次回は8月13日に投稿予定です




