↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァルキリーバトル  作者: 弓師啓史


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/22

12 エレーナの選択

新登場人物

なし



1,レイの住宅

エグゾフレームの模型を持って遊んでいるクロ。

それは変形機構を持つ変わったエグゾフレームだった。

ちゃぶ台の前ではキナコがデータパッドとにらめっこしていた。

レイはコーヒーを飲んであくびをしている。


クロ「ブーン、あ、茶色の毛皮怪獣発見。迎撃態勢に入ります」


キナコは無視してデータパッドを操作している。


クロ「ビーム砲発射! バスバス、ドカーン! 毛皮怪獣撃破!」


モフ手でビームを発射したことを表現するクロ。


レイ「クロちゃん、何なのそれ」

クロ「これは連合勢力の某一派が作ったエグゾフレーム、アッザマーだ」

レイ「アッザマー。初めて聞くね」

クロ「変形する、速い、ビーム砲しかないというシンプルさ。かっこいいだろ」

レイ「うーん、何か微妙」

クロ「素人にはわからんのだよ、これの良さが。グオーン」


人型変形してちゃぶ台に「着陸」する模型。


キナコ「それって、試作機でほとんど活躍もしなかったよね、量産もされなかったし、誰も知らない」

クロ「これだから、サイボーグヲタクは。いつからアッザマーアンチになった」

キナコ「今この瞬間だよ。勝手に怪獣として倒されたからね」

レイ「ねえ、私も一機欲しい、どこで手に入るの」

クロ「配給所にあるプリンター装置だ。配給ポイントで作れるぜ」

レイ「早速行こうよ!」

キナコ「ついでに買い物してこようか。配給ポイントもたくさんもらってるから」


家の前に非常に小さな車があり、運転席にキナコが乗る。

レイとクロが無理やり狭い助手席に乗った。

キナコはハンドルも持たず、端子を挿入してそれで操作するようだ。



2,配給所

車で五分も走ると、地区の配給所につく。

安普請の建物だが、物資とプリンター装置があった。

キナコは受付の安っぽいロボットに話しかけて、食料などを買うようだ。


クロ「んで、どんなエグゾが欲しいんだ」

レイ「んー、アマダイちゃん!」

クロ「アイマダインな。おい、プリンターのAI、アイマダインの模型を作ってくれ。手のひらサイズだぞ」

機械音声「わかりました、価格は十ポイントです」


クロが支払うと、樹脂でどんどん作り上げていく。


レイ「すごーい」

クロ「本来は雑貨とか作る装置だがな」


十分ほどで樹脂製の模型が出来上がる。

手に取るレイ。


レイ「あれ、なんだか形が違うわ」

クロ「お前の乗ってたのはバインダーが無かったな。代わりに何かのバーニアがついてた。それが本来の形だぜ」

レイ「うーん。こっちの方がカッコいいかも」


レイが子供のように「飛ばして」遊ぶ。


レイ「アマダイちゃんかっこいいわ」

キナコ「あ」


突然キナコが変な声を上げるので、皆で見ると、そこには金髪でサングラスをかけた女が立っていた。

赤いワンピース。手には食料の入った紙袋。


レイ「エレーナさん?」

エレーナ「ええ、こんにちわ」

レイ「具合は、大丈夫なの」

エレーナ「ええ、おかげさまで」


キナコが彼女を救ってから一週間は経っている。


エレーナ「少し話をしてもいいかしら」

レイ「うん、いいよ」


女二人と二匹の子熊は配給所から出る。



3,小さな公園

レイとエレーナがベンチに座り、子熊二人はそばに立つ。


エレーナ「あの時私をどうやって止めたの」

レイ「ヴァルキリーで精神波を送ったの」

エレーナ「そう、それで、私」

レイ「あなたが気を失ったのを感じたから、救出したのよ」

エレーナ「あなたにはそういった人の感情が見えるのね」

レイ「ええ」

エレーナ「私はエグゾに乗るといつもあんな風になるの。破壊衝動が全てに勝って、最初は辛うじて敵味方がわかったけど、そのうち……」


レイは彼女の手をぐっと握る。


レイ「……」

エレーナ「あなたは私と同じ改造されてるみたいだけど、人を殺すことで興奮しないの?」

レイ「そんな風に感じたことはないわ」

エレーナ「私は殺していると楽しくなってくるの。私は、頭がおかしいのよ」

レイ「そんなことないわ。あなたの心は苦しんでいたわ」

エレーナ「……」

キナコ「そうだよ、君は邪悪な組織の奴らに異常な精神状態を維持されていたんだ」

レイ「もう大丈夫よ、キナコちゃんがあなたを治したの。もう戦わなくても」

エレーナ「……ありがとう、でも私、パイロットを続けるわ」

レイ「そう、なのね」

エレーナ「だって、戦いを断っても、順番が来れば乗ることになる。それに、適性のない人が乗れば無駄に死ぬだけ」

レイ「二人でここの人たちを救いましょう。わたしたちならできるわ」

エレーナ「あなたは……とても強いのね」

レイ「わからないけど、もう、あんな子を出したくないの」


レイの脳裏に失われた二人の子供が思い浮かぶ。


キナコ「エレーナ、君の状態を調べたいんだけど、いいかな」

エレーナ「ええ」


キナコはデータパッドの端子を彼女のサイバーパーツに挿入して情報を得る。


キナコ「基本的に正常値だよ、他はどうかな」


待つ間、レイとクロが模型対決を始める。


レイ「アマダイちゃんは負けないんだから」

クロ「俺のアッザマーの方が上だろ、ブーン、どばばー」

レイ「そんなの簡単に回避よ」


ひらひらと躱すアイマダイン。


レイ「反撃よ。ズババ!」

クロ「ぐあ! アッザマーがー! って、それにそんな機動できるわけねーだろ」

レイ「できるもんねー、アマダイちゃん」


二人の様子を見てほほ笑むエレーナ。



4,評議会

アレン将軍とカイン・マクドネルの二人が正面の大型画面を見ている。

画面には灰色で丸っこい形状の昆虫を人型にしたようなエグゾフレームが映っている。

机上のモニターにはボー・クロスメリの姿が見える。


アレン「今度はこの新型量産機の相手をしないといけない」

ボー「それはメガフロンティア社のマグザですね。地球圏では割と出回っています」

カイン「辺境では見ないな」

ボー「会社自体が新しいですから。機体性能はクニヤラよりおおむね上ですね」

アレン「何か目玉でもあるかね」

ボー「マインドブースト能力が無くても使えるスケールビットが少しついています」

カイン「ふむ。それはどういった」

ボー「マインドコネクトを常人でも使えるように落とし込んだという触れ込みです、実体はあまりわかってませんね、試作段階でしょう」

カイン「他に目立った性能は?」

ボー「見たとおり、頑丈と言われています。僕からは以上ですね、多分」

アレン「ありがとうボー君」


通信が切れる。


カイン「概要はわかりましたが、我らに勝ち目はありませんね」

アレン「彼女を使ってみるか」

カイン「レイは拒否されてますよ」

アレン「エレーナだよ」

カイン「大丈夫なのですか」

アレン「一応、今は落ち着いているようだ」

カイン「……戦争の道具で奴隷だった娘を殺人ゲームの駒に」

アレン「そういうな、だれが乗っても悲劇は同じなのだよ」


首を振って溜息をつくカイン。



5,宇宙空間

レイと子熊二匹が小型輸送艇から宇宙を見ている。

彼らの目の前にはアクスⅡとスーパープラクス、古いアクス三機。

アクスⅡにはエレーナ。スーパープラクスにはトッド。

他はランダムな住民から選ばれた人々。


トッド「敵はマグザという新型量産機だ。スケールビットが少し出せるようだ、みんな気を付けろ」


トッドの声に、各パイロットが応じる。

当然士気は低い。


トッド「エレーナさん、大丈夫か」

エレーナ「感じるわ。敵が迫ってくる」


小型輸送艇の画面にも光の点が見えてきた。


クロ「トッド、敵は話通りのマグザ三機。護衛のクニヤラも三機だ」

トッド「クニヤラは牽制だけで来ないだろう。マグザだな」

レイ「変ね、あの虫さんたち、感じるわ怒りを」

キナコ「マインドブーストされてるのかもよ、敵パイロットたち」

トッド「ち、ますます厄介なのか」


黒い機体が迫ってくる。

遭遇距離に迫った瞬間互いに射撃が始まる。


アクスⅡはライフルを、スーパープラクスとアクス隊はバズーカを撃つ。

しかし、楽々と躱すマグザ。

パラパラと破片のようなものを射出する。


トッド「ビットが来るぞ!」


アクス隊はバズーカを捨てて重マシンガンを乱射する。

一個、二個と破壊していくが、一機が赤い光線を受けて爆破される。


エレーナ「これ以上やらせないわ!」


全力でバーニアを吹かして、敵に突撃するエレーナ。

一瞬、スケールビットの群れに囲まれるが、ライフルの乱射が異常な正確さでビットの群れを粉々に破壊した。


クロ「エレーナやるな!」

レイ「気を付けて、本体が来るわ」


マグザは両手首からエネルギー弾が撃てるらしく、三機でアクスⅡを集中攻撃する。

彼女の反射神経でも、さすがに回避しきれず、肩や腕などに次々と被弾した。


エレーナ「きゃあ!」

トッド「みんな、助けに行くぞ!」


バズ―カのロケット弾と重マシンガンの砲弾が雲霞のように敵に迫った。

高機動で躱すマグザ。

エレーナは敵の一機の真後ろに蛇のように食らいつく。

まだ動く片手でビームセイバーを取り出して、背中のメインバーニアを切り裂いた。


ボン!


マグザが一機、光の球になる。

同時に、アクスが二機撃破された。

エネルギー弾の直撃を受けていたのだ。


エレーナ「よくも!」


感情が爆発して、半壊しているアクスⅡで敵にさらに突撃する。

敵は躱しきれずに左腕を斬り落とされた


機械音声「主催者より、試合中止になりました」

クロ「え、なんだそれ」

機械音声「戦闘中止です、投了サインが出されました」

キナコ「企業側は自由にストップする権利があるんだよ」

クロ「不利になったらあいつらだけ中止にできるとか卑怯すぎるだろ」

レイ「でも、これ以上はやらないほうが」


アクスⅡはボロボロでビームセイバー以外に武器がない。

スーパープラクスもバズーカを撃ち尽くしていたようだ。

クニヤラに護衛されて宇宙の闇に消えるマグザ。


クロ「これって勝ったんか」

キナコ「たぶん、一応。新型一機撃墜だけでも相当な戦果だよ、それよりエレーナ!」

エレーナ「……(荒い息)」

キナコ「大丈夫かい、話はできる?」

エレーナ「え、ええ」

キナコ「戦いは終わったよ、君のおかげで何とか勝った」

エレーナ「……」



6,三番コロニー郊外、農園

二台の軍用車が通りかかる。

赤いトマトがずらりと並ぶ畑の前で止まった。

捕虜のボー・クロスメリとペドロ・チュルカ。そして、護衛の兵士が二人降りる。

後続の車から数人の兵士も。


ペドロ「何だ、何でこんなところで止まる」

ボー「いい景色じゃないか。牧歌的で」


深呼吸をする青年。


ペドロ「あの赤いのは何だ」

ボー「トマトだよ、食べたことはあるだろ」

ペドロ「ああ、あれか。実ってる状態は初めて見たぜ」

ボー「ん?」


彼の足元に茶色の物体があった。

子熊の玩具、歩くぬいぐるみ。


チビクマ「不審者発見、不審者発見!」

ボー「子熊君? 不審者って、僕は違うよ。通りすがりだ」

チビクマ「アルミナ、不審者来た!」


そう言って叫ぶ。

ボーはひょいと摘まみ上げる。

家から中年の女性が出てきた。アルミナだ。


アルミナ「すみません、その子AIがおかしくて」


炊事でもしていたのか手を拭いている。


ボー「ああ、そうなんですか。お返ししますよ」


青年がチビクマを渡すと、アルミナは何かに気づき驚いたような顔をした。


アルミナ「あんた、ボー・クロスメリ、だね」

ボー「ええ。そうですけど、厄介事はやめてくださいね」


青年は警戒して一歩下がる。

住民から恨まれている自覚はあった。

しかし、女は怒るでもなく、まごつくような反応だった。


アルミナ「あ、あなたは」

ボー「?」


女の不思議な態度に戸惑う青年。

女は何も言わずにチビクマを抱え、急いで家に駆け戻る。


ペドロ「何だ、あの女」

ボー「僕たちは恨まれてるんだ。仕方がないよ」

ペドロ「さっさと去るべきだな。殺し合いになったら厄介だ」


青年はうなずいて車に乗る。

軍用車は去った。

家から様子を見ていたアルミナ。

チビクマを抱きかかえている。


アルミナ「似てる。似てるよ」

チビクマ「だれに似てるの」

アルミナ「夫。私の死んだ夫に」

チビクマ「それならあいつアルミナの息子か」

アルミナ「まさか。でも、雰囲気が似てるんだよ、あの人に。テレビで見た時は何も感じなかったけど、もしかしたら……」


アルミナは、激しく首を振った。



7,エグゾフレーム工場

青いエグゾフレームが立つ。

よく見るとそれは装甲や装備を半分以上外されたティシュトリアだった。

アル工場長とクロがいる。


クロ「ティシュトリアをハッキングしろってか」

アル「ああ、あれはお坊ちゃん専用機だから、他人が使うにはハッキングしないとな」

クロ「まあ別にいいけどよ。誰が乗るんだ」

アル「二人目のエースに決まってるだろ」

クロ「エレーナか……にしても、背中の円盤はどうしたんだ」

アル「外した。あれは重すぎる」

クロ「デザイナーフレームって金持ちの要望で変なバランスなのが多いよな」


ティシュトリアの図面が映る画面を指さす。


アル「そうだ、金持ちの趣味で大概は軍用じゃありえないものになってる」

クロ「そういや、最初に見たハイイシュタルも構造が弱かった」

アル「そういうもんだ」

クロ「あんた、詳しいんだな」

アル「俺も昔はデザイナーだったんだぜ」

クロ「へー、そんな偉いお方がなんでこんな掃き溜めに」

アル「とある貴族野郎の機体が戦場で故障したんだ。その罪でな」

クロ「整備不良かよ」

アル「んなわけがあるか、俺が故意にやったのよ」


ニヤッと笑う男。


クロ「おお怖い。恨みでもあったのか」

アル「そんなところだ」


ティシュトリアに装甲板が追加されていく。


クロ「しかし、円盤が無いと火力が。射程の短い頭の拡散ビームだけか。エネルギー弾の発射装置も取っぱらった上に、それも変なババアに盗まれたし」

アル「とりあえず動けるようにして、ライフルでも持ってもらうしかない。それでもその辺の雑魚より相当上だ」

クロ「おっちゃん、乙女には必殺技がいるぜ」

アル「そう言われても……考えとくわ」



8,アレン将軍の執務室

アレン将軍は誰かと通話している。

一切特徴のない中年男が合成音の声で答えている。


アレン「ふむ、そのような外宇宙にコロニーがあるのかね」

中年男「はい、わが社ではそこに遺棄された秘密に関して強い興味を持っております。

アレン「そちらの機動部隊で行けばいいのではないのか」

中年男「企業同士の監視の強さは想像を超えてますのでね。三番コロニーの方が都合がいいのですよ」

アレン「十分な報酬が得られるなら、派遣してもいいが。事前情報がもっと欲しいですな」

中年男「あのコロニー群は旧ソル王国の残党が作ったという噂です。最後の抵抗拠点にするつもりでしたが、地球連合の極右集団に皆殺しにされたと言われています」

アレン「ならば、今は単なる残骸ではないのか」

中年男「実はとある辺境勢力に調査を依頼したのですが。音信不通になりまして」

アレン「まだ何かいるというのか、どのような部隊で行ったのだ」

中年男「クニヤラの最初期型ですね」

アレン「最初期型となると、微妙だな。弱いとも言い切れない」

中年男「調査に行って、成果が無くても最低限の報酬は出しましょう。必要なものがあれば、それも支給します」

アレン「それは当然ですな。返事は評議会にかけてからとなりますが」

中年男「なるべく早い回答を待っています」


通信が切れる。


アレン「難題を、しかし、得られるものもあるか……」


タバコに火をつける。



8/26 微修正


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。