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僕を共有した五人の乙女~告白は1億ポイントから!?~  作者: 寝不足魔王


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第25話:水曜日、筋肉の強制参加(マッスル・ドラフト)と連合の亀裂

 水曜日の朝。私立聖蘭学園2年A組の教室は、登校してきた生徒たちが絶句するほどの異様な光景に包まれていた。

 黒板には、第3代ディーラー・藍澤凛あいざわ りんの手によって、巨大なトーナメント表が描かれている。その頂点には、神々しい金文字で『一条凪いちじょうなぎ争奪・全級合同綱引き大会』と記されていた。


「よお、野郎ども! 準備はいいか! 今日の昼休み、校庭を全面貸し切りにして『ゲリラ体育祭』を開催するぜ!」


 凛が拡声器を手に叫ぶ。昨日、聖奈と舞夜の「お掃除・静寂連合」によってポイント獲得の機会(凪との運動)を封殺された彼女は、ディーラーの職権を乱用し、学校行事を勝手に捏造するという暴挙に出たのだ。


「……正気なの、凛さん。これ、ただの独裁じゃない。学校の許可はどうしたのよ」

 舞夜が、震える手で98pt(昨日微増して115pt)の残高を確認しながら抗議する。


「安心しろ、生徒会(聖奈)の印鑑は昨日のうちにボクが『根性』で借りておいたぜ! 規約第30条、ディーラーは凪の健康維持のため、特別訓練を命じることができる! 文句がある奴は、ポイントを諦めるんだな!」


「……っ、卑怯な真似を……!」

 聖奈は、自分の印鑑がいつの間にか「根性(物理的強奪)」で使われたことに戦慄したが、提示された【筋肉ルール3倍:凪と一緒に綱を引けば1秒につき1pt。勝利ボーナス50pt】という破格の条件に、抗うことはできなかった。


 昼休み。校庭には、凛が「クラスの親睦会だ」と吹き込んで集めたサクラの生徒たちと、やる気満々の凪が立っていた。


「みんな、僕たちのためにこんなイベントを企画してくれてありがとう! クラスの絆を深める絶好のチャンスだね。僕も全力で引くよ!」


 凪の、一点の曇りもない爽やかなスポーツマンシップ。それが、ヒロインたちにとっては「1ptでも多く毟り取るためのゴング」に聞こえていた。


「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」」


 ピーッ! という笛の音と共に、凄惨な戦いが始まった。

 聖奈と舞夜は、普段の優雅さをかなぐり捨てて綱にしがみついた。泥が顔に跳ね、爪が割れそうになっても、彼女たちの脳内では『1秒……2秒……』とポイントの加算タイマーが回っている。


「……はぁ、はぁ! 凪くん! 私を見て! 私が、あなたの後ろを支えているわ!」

 聖奈が、般若のような形相で綱を引く。


「聖奈、形相が怖いよ!? もっとリラックスして!」

 凪が引き気味に叫ぶが、聖奈の耳には届かない。


 裏:【筋肉ルール3倍適用:秒間3pt獲得中】。


 一方、霧島凪沙(304pt)は、凪のすぐ後ろで綱をふわりと握っていた。全く力が入っていないように見えるが、なぜか彼女の側がぐいぐいと相手を圧倒していく。


「……凪くんの、背中。……大きい。……勝てる」


「凪沙ちゃん、すごい力持ちなんだね! 感動したよ!」


 裏:【意外性への驚き:20pt獲得】。凪沙、涼しい顔で加点。


 激闘の結果、凪のチームが勝利。しかし、代償は大きかった。

 午後の授業。教室では、手が震えてシャーペンすら持てない聖奈と舞夜の姿があった。


「……手が、震えて……優雅に、解答用紙が埋められないわ……」

 舞夜が、ガタガタと震える手でストップウォッチ(ポイント計測用)を握りしめる。


「……アイロンが、持てない……。凛さん、なんて恐ろしい罠を……。家事マイニングを物理的に封じるなんて……!」

 聖奈の失速。それは凛の狙い通りだった。


 放課後。

 泥まみれになり、肩を落として保健室へ向かおうとする5人を見て、凪は目を潤ませて駆け寄った。


「……みんな。あんなに必死に、クラスの絆のために綱を引いて。……自分を犠牲にしてまで頑張る君たちは、最高の仲間だよ! 本当に、心から尊敬する。ありがとう!」


 凪の、魂を揺さぶるような熱い感謝。

 その瞬間、5人のスマホに一律で【友情の結晶ボーナス:30pt】が振り込まれた。


「「「「「……報われたぁ……(ました)」」」」」


 夕闇の校庭に、5人の疲れ果てた、しかし充足感(資産増)に満ちた声が響く。


 しかし、瀬戸ほのかだけは、限界を超えていた。

「……先輩……もう、筋肉の音しか聞こえませんぅ……。さわら……筋肉……おんぶ……。ほのか、もう、何のために生きてるのか分かりませんぅ……」


 彼女の瞳からは光が消え、来週の「逆転」を誓うことすら忘れて、白目を剥いて倒れ込んだ。


 一条凪は、自宅でプロテイン(凛の差し入れ)を飲みながら、ふと思った。

「……みんなの団結力が、今日で一気に深まった気がする。……でも、なんでみんな、明日から筋肉痛になるって泣いてたんだろう」


 常識人ゆえの、幸せな無知。

 しかし、凛の手元の管理端末には、舞夜から吸い上げた分を含め、ついに「1235pt」を大幅に超える、戦慄の数字が刻まれようとしていた。


---

■水曜日終了時の所持ポイント

藍澤 凛:1235pt(※ディーラー継続中)

霧島 凪沙:354pt(+50pt)

支倉 聖奈:298pt(+45pt)

一ノ瀬 舞夜:160pt(+45pt)

瀬戸 ほのか:75pt(+45pt)


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