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僕を共有した五人の乙女~告白は1億ポイントから!?~  作者: 寝不足魔王


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第20話:木曜日、駆け込みの家事と「筋肉」の足音

 木曜日の朝。一条凪いちじょうなぎが教室の引き戸を開けると、そこには「家事の最終決戦」に挑む乙女たちの、凄まじい熱気が渦巻いていた。

 今日で第2代ディーラー・支倉聖奈はせくら せいなが制定した『生活環境改善週間』が幕を閉じる。明日からは第3代ディーラー、藍澤凛あいざわ りんによる「筋肉統治」が始まることが予告されており、現在の「家事ポイント1.5倍」というボーナス期間を逃すまいと、ヒロインたちは血眼になっていた。


「凪くん、おはよう! さあ、机を退けて。今からワックスがけの最終仕上げをするわよ!」


「お、おはよう聖奈。……昨日も磨いてくれたじゃないか。これ以上やったら、机が鏡になっちゃうよ」


「いいのよ、反射で凪くんの顔が二倍見えるくらいがちょうどいいわ! ほら、隅っこに埃が1ミリ……! 許さないわよ!」


 聖奈は、もはや職人と化した手つきで凪のデスクを磨き上げた。

 裏:聖奈のスマホに通知。

『【愛の証明】極限の清掃奉仕:15pt獲得(1.5倍ボーナス適用)』


(……よしっ、これで248pt。明日のオークションで、一ノ瀬さんの独走を止める最低限の弾数は揃ったわ……!)


 聖奈が執念の炎を燃やす横で、次期ディーラーである藍澤凛が、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。

 本来ならライバルの加点を阻止すべき場面だが、明日の放課後、彼女たちは全員「凛にポイントを支払う側」に回る。つまり、今ここで彼女たちが稼げば稼ぐほど、明日凛が回収できる総額が増えるという、奇妙な経済構造が生まれていた。


「おい凪! 聖奈がせっかく掃除してんだから、もっと肩でも揉んでやれよ! ……あ、いや、聖奈が凪を揉むのか。……おい聖奈、もっと心を込めて揉めよ! 凪が喜べば、ボクが明日……じゃなくて、みんなが幸せだろ!」


「……凛さん。あなた、私から毟り取る気満々ね。……反吐が出るほどの強欲さだわ」


 舞夜が、ゴミ拾いのトングを握りしめながら凛を睨む。

 富豪・舞夜(898pt)は、金曜日に凛へ「上納」するポイントを少しでも減らすため、昨日から凪に高価な私物を「永久貸与」することで、数値を「凪への恩義」へと変換する防衛策を講じていた。


「凪くん。……この、私の家で代々受け継がれてきた……かもしれない、特製の万年筆。あなたに託すわ。これで明日の小テストを乗り切りなさい」


「ええっ!? そんな重いもの、受け取れないよ舞夜!」


「いいのよ。……これは、私の『覚悟』の証よ。……受け取って、ありがとうと言いなさい」


『【愛の証明】重すぎる家宝の譲渡:100pt獲得』


(……ふふ。これで100ポイント分、私の愛が『実体化』したわ。明日、どれだけ凛さんに吸い取られようと、凪くんの手元には私の万年筆が残る……! これが最強の投資よ!)


 昼休み。

 来週の「筋肉ルール」に怯える瀬戸ほのか(168pt)が、なりふり構わず凪を中庭に連れ出した。


「先輩! 来週のために、今から『合同自主トレ』を始めましょうぅ! まずは軽いストレッチから……あ、先輩、体が硬いですぅ! 私が後ろから押して差し上げますからぁ!」


「うわ、痛っ……! ほのかちゃん、急にスパルタだね。……でも、確かに運動不足だったかも。ありがとう」


『【愛の証明】健康への先行投資:20pt獲得』


 慣れない柔軟運動に悲鳴を上げる凪。その横で、霧島凪沙(239pt)は、凪の脱ぎ捨てた上着を抱きしめながら、足元を飛ぶ綿毛を数えていた。


「……一、……二。……凪くん、あったかい」


「あはは、凪沙ちゃんは、何をしてても可愛いね。見てるだけで癒やされるよ」


『【存在への感謝】ターゲットの精神安定:30pt獲得』


「「「「存在してるだけで30ポイント……!? 不当競争よぉぉ!!」」」」


 物陰から監視していた四人の絶叫が、昼休みの中庭に響き渡った。


 放課後。

 凪は一日を振り返り、校門の前で五人を見渡した。

 そこには、掃除用具を抱えた聖奈、ゴミ袋を持った舞夜、プロテインを振る凛、柔軟で汗をかいたほのか、そして綿毛を見つめる凪沙。


「……みんな。この一週間、本当に立派だったよ。掃除も運動も、みんながお互いを高め合っているのが伝わってきた。……僕も、明日の金曜日はみんなに負けないくらい、自分のできることを頑張るよ!」


 凪の、一点の曇りもない「全員への激励」。

 その瞬間、五人のスマホに一律で【週の総括ボーナス:10pt】が振り込まれた。


「「「「「……明日も、よろしくね(お願いします)、凪(くん/先輩)」」」」」


 凪が去った直後、教室内で舞夜が、残高「998pt」という、あと一歩で4桁に届く画面を見つめて不敵に笑った。


「……さあ、明日の放課後。凛さん、あなたがどんな『脳筋なルール』を引こうと、私のこの1000ポイント近い暴力的な数字が、すべてを薙ぎ払ってあげるわ。……ドラフト会議、楽しみね」


「言ってろよ。……明日、その札束を全部ボクの財布に叩き込ませてやるからな。……聖奈、BOXの準備はいいか?」


「ええ。……明日、私の管理者としての任期が終わる瞬間。……この学園に、新たな激震が走るわよ」


 聖奈は、貰ったお菓子の包み紙を御守りのように握りしめ、次なる戦いを見据えた。

 一条凪は、帰宅路の途中で夜空を見上げ、独り言を呟いた。

「……明日は金曜日。みんなで、また楽しくおしゃべりできるといいな」


 彼が望む「楽しいおしゃべり」という名の時間が、明日の放課後、1ポイント刻みの執念と、1000ポイント近い札束の暴力によって、完膚なきまでに競り落とされることなど、知る由もなかった。


---

■木曜日終了時の所持ポイント

一ノ瀬 舞夜:998pt(贈り物・労働等により大増量)

霧島 凪沙:279pt(存在給+10pt)

藍澤 凛:260pt(激励+10pt)

支倉 聖奈:248pt(家事追い込みにより回復)

瀬戸 ほのか:198pt(ストレッチ+10pt)


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