鷲見女史の場合
馬鹿じゃないの。
あんた。ダサいし、鈍臭いし、全然イケてない。何よそのチェックのシャツ。ズボンにインしてんじゃないわよ。髪型常にモサいのよ。
それなのにあたしに惚れてるとか、笑い話もいいとこ。言っとくけど、あんたにあたしはもったいない。
あんたに嫌われようと思って、ひどいワガママ言っても全然怒んない。冗談も全然通じない。なんなのあんた。いっつもニコニコしてさ。
真夏にいじわるで「熱いお汁粉飲みたい」つったら、汗だくになって自販機探し回ってたわね。あるわけないっつの。本当馬鹿よ。もっと馬鹿なのは、それをずっと覚えてて、真冬に買ってきた時。
「熱いお汁粉、やっと見つけました」
まじで呆れた。寒さで顔真っ赤にさせて、体ブルブル震わせて。買ってるのはあたしの分だけ。自分のもなんか買えばいいじゃない。……まあ、その、美味しかったけどね。
約束も何回もすっぽかしたし、ご飯だってあんたの身の丈に合わない店選んだし、払わせたわ。分かっててやったのよ。ヒドいでしょ。
だからさ、なんであたしに構うの?
あたし、性格サイテーなの知ってるでしょ?
なんでそんなに真っ直ぐあたしの事見るの?
あたしは顔と身体だけだって、散々他の男から言われてきたの。その通りだって、今になって思うわよ。仲が良い女友だちだっていないわ。——なによ、あんたの友だちいないのと一緒にするんじゃないわよ!
もういい加減年もとって、あたしの周りには誰もいない。あんたくらいのもんよ。今までのツケね。馬鹿だからやっと分かったわ。
だから全然分かんない。どうしてそれであたしにプロポーズとかすんの?
あたし馬鹿だし、ガサツだし、ズボラだし。
料理も家事も全然出来ないし。
う……ぐすっ……
顔とおっぱいだけって……、
散々馬鹿にされて、フラれてきた、し。
うう、泣いてないわよ!
なのにどうして
結婚しようとか言ってくれるの?
本当、あんたって……馬鹿よ。
◇
「ぐすっ……前半何言ってるか全く分かんなかった。だれ宮園なんとかって」
「銀河鉄道? 全然知らない。……ぐすっ。ハンカチ、洗って返すから。あとあたし、椎茸めちゃくちゃ嫌いだから。まじ無理だから。ほんと吐きそうになるから。え、知ってる? そう」
「なに、あんたナス嫌いなの? じゃあ椎茸でたらあんた食べてよ。あんたのナス、あたしが食べてあげるから」
「……なによ」
「……」
「……そ、そういう事……だから」
「……ありがと」
たこすさん企画に、完全に乗り遅れた二番煎じです。でもたこすさん、素敵な企画をありがとう! 他の皆様の作品は(私と違って)甘くて素敵なのばっかりです。そちらもぜひどうぞ!