サラさんの引っ越し
村長さんの商店に向かった。
「こんにちは。先ほどはありがとうございます。無事、籾は入手できました。」
「それは良かったわ。」
「ちなみに野菜の種は置いてますか?」
「あるわよ。そこの棚にあるから欲しいのがあったら言ってちょうだい。」
ジャックさんからいろいろな野菜の種を届けてもらったが、無かったものがここには置いてあった。
キュウリ、トマト、カボチャの種を購入した。
「お兄ちゃん、こっちの種も買っていくかい? スイカとメロンっていう甘い実が成るものらしいのだが、誰も買ってくれなくてね。どうだい?」
「ください!」
「ありがとね。あら? サチさん、どうしたんだい?」
背後に先ほど会って籾を譲ってもらった女性が立っていた。
この女性が村長夫人が言っていたサチさんだったようだ。
「奥様、実はこの方の村へ移住しようと思いまして、相談にきました。」
「ご挨拶が遅れましたが、アオイ村で領主をしておりますアオイと申します。サチさんが困っているようでしたので移住のお話をしました。お子さんも含め衣食住の保証をいたします。ご安心ください。」
「サチさんがそれで良いのであれば私は何も言わないわ。旦那にも伝えておくから大丈夫よ。」
「では、サチさん。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。息子のエイジのこともお願いしますね。」
「それで引っ越しですが、いつにしますか? アイテムバックをお渡ししますので荷物を全部入れてください。」
「畑を更地に戻して村長さんにお返ししたいのでそれが終われば問題無いです。」
「では、畑の方は俺が魔法で更地にしときますね。ちなみに今育っている野菜はもったいないのでうちの農地に移しても良いですか?」
「全てお任せします。では、荷物をまとめて村の人たちに挨拶を済ませます。明日には移動可能です。」
「これから畑の処理をして、明日の朝お迎えにきますね。」
早速、サチさんの畑に案内してもらった。
畑には収穫には程遠い野菜が並んでいた。
さっき購入した種のキュウリ、トマト、カボチャが苗の状態であった。
その他、大豆、小豆、唐辛子、サツマイモ、ナス、ピーマンも発見。
全部農園に移植することにした。
移植が済み、穴だらけになった畑をスキル《開墾》をつかって更地の農地に戻した。
きれいに整った農地をみた村長さんに感謝された。
翌朝、約束通りサラさん家に迎えにきた。
「おはようございます。準備はよろしいですか?」
「はい、大丈夫です。ほら、エイジ、ご挨拶!」
「おはよ。」
「おはよう。エイジ君もよろしくね。では、村長さんにお別れの挨拶をしてからうちの農園に向かいましょう。」
村長さんに挨拶をし、再びサチさんの家に戻った。
「準備はOKです。聞いていませんでしたが、アオイさんの村はどちらにあるのですか?」
「王都の隣です。」
「結構な距離ですよね。馬車で2週間くらいですか?」
「いえ、魔法なので一瞬ですね。」
「え?! 魔法??」
「俺は転移魔法が使えるのです。内緒にしてくださいね。サチさん、エイジくん。私の手を握って目を瞑ってください。」
2人が目を瞑ったのを確認し、テレポートを発動した。
「目を開けていいですよ。」
「え? もう着いたのですか?」
「はい。あちらに見えるのが王城です。そして、この門の奥が私の村です。まずは住民証を渡しますので魔力を注いでください。では、中にお入りください。」
「本当に王都の隣だったのですね。こんなに王都が近いとは思っていませんでしたが。え? 広い! 村のレベルじゃないじゃないですか! きれいな農園ですね。」
「ありがとうございます。今日からサチさんの村でもありますので遠慮なさらずに。これから農園の責任者に会ってもらいます。その後、お部屋に案内しますね。」
『姉さま、今大丈夫ですか? 新しい住民を紹介したいのですが。』
『大丈夫よ。じゃあ、2階の食堂で待ってて。』
『農婦をお願いする予定ですので、バンさんも同席させてください。』
ざっと農園を案内し、食堂へ向かった。
「こちらが孤児院の経営を任せてる俺の姉です。何か困ったことがあれば姉に相談してください。姉さま、こちらは南の農村でスカウトしてきた農婦のサラさんとエイジ君です。旦那さんを亡くされて途方に暮れていたのでお誘いしました。」
「初めまして、アオイの姉のエミリーです。よろしくお願いします。そして、こちらにいるのが農園の責任者のバンです。あなたの上司になります。」
「エミリー様、バンさん、よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそ。今日は荷解きがあると思いますので明日からよろしくお願いします。」
暇そうにしていたエイジ君にそっとプリンを差し出した。
「ママ、これすごく甘くておいしい!!」
「良かったわね。」
「これはうちの農園で加工しているプリンというお菓子です。サラさんもどうぞ。王都では人気のお菓子なのですよ。」
「まあ、本当においしいわ。」
「それではお仕事の話ですが、サラさんには農婦として子供たちを指導しながら野菜を作っていただきたい。エイジ君は日中、孤児院の子たちと一緒に過ごせますので問題ないですよ。安心して仕事に専念してください。食事の方は1階の食堂で朝昼晩と出ますので利用してください。これから案内する部屋にもシャワーがあるのですが、この建物の1階に男子、2階に女子用の大浴場がありますのでそちらも使ってもらって大丈夫です。給料ですが、1カ月1金貨でいかがですか?」
「え? そんなに頂けるのですか?」
「はい。姉さま、よろしいですよね?」
「問題無いわ。サラさん次第で昇給もあるから頑張ってくださいね。」
「こんなきれいな農園で働けるだけでも夢のようです。アオイさん、誘っていただき本当にありがとうございました。あの時、息子と今後どうしていったらよいか分からなくなり途方に暮れていました。アオイさんは命の恩人です。精一杯働かせていただきます。」
「大袈裟ですよ。エイジ君もすぐに戦力になってくれると思いますし頑張ってください。住民証を出してください。生活用品と衣服を渡しますので住民証のアイテムボックスに収納してください。」
「え? このカードにはそんな性能があるのですか?」
「はい。ギルドカードと同じ機能も持ってますので身分証明の他、自分のステータスも確認できますよ。」
*ステータス
名前: サラ
称号: アオイ村住民
職業: 農民
性別: 女
年齢: 21歳
レベル: 1
スキル
農業、家事、採取、裁縫、料理
「前の村には冒険者ギルドは無かったので初めて自分のステータスを確認しました。」
「この農園は神の祝福を受けているのでスキル、ステータスの成長が早いです。たまにステータスを確認してみてください。新たなスキルを覚えているかもしれませんよ。レベルを上げたい時には村民限定のダンジョンもありますので。」
「頭が追い着かなくなってきました。とにかく、ここの農園が大変な場所だったってことはわかりました。そういうものだと無理やり理解することにします。」
「そうしてください。こちらは俺の専属メイドのメアリーです。メアリー、部屋に案内してトイレやシャワーの使い方を説明してくれ。バン、昨日渡した種と苗の世話をよろしくな。わからないことはサラさんに聞いてくれ。」
「「了解しました。」」
最近気づいたのだが、うちの住民証には通帳機能もあるようだ。
ギルドカードに似せて作ったのでギルドカードにある機能は当然あるのだ。
今後、給料の支払いや店での金銭のやり取りも住民証をかざすだけで済むようにキャッシュレスにしたいと考えている。




