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72.「どうか、力を貸してくれっ!」

二週間ぶりの投稿です。

遅くなってすみませんでした><。

 

 

 

 少し離れたところを行く四人組み。

 しきりに大声で声を掛け合いながら走っていた。

 よく耳を澄ませてみると『急げ!』 『早くするんだ!』と、慌てた様子だ。



「あれは、プレイヤーではないな。NPCだ」


「そうみたいだな。あんなに急いでどこに行くんだろう?」


「さあな。だが、なにやら緊急を要するようだな」



 メイランがNPCの四人組みを観察しながら呟く。



「情報交換とかしたかったけど、あの様子じゃ無理そうだね。残念だけどあの人達に声をかけるのはやめておこう」


「それが懸命だな」



 俺が声をかけるのはやめようと提案すると、特に反対することもなくメイランも同意してくれた。

 急いでいる相手に声をかけても迷惑になるだけだ。



 そうと決まれば移動を再開しようと踵を返し元の場所に戻ろうとしたのだが、その直前に偶然にも俺とNPCのうち一人の視線が合った気がした。

 俺とそのNPCとの間にはそれなりに距離があったので、あくまで俺がそう感じただけなのだが。



「……って、あれ? なんかあの人こっちに来てないか」



 距離があったので俺の勘違いかと思ったが、どうやら本当に目が合っていたようだ。

 俺と視線が合ったNPCは遠目で見てもわかるくらい大げさに驚いた様子を見せ、他の三人のNPCに声をかけるとこちらに向かって進路を変更してきた。



「どういうことだ。イオ、なにかしたのか」


「いや、皆目見当も付かないんだけど」



 とりあえず俺とメイランは一応警戒しつつその場に留まることにした。

 そして普通に声を出せば聞こえる距離まで近づいてきたところで、四人の顔も詳しく見ることが出来た。

 


 四人は全員男性で、よく見てみると顔は土や汗で汚れており、身に纏っている防具も至る所に傷が目立っていた。

 さらになにより、全員どこかで見たことがある顔だった。



「む? あなた達は確かドランとパーティを組んでいた」


「ああそうか、ドランの所の職人さんたちか」



 メイランが先に彼らの正体に気が付き、俺も思い出すことが出来た。

 彼らはドランとリックのパーティメンバーだ。



「どうしたんですか? さっき急いでどこかに行こうとしてたみたいですけど。ドランとリックは――」


「「「「た、助けてくれっ!」」」」


「えっ! ちょっ、わあぁっ!?」



 俺は言葉を途中で遮られ、顔をくしゃっと歪め今にも泣き出しそうな彼ら(ガタイの良いちょい強面のおじさん、お兄さん達)に、すがりつくように抱きつかれた。



「頼むっ、俺達じゃあどうしようもなかったんだ!」


「ドランとリックは俺達を逃がすためにっ」


「あんた確かロックベアーを倒したことがあったよな!?」


「このとおりだ。力を貸してくれ」



 四人は『助けてくれ』 『力を貸してくれ』と繰り返すばかりで、詳しい状況は全く解らなかった。

 ただわかったことは、ドランとリックの身に何かが起こり危険な状態で、この人達は俺に助けを求めてきているということだ。



「落ち着くんだ」



 必死な四人と慌てふためいていた俺は、その一言で動きを止めた。



「落ち着いて何があったのか教えてくれ。大丈夫、私もイオもきちんと話を聞く」



 言葉を放ったのはメイランだ。

 メイランはゆっくりと、だがはっきり耳に届く声で語りかけるように言う。



「す、すまない。取り乱して。でも時は一刻を争うんだ」



 四人の職人の中で一番年長と見える男性が俺を掴んでいた手を離し、佇まいを整えて立ち上がる。

 他の三人もそれに続く。



「何があったんですか。ドランとリックは今どこに」



 俺は男性に聞いてみた。

 他の三人は話すことを年長の男性に任せたようだ。



「ドランとリックは今ジェノザウルスと戦っている、はずだ」


「ジェノザウルス!? 見つけたんですか」


「ああ。……いや、あれは見つけたとは言えない。俺達は見つかった(・・・・・)んだ」



 男性はその時の様子を話す。



 ――ドラン達のパーティは時折トレントなど俺達も戦ったようなモンスターと戦闘になることもあったが、特に目立った被害もなく森の中を順調に探索していた。

 そして少し前、モンスターとの戦闘中に突然ジェノザウルスが乱入したらしい。

 


 ドランはすぐに戦闘を中断し逃げる事にした。

 ジェノザウルスはその時ドラン達が戦っていたヴォルフ数頭を瞬く間に食い殺すと、今度は逃げるドラン達に襲いかかってきた。

 全員で逃げる事が困難だと判断したリックが、自分が囮になり他の五人を逃がすと言い出すが、ドランと職人達がこれに反対する。



 だが現実問題、誰かがジェノザウルスの気を引かなければ全滅は必死だったため、その時無傷だったドランとリックが囮となる。

 多少なりとも傷を負っていた職人達は自分たちも戦うと申し出るのだが、ドランのリーダー命令もあり無理矢理逃がされることとなった――。



 そして現在に至る。



「じゃあドランとリックは今ジェノザウルスと戦っているのか」


「頼む。こんな事無責任だとわかってるが、どうか、力を貸してくれっ!」



 全てを話し終えると年長の男性は深々と頭を下げた。

 他の三人もそれに続いて頭を下げる。

 俺は頭を下げたまま動かない男性に近づき、その方に手を置いて声をかけた。



「詳しい場所をマップで教えてください」



 俺のその言葉を聞くと男性はガバッと頭を上げた。

 そして目が合い俺が無言で頷くと、男性の目から涙が溢れ出てきた。



「あ、ありがとう、ありがとう!」



 俺の手を取り男性はありがとうと何度も何度もお礼を言い続けた。



 ――――――。

 ――――。

 ――。





「ごめん、メイラン」


「それは何に対する謝罪だ」



 職人達が去っていき俺とメイランはもらったマップ情報に従い、ジェノザウルスとドラン、リックがいると思われる場所に向かっていた。

 運が良いのかモンスターと遭遇することもない。 



「いや、メイランの意見も聞かないで、勝手にドラン達を助けに行くって決めちゃったから」


「なんだそんなことか。気にする必要はない。もともと私達の標的はジェノザウルスだったのだから」



 メイランは口元に笑みを浮かべつつ問題無いと言ってくれた。



「それに彼らに頼まれなくても、話を聞いた時点で助けに行くつもりだった。ドランとは知り合ったばかりだが見捨てるなんて選択肢、最初から存在していない。イオもそうだろう」



 そう言ったメイランの顔はさっきよりも柔らかな笑顔だった。



「ああ、俺も見捨てるなんて出来ない。なんとしてもドランとリックは助け出す」


「さっきの彼らもヴァイスの街に戻って助けを呼んでくると言っていた。もし倒せそうになくとも、時間を稼げば援軍が来てくれる」



 職人達はただ逃げるわけではない。

 ヴァイスに戻って助けを呼びに行ったのだ。

 だから最悪の場合、ジェノザウルスを倒さなくても時間さえ稼げばいい。

 


「……もうそろそろ例の場所だ。注意してくれ」


「了解した」



 だが急いで目的地へとやって来てみると、ジェノザウルスの姿はどこにもなかった。

 だが姿はなくとも手がかりと思われるものがそこら中にあった。

 倒された木、不自然に潰された草藪、陥没した地面。

 それらがまるで道標のようにある方向に向かって点在している。



「行こう、メイラン」


「ああ」



 メイランは双剣を、俺は偃月槍(えんげつそう)を手にしジェノザウルスの後を追った。





お読み頂きありがとうございます。


次話から戦闘回になる予定です。

もうすぐこのイベントのボス戦!

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